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ホラー短編

夜に行ってはいけない公園


今でもジャングルジムが苦手です。




「その公園は絶対に夜に行ってはいけない」


 僕の故郷にはそんな噂のある公園がありました。

 町のはずれにある小さな公園です。

 古いブランコと小さな砂場。今では珍しくなったジャングルジムと滑り台。

 昔は日本中によくあった、ありふれた公園だったと記憶しています。

 

 そんな公園でしたが町の子供たちのたまり場でした。

 近くに駄菓子屋があったこと。

 公園のすぐ横に小さな川が流れていたこと。

 スマホやゲームが今ほどは普及していなかったため、学校が終わると子供たちはその公園に集まっては遊んでいたのです。

 

 しかし、その公園は、夜には絶対に行ってはいけないと大人たちは口を酸っぱくして子供たちに教えていました。

 なぜ、そんな噂があったのかは分かりません。

 僕は子供の頃に聞いた覚えがありますし、親が子供の頃にも言われていたようです。

 古い住人によると、戦時中からあった公園らしいので、もしかすると太平洋戦争の前から言われれていたのかもしれません。

 

 噂では、その公園で焼身自殺をした人がいたとか、公園の木で首吊り自殺をした人がいたとか、色々な噂を聞きましたが本当のところは分かりません。

 

 

 

「おい、腹へったからコンビニ行こう!」


 大学に通っていた僕は久しぶりに実家に帰省していて、地元で就職していた友人の家に遊びに行ってました。

 中学高校とずっと一緒だった友人と久しぶりに話しができて、僕も友人もテンションが上がっていたのか気がつけば夜中の2時でした。

 地方の町とはいえ、すでにコンビニが何軒かありましたので、僕と友人はコンビニに食料を買いに出かけたのです。

 

「そういえば、あの公園はまだあるの?」


 コンビニに行く道すがら、突然あの公園のことを思い出しました。

 友人の家のすぐ近くにあの公園はあったのです。

 

「まだある。あいかわらず夜は誰も行かん」


 どうやらあの公園はまだあったようでした。

 

「せっかく来たんやから、あの公園に行ってみよか?」


「いや、それはアカンやろ」


 あんな噂は都市伝説みたいなものと思ってはいましたが、夜に公園に行くことは一度もしたことがなかったのです。

 

「なんでや。俺、コンビニ行くときは近道やから公園の中を通っていくで」


「うそ?」


「ほんまやって。夜に行っても何にもないで。暗いから怖いことは怖いけど、あんなんただの噂やわ」


 友人はそう言ってずんずんと公園に向かって歩き出しました。

 僕も仕方なく友人のあとをついて歩きます。

 

「ほら、なんもないやろ」


 友人がそう言う先には、あの懐かしい公園がありました。

 街灯がひとつだけの薄暗い公園でしたが、見たところ何もありません。

 子供の頃に見た風景そのままの公園です。

 古いブランコと小さな砂場。今では珍しくなったジャングルジムと滑り台。

 

「あれ?」


 友人の声に僕は立ち止まりました。

 

「どうした?」


「いや、滑り台のところに靴がある」


 たしかによく見ると、滑り台のうえに小さな靴が2足。揃えて置いてありました。

 

「どっかの子供が忘れて帰ったんやな」


「はあ? 靴忘れて帰る子供なんているか?」


「俺、忘れて帰ったことあるで」


 そんなアホなと笑いながら、僕と友人は公園を抜けてコンビニに向かいました。

 

 

 

 コンビニで食料を買った帰り、友人が「同じ道でええか?」と聞いてきました。

 今思えば、友人も何か嫌な感じがしていたのかもしれません。

 

「別にいいけど」


 もしかすると断ってほしかったのか、友人は少し暗い顔で公園に向かって歩き始めました。

 さっきとまったく変わらない公園の様子。

 違うのは、僕も友人もひと言も口を利かなかったことです。

 

 公園の中を歩いていると、何か違和感を感じました。

 おそらく友人も感じていたのでしょう。

 

 僕と友人が、同時に、声をあげました。

 

 

「靴がない……」



 さっきまで滑り台にあったはずの、あの小さな靴が無くなっていました。

 

「どこいったんや」


「誰かが取りにきたとか……」


「もう夜中の2時やぞ! 誰が来るねん!」


 まるで怒ったように叫ぶ友人の背後を見て、僕は全身が総毛立ちました。

 

 友人の背後にあった、あのジャングルジム。

 

 そのジャングルジムの中から

 

 子供の首が見えたのです。

 

 

 

 それも、たくさんの……

 

 


「う、うわあああああああああああああ!!!」


「な、なんやあああ!!」


「見るな! 見るなああああああ!!」


 走り出した僕のあとを友人も必死になって追いかけてきます。

 待て待てと必死に叫ぶ友人には申し訳なかったのですが、後ろを振り返る余裕はありませんでした。

 

 すると、今度は友人の絶叫が聞こえてきました。

 

 

「うわああ、うわああああ!!」


「どうしたああ!!」


「あれええ!! あれええ!!」



 半狂乱になった友人は震えた指で公園の入口を指差していました。

 

 いつのまにか、いつのまにか、公園の入口が閉鎖されていました。

 まるで門で閉められたように、公園の入口が閉鎖されていたのです。

 

 しかし、それは、門ではありませんでした。

 

 それはまるで、花いちもんめをしているように、

 

 子供たちが、

 

 両手をつないで、

 

 通せんぼをしていました。

 

 

 

 そのあとの記憶は一切ありません。

 気がついたら、友人の家で、僕も友人も朝を迎えていました。

 

 ようやく口をひらいて友人が言ったのは「あれは夢やったんや」のひと言でした。

 僕もあの出来事は夢だったと思い込もうとしていました。



 

 ピンポーン


 その時、玄関の呼び鈴が鳴りました。

 誰かが訪ねてきたようです。

 

「宅配便でーす」


 その声に僕と友人は安心しました。

 誰でもいい。誰かと話したい。僕と友人はそう思っていたのでしょう。

 僕も友人も争うように玄関に向かいました。

 

「お届けものです。こちらにハンコもらえますか?」


「あ、はいはい。ハンコですね」


 友人がハンコを用意している時、宅配便のお兄さんがこう言いました。

 

 

「玄関の前に子供の靴が置いてあるんですが、こちらのお子さんのですか」




 


最後まで お読みいただき ありがとうございました。


↓こんなものも書いてますのでお時間があれば。


山奥の廃村 https://ncode.syosetu.com/n0319gw/ #narou #narouN0319GW



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― 新着の感想 ―
[一言] 余談ですが、玄関開けたら手袋が片っぽだけ置いてあって凄いビビった事ある…… にしても、それって怨霊連れて帰って来てません? 大丈夫だったんですか? まあ、今元気に執筆してるみたいなので大丈…
[一言] 山奥の廃村書いてた人でしたか! 今回もなかなか楽しく読ませていただきました
[一言] 怖い!! いつもシンプルにめちゃくちゃ怖いです!
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