機械人形(オートマタ)・ユトリロ
「機械人形」
夜は痛みを詰め込んだ箱庭で
嗚咽の蛍火が煌めいて
麦藁を詰めたオートマタ
油が切れて倒れ込む
砕けた指輪の藍晶石の欠片や
朽ちた樹木の舎利の破片が
血色珊瑚の爪のように
ブリキの体に突き刺さる
けれどもこの身はオートマタ
やがて崩れる薄錆の躯
痛みが何かを知りはしない
苦痛が何かも知りはしない
ただこの瞳に焼き付くような
痛みの景色を知るだけで──
「ユトリロ」
咲き誇った桜にも気付かずに春は過ぎた。
うちひしがれたユトリロの側を通り過ぎた。
君はいない。