22 条件
◇ ◇ ◇
「…人類を滅ぼす…だって?」
「そうだ。そうしなければ、我々はこの感情をどう処理すればいいのかわからない!」
嘆き、悲しみ、怒り、憎しみ。そういった感情が次々とクロウを襲う。
それはすべて、感情を知った宇宙怪獣たちが人類に対して抱いたものであった。
「だが、そんなことをしても…お前達の仲間は帰ってこない」
安っぽい台詞だ。自分でもそう思う。
だが、クロウは必死だった。
彼は宇宙怪獣と認識を同期したことで、宇宙怪獣の規模や生態を理解していた。
宇宙怪獣の群れが、一斉に人類を襲ったら…
人類という種は大打撃を受ける。
それほどまでの戦力を宇宙怪獣が持っていることを、知ったのだ。
「そんなことはわかっているさ。だが無意味な復讐でもなんでもいい。僕らの腹の虫をおさめるために、人類は殺さなければならないんだ」
「やめてくれ…」
「我々の同胞はそんなことを言う機会すら与えられずに死んでいったんだ」
そう言われると、何も言い返せないクロウである。
だが、彼は諦めるわけにはいかなかった。
「なにか…条件はないのか? お前達だって、まだ人類の感情を完全に理解したわけじゃないだろう?」
「条件…?」
「人が死滅すれば、お前達の言う人に関する新たな情報は永遠に失われることになる。それは損じゃないか」
「別に…彼らから得られるものはもう全て手にしたと思うが…いや」
思考粒子が、小刻みに震えだす。
それは、なにかを思考しているようであった。
どれだけの時間が経っただろうか。
「わかった。君が役目を果たしてくれるのであれば、人を襲うのはやめてもいい」
宇宙怪獣側が、そう提案した。
「役目だと?」
「そうだ。僕たちは人類を恨んでいるが、その一方で1つの種を徹底的に潰すということにも違和感を覚えている。だから、チャンスをあげよう」
それは、宇宙怪獣側からの譲歩であった。
「人類が、これ以上新たな惑星の開拓をさせないようにしてほしい。それさえできるのならば僕たちはこれから人類と対立しない。だが、彼らが開拓を止めない限り、僕たちは人類と戦い続ける。憎しみの感情を持ってね」
どうだい?
そんな声が届いてくる。
それは、確認をするような聞き方であったが、これ以上の譲歩はしないという強い意志も感じられた。
「…………わかった」
クロウは、宇宙怪獣たちの提案を呑むことにした。
「よし、では僕たちのコントロール権を君に渡そう。人類と接している間、君が僕たちの王として活動してくれ」
「…なぜそんなことを?」
「君が一番人のことを知っているからね。君が決断して行動した方が万事うまくいくだろう。ただし、君の行動が僕たちの益にならないと判断した場合…例えば、人類が惑星開拓をしようと考えているのにそれを見逃す…なんてことをしようとするならば、コントロール権は返してもらうよ」
「わかったよ」
答えると同時に、さらなる情報がクロウに送られてくる。
現在の宇宙怪獣たちの居場所、彼らの生態、そして彼らの感情まで…
その感情に触れた瞬間、クロウは戸惑った。
人をベースにしていることが原因なのだろうが、彼らの感情は、クロウにとって共感できるものであったのだ。
俺に…宇宙怪獣と人類の衝突を防ぐなんてことが、できるのか?
わからないというのが素直な感想だった。
だが、やるしかないのだ。
クロウは気持ちを落ち着かせると、人類との対話に向けた準備を開始することになった。
こうして彼は、宇宙怪獣の王となった。
半年をかけて準備をすすめた彼は、今まさに行動を次の段階へと進めようとしている。
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