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必要な事

「ワンツースリーフォー」


無機質な声が正確なテンポを刻む。

それに合わせて私こと、北条 祈は動く。


「手拍子に合わせて、焦らない」


無機質に叱咤されて私はリズムを覚えようと頭を巡らせる。


「〜♪」

「へっ?」


急に鼻歌が流れ出して私はテンポを崩す。

そして、そのまま…


「いてて」


転んでしまう。


「もう一度やるかい?」

「…えーっと、その鼻歌は?」

「君の踊りとテンポに合う知っている曲だ」


知っている。

あくまでも彼、勇馬君は自分の中で聞いたことある曲を再現して歌っただけ。

しかし、違和感を覚えてしまう。


私は本来の曲を知っているし、更に言うなら私の知る限りでは彼の鼻歌で歌った曲は最も遠い曲と言える。


「速さなどはこちらで調整はしてるけどな」

「合ってる曲とは…」

「振り付け」

「なるほどわかりません!」


私の叫びは届いているのか届いていないのかは分からない。

けど、私の見る限り彼が感情を出すことはない。

あくまでもそれを客観視して答えてくる。


故にそこに感情や憶測はなく、私に対して的確な言葉が飛んでくる。


「練習はいいがユニットや初舞台は決まってないのだろう?」

「っう、痛いところを」


実際、私はアイドルとして事務所に入ることはできた。

しかし、そこから先が未定なのだ。


一先ず、やらせたい曲があるからその振り付けを覚えろ。


それだけ言われて私はここ数日家にいる。


ここ数日間で私の練度はだいぶ上がっている。


それと同時に勇馬について知ることができた。


平日の昼、彼は一応学校に行っているようだ。

制服を着て家を出る様子を何度も確認している。


更に言うなら彼は外に出ると人が変わったかのような振る舞いをする。

私から見たら嘘だと分かるがそれを普通の人たちは分からない。


それだけ彼の嘘は分厚い。


「さて私は今日、確認日だからもう出ますね。勇馬君は…」

「今日も学校」

「分かりました。戸締まりはしっかりしてください」

「…」


無言は了承。

しばらく一緒にいてそこは理解できていた。

勇馬君もまた私にどういう伝え方をすれば伝わるのか理解したようで最近はやり取りがスムーズになってきている。


この調子で彼の感情を芽生えさせられれば…って流石に都合良くはいかないよね。



**



曲を奏でる音が聞こえる。


俺こと、紀伊羅 恭平はその音で目を覚ます。


「何してんだお前?」

「何ってバンドだよ!」

「とりあえず、平八は俺の質問の意図を理解してないことがわかった」


教室でドラムを叩いているコイツは目立つ。

故に周りから冷めた目で見られており、本人は至って気にせずにテンポ良くドラムを叩く。


彼のスマホからは練習してる曲と思われる曲が流れており、そこからはドラムの音は聞こえてこない。


ただ、一つ言えることは彼一人なのでバンドではないことは確かだ。


「てか、よく持ち込めてたな、こんなデカイの」

「まぁ、軽音部だから多少許すとは言われたな…後、変な雑音でないだけマシとは…」


ホント、コイツは自由人だ。

反対に俺は…。


「…恭平」

 

声を掛けられる。

俺はその声を知っているし、話したくもないとさえ思う。


だが、


「なんだよ…幾人」

「はぁ、そうピリピリしないで欲しいのだが…」

「…そうだな。悪い」


少し冷静になることができるようになってきた。

別に未だに俺は幾人があまり好きではない。

それでも、割り切ることはできるようになってきていた。


「話せるだけいい。俺はお前達を見捨てたのは事実だからな」


本当に…コイツは


なんでそんな顔してんだよなんで、寂しそうにしてんだよ。

最初に俺たちを捨てたのはお前達だろうが…。


「それで何の用なんだ?」

「用…まぁ、二つあるのだが少しふざけてるのと相当ふざけているのどっちから聞きたい?」

「どっちもふざけてんのかよ…相当を先に聞かせろ」


彼はそうかと頷くと指差す。

その先にいるのは…


「誰かアイツを止めてくれと先生から言われてな」



「ん、どうした恭平、幾人と一緒に俺を見て」



「それでふざけた用事ってなんだ?」

「コイツ友人の奇行から目を逸らしたな」

「ゴホンッ幾人俺の気はあまり長くない」

「全く、お前を見てると本当に家族なのではと思えるよ。ふざけた用はただの保険で、また奴らがちょっかいをかけて来たのなら教えてくれ」



なんだ、そんなことか…本当にふざけている。


いや、何考えてんだかコイツはムカつくがあの時と同じだ。

俺たちを…いや、


「そうか、でもお前に頼るつもりはない」

「…」

「お前がそんな顔をするな」


そうだ、コイツは俺達を捨てた。

だから俺はコイツを許してはいけない。


また、俺たちを捨てるに決まって…


バシンっ!!


「恭平!見ろよ俺のドラムテク!」



嫌でも現実に引き戻される音。

それに対して俺は激しい感情が心の内から湧いてくる。


「…平八、周りの迷惑も学べやゴラァ!!」

「ちょっ!恭平!急にどうした!?」


不思議と平八は口では文句は言ってるが笑っていた。

多分見透かされているのだろう。


俺の本当の気持ちも…俺の弱さも。



**


『君の役目は吸血鬼を殺すことだ』

「…」

『この世界に吸血鬼は必要ない。だが、君が協力するなら一部の吸血鬼を生かすことを許そう』

「その言葉を本気で信じていいって言える?」

『いつもそれを聞くね。信じていいさ。我々は人間の味方だ。それと同時にこの世の自然物の味方だ。君達吸血鬼は少し外れてしまっただけで人間とさして変わりはない。そうだろう?』


そう言って切られる電話にウチこと月葉はため息を吐く。


「人と差して変わらない…か」


目の前に転がる死体の山を見てウチは呟く。

これだけの死体を積み上げた人間がふつうに生きることができないってのは承知してる。


それにだってウチは覚悟してるし、ウチの目的はただ一つだけってのは変わらない。


同族を一人でも多く救うこと。


ウチにとってはそれしかない。


「にしても、荒れてるなぁ」


思い詰めた気持ちを変えるために久々に帰った家を見ると片付いておらずにバラバラと物が散乱していた。


「寝るだけの為に週一で帰る部屋がどうして散らかるのか分かんないんだけど」


呟いて片付けを始める。

原因となっている雑誌を手に取る。


「音楽界隈が停滞しつつある…か」


自分の唯一の趣味である音楽、別にいい曲なんていくらでもある。

しかし、最近の音楽界隈は歌とパフォーマンスの両方を見ている節がある。


ギターを弾きながら動き続ける彼女に魅了させる円華。


円華とは違い、決まった振り付けを行うダンスだが、そのキレと真剣さ笑顔に誰もが囚われるブロー。


その二人が常に雑誌に載っている。

ウチとしては二人は好きだ。


でも、


「全てを押さえ付けるそれって恐ろしい…だよね」


別に今1番波に乗ってるだけだ。

でも、彼女達の流れは全てをねじ伏せている。


吸血鬼という存在を殺し回っているウチと同じだ。


「そんなこと考えてる場合じゃなかった」


ウチは片付けを切り上げて着替える。

今日は久々の学校への登校日、昼休みからにはなるが行けるなら学校に行く。


正直、クラスに仲良い人なんていないがせめて、自分は普通であると言えるようにしておきたい。


異物は壊されるか孤独になるだけだから。



**


とある番組の控え室で円華は非常に不機嫌な様子で企画書を読んでいた。


「…」

「なぁ、いい加減機嫌を直せ。今日の撮影どうする気だ?」


マネージャーがそれに対して苦言を呈すが、


「大丈夫、表に出るときには笑うから」

「そういう問題では…」

「そういう問題でしょ、だって私達やってることは希望を与えて落とす行為。それなら私だって考えがある」


そう言って立ち上がる円華の目は本気だった。

それを見たマネージャーは悟る。


彼女は本気であると。


「分かった、好きにしろ。お前を手放せばウチの事務所は消える。なら、お前の要望を答えよう。今回の件はお前の要望を切りたがった奴らのしたことだしな」

「マネさんは優しいね」


円華はそう言って控え室から出る。


今回、彼女がキレている理由は彼女の推薦した5人の新米達を見てユニット入りを許さなかったことにある。


その理由は…


特出して5人が素晴らしい存在だったのである。


パフォーマンス、歌、どれを取っても抜きん出た存在。

それゆえに、


「今売り出したいセンターを食い潰す奴は要らないか」


5人ともそれぞれ別々のユニットに入る予定だったのにも関わらず全員、ユニットには入れずにいた。


そして、今日の番組はその5人のうちの1人が入る予定だったユニットの売り出しをする番組だ。


故に


「円華にとっては非常に腹が立つ状況だよな」


故にマネージャーは笑う。


「馬鹿だなぁ、円華は全てを捻じ伏せて一人で立ってきたんだぞ。それを怒らせるとはな」


そして数時間後結末を見たマネージャーは


「まさか、好き勝手ってそう言うことかよ」


笑っていた。

その舞台には円華を合わせて四人の少年少女が並んでおり、後ろには演奏を担当する者たちがいる。


一つ前は同じ事務所の新規ユニットが盛り上げている。

その余韻は良い記憶となり、円華達の曲の盛り上がりに入ると誰もが思った。


しかし、


「これだからアイツを見るのは辞められねぇ!」


1人で今までやってきた彼女のはじめてのグループ曲。

それは前座の全てを忘れさせるほどの熱気に包まれることになるのだった。






**俊介



「お疲れ、急に呼び出してごめん」

「いいよ別に。謝るならこの二人にしておけ」

「私は急だったので心の準備が…」

「…」


円華は仕事を終え、今回一緒に舞台に上がった俺たちと話している。


「にしても、まさか俺達に頼るとはな」


こいつは円華は基本的に自分でできることは自分でやってしまおうとする。

故に彼女は基本的に幼馴染である俺達であっても頼ることを基本的にしない。


「まぁ、今回は頼ると言うより私のワガママだから」

「…なるほど、お前機会が有れば俺たちとバンドをしたかったのかよ」

「…うん、本来なら勇馬もいて欲しかったけどね」


そう言って笑う彼女を見て俺はため息を吐く。

一方、もう二人、西条 寧々と本条 天馬は何か落ち着いていない様子だった。


「いや、待って円華、こっちのバカとは違って私は未だ状況整理ができてない」

「おい、だれがバカだ?」

「あーまぁ、むしゃくしゃしてやった後悔も反省もしていないってことで」

「わかったわ」

「いや、それよりバカの件を」


俺にとって聞き捨てならない事態だ。勇馬がバカ呼ばわりされるのはいいが俺がバカ呼ばわりは納得がいかない。


そんな状態の中、ようやく天馬が口を開く。


「お前らおかしくないか?」

「だよな!俺がバカなんておかしいよな」

「そこはどうでもいい」

「…」


あーなるほど、誰も否定はしてくれないと…


歳の割には頭いい自信はあるんだがな…。


「俺のしたことをお前達は知っているんだろ!何で俺をここで…」


俺がのの字を書いてるとなんか、天馬が重苦しい陰鬱な雰囲気を出していた。

なんだ?喧嘩か?


「なんでまた俺をここで馴染ませようとするんだよ」


うわ、どうでもよ。

「うわ、どうでもよ」

「しゅ、俊介!?」

「このバカ!!」

「しまった口に出してた」


やっば、天馬が呆けた表情してる。

一応まぁ、1番早く生まれてるし敬った方が…いやぁ、まぁ勇馬兄と言っても義理だからなぁ歳は同じなんよなぁ。


「俊介、今どうでもいいこと考えてない?」

「そんなことはない。多分」


まぁ、俺の考えていることを天馬に伝える必要はあるか、多分これを考えているのは俺だけではないはずだし。


「天馬、昔の事、覚えているか?勇馬が本条家に引き取られてお前の義弟になる前の親戚幼馴染五人の関係を」

「…忘れるわけないだろ」

「お前は勇馬とコイツを妬んでたな。圧倒的なカリスマで常に中心にいる二人に対してさ」


妬むと言うほどではない。

ただ、コイツはいつだって中心にいる円華と勇馬に憧れていた。


「寧々なんて、なんでもこなしてるから周りに頼られていたっけ」

「むず痒い話やめてくれる?」

「お前に言ってるわけじゃねぇよ」


寧々が居心地悪そうにソワソワしている。


彼女もまたなんでもこなす為、天馬からしたらやり切れない思いがあったのかもしれない。


「それで俺とお前で後ろから着いて行ったよな。俺はそんな友を見捨てたくない。ただ、それだけだよ」


俺は手を伸ばす。

だが、予想外にも天馬は手を取ろうとはしない。


臆病で強がることしかできないコイツは弱さを肯定できない、いや、肯定するしかないの方が正しい。


故に


「それはお前に対しても同じだよ俊介」

「俺?」

「あぁ、お前はいつも迷わなかった。三人が悩んだ時いつも先を見据えて真っ直ぐ突き進んでいた」


その言葉、重く。

予想外のもの。

まさか、俺に対してもコイツが劣等感を抱いているとは思わなかった。


「俺はそんなお前が…お前達が眩し過ぎるんだよ!」


はぁ、全くまぁ、言い方が悪かったか…


「要するに俺たちは同じだったってことだ。全員な」

「へ?」

「俺はお前のその行動力が羨ましかった」


そう、コイツはカリスマとかそんなものはなかった。

でも、誰より早くそして誰よりも良く動いていた。

何をするにしても1番に。


俺はそんな天馬を羨んだ。


「知ってるか、勇馬は自分は頭悪りぃからって、利口な俺やお前が羨ましかったらしいぞ。円華に至っては」

「勝手に人のこと話すな。まぁ、私は…天馬、あんたの行動力を真似た結果が今と言うべきかな」

「私はいつも一貫してるバカ…俊介が羨ましかったですね。本人の前で話すことになるとは思ってませんでしたけど」


寧々はだから頑なに話そうとしなかったのかよ。


まぁ、いいけどよ。


「そういうことだ、羨望していたのはお前だけじゃないんだよ。だから、もう一度俺たちと遊ぼうぜ!」

「でも、俺はお前達を裏切って」

「俺もお前も中学生だ。中学生に自己責任能力はない。だから、気にすんな。誰も死んでない…だろ?」

「…なんで、」


天馬が驚いた表情をするがそのタイミングで…


「ごめん、どうやら、わたしたちにアンコールが入ったみたい」

「うっ、まだ舞台に慣れてないのだけど」

「寧々は肝が小さぇな」

「バカのくせにバカにして…」


俺たちは準備をする。


「さぁ、行こうぜ天馬」


そう言って俺たちは歩き出す。


「…あぁ」


それを着いてくる少年が一人。


俺たちの止まっていた…いや、天馬の止まっていたあの日の時間が再び動き出す。



**晴臣


今日も陰鬱なことは続くもので、放課後になるまでの間常に隣の席のやつに怯えて過ごしていた。


それだけなら日常だ。


そう、その僕の怯えている相手が僕の横を歩いていなければ。


「ユージスなんのつもりだ?」

「いやぁ、君と帰りたくてさ」

「それはどういう意味だ?」

「そんな警戒するなよ」


そう言って笑うユージス。

コイツの言葉に真実などない。


僕に対して向けてくる感情は一つのみ。


僕はそれを知ってるから…コイツが恐ろしい。


「俺はお前が心配だよ」

「嘘ばっかだな」

「真実だ。たしかに感情からではなく建前ではあるが、お前が心配だという結論は変わらない」


やはりこいつの言葉は気持ち悪い。

答えを言ってはいる。

しかし、どうしてもコイツの言葉はずれている。


そんな時、ふと、とあるものが目に入る。


「、なぁ、ユージス噂、覚えてるか?」

「噂?」


そう、それは


「黒い影だ」


それは気がつけば目の前で僕を見つめていた。

じっと、顔もわからない黒い人形をした何かが僕を向いてじっとしていた。


顔のパーツなど見えないのに何故か僕を見てるような気がした。


そんな様子に僕は冷や汗を掻く。


「黒い影…あれか、それがどうかしたのか?」

「…そうか、」


何も変わらない。

ユージスは目の前の影が僕の顔を覗き込んでいることに気付いていない。


まるで僕だけが見える幽霊のようだ。


「お前は見えないのか?僕の前にいる黒い影が」

「…いや」


間があった。

それは決して嘘の合図ではない。

彼自身確認をした上で分からないと首を振っている。


その黒い影はそうしているうちに僕に顔を近づけていき、そして口を開く。


『…ハ………ル……オ…………ミ?』


心臓が跳ねる。

声を聞いた瞬間、何か既視感を覚える。

しかし、その声がどんな声だったのかもう覚えていない。


それより…僕の名前。


『………ヨカッタ………ホン…ト…ノ……』


声が聞こえなくなる。

ずっと口が動き続け、そして途中で何かに気づいたかのように止まる。


そして、よくよく考えておかしく思う。


その顔に変化はなかったはずなのに何故僕は口が動いたと認識したのだろうか?


気がつけば黒い影は居なくなっており、僕は何か憑き物が取れたかのように頭がすっきりとしていた。


「起きろ」


ユージスの言葉に僕の意識は現実に戻る。


「ぼーっとしてどうしたんだ?急に黒い影の話を出して」

「いや、なんでも…」


そう、なんでもないはずだ。

何も無かった。


「黒い影が見えた気がしただけで気のせいだったみたいだ」

「そうか、話を変えるがそういえばこの辺りに一人知り合いがいたことを思い出してな。凛海 羽照って知ってるか?」

「…」


りんかい?

良く分からないな。

そんな男、いたか?


「そうか、同じクラスなのか?」

「いや、知らないな」

「ん?」


なんか、ユージスがバグったみたいな感じでフリーズしているがすぐに普段通りに戻り笑う。


「なるほど、そういうことか」

「何がだ?」


なんだろうか、違和感を感じる。

まるで何かが抜け落ちたような、そして不思議とユージスをさっきより信頼できる。

まだ、恐怖はある。


でも、自然と少し信じられる。


だからだろうか…



僕はもうしないと思ったことを、もう言わないと決めた言葉を



「もう分かれ道だ」

「本当だ。ありがとうな…晴臣」

「名前で呼ばないで、まぁ、…うん、…またな」


言ってしまった。


その言葉は僕にとって呪いの言葉。



死の前兆。


だが、何故か分からない。


コイツとなら…


「何考えてんだかな」


一人僕はそう呟いて家に大きく遠回りして帰るのだった。



**祈



夜21時


こんな時間まで外にいるとは思わなかったけど私にとっては家に帰ることすら億劫だった。

それでも帰らなければ勇馬は多分ずっと私を待ってると、そう思えたから私は家に帰れた。


「ただいま」


そう、挨拶する。


「おかえり」


最近では出迎えはないものの声は帰ってくる。


何故だかそれがどうしようもなく嬉しくて頬が緩む。


そうして私がリビングに上がればいつものように星を見ているユージスの姿があった。


「今日は何が見えるの?」

「…何も…いや、見えなくなったね」

「え?前言ってたエフェクトとかは」

「あれはあくまでも長期的なもので…わからないか」

「う、うん」


正直勇馬の説明は分からない。

でも、彼はそこを察してくれてすぐ黙る。



てことは今なら何しても…


「飯、食うか?」

「え、うん!食べる」


まぁ、一先ずは夕飯を食べてからにしよう。

そうして、私は夕飯を食べシャワーを浴びて寝る準備を整える。


「あれ?星は見ないの?」

「一度修正中だ」

「そっか」


私には良く分からないけど彼の目には何か映っているのだろう。


「一つ聞きたいことがあった」

「何?」

「未来を見ることはあるかい?」


勇馬の質問に私は首を傾げる。

未来を見ること…


「ないよ」

「そうか、それならいい」


相変わらず淡白なやりとりだ。

でも、彼の持つ決定権はおそらく元の人格に影響されてるように思う。


その根拠はない。


彼の元人格を私は知らない。


でも、彼の動きはどこか人間的な部分がある。


故に何かを心配してるようにも見える。


「今日はもう遅い休むといい、今日は大変だっただろう?」

「…う、うん」


彼は多分知らないふりをしてくれている。

今回、私はこの数日間の成果を見せたが、見事にユニット入りを認めて貰えずに落ち込んでいた。


そんな私に変わらない彼の言葉はすごく、癒されていた。


「ねぇ、できればさ…今日一緒にいてもらってもいい?」


だから、そんな言葉を口走ってしまう。

でも、


「大丈夫だ」


彼は彼は受け入れてくれる。

私はそれに甘える。


例え、それが間違っていることだったとしても…。

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