もう二つの開幕
私こと聖十院 雪菜は現在、困っていた。
動きやすい服で歩いてることはまずいい。
私の歩いてる場所は大きめの住宅街。
なんの変哲もなく。
目印と言えるものもない。
それが私の困ってる理由だ。
それは…
「ここはどこ?」
道に迷っていた。
私は昔から人と比べて方向感覚がないらしい。
普通の人なら1時間で着くような道のりも私にかかれば1日掛けて着く。
自慢にしては皮肉が効きすぎて泣けてくる。
まぁ、実際に涙を流すかといえば何も溢れてこないのが現状である。
「でも、これどこかで見たことある景色なんだよなぁ」
歩けば歩くほどわかる。
私はここを知っている。
そして、ここは隔離された場所だ。
「影を追っていたら気がつけばこんな場所に…」
ため息が出る。
色々と失敗した気がする。
勇馬を助ける為にも少しでも多くの情報が欲しいと言われて仕方なく影を追っていたはいいけど…
なんか、東条 俊介と会うし反撃してくるし、最後には見失うし。
「なんでこうも失敗ばかりするのかなぁ」
ポツリと呟いていた時、
ドォン
と衝突音が聞こえてくる。
音は思った以上に軽いものであり、何事なのか分からなかった。
聞こえてきた場所は結構近い。
そう思っていると赤いものが見えた。
「え、何?あれって血?」
今の自分と同い年くらいの女の子が真っ赤な液体の中で倒れていた。
目は血が被っていて見えてなさそう。
えーっと、兎に角助けないといけないよね。
目の前で死にかけている人を見て見逃すわけにはいかない。
そう思い動こうとした時、
彼女は地面を這いずる。
「なるんだ、私も…あんな風に輝きたい!!」
私の足は止まる。
彼女の望みが何か私には分からない。
でも言えるのは私のやろうとしてることはお節介じゃないのか?
彼女が欲しいのはその夢だ。
私が治せばたしかに後遺症は殆どない。
でも、彼女は誰かに守られるべき存在なのだろうか?
こんなにも、強い彼女を私が守ってやる?
ふざけている。
そんな時だった。
「その為なら君は悪魔にも魂を売るかい?」
悪魔の囁きとも言えることを行なっている女性がいた。
「…もち…ろん…わ、私は……わたしは…私は輝きたい!」
彼女は答える。
それに満足した女性は笑う。
すると、彼女の傷は癒えていき傷一つない体となっていた。
「お久しぶりです。院長。私を見て少し焦りましたね」
私は女性に話しかける。
その女性は私を認識すると嬉しそうな表情して女の子を抱えて私の方を見る。
「なんのことかな?わたしはただ哀れな少女に選択を与えただけだよ。プライドか夢かのね」
「相変わらず性格の悪い。数年経っても変わらないものみたいだね」
「そういう君は小学校の頃から姿形以外は変わらないね」
皮肉を込めて私にそう言う彼女は正直、わたしにもわからない。
知ってることといえば彼女がとある孤児院の院長であり塾の先生であるということくらい。
あと分かるのは彼女はとても強い。
くらいだろう。
「まあ、ちょうどいいさ。少しの間君には手伝ってもらうよ雪菜」
「はぁ、分かりましたよ。院長」
こうして私は再びこの孤児院にお世話になることになるのだった。
**
静かな部屋。
月明かりが部屋に差し込み、月明かりが反射して部屋が明るく染まる。
その部屋には月を眺める存在がいた。
いや、正確には空を観測していると言ったほうが正しいだろうか?
「エフェクト異常あり、並びからエフェクト効果により大きな異常発生。規定より外れた存在が五つ近いうちに覚醒する可能性あり。星間関係より…」
その存在は延々と空を見て言葉を放ち続ける。
それに意味はなく。
ただ、それが仕事というようにただただ観測し、その結果を完成させていく。
そんな無機質な空間の中、異常が発生する。
「…現状維持が適切な解答となる。エフェクト観測、一星の光を観測。それによ…」
止まる。
この部屋、いやこの一室に続く玄関の鍵が開く音がその存在の動きを止めた。
玄関が開き、廊下を歩いてくる。
そして、その扉が開かれる。
「す、すいません。インターホン鳴らしても反応が無かったので勝手に入らせてもらうのですが北条 勇馬さんで合ってますか?」
そこにいたのは銀髪…いや白髪の少女だった。
元の髪なのかほんの少しだけ青い髪の色素が存在している。
瞳は綺麗な翡翠であり、その瞳には明らかな怯えが見えた。
それに対して存在は
「是、此れは幾つも固有名を持ってるが其れも此れの名の一つ」
振り向かずに答える。存在。
その姿が少女から見ても鮮明となる。
それは、男とも女とも形容のつかない中性的な形を為していた。
服も簡素なものであり、誰から見てもお洒落と言えるものでは無かった。
そして、なによりもその虚な瞳からは感情というものが垣間見えることがない。
故に言葉は無機質なものであり、
「…?」
少女は意味がわからずにぼーっとしていた。
「えーっと、合ってるということですか?」
「己に理解の様子なし、言語形態の変更。北条 勇馬は自分である」
「え…えっ?」
「理解の様子はない。故に言語の変更を行おう……形成、残留した意識の流用」
存在は項垂れて黙り込む。
少女はそれを心配して近づくと存在は目を閉じて止まっていた。
「大丈夫?」
少女がそう言って触れようとした時だった。
存在が動く。
項垂れていた顔を上げて少女を見る。
そして、その目が開かれる。
「こんばんは、君の言うように俺は北条 勇馬で合っている」
「え?」
存在が勇馬と名乗る。
その瞳には光が宿っており少女を真っ直ぐ見ていた。
そこに間違いはなかった。
しかし、少女は何か違和感を感じる。
そして、彼女はその違和感を知っている。
それの正体は
「やめて!その顔、その声、無機質な嘘は見たくないの」
勇馬の嘘にあった。
感情のない、優しくもなんともない嘘だらけの言葉。
いや、正確には違う。
心を介さない、無機質な機械のような言葉を無理矢理に人間のように変化させていた。
それを察した、いや理解した勇馬は再び無機質な瞳に戻り口を開く。
「ならばこれでいいかい」
抑揚も何もない、機械のような声に…
不思議と彼女は安心した。
「ごめんなさい、取り乱しました」
「問題ない」
「それでは申し遅れました。私は北条 祈」
彼女、祈は笑う。
彼女は数々のことがフラッシュバックする。
(疑問だった。私がなぜここに行くように言われたか)
勇馬を見る。
その姿と自分が重なる。
だから
「貴方に感動を与える為に来ました」
笑う。
勇馬の反応はない。
しかし、間違いなくこれは新たな転機に始まりになるのだった。
今回はとても短いですが、第二部のプロローグこれにて終了となります。
ここから徐々に話が進んでいきますのでよかったら次回も読んでくださると嬉しいです。




