開幕それは五つの新たな物語
私はごくごく平凡な女の子だった。
苗字も名前もありふれたもので平凡で無いものは親がすぐに他界してしまったこと。
中学生とは言えでも名目上叔母が私を引き取って私は一人で生きていた。
お金に困ることはなく、一人で生きる。
親のいない子、遊びに誘っても家の事で来れないと言う子に印象で私の周りにはどんどんと人がいなくなっていった。
そんな中で私は日に日に精神がすり減っていた。
そんなある日だった。
私は普段は付けないテレビを付けてなんとなくテレビを見ていた。
ニュースが終わり、バラエティ番組が流れ始める。
最近では動画が流行っていて、テレビは下位互換と言うが私から見たら全部同じものだった。
けど…
『では最初の一曲を歌って頂けるのは円華さんです』
ギターを持った少女が歌い出す。
その瞬間、今までにない感覚が私に走った。
鳥肌が立ち、気がつけば私は食い入るように画面を見ていた。
そして、次の人に交代される。
『続きまして、歌って踊ってなんでもござれ、アイドルとは思えないソロ歌手…
『一応アイドルです』
申し訳ありません。ソロアイドル『ブロー』ちゃん』
終わってしまったと落ち込んだ私にさらに別の衝撃が走った。
彼女の歌と踊り、それに私は魅了される。
さっきの円華ちゃんとは違う。
別の魅力。
カッコいい?
可愛い?
クール?
面白い?
そんなものじゃない。
人の心を射抜くような完璧な嘘のような存在。
例えそれが嘘でもその嘘の虜になりたいと思えてしまうような魅力が二人にはあった。
「すごい、こんなに人って輝けるんだ」
私は手を伸ばしたかった。
この眩しいソレに私は魅了される。
歌い出したい飛び出したい気分に私はなる。
私は家を出て鼻歌を歌って走り出す。
どれだけ走ったのだか分からない。
疲れて歩いて、また走ってを繰り返し続けても私の興奮は終わらない。
夕方になり、周囲がよく見えなくなってきた。
そんな時
「おっと、」
人とぶつかってしまう。
「す、すいません!」
「あー、大丈夫だよ、私も前方不注意だったよ」
赤と黒色の混ざり合った髪をした女性が優しげな笑みを浮かべていた。
手には買い物袋を持っており、かなりの量がある。
その時、ふと私の目の端に映った。
「あ、落としてますよ」
お菓子の箱。
ソレを取ろうと私は道の中心へと歩み出す。
普段から車の通らないその道故に私は油断してた。
「危ない!」
先ほどの女性が焦ったように声を出す。
そして、私の手を掴もうと手を伸ばしている。
しかし、何も気がつかない私はその手をすり抜けてお菓子の箱に手を伸ばす。
そして、手を取る瞬間
衝撃が走った。
全てが暗転して、何が起きたかも分からない。
ただ、衝撃で頭がうまく働かない。
何が起きたんだろう。
そう思って私は何とか目を開くと赤かった。
目の前が真っ赤で何も見えない。
「…あ、…れ…声も……うまく…でないや」
体が動かない。
今の私がどんな状態なのかさえ分からない。
体が熱い。
汗が吹き出すような熱に浮かされて呼吸が荒くなる…しかし、その呼吸がし辛くて苦しい。
怖い。
寒い。
違う
熱い。
助けて…
嫌だ
何でこんなに辛いの…
やだ、
誰か助けて。
痛いよ…
痛い?
そうか、私は轢かれたんだ。
と言うことは
真っ赤なものは…
やっぱり、私の血だ。
あれ?色んなところから血が出てる。
ドクドクって生々しいな。
こんなところで私は死ぬの?
嫌だ。
「い…いや」
ようやく見つけたんだ。
私がなりたいもの。
あんな風に輝きたい。
私だってあそこに立ってみたい。
「嫌だ!」
声が出る。
その瞬間、身体中が冷たくなる。
私はそれに抗うように地を這う。
血が流れ過ぎて頭が朦朧としてくる。
それでも私は止まらない。
少しでも…生きる可能性を手に入れる為に。
身体中が軋みを上げていて立ちあがろうとしても力が入らない。
それでも少しでも藻掻くことはできる。
少しでも前に…
「なるんだ、私も…あんな風に輝きたい!」
私は手を伸ばす。
それと共に身体中の力が完全に抜けて動けなくなる。
意識は僅かに残っている。
そんな中で
「その為なら君は悪魔にも魂を売るのかい?」
そんなことを聞かれた。
聞いたことある声が気がする。
しかし、私はそんなことを気にする余裕はない。
もし、本当に輝けるのなら
「…もち…ろん…わ、私は……わたしは…私は輝きたい!」
私は答える。
「そうかなら、後悔しないようにね。祈」
それが私の聞いた最後の言葉だった。
**
何もかも特殊と言ってもいいのか分からない。
でも、間違いなくウチは普通の家の人間ではなかった。
「お前は姫に負けないように強くあれ」
とか、父親が言って私を育てていた。
「我々は吸血鬼ではあるが気品は無くしてはなりません」
母親がウチに口酸っぱく言っていた言葉。
これらの言葉記憶に新しい。
というか、新しかった。
そう言った方が正しい。
今、ウチの両親は死んだのだから。
何故、と聞かれればウチが知るような事情じゃないとしか。
高校一年生には刺激の強いというか、子供にはカンケーないとかって話みたいで両親もなんか、ウチに一言謝罪して潔く死んでった。
笑えない。
ホント、何でこんなことなってるかって問いただしたい。
けど、ソレを問うて答えてくれる人間はいない。
両親を殺した相手も子供にはカンケーなしとか言ってウチを残して行ってしまったわけだし。
多分、それは殺した相手の慈悲というより、親心の願いを取ったようにも見える。
思うことがないわけではない。
でも、両親がそう決めてその上でウチが生きてるということはウチに関わってほしくはないんだと思う。
「ま、でもそれも数週間前の話…つってね」
今のウチの目には無機質な瞳が映っていた。
その瞳にはウチは映っていない。
でも、真っ直ぐウチを見てることは確かだ。
「なぜ、それだけ苦しんで死を選ばない?」
聞いてくる。
苦しい?
さぁ、さっぱり分からないね。
ウチが苦しいって思ってるのは…何だかもよく分かんなくなってきてるし。
ただ一つ言えることは
「親の願いだから…かな?」
「そう、ならコレもその親の願い?」
無機質な瞳、虚な瞳を持つ少女は私の周りにある血を指差す。
その先には幾つもの死体が積まれており、その全てをウチが殺した。
「いや、全然、これはウチの憂さ晴らし。外道って殺しても利益しかないから趣味と実用を兼ねて」
「へー、そ」
「興味なさそうだけどお宅だって、最近世間を騒がせている辻斬りでしょ?」
ウチの質問に少女が頷く。
さっきからこの少女の相手は本当に大変なんよね。
無機質な瞳に、どこか神聖みを帯びさてしまうような静寂と言ってもいいほどに静かで目を引いてしまう立ち振る舞い。
「ただ、殺して欲しいと懇願するもの、苦しんでいるものを解放してるだけ」
「ウチとは違うと?」
「変わらない。結局殺してる」
ホント、掴みどころがないな。
「ま、死にたくないならそれでいい。これでさよなら」
「待って」
ウチの呼び止める声に彼女は止まる。
てか、何で呼び止めてんだろ。
でも、まぁ聞きたいことは確かにある。
「名前…何?」
あ、やっば。
凄い見てくる。
「なら、君から名乗れば」
「あ、ごめん…えっと月葉」
ウチが名乗ると彼女は目を閉じる。
あ、これ答えてくれないやつかな。
「千那…これでいい?」
「え、あ、うん。ありがと」
彼女はそうしてウチの前から消える。
てか、意外と話がわかるやつじゃん。
最後の顔、自分の名前言う時に反応が違った気がする。
意外と可愛いじゃん。
まぁ、でもなんだかまた会える気がすんだよねー。
「ま、それはウチがこうして逸れ吸血鬼を狩ってたらって話だけど」
その瞬間、死体の山から唸り声が聞こえる。
「やめてよ、ホントマジでそのせいでウチら吸血鬼の評判落ちてるの分かる?血が欲しいなら献血してる人から貰いな」
死体の山を崩して現れる真っ赤な姿をした怪物。
それを見て私は更にため息を吐く。
「血生化、己の血を糧にして吸血鬼のポテンシャルを上げるとか言われてるけどただの自爆技じゃん」
「お前から血を奪う」
「へーやってみろし。まぁ、でも」
ウチは短剣を放り投げ、ヘッドホンを取り出す。
ヘッドホンを付けて、短剣を手に取る。
「ふー、あんたの実力じゃ無理だろうけど」
次の瞬間にはってから相手から見たら気がつけばウチが後ろにいたように映っただろう。
ま、切り刻まれても反応がない時点でご愁傷様ってやつだけど。
「な…ぜ、勝てぬ」
それが化け物となった元同胞の最後の言葉だった。
「それが分かんないから無理なんだよ」
…
恥っず。
いや、いいんだけど。
でも、これは普通に恥ずい。
「あー、もう!帰るかな。てか、最近はブローと円華くらいしか出張ってないから飽きてきたなぁ」
ヘッドホンを首にかけてウチはその場から去るのだった。
この邂逅がウチにとって一つの転機になるとは今のウチは思いもしてなかった。
いやホントそれ
**
世の中がつまらない。
いや、違うな。
つまらないには語弊がある。
何をすればいいのか分からないでいた。
「おい、恭平」
呼ばれる、恭平というのは俺の名前であり、フルネームでは紀伊羅 恭平。
苗字では少し呼びづらいと言って全員俺を恭平と呼ぶ。
そして、今、俺を呼んだ男は平八 仕種。
「どうした平八」
「今日、転校生が来るらしいぜ!」
「どこからそんな情報を仕入れてくるんだか」
「それはもう、ありとあらゆる手段でもって。でも、男子か女子かわからないかった。女子だったらいいよな!」
「あーもううざったい、どちらでもいいだろ」
「よくねぇだろ!テメェはそれでも健全な男子高校生か!?」
「お前の偏見で男子高校生を語るな」
あーだこーだ言い合う。
つまらない、いや違う。
こんな会話がつまらないと思うわけではない。
ただ、どこか満たされない感覚に俺の心は晴れないでいた。
別に何が悪いと言うわけでもない。
悪いのは言ってしまえばそう思ってしまう俺だ。
「はぁ、全く恭介は相変わらず男子高校生のハウツーを知らない!」
「うっせぇ」
「出た、不良口調。お前見た目が金髪で目つき悪くてちょっと怖いんだから言葉くらいは優しくしろよ」
「また、説教かよ」
平八はいつもうるさい。
いや、賑やかなやつだ。
こんな俺を心配してわざわざ話題を持ってきてくれている。
俺が少しよく分からない感慨に耽っていると後ろから声が飛んでくる。
「ほんと、もう少し雰囲気柔らかくできないの?」
「瑠衣か…お前、文句言いに来たのか」
「別に、あんたを見てるとイラっとするだけだし」
俺に文句を言ってくる黒髪の少女は幼馴染の東雲 瑠衣。
彼女とは中学に入ったくらいから仲があまりよくなく気がつけば口をひらけば俺の悪態を吐くようになっていた。
そうして、時間が過ぎていき、朝のホームルームとなる。
そして、そこで俺は目を見開いた。
「えーっと、こんな時期に転校してきました。信条 せいいく…じゃなくて…えーっと」
「…幾人」
「おーっ!そうそう…幾人。って、なんで俺の名前を?」
転校してきた男は数年前に行方不明になっていた従兄弟、紀伊羅 幾人だった。
**
俺こと、東条 俊介はビルの間、薄暗い路地裏で空を仰ぐ。
「あーっ、いってぇ!」
腕から下が抉られたような傷で痛々しいものとなっている。
痛みを耐えるために歯を食いしばり空を見るが痛みは変わりそうにない。
別にすぐに傷は治るのでそれ自体してる意味はない。
しかし、問題はそこではない。
「…見つけた」
声が聞こえる。
その声だけで俺に鳥肌が立つ。
咄嗟に地面を転がる。
そして、自分がいた場所を見れば壁と地面が大きく抉れていた。
なんだったら水道管が壊れてるくらいには。
だが、もう一つ気になることがある。
焦げた地面。
そこに立つのは一人の少女だった。
いや、中学生の俺が幼女と言ってもいいくらいには幼い。
その髪は紅蓮に燃え、その瞳は射抜くような金色。
彼女の立つ場所は焦げ、彼女の歩いた場所は砕けていく。
「あんたは何で俺を殺そうとするわけ?」
「これ以上悲劇を生まないため、そしてこれは私の復讐」
「あぁ!話が通じねぇ奴!」
何でまた、こんな意味のわからない存在に襲われてるのかと運命か何かに問いただしたいところだが、
「今は生き残ることが先決だな」
目の前の存在は正直に言えば本気でやっても勝てる未来が見えない。
破壊の権化とも形容できそうな存在相手に俺はどうすることもできない。
「泣いて命乞いしても逃げられそうにないからなぁ」
遠い目で俺は呟く。
「さ、死んで」
そうしてるうちに動かれる。
俺は抉られた左手を盾にして吹っ飛ばされる。
「っっ!」
腕が痺れる。
いや、正確には切り落とされる。
痛みで俺は何もできないかと思ったが意外と何とかなるものですぐに逃走する。
流石にあの破壊力は普通に死ぬ。
とは言え、
「中々に面白え事態になってるな」
勇馬の前世だか何だかの関係者が隠している情報を調べているとそう思える。
まず一つ、
勇馬は死んでいない。
これは確定事項。
しかし、死んだに近い状態であることは確かだ。
だが、何処にいるかは不明だし、どう言う状況なのか詳しくは知らない。
二つ目
四つの災害について。
狂い咲き桜
突如現れた巨大樹
辻斬り
そして、
ドォン!
「くそっ、大通りでもお構いなしかよ!」
爆破テロ事件
これは勇馬関係する四人の暴走で間違いがない。
てか、たしかにこれは通り魔とかではなくて爆破テロだわ。
大地を焦がす彼女の一撃に俺は息を呑む。
今ので右腕が持ってかれたが直ぐに治る。
そうすれば、体がより良く動く。
「七転八倒が勝ちではなく、逃げのために使うとはな…」
この力が有れば無敵だと思っていた時期が懐かしくなるほどにまで圧倒的な実力差があった。
俺は逃げるために必至に足を動かして、なんとか撒く。
「はぁはぁ、後、確かめたいことは三つ目の隠しているもの」
最後に隠しているものが何か俺は分かっていない。
ただ、ソレを確かめることができれば大きな進展となる。
あの組織を信用することができる。
ふと、俺は自分の居場所が気になり周囲を見渡す。
「山の中…か。ここは確か勇馬が…」
彼が小学生の頃に落ちた崖。
そこに俺はいた。
住宅街の近くにあり、整備されてないのか歩きづらい。
「この上に…巨大樹があるのか…」
おそらく勇馬は何かを求めてここに向かっていた。
しかし、ソレは理性的なのか本能的かは分からない。
息がと整い、巨大樹に向かおうとした時、全てが止まった。
いや、正確には止まったように感じた。
息が詰まる。
目が離せない。
そして、酷く怖い。
「…ごくり」
飲んだ息が気持ち悪い。
呼吸が荒く、不意に体が痙攣するように震える。
俺の視線の先のナニかから目を離すことができない。
三つ目の隠し事。
ソレは本当に一部いや、一人の人間しか知らないそれ。
「黒い影」
読んで字の如く、黒い何か影のようなものが俺の前に立っていた。
それは俺に手を伸ばしてくる。
俺はそれから逃げることはない。
そして、その手が俺に触れる。
「…あれ?」
自然と涙が流れてくる。
何故かは分からない。
言いようのない不安が押し寄せてきて、
俺は…
「てやぁ!」
その瞬間、影の腕に向かって一閃、剣が振るわれる。
それと共に影は消えて俺の目の前には剣を振るった少女だけが目に映る。
「聖十院 雪菜」
「ん?何で私のって、東条さんでしたか」
彼女ははそう言って剣を軽く振っている。
剣の感触を確かめているようで…
「逃しましたので私は追いかけます」
「お、おう」
そう言ってすぐに去っていく彼女を見送った俺は…呟く。
「あれは…俺を呼んだのか?」
**
僕こと嗣井 晴臣は世界が嫌いだ。
というか人が嫌いだ。
親が嫌いだ。
兄が嫌いだ。
姉が嫌いだ。
弟が嫌いだ。
妹が嫌いだ。
幼馴染が嫌いだ。
親友が嫌いだ。
友達が嫌いだ。
クラスメイトが嫌いだ。
道行く人々全てが嫌いだ。
あれを見てもただ反吐が出るような悪寒に襲われる。
誰も知らないと思っている。
けど、僕は知っている。
全て知っている。
君たちが僕に抱いている感情をその動きを、その波を。
好きも
嫌いも
無関心も
不愉快も
楽しいも
面白いも
全部全部知っている。
けれど僕はお前達が嫌いだ。
そんな僕は今、
「ユージス リレグレスですよろしくお願いします」
想定外の事態に頭がパンクしていた。
てか、誰だあれ?
いや、今ユージスと名乗っていたけど…?
は?何あれ?
いやいやいや
落ち着け、落ち着くんだ僕。
やることは変わらない。
「隣、よろしくな」
そう言って隣を座ってくるユージスという男子。
黒髪で地味ながらもなんか眩しいくらいのカッコいい見た目。
いや、何これ漫画から出てきましたか?二次元キャラくらいしか背景に花やらキラキラは出んのよ。
いや、実際出てないけども明らかに僕は幻視してるよ。
「…」
まぁ、関わらない。
それが1番いい選択だと僕は知っている。
だが、この時の僕は知らなかった。
これが僕の今までを解き明かす始まりだということを…




