闇のリーダー
「響鬼のババァこの結果を知っていたんだろ?こいつの思いを知っていたんだろ?」
俺は当代当主、本条響鬼に問いかける。
「あぁ、わかっていたとも」
顔を歪める響鬼。
俺はそれを知って拳を握りしめる。
「しかし酷いなぁ、お主はこやつの願いをぶち壊して今ここにいる。手段を選ばないクズかの」
「お前が言うな。人の願いを利用して誘導して結局その願いを…人の思いを利用するクソ野郎が」
「フォッフォッフォ、互いにクズ同士と言ったところかの」
あぁ、俺もこいつも変わらない他者の願いを踏み躙る。
だが、だからと言って今ここですべきことはひとつだけ。
「確か本条家の当主は最終的に互いの総合力同士のぶつかり合いだったよな」
「そうじゃ、要するに…」
先程まで就任式が行われていた部屋の襖が突き破られる。
そして、そこにいたのは
「俊介…やっぱりお前が」
「悪いなできればお前とはやりたくなかったんだけどな」
東条 俊介、東条家の現当主にして本条 天馬支持派。
要するに俺の敵だ。
「何故って聞くまでもないよな。組織絡みって奴は」
「あれ、なんでバレた?いやぁ、俺の情報は本条家の一部しか知らないトップシークレットなのに」
嘘つけ。
確かにこいつの情報はどこにも転がっていなかった。
でも、こと俺の件に関しては分かりやすかった。
態々監視をしてくれていたからな。
そう、彼だけが監視してくれていたのだ。
故に彼しか俺の情報を知らない。
「俺を監視してたのはお前しか俺は知らないものでね」
「成程。なら、改めて挨拶しようか」
笑う。
その瞬間、ゾッとするような濃密な殺気が辺りを支配した。
俊介の目は笑っている。
しかし、その目の中は光が灯っておらず何を見ているのかさえわからない。
「闇のリーダー十条 俊介、まぁこの名を語った以上親友であろうが恋人であろうが子供であろうが命はないがな」
抑揚の無い声と共に俊介は動き出す。
聞き慣れぬ苗字も気になるが違和感を感じる。
覇気と動きが釣り合っていない。
俺は俊王を顕現して振るうが簡単に俊介の動きを弾き飛ばせてしまった。
弱すぎる?
どういうことだ?
覇気は確かに圧倒的な強者の者。
間違いなく闇のリーダーと言われても納得がいくレベルのものだ。
しかし、今動いている彼の動きは明らかに…
一般人だ。
「っってぇ。中々に効くな」
俊介は悪態吐きながら立ち上がる。
剣を振るう際の風圧で吹き飛ばされたから目立った怪我はないが既にボロボロ様子でこっちに歩いてくる。
またも、違和感が襲う。
立ち振る舞いそのものが明らかに同格いや、それ以上のような気がするのに何故だか脅威がない。
「おいおい、ボーッとしてていいのか?」
「っっ!」
唐突に攻撃が飛んでくる。
それが何か理解する前に俺は防御するがそこで気がつく。
囲まれてる。
「俺が闇のリーダーってことはいるに決まってるよな俺の部下が」
「確かにそこを失念してたよ俊介。なら、お前もわかるんじゃないか?俺も一人じゃねぇんだよ!」
天井が崩れる。
それと共に現れる四人の少女。
千那
椿
那奈
華
の四人は俺の四周に立ち剣を武器を構えていた。
「ヤベェ奴を取り揃えやがったな」
「そう言う君も中々に危険な人達を従えてるよね」
千那は俊介の言葉に返しながら俺の方をチラチラと見てくる。
俺は少し悩む。
正直、今の状況最悪だ。大将を取らなきゃいけねぇのに目の前にいるのは俊介達。
天馬を倒すことが勝ち筋。
そして、相手の勝ち筋は俺を倒すこと。
「時間の勝負だお前たちは天馬を下せ。俺はこいつをやる」
「…確実を期すならこれしかないね。那奈ちゃん華ちゃん。二人は残って…どうせ仕返ししたいんでしょ?」
二人はこくりと頷いて俺の側に侍る。
なぜか、椿は呆れた様子である。
「椿、どうした?」
「いや、もう少し建前を…なんでもない」
どうやら椿は何かを気にしてるみたいだが…なんだろう?
「とりあえず、リーダーは俺がやる。あとは頼んだぞ」
静かに全員は頷き椿と千那はこの場から去るのだった。
**
勇馬、那奈、華はたった三人で総員200人は越える闇の部隊と対峙していた。
そんな中で勇馬は一筋汗を流す。
(えぇっと、勝つ自信はある…でもなぁ)
勇馬は闇と対峙した時から一つの不安があった。
組織的にはとても強い。
しかし、何か違和感がある。
情報を集め確実に目標を倒す。
それが闇という組織。
だからこそ勇馬は不安になったのだ。
(なんだろうこの戦い…なんで闇が動いているんだ?)
これが違和感の正体だと勇馬は確信している。
理由なんて彼の中には存在しておらず、彼の中で確かにある疑問になっている。
「んじゃ、行くよ」
「そうですね。私も行きます!」
華と那奈がそう言って剣を構える。
華の右手には自分の背の丈以上にある大剣。左手には短く使いやすい小太刀。
那奈の右手には木刀、左手には弓が握られている。
二人の武器は魂に刻まれたもの技法武装であり、彼女達の意思によってその力は自在に変化する。
華は万物を破壊する化身として、那奈は魂と肉体を砕く者として。
二人が動き出す。
狙いは闇の部下たち。
俊介と勇馬はこの瞬間、一対一となる。
「なるほどな…でも、いいのか?天馬は不死だあんたが行かなくて」
「相手が不死だからだよ。不死を殺す術は今の俺には厳しいからな」
勇馬の能力であれば確かに不死である天馬を倒すことはできる。
しかし、条件や必要なエネルギー量、練度を考えると現実的な話ではない。
「それなら不死に対抗する為に生まれたあいつらに頼るしかないよな」
「ふっ、ふははは!本当にお前は…変わったな何もかも…いや、戻ったと違うな…芽生えたと言った方が正しいか」
「は?」
俊介の言葉に勇馬は首を傾げる。
彼の言ってることは勇馬ことだ。
彼の感情は基本的に受動的で言ってしまえば人間的でありながらもどこか作り物めいて彼からしたら見えた。
だが、今の勇馬は違う。
己のままにして己の成すことを見据えている。
「まぁ、これ以上の話は無駄だな。そう言うことなら早めに決着着けなきゃ後悔するぜ」
「言われなくても、そのつもりだ!」
勇馬と俊介がぶつかり合う。
一撃で吹き飛ぶ俊介に勇馬は勢い余ってバランスを崩す。
だが、そこを狙って攻撃が来ることはない。
「いてて、手加減はなしかよ」
「そりゃ、気を使う気はないからな」
「知ってる。あんたは敵と見ればとことんやる。それは一体なんの経験からだろうな?」
「おしゃべりは終わりだろ?」
次の攻撃も俊介は受けきれなくて吹き飛ぶ。
しかし、それと同時に勇馬は違和感を感じる。
(手応えが重く?)
「それは…お前達の言う前世っていうものの経験からか?」
勇馬は考えるのを辞めにして攻撃を続ける。
俊介は先程と比べて傷は少なく勇馬の攻撃にも僅かに耐える。
「がぁっいってぇ。でも、キタキタ」
そして、何度目かの時だった。
俊介はただ吹き飛ぶずっと同じようにこれまでも吹き飛んできたように。
だが、その距離は僅か数十センチ。
そして、その纏う覇気は明らかに異質なものへと変化していた。
「さてと、勇馬お前は2回失敗した」
勇馬は聞く耳を持たない。
俊介は自分から話を終わりにしておきながらもずっと言葉を発し続けた。
勇馬にとって完全に雑音となっていた。
故に、
「一つは俺を一撃で殺さなかったこと」
スドンッ
今までとは違った衝撃が辺りを砕く。
そして、その中心に立つのは俊介だった。
勇馬は少し離れたところで倒れていた。
「そしてもう一つは俺を倒せるうちに殺さなかったことだ」
そこにいたのは先程まで弱い彼ではなかった。
覇気も
エネルギーも
身のこなしも
眼光も
全てが完全な強者であるものとなっていた。
まるで少し前とは別人のように
「何が起きたか分からないだろ?そりゃあそうだ。俺だってさっきまでボコボコにされてたやつが急に自分を上回る力を出してきたら呆然とするさ」
先程までと同じように話す俊介。
それが返って不気味に見えるほど今の彼は異質な存在へと変わっていた。
「さぁ、あんたの敗北だ」
**
那奈と華は闇の幹部である女性と対峙していた。
「前回ので懲りたと思っていたのですけどね」
「懲りる?」
「そんなもの私達の辞書にはないですね」
二人はクスリと笑う。
だが、今もこうして囲まれている。
彼女からしたら二人は強がりを言ってるようにしか聞こえなかった。
故に見誤った。
日頃から俊介に言われている、情報だけの鵜呑みによる危険性を彼女は失念していた。
その瞬間、周囲が真っさらになる。
そこら中にいた闇の構成員も二十人ほどまでに減っていた。
それを引き起こしたのは華であり、彼女はただ剣を振るっただけ、それだけで十分の一にまで闇の構成員は消えていた。
いや、正確には本来の戦力に戻してしまった。
(ば、バカな…私達の写し身を全て消した?ありえない)
闇の構成員が持つ力それは自身の分身を作り出す技術。
その分身は本体である能力者のエネルギーが尽きない限り無限に再生し続ける。
要するに不死の軍勢を作り出すことができるのである。
しかし、それが華の手によって消し去った。
あり得ない事象が起きているのである。
だが、それでも闇の人間は動き出した。
決して焦りとかはなく、彼女らには自信があった。
情報も基礎能力も技術も水準以上にある自分達が分身が無くても負けるはずがない。
分身など保険にしかすぎないと。
普段ならそれでよかったはずだった。
しかし、今は違ってしまった。
華と那奈が相手となれば変わってしまう。
その瞬間、全員が萎縮して動けなくなる。
彼女らの戦闘の本質は前とは変わっていない。
だが、そこに存在しているだけ起こす存在そのものの格が変わっていた。
「まぁ、説明を軽くしてあげましょうか。どうやら、あなた方は情報を持って戦えば勝てるそうですから」
「真正面からねじ伏せる」
「華、それは私のセリフです。まぁ、簡単に説明してあげましょう。彼女は圧倒的な破壊力で持って魂とか精神とか要するに実体の持たないものですら干渉することができる」
那奈は自慢気に説明してる中で闇の幹部である女は焦っていた。
舐められていると憤慨する気持ちはあるがそれ以上に勝てるイメージというのが湧いてこなかった。
純粋な力勝負。
華はそれを行なってきている。
「しかし、それならあなたを狙うまでです」
故に悪手を踏む。
彼女の号令と共に五人の闇が那奈に飛びかかる。
「まだ説明の途中なのだけど『霊切』」
那奈そう言いながらは何もしない。
いや、正確には木刀を軽く凪いだだけだった。
なんの抵抗も無く動くそれはただ舞を踊るようだった。
そして、
あり得ない光景が映る。
五人中三人の闇が倒れる。
残った二人は確かに捉えたはずの剣はすり抜けて空振る。
那奈は無防備となった二人にただ木刀を振るう。
それは先程と同じでなんの抵抗も無く空を切っていた。
しかし、女はそこで気づいた。
(さっきから木刀は当たってるのに何故だ?何故何もないところを通り抜けるように振るわれる?)
そう那奈の攻撃は一切傷なんて作っていない。
誰一人として傷がついてないのにも関わらず全員倒れている。
そして、その木刀は実体のないかのように人体をすり抜けている。
(まさか実体のない…)
行き着いた其の瞬間
華が動く。
身の丈以上の大剣を器用に振るい迫る。
「流星獄炎刃」
荒ぶる炎が辺りを支配する。
そして、あまりの熱量に雷撃が発生する。
その炎は女へとまっすぐ華の剣の切っ先と共に迫っていた。
女は辛うじてその一撃を避ける。
だが、余波だけでもとてつもない力を誇り女の半身は溶け落ちる。
「まだ…虐滅地獄斬」
華はポツリとそう呟く。
まだ倒しきれてないと見てからの判断。
炎が荒れ狂う。
そして、天地を焦がし一閃に薙ぎ払われる。
瞬間、音が消える。
光が消える。
匂いが消える。
全てのものがほんの僅かコンマ1にも満たない時間の何もかもが消える空白が生み出される。
その範囲は一閃の振るわれた範囲から半径30センチの場所。
「これで頭は潰した」
「お疲れ様です。…何かその技違いあるんですか?両方ともただ思いっきり振ってたようにしか見えないのですが」
「気合」
「そうですか」
言ってしまえば華の技の全ては違いなんてない。
彼女の意思によって変わる。
故にこの技は結局一つの技に集約する。
「流星炎刃」
突如として後ろから現れる女に華は剣を振るう。
それは先程殺したはずの女。
闇の幹部の女だった。
「なるほどなるほど、そう言うことですか」
女は笑う。
三日月に開かられる口は不気味にもはっきりと二人の目に映る。
彼女が気がついたこといや、至ったものに那奈は予測が建てられていく。
しかし、それを遮るように女がいや、闇達が向かってくる。
「霊鏡」
那奈は華の前に立ち構える。
そして、向かってくる攻撃を全て…すり抜ける。
「返斬り」
那奈の一撃は闇の構成員を全員吹き飛ばす。
反撃を行った那奈の表情は決して明るいものではなかった。
「驚きましたか?私達は擬似的に不死を再現しているのですよ。そして、あなた達のお陰で今、その弱点も明確になり同時に消えました」
闇の幹部の女はそう言って立ち上がる。
那奈はそれを見て唇を噛む。
那奈の攻撃は精神を斬る手段であり、物理的な力はない。
故に相手を吹き飛ばすなんてことはあり得なかった。
しかし、彼女らが抵抗する術を手に入れたことにより物理的な硬さとしてその抵抗が行われて斬るのではなく物理的に殴るのと同じ結果になった。
「答え合わせはもう入りませんよ。那奈さんあなたは相手から攻撃を待つカウンター型。おまけに物理的な攻撃を無効化して非物体である精神を攻撃するタイプ」
女から飛んでくる攻撃を那奈は無効化することは出来なかった。
精神を直接する攻撃に那奈は弱い。
いや、正確にはそれでしか決定打を当てることができない。
故に闇の構成員は見て真似て身につけた。
二人を殺す術を
「流星…めんどくさ」
だが、それを崩す存在がここにはいた。
一閃煌めく。
星の瞬きのような光が大地を砕く。
華は大剣を地面に突き刺してエネルギーを放出し続ける。
大地が揺れ、砕かれ大地が切り離されていく。
屋敷の天井は破壊され地形が捻じ曲げられていく。
そして、それは行われる。
切り離された大地が破壊される。
その瞬間、熱と共に放たれる斬撃は空気を裂き、激震させる。
純粋な物理的な一撃しか持たない華には彼女らの出した答えは通じない。
精神をも破壊する純粋な物理的な力はその衝撃だけで辺りを塵へと変える。
「言ったはずですよ。擬似的に不死を再現してると」
塵へと変わった女の…いや、闇の構成員達は再構成されて再び無傷の肉体で二人の前に佇んでいた。
「…うそ」
「これは中々に厄介ですね」
**勇馬side
「おせぇよ」
迫ってくる拳。
認識できる。
それに避けるための能力だってある。
なのに…
無防備に腹に一撃入る。
速すぎる。
見える…いや、違う見せられている。
俊介の拳はさっきからわざと緩く降っている。
その過程の中で速くなる拳に対応できないように。
故に頭が狂って、距離感覚が無くってくる。
今、見えた拳は3メートル先のものだった。
普通にならどんなに踏み込んでも空振りだ。
それに届いたとしても間違いなく時間がまだある。
にも関わらず、認識した瞬間には当たっていた。
その瞬間、間近で振るわれた拳は殴られる前に脳が殴られたと判断して萎縮する。
衝撃が無いと言う感覚が緩みを与えて、その瞬間に俊介は最高速で拳を振るう。
それによって更に感覚が狂う。
次の大振りの一撃は溜めの時間を勘違いする。
まだ余裕があると脳が判断する。
そして、次の瞬間には殴られている。
その感覚は痛みが発生した瞬間に認識する。
おまけに攻撃の一つ一つがかなり痛い。
何とかなってるが意識は何度か飛んでる。
「おいどうしたよ?さっきまでは威勢は…なぁ親友」
「…ペッ…血が口の中で出て気持ち悪いだけだ」
虚勢を張る。
そうしないと意識が持ってかれる。
考えろ。
考えるんだ。
ここで勝つには何が必要だ?
答えは出ている。
でも…
(限界突破)
小さく呟く。
今までのような感覚は無い。
ただ、エネルギーを纏っただけで飛び抜けたような感覚は無い。
「その程度の強化しかできねぇのか?」
「っく!」
飛んでくる踵落としに無様に地面に叩きつけられる。
あーそうだ。
これが俺本来の実力。
ずっと忘れていた。
漲る感覚に任せすぎていた。
無力だった頃の感覚。
…
「だからって負けちゃ意味がねぇ」
立ち上がる。
何度だって。
「ここで倒れるわけにはいかないだろ」
「頑張るなぁ。でも、もう終わりだ。本気の一撃で…ってなんだこれは?」
白い羽が舞う。
この感覚は一体なんだ?
俺が起こしてることでは無い。
でも、これを俺は
「知ってる」
「よね」
俺の言葉に続くように笑う存在が目の前にいた。
その存在の声は隠すようにノイズが混じり判別ができない。それでも言ってることは聞こえる。
そして、その姿は深くフードをかぶっており体は隠されて男か女かも判別が付かない。
唯一分かるのは白い欠けた剣を持ってることだけ。
「誰だい?部外者は出てってもらいたいのだが?」
「俊介…だっけ?大丈夫、すぐにいなくなる。ただ一瞬だけ力を貸しに来たそれだけだから」
ノイズの声はそう言って俺に近寄ってくる。
そして、その唇を俺の唇と合わせてくる。
その瞬間、不思議な感覚が駆け巡ってくる。
「さて、これで終わり…あとは貴方次第だよ。勇馬様」
それと共に消える。
俺は何が起きたか分からないまま呆然とする。
そして、幾つもの『概念』が駆け巡る。
はっきりと分かる。
これに触れたらいけない。
でも、
「限界突破」
触れた。
**
俊介はそれを呆然と見ることしか出来なかった。
彼の持つ剣は特殊だと俊介は理解してる。
しかし、そんなものどうでも良くなるような馬鹿げたものがそこにはあった。
普段舞う四本の剣は彼の持つ剣に集約されて一本の剣に書き換えていた。
【守護攻剣 越在 聖翼王の剣 俊王】
「不思議な感覚だ。この力なら負けない。でも、それでも今の俺では勝てない」
勇馬は本能的な何かで理解していた。
この力の本質をそして、その弱さも。
「何が勝てないだ。さっきの化け物みたいに羽なんて撒き散らしやがって」
「すまない」
「何を謝っ
「これ以上、時間は掛けない」
俊介は今までに感じたことのない感覚が駆け巡る。
それを何か理解していなかった。
そう、唐突に刃が首筋に入るまでは…
ドォンッ!
飛び退くだけで辺りを砕く。
その勢いで間近にいた存在も消し飛んだであろうと俊介は汗を拭う。
そんな余裕あるのか?
咄嗟に出た俊介の思考が次の一撃を避けさせた。
羽から突如として現れた勇馬に俊介は反応できた。
(だからと言ってなんだ?)
自分は重大な見落としをしてると本能が語りかける。
その感覚に俊介は従うしかなかった。
何故なら理性で起こした行動は迎え撃つだった。
しかし、その瞬間腕は消し飛んだ。
何が起きたかわからない。
目の前にいたはずの勇馬はおらず刃は後ろから入っている。
にも関わらず、次の瞬間には唐突に目の前に勇馬はいる。
そして、混乱する俊介は次の瞬間に見たのは勇馬の持つ自分のだった右腕だった。
たが、それで終わりでは無い。
次の攻撃に勇馬は入る。
俊介の本能が指し示した行動は一つ。
距離を取った。
そして、羽を一枚残らず破る。
声が聞こえる。
「椿の能力は結合してる要素を引き離しそれを個々の要素として扱うものだ。言ってしまえば分解が本質と言える。故にあいつは精神への攻撃を可能と言える。そして、その逆は何だと思う?結合だ。要素を結合して結びつける。俺の転移の正体は結びつけその位置関係を書き換えるいや、正確には媒体として存在の移し替えを行なっている」
何を言ってるのか俊介には理解できない。
しかし、それは勇馬も同じ。
「そんな教科書みたいなものは分からないよな。俺もただ同じことを反復しただけだ。でも、一つ分かることがあるこのように形のないものだって結びつけることができる。なら、お前の羽を破った手は…」
その瞬間、俊介の足は止まる。
そして、治った腕と先ほど羽を破った腕を見る。
(待て俺の推論が正しいならこの時間は…これは)
「いいや」
勇馬は剣を構える。
その剣は光を放ち羽を撒き散らす。
(この腕は…)
剣を大振りに振ろうと勇馬は剣を振りかぶる。
「触れた部分はどうなるんだろうな?」
剣が振るわれる。
それ共に俊介の体は赤く染まった。
「驚いた」
勇馬は呟く。
その目の先にあるものは異質なものだった。
血塗れになってなお立ち上がる。
俊介の姿だった。
「数瞬の油断…それが俺を殺し損ねた理由だ本条勇馬」
彼は自分の肉を剥ぎ致命傷を避け、この一撃を逃れた。
そして、今彼の傷は回復を終えた。
勇馬に襲うのはこれまで感じたことのないプレッシャー。
「お前の負けだ本条 勇馬」
「いや、まだ終わりじゃない。今の俺には…限界突破 コネクト30」
俊介は目を見開く。
そして、笑う。
「今のお前に事前情報は無駄だな…だから、圧倒的な力でねじ伏せる!」
「やれるものならやってみろ!」
「体と魂が耐えられなくなった時」
「限界が来た時」
「「お前の最後だ!!」」
二つの規格外がぶつかり合う。
その戦いは極めて小規模なものへと変わっていた。
互いにゼロ距離での殴り合い切り合い。
勇馬は白い羽を媒介にして転移するがそれも距離を離すためではない。
むしろ近づき、裏をかくために使う。
俊介は敢えて攻撃が掠るように避けて自信の強化を徐々に行なっていく。
しかし、戦況は先程までの停滞し切ったものではない。
俊介の能力の限界が始まり肉体がこれ以上ダメージを受けて回復する事はない。
そして、勇馬もまたこれ以上の肉体強化は精神にまで影響を及ぼす事を理解していた。
互いに停滞した攻防でありながらそこには確かに限界が存在していた。
「「うぉぉぉぉ!!」」
それでも互いに一歩も引く事は無く延々にその殴りは続くとさえ思えるのだった。
**
一方、その頃。
疾風は一人書類の山に対して虚な目で処理を行なっていた。
「…新組織立ち上げ…シャルロットの調査…死ぬ」
疾風このまま書類を放り投げて逃げ去りたい気持ちに駆られるが一組織の長である彼がそんな無責任な真似ができるはずもなく。
「火鎚を使ったのは時期早計だったか?しかし、今が一番有効だと言うのは何度も証明できている。それに過去には一度もなかった勇馬へのあのメールも気になる…くそっ、やる事がまた増えた」
嘆く彼の目には書類しか映らない。
そんな時、携帯が鳴る。
「どうした?お前から連絡なんて珍しいな静域…は?…もう一度言え」
聞き返した疾風は何度か資料を見て検討して歯軋りを鳴らす。
「なぜその可能性に至らなかった。過去に勇馬が相対した時も国を使っていた。なるほど…ありがとう静域」
そう言って電話を切ると疾風は電話を掛ける。
「火鎚か?奴らが動いたぞ至急勇馬ところに行け。奴らは本条家を利用してやがった」
**
「流石は不死身だねぇ…」
「結構疲れるな…何度目だ?」
千那と椿は息を切らしながら剣を振るう。
その相手は本条 天馬。
彼は何度も彼女ら二人に殺されていた。
しかし、まるで何事も無かったように立ち上がる。
体の一片も残らず塵にしても、魂を粉々に砕いていても、あるいはその両方を行なっても天馬はずっと立ち上がり笑っていた。
「無駄だよ。本条家の不死は簡単には死なない。まぁ老化はしないわけじゃないけど老化でも死ねないからね」
「僕たち相手でも余裕ってわけだね」
「だが私達もただ何もせずに終わるわけではないさ」
千那が剣を振るう。
それは天馬の腕を切り落とす。
「無駄無駄!腕なんてすぐに生えて…」
黒い翼…否黒い枝が天馬の腕の付け根から生えていた。
「ガアァァァァ!!いだい…いだいいだい!!なんだ…何なんだこれは!!」
腕が再生しようとするところから天馬の腕は崩壊していく。
これは決して殺す目的のものではないことを天馬は理解した。
しかし、だからと言って
「痛い…ぐぁぁぁぁ!!」
残り続ける痛みに天馬は悲鳴を上げまともな判断ができていない。
切られていない手で千那に対抗しようとする。
「甘いんだなぁ…これが」
次は首だった。
「へ?」
首から枝が生えて同じように再生を防ぐ。
「な、何だこれ…おいうそだろ」
「へぇ、これでも生きてられるんだ。すごいね」
髪を掴み千那そう言って笑う。
反対に椿は剣を持って目を瞑ってるだけ。
そう、この枝は椿の翼なのだ。
黒い枝は天馬の首に深く突き刺さり、再生を防いでいる。
「でも、これで君は無力となった。どうする本条 天馬」
「いだいいだい…やめてくれもう…」
天馬の心が折れる。
そう思われた。
「何で言うかよ」
その瞬間、なにかがここに来た。
それは天馬が向かおうとした中庭から現れた。
「え?なんで?」
「何故お前がここに」
「久しぶりだな。お前ら二人とは中々に骨が折れそうだ」
そこにいたのはシャルロットだった。
**
この戦場を見ている存在がいた。
その存在は先程フードの存在と幾つもの真っ暗影のような人間達だった。
「思った以上に俊介という少年は規格外ですね」
「ーー」
フードの存在の言葉に影は答える。
「ふふっ、そうですね。彼ならあの力を貸さなくても勝てるでしょう。しかし、念には念を入れておきたいんですよね。実際彼はシャルロット相手に何度も負けてるのですから」
「ーー」
「知ってます。それを全て超えてきた。しかし、今の彼は力を手放すのが余りにも早すぎた。私達の残り香は本来ならもっと先まで待つ筈だったんですよ」
「ーー」
「ええ、そうです。そのためにあれは用意させましたけど貴方達はあくまでも欠片です。いつしか消える存在です私も含めて」
フードの存在はそう言って剣を取り出す。
「さて、私の力の形はどうしましょうか。最後に彼に渡すものは」
とても寂しそうな声でそう呟いてこの戦場を見ているのだった。
「ーー」
「ーー」
「ーー」
それを見た影達は何やら話し合った後、フードをかぶった存在に話しかける。
「いいですよ帰って…貴方達にとって彼が負けるとは露ほど思ってなさそうですね」
影はそれに対して頷く。
そして…
「私は本当に心配性なんですよ勇馬様。ですのでもっと強くなってくださいね。今度こそ全てを終わらせるために」
その言葉と共にフードを被った存在と影達は消えていくのだった。
まるで本当に何もいなかったように…
お読みいただきありがとうございます。
この作品は一番色んな意味でキツイので優先的に書いてますが中々に話が進まなくて作者自身が一番地団駄踏んでます。
今回は少し解説します。
東条 俊介
彼は唯一の勇馬にとって前世とか全く関係ない友人ですが、その正体は闇のリーダー。
彼の能力は強力なものであり、彼の脳や精神に刻まれている肉体を守るためのリミッターというのはかなり緩く更に低く設定されています。
故に潜在的に持ってる力に比べて普段の彼はとても弱いのですが危険な状況に陥るとそのリミッターが危険な状況に応じて外れます。
それにより本来ある彼の潜在的な力が発揮され規格外の力を手にしています。
要するに彼は潜在的には現状ほぼ最強と言っても過言ではありません。
他にも回復能力ですが自身の身を守るための防衛機能であり発動と共に傷を癒やして生存力を上げてるわけです。
また、彼自身もその潜在的な力を使うたびに急激に成長していくため実質彼の力に上限などないです。
あるとすれば人間としての限界くらいとなっている正真正銘現状最強格になれる能力です。
評価ブクマ等していただければ励みなります。
是非してください!




