今の自分と処刑の人災
手紙に書かれていたのは決闘の申し込みだった。
そして、場所と時間は…
「まさか聖神社とはな」
「なんか、この場所って矛盾してるよね」
「どうゆうことだ?」
「名前がだよ…分からないならいいけど」
待っていた千那は楽しそうに笑っていた。
背中を向けて神社にある木を眺めていた。
「ここを君は覚えている?那奈ちゃんがあの日、無茶をした場所」
「?」
「うわぁ、本当に分かって無さそう。君は勘違いしてるけどさ。数十年前に那奈ちゃんと会ったのはあの神社じゃない。ここなんだよ」
そう言われてみれば面影がある。
しかし、何でまた。
「ここが一番都合がいいから僕はここを決闘の場に選んだ」
「こんな昼間からも都合がいいからか?」
「それは早めに決着を付けたかったから」
なるほど何も考えてないわけか。
そして、これ以上の無駄話はいらないと俺たちは構える。
俺は今何の力もないただの人間だ。
さらに言えば仲間は誰一人としていない。
完全に一対一である。
俺は息を思いっきり吐く。
能力を使えば今の俺はその衝撃に耐えきれずに壊れてしまう。
かと言ってなしで勝てるなんて甘い的ではない。
4剣の女神もとい巫女達最強と謳われた千那である。
彼女に勝つのは不可能だ。
しかし、そんなことを言っていては何も始まらない。
俺は素手で千那に向かって走る。
(愚策)
彼女の口は動いてない。
しかし、間違いなく聴こてきた声に俺は足を止める。
足先に彼女の剣の切っ先が止まる。
どうやら、ぎりぎり間合いに入らず無事だったようだ。
いや、違う。
外された。
彼女はわざと攻撃を外した。
見えない。
彼女の動きが何一つ。
それでも、
俺は拳を握る。
普通じゃ勝てない。
けれど、技法等の能力を使えば俺はダメージを受ける。
でも、それでもやるしかない。
エネルギーを身体中に流す。
それだけで血管が千切れたのかと勘違いするように何かが千切れていく音が聞こえて来る。
破裂したように血が溢れ出てくる。
体が重く痛い。
それでもやるしかない。
今までのように『限界突破』や『超速再生』に頼ることはできない。
だから、己自身の力だけで戦うしかない。
「うぉおおおお!」
走り出す。
拳を握りしめる。
不思議な浮遊感が己の体を支配する。
千那に攻撃は届かなくても少しずつ削ることはできるはずだ。
拳で殴ろうとすれば千那はすんなりと避けて反撃してくる。
俺はそれをどうにかして頑張って努力で運任せで避ける。
なんてことはなく。
「っぐあ!」
「今の避けれると思ったの?」
剣の腹で横殴りされて吹き飛ばされる。
壁に衝突し痛みに少しの間悶えるがそれほど重傷ではないことに気がつき立ち上がる。
てか、痛いと思ったけど意外と痛くないな。
いや、めっちゃ血が出てるけど。
無理やり能力を使ってることの方が辛いな。
けれど体自体は悲鳴を上げ始めてるし、決着は早い方がいいな。
まぁ、早く終わるとしたら負ける可能性の方が高いけどな。
「ふぅ」
一度落ち着いてめり込んだ壁から這い出る。
今までの戦い方は脳筋そのものだ。まぁ、俺の性格的にもそれが一番しっくりきていた。
限界突破で自分のスペック以上の強化を施して肉体を崩壊させながら戦うというやり方。
現状無理やりエネルギーを使用してるが同じように限界突破を使用したら間違いなくここで体がミンチになるような気がする。
第一、つい最近まで当たり前のように使えたあの力は突然使えなく分からなくなった。
そんなことを考えている暇はどうやらないみたいで、千那は容赦なく剣を振り翳してこちらに向かってくる。
「ほら!」
剣が振るわれる。
見惚れるほど綺麗な型でこちらに向かって振るってくる。
僅かな差でそれを避けるが、
「ほらほらほら」
どんどんと繋がっていく連撃、無限に続くのでは思わされるほど速く力強く、的確な連撃に怯まずにはいられない。
一撃でも当たれば死ぬ。
今は武器を取り出すことすら辛い。
俊王は間違いなく出せる感覚はある。
しかし、何故か取り出そうとすると何かが違うのか体がすぐに悲鳴をあげる。
避けるしかない。
「いつまで続く?いつまで耐えられる?」
延々と蓮撃が続く自信の表れか彼女はそう叫びながら切りつけてくる。
頬を掠める。
服が切れる。
血が僅かに弾ける。
血で重い服が動きを阻害する。
「しまっ!」
気が付けば俺は尻餅を着いていた。
前を向けばそれを待っていたと言わんばかりに少し溜めを作って剣を振るう千那の姿。
終わった。
いや、まだだ!
転がる。
地面を転がり走る。
服が張り付き重い。
服を破り、最低限のものに変える。
そして、基礎的な肉体強化を施していく。
「させないよ!」
意図を悟った千那は走って突きを放つ。
気が付いた時にはもう遅い。
「え?」
そんな声が漏れる。
間違いなく千那は前にいた。
なのに後ろから俺を…
胸を見る。
剣が生えてきている。
痛みは感じない。
明確に体全体が冷たく冷たくなっていく。
終わった?
疑問ばかりが自分の中で回る。
しかし、そんな時だった。
『…』
何かがつぶやいた。
その瞬間、意識は奥深くに沈んでいく。
あの声は…なんだろうこの気持ち悪い感覚。
**
千那は勇馬の変化に目を見開いていた。
姿形は変わっていない。
目の前で刺された勇馬の手には剣が握られており、髪は背中の中腹ほどにまで伸びておりその姿は少女なのではと勘違いするほど可憐で貫かれてる様子から儚いものだった。
しかし、その手に握られている剣は千那達が今まで見てきた剣とは全く違う。
「俊王じゃない?」
ポツリと呟くと共に勇馬の目が見開かれる。
その瞬間に感じた殺気は彼女の顔を歪ませるには十分なものだった。
動き出しはピクピクと痙攣を起こす。
やがて貫いた剣を握り、抜こうとしている。
千那に油断はない。
この状況下何が起きるか分からないと警戒していた。
しかし、それでも彼女は気がつけば後ろを取られていた。
咄嗟に振るった彼女の剣は届かない。
まるで何かの壁に阻まれたように勇馬の数センチ先で静止している。
それを見て彼女は笑った。
絶望でもなんでも無く笑った。
「ようやく確信を持てたよ。僕の見たあの世界は夢じゃないんだって」
そう言った千那はそのまま言葉を続ける。
「だから!今度こそ成功するところを見せて!」
千那は本気をその時出した。
それは圧倒的な冷気と熱気という矛盾した世界だった。
「領域展開。こう名付けよう『地獄』」
全てが凍りつく。
剣を振るう度に氷が砕けて勇馬に氷の礫が襲いかかる。
勇馬は難なく避けるが自由に身動きが取れていなかった。
「その炎に触れたら簡単には消えないよ」
勇馬は不用意にその炎に触れてしまう。
その炎はあっという間に燃え盛り、勇馬の体を包む。
「がぁあぁああ!」
勇馬は悶え苦しむがすぐに立ち上がり深呼吸を始める。
それを見た千那は焦る。
「それをさせる訳には…」
口に漏れるほどに厄介なこと。
彼女が今行っていることは疑似的に世界を自分のものとして書き換えたのだ。
自分にとって都合の良い領域に変える力。
それが『領域』。
そして、勇馬が今行おうとしていることは千那の領域に干渉して効力の書き換えや破壊を行おうとしていることが分かる。
領域の維持展開だけでも彼女のエネルギーの大半を使っている。
それなのにここで壊されてしまえば負けてしまう。
彼女は全力で勇馬を止めに入る。
ギロチンの刃が勇馬の上から落ちてくる。
彼は剣を振るい、ギロチンの刃を砕く。
そして、気が付けば千那の目の前まで来ていた。
剣の打ち合いが始まる。
だが、それは単純な打ち合いになることはない。
炎や氷が…
ギロチンの刃や磔の丸太が…
ナイフが弾丸が…
鎌が縄が…
勇馬に迫りながら剣を撃ち合う。
完全に千那が有利な状況である中で千那が押されていた。
まるで世界そのものが歪んでるかのように彼の攻撃は捻じ曲がり何一つ勇馬には攻撃が当たらない。
それなのに勇馬の攻撃は必ず当たる。
「そんなものじゃないでしょ…あなたの全力は…」
それでも千那の戦意は喪失しないそれどころか勇馬に対して怒るようにそんなことを言う。
バギッベギッバギギギギ
それと共に何かが壊れていくような音が響いてくる。
千那の瞳の色と髪の色が変わっていく。
青い髪の青い瞳となった千那は勇馬を見据える。
「僕の知ってる君ならこの程度、見切れる筈だよ!」
不定形の巨人が割れた空間から這い出てくる。
透明で歪んだ触手のようなものが姿を表す。
そして、無数の影が地面から這い出てくる。
「『失った物』」
彼女はそう呟く。
それと共に全てが動き出す。
「さぁ、君の力を見せて」
無数の影が
不定形の巨人が
透明で歪んだ触手が
勇馬に迫る。
彼は手を前に出す。
それだけで触手が吸い寄せられるように止められる。
そして、触手を一瞬で俊王で切り裂く。
巨人が踏み潰さんと足を大きくあげる。
だがその足が振り下ろされることはない。
だって、巨人の脚は両足共に消失していた。
気が付けば勇馬が影を蹂躙していた。
「予想通り」
影の隙間を縫い確実に動けない瞬間を千那は見逃さなかった。
振るわれる剣は確実に勇馬を捉える。
はずだった。
気が付けばそこに勇馬はおらず少し離れたところにいた。
だが、千那もこれで終わりではない。
勇馬の立つ後ろから突如として巨人が這い出てきて腕が振り下ろされる。
ドゴォォ!!!
あまりの破壊力に砂煙が舞う。
千那は倒せてはいないと考えていた。
それでも少しくらいなんて希望があった。
しかし、絶望はそこにあった。
彼は立っていた。
砂煙が立ったのは決して巨人の力ではない。
勇馬の振るった膨大なエネルギーが破裂して余波によって起きたのだ。
そして、見れば分かる。
殆どのエネルギーの破壊力は余さず巨人に振るわれており、巨人の姿はどこにも見えなかった。
千那は苦笑いをする。
(これが勇馬の本当の潜在能力なの?いや、そもそも勇馬は今、肉体と精神のバランスが崩壊して碌に能力が使えないはず)
千那の額から汗が零れ落ちる。
息を呑む。
目の前にいる存在は常識なんてものが通じない。
そう思っていると勇馬は剣を地面と垂直にして持つ。
そして、そのまま何もない虚空を切った。
そう、切ったのだ。
千那は警戒を怠っていたわけではない。
しかし、想像できるわけがない。
目の前の敵が距離という概念を方向という概念を高さも何もかも否定してぶった切って目の前に立っているのだ。
咄嗟に振るわれる千那の剣はまるで蜃気楼なのかと疑いたくなるように感触がなく反撃に振るわれる剣は必中という言葉も生易しいものだった。
彼が縦一線に振るったはずの剣は間違いなく千那は防いだ。
しかし、防ぐという感触はなくそのまま千那の体に食い込む。
「っっ!」
悲鳴にならない声が上がる。
数歩千那は仰け反り膝をつく。
そして逃げるように走り出す。
しかし、今の勇馬にはそんなものは意味はない。
横一線に剣が振るわれる。
当たっていない。
それは間違いないのに千那の背中に傷ができる。
千那はバランスを崩して転ぶ。
立ちあがろうともがくが急な痛みにうまく立ち上がることができてない。
「はぁはぁ。でも残念僕の勝ちだよ」
千那のその一言の瞬間、勇馬の動きは止まった。
そして、頭を押さえつけて暴れ出す。
**
まるで映画でも見てる気分だった。
俺の目の前は真っ暗で見えるのは俺の視界のような物。
しかし、そこに俺と言う存在は在らず。
何かに突き動かされるように動く自分の姿が見える。
それはまるで自分のものではないような感覚。
でも、間違いなく分かることがある。
「これは自分だね」
不思議だ。
今まで自分は何だったんだろう。
「君は過去に枝分かれした自分?」
すぐ隣にいる少女に気が付けば俺は声を掛けていた。
そこにいる少女はどこか俺と似てる気がする。
そして、今理解したことがある。
無意識のうちに俺はいくつかの記憶を忘れている。
そう、意識的に無意識に自分の記憶を消したのだ。
何のために?
それは簡単な話だった。
ー自分が自分で無くなる感覚
少女はそう呟いた。
きっとそうなんだろう。
何度も何度も何度も
繰り返してきた日々で色々なものを得てきた。
しかし、たった一つ記憶だけで本当の自分が分からなくなってくるのだ。
だからだろうか…
俺にとって大切な記憶でも原初の記憶はどこか遠いものだった。
思い出せないものだった。
ただ、この少女の持つ記憶はそれじゃない。
ーダメ、あげない。その記憶は自分のだから
「ケチなこと言うなよ。自分はその記憶が必要なんだ」
ーダメったらダメ!自分の大切な人達が大切じゃなくなっちゃう
自分はその言葉に何も答えられなかった。
だって彼女の持つ記憶は自分が消した記憶を思い出す前の記憶。
これ以上、大切なものを増やさないようにするための記憶。
「何が大事だったの?」
ー…円華…寧々…二人が大事だった。そして、桜おねーさん。たまに会って優しくしてくれたんだ
嬉しそうに語る少女に俺は頬を緩ませる。
そうか、これが過去の自分の掌にあったもの。
ーお父さんとお母さんは…死んじゃった
零してしまったものたち。
だからここで自分は誓う。
「もう、何も溢さない。仲間は手放さない」
ーそれって…
「あぁ、大切を守る」
それと共に記憶が雪崩込んでくる。
凄まじい頭痛に襲われて意識が途切れそうになる。
それでも自分は過去に向き合うために意識を飛ばす訳にはいかない。
自分は向き合わなきゃいけない。
ここで…いや、
これから俺は勇馬として
本条 勇馬として生きていくんだ。
何者も手放さないために。
俺がそう決意すると少女は満足気に消えていった。
**勇馬side
目が覚める。
目の前には地獄が広がっていた。
化け物がでかい手を振り翳して踏み潰そうとしてくる。
それを見て俺は青い顔になるが、すぐに落ち着く。
(落ち着け…まずは体に循環する力を外に逃していけ)
最近の不調の理由かもようやく分かり、まず修正をする。
肉体より魂が強く現れていた。
しかし、魂の影響力がデカくなってるにも関わらず魂の強さが足らずに己の体を傷つけると言う結果を起こしていた。
要するに肉体に頼ってるのにも関わらず魂が出しゃばってたのがいけないのだ。
それの解消法は簡単とはいかないが難しくはない。
自分の存在を魂に依存してしまえばいい。
体からエネルギーが今まで以上に溢れ出てくる。
それをしっかりと技法の回路に詰め込んで制御する。
そして、今持っている剣をしっかりと握る。
「全てをぶち壊せ!俊王!」
一瞬だけ、俺の力が千那の世界の力を凌駕した。
周りにいた巨人は消滅する。
それでもまだまだ、たくさんの化け物が這い出てくる。
剣を振るい巨人を倒していく。
今ある体に意味などない。
いや、正確にはあるが魂が変質すれば肉体も自ずと変質する。
極論を言ってしまえば赤ん坊になっても魂に依存してるためあっという間に成長して魂の通りの姿になる。
と言うことである。
故に傷を負っても意味はなくその傷は一瞬で元通りになる。
巨人に何度か殴られるがそれ以上の反撃で返す。
しかし、いきなり上がった出力をうまく操ることはできずに安定はしない。
それでも今の俺に負けると言うイメージはない。
「僕を忘れてもらっちゃ困るよ」
唐突に後ろから転移してくる千那に俺は咄嗟に反応するが間に合わず腕の一本を持ってかれる。
そして、反撃をゆるさないように影が俺を押さえつける。
距離を取ったにも関わらずそれによって千那に近づかれる余裕を作った。
せっかく、追撃を恐れて距離を取ったにも関わらず意味がなくなってしまった。
俺は影を振り払い千那と切り結ぶ。
剣同士がぶつかり合う度に当たりは吹き飛び、俺と千那は何十回と撃ち合う。
そして、何度目の撃ち合いかの時に俺たちは止まる。
「不思議だね。さっきまでの君の方が強いのに僕的にはこっちの方が厄介だよ」
「俺もおかしいなさっきのようなやばい感覚はもうねぇよ」
でも見える。
俺の左目には『真実の瞳』がある。
これは今まで左目に感じてきた違和感の正体。
この力はありとあらゆるものを見通す力がある。
これが『真実』と呼ばれた存在…いや、本条家に伝わる本当の力。
不死や不老なんてあくまでこの力の付属品にしか過ぎない。
後ろを向いてても巨人や影が迫ってきていることが…
莫大なエネルギーを消費して行われる炎から避ける方法が…
ただ、分かると出来るは違うのだけど。
分かってても避けれない防げないのは結局は変わらない。
しかし、それでも今千那と対等に撃ち合えている。
「てか、転移とせこいなお前!」
先ほどから彼女は撃ち合いの際に転移して距離を取ったり横から後ろからと攻撃を突発的に行ってくる。
それを防ぐだけでもキツいのに一撃一撃の重さは強烈で防ぐだけでも体が持たない。
「勇馬もすればいいじゃん。転移」
そんな俺のクレームを流す千那。
しかし、転移というのはかなりの高難度な技術を要するがゆえに俺にはできない。
その代わり
手に取るように千那が次に移動する位置が分かる。
どう攻撃するのかどう動くのかまるで今、この場にあるエネルギーの全てが見えてるかのように分かる。
剣を振るう。
「うわっと…ちょっ正確に」
千那が何か言ってるが無視して攻撃を続ける。
すぐに転移をする。
消えてから現れるまでのタイムラグは無しに現れるが次の位置さえわかれば何が来るか分かる。
千那は連続転移を繰り返す。
撹乱する作戦だろう。
しかし、攻撃する瞬間を狙って俺は走り出す。
「さっきから正確に…」
俺の攻撃を防ぐ千那は悔しそうに呟く。
「悪いな。俺の勝ちだ!」
「舐めないで!僕の方が剣の技量は上だよ!」
すぐに千那は剣を振るい俺のバランスを崩す。
そして、トドメの一撃を溜める瞬間に俺は体勢を立て直して千那の手を蹴る。
それと共に千那の手から剣が離れる。
すぐに再顕現で攻撃が再開する
でも今この瞬間が最大のチャンスであることは明白だ。
振るわれた剣を千那は拳で対抗する。
「甘い!」
気が付けば彼女は籠手を嵌めておりそれによって剣が弾かれる。
だが、甘いのはそっちも同じだ!
弾かれる際に剣を手放す。
そして、服を掴んで互いに逃げれない超近距離に持ち込む。
その瞬間、千那がビクッとしたような気がしたが気のせいだろう。
このままだとすぐに反撃される。
拳を振り上げる暇はない。
蹴りは近すぎて使いづらい。
ならば
俺は頭突きを選択する。
瞬間的な思考力が上がり反撃される前に行動を起こそうとした瞬間だった。
脳が揺れた。
気が付けば俺は仰向けで倒れていた。
「僕の勝ち!」
満面の笑みでそう言ってのける千那が俺の横でしゃがんでいた。
どうやら、俺はまた負けたらしい。
まだ頭がぐらぐらする。
「大丈夫、結構強めにデコピンしたから痛くない?」
「デコピンで俺倒されたのかよ!」
「うん!いやぁ、少しでも遅かったら負けてたよ。やっぱり強いね」
「勝者に言われてもな」
「当然だよ。僕は勝って当然なんだから」
千那は寂しそうな表情でそう言う。
どういことか聞く前に俺の考えを悟った千那は話し出す。
**
僕は人間と言ったら人間だけど正確には別の存在みたいなものだったんだよ。
原初でも今でも生まれや育ちなんて分からないかな。
原初の頃、僕は生きてるか死んでるか分からない状態だった。
ただ人のために出来ることがないかとか、僅かにあった理性的な感情が唯一生きる意味だったんだ。
そんなある日、とある国で人災騒ぎが起きて沢山の人が不幸になった。
そんな中でこんな願いがあったんだよ。
『これ以上苦しむくらいなら殺してくれ…俺のために助けると思って!』
なんだろうね。
一時の気の迷いなんだろうけど偶々…本当に偶々沢山のそんな人の声が聞こえてきた。
遺跡などで隠れて過ごしていた僕はそれを聞いていた。
何を勘違いしたか僕は殺すことが救いを求める人にとっての救いなんだと勘違いしたんだよ。
それが僕と言う存在の異常性。
そして、それによって僕はたくさんの人を殺してきた。
何千何万と数えたらキリがないほど不幸だと叫ぶ人間を、助けを救いを乞う人間を殺してきた。
そして、いつしか付けられた名前は
『処刑の人災』
だってさ。
笑えるよね。
笑えない?
まぁ、僕は笑えるよ。
だってそんな言葉言われてもななんの疑問も持たずに人を殺してきたんだから。
そんな時に会ったのが君だった。
**
「と、話が逸れたね。そんな経緯から人との戦いに於いて簡単には負けるわけにはいかないんだよね」
「いや、めちゃくちゃ気になるんだが!」
俺は起き上がりそう言うが千那は気にした様子もなく欠伸をして俺の体にもたれ掛かる。
「いずれするよ。一先ず一緒に休もっか。僕も協力するよ。だって勇馬はようやく今を見てるからね」
「そうでもない。未だ昔の方が優先的だ」
「えーでも、僕的はそうでないと勝手に僕の前にいなくなりそうでムカつくんだよね」
「お前的には本当にどっちだよ」
意味がわからん。
過去に拘るなみたいなこと言えば過去にも拘れと言う。
「要するに僕が言いたいのは今ある現実を後悔したくなれば今を見て過去ばかり気にするなってこと」
「なんか、納得できそうでできない言葉だな」
「あ、、でも恋人とか結婚は流石にポッと出は女性陣が怖いから気をつけてね」
「お前は怖くないみたいな言い方だな」
「まぁ、どことも知らない馬の骨なら勇馬を僕のものにするけどね」
「なんで俺の周りはちょっと病んでるのが多いんだよ」
「それは依存させた勇馬も悪い」
こうして、俺はようやく本条家と戦う準備が整うだった。
…
……
………
あの時の俺であるはずの少女の消える前の言葉がどうしても頭から離れなかった。
「仲間を大事して、強くなりなよ。じゃないと全部全部失っちゃうから」
失う?
どう言うことだ?
久々の戦闘描写で納得できるまで何度も書き直しました。
ちなみに一方、椿達は
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椿、那奈、華の三人は街でばったり会っていた。
那奈と華はいつか接触するつもりであったがそれは今ではなかった。
「君たちは…久しぶりだな」
「久しぶり…です。椿様」
「まだ、口が偶に固くなるな君は何度も矯正して柔らかくしたのに」
「いや、無理ですって…」
「椿…那奈をいじめない」
「おや、華嬢に怒られてしまったな」
ふふっと笑う椿。
それを見て頬を膨らます那奈。
華は無表情で読めない。
「それで勇馬さ…ユウ君は」
「今、勇馬君も様付けにしようとしてなかったかい?」
「き、気のせいです!」
「仕方ない残念な那奈だから。それで勇馬は?」
「あぁ、彼なら今、千那とデートだね」
「いつもあの人ばっかり!」
椿の返答に怒る華。彼女は普段決して荒げることはないが勇馬絡みになると結構根に持つ。本来なら彼女はいつも勇馬の側にいたいと豪語しておるが立場的に良くないことは理解しておりよく我慢をしている。
故に一月に一回ほど勇馬の布団に侵入すると彼女個人の頭の中で決まっていた。
「とりあえず、二人とも私の部屋に来てくれないか?どうせ終わったら戻ってくるだろうし」
椿はそう言って二人の手を引いてある出すのだった。
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という訳でお読み頂きありがとうございます。
評価ブクマなどしていただければ励みになります。




