違う生活
朝起きて食事場に行き至って普通の朝飯を食べる。
そして、広い廊下を歩いて自室に戻り着替えをする。
何つーか普段と同じなのに違う日常がそこにはあった。
「随分と慣れてるみたいでよかった」
俺が部屋から出るとそう話しかけてくる少女がいた。
まぁ、同い年らしいから少女という言い方も変か。
「慣れたというより学校に行くことはそう変わらないでしょう?」
「…ふむ、確かにそうかもね」
そう言って微笑むのは椿の双子の姉、祖亜 桜である。
彼女の髪は黒髪であり、椿と同じでキリッとした雰囲気があるものの顔のパーツ等は少し似通っていない。
故に二子で見分けがつかないなんてことは早々ない少女である。
「なんだ、勇馬くんはもう準備ができたのか?」
桜さんと話してると椿が寝巻きのままで部屋に来ていた。
「俺はもう着替え終わったからゆっくり準備して大丈夫だぞ」
「そんな配慮はいらないよ。仮にも婚約者だし、私は別に君なら見られても構わないよ」
「お、おう椿が大胆だね。それに対して本条くんの反応は?」
あの、桜さん。すごく言いづらいのですが…いや、まぁいいか。
「仮にも婚約者であって結婚してる訳でもない。そう言った一線は弁えておくべきだ」
「お堅い発言いただきました…だってさ椿」
「姉さんからかわないで欲しい。初めから分かっていた話だ」
椿はそう言って部屋に入ってく。
彼女の目は特に感情を見せておらず、今思えば彼女が目で語ることは少ないような気がする。
「少々不器用な妹で申し訳ないよ。あれでも私から見れば浮かれてるんだ」
「大丈夫です。どちらかと言うと今のは俺の方に非がありますし」
「ふふっそうだね。女の子をあんな振り方してるといつか刺されるよ」
「その言葉、今の俺にはすごく刺さります」
ここにはもう早、二日もおり寧々に襲われそうになったのも二日前の出来事である。
そして、今日は俺の転校日である。
あまり気乗りはしないが郷に入っては郷に従えと言うし義務教育は受けないとな。
「私は基本的に登校はしないから椿と仲良くやりなよ」
桜さんはそう言って自分の部屋の方に行くのだった。
**
学校に着くと俺は職員室まで教師に連行されていた。
なんともパワフルな教師が揃ってるのだろうか。
「お前のクラスの担任になる錦川 翔吾だ。よろしく頼む」
「は、はい。ほうじょう…本条勇馬です」
いかにも体育教師といった風貌の厳つい筋肉を持った錦川先生はかなり粗暴な印象だった。
「んで、後ろに立ってるのが研修生の…」
「奇倉 厳です」
これまた筋肉質な男。
なんだろうこの学校、教師達が筋肉同好会でも開いてるのだろうか。
ん?
「あの、奇倉先生」
「は、はい」
どこか緊張してる様子で返事をする奇倉先生。
「どこかで会ったことないですか?」
「…えーないと思いますが」
「いきなりすいませんでした」
やっぱり気のせいかなぁ。
ふと、思っただけだし。多分、思い違いとかの類だな。
まぁ、一応少しくらいは心に留めておいた方がいいかもな。
「家の事情で急な転校で大変だと思うがくれぐれも問題起こすなよ」
こうして、俺は新しい学校での日が始まるのだった。
「あー疲れたぁ」
俺は昼休みに入り、目が死んでいた。
久々にまともに受ける授業は苦痛以外の何者でもない。
「君は時よりおっさん臭いな」
そんな俺に厳しい一言を言うのは椿だった。
彼女と同じクラスでこっちも気が楽だがそれでも新しい環境というのは歳を取れば取るほど大変だと思う。
「まぁ、精神的にはまだまだ子供でいるつもりなんだがなぁ」
「…君が子供」
「おい、ガチ目で引かないでくれお願いだから」
一応は100年単位で生きてるから子供って言っても通じないらしい。
いや、でもなぁ。
人間の精神って結構、肉体に引っ張られるからなぁ。
主に直近の経験によって。
「それは言い訳だろう?それと数千年単位だからな」
「そんなにかぁ」
なんとなく長く生きてるかなぁって思ってはいたけど…まぁ、今更それがどうしたって話だけどな。
その時、教室が少し騒がしくなった。
「何事だ?」
「…そういえば今日は彼女の登校日か」
「だから何事だよ」
「まぁ、見てればわかるさ」
意地でも話す気のない椿。
そういえば千那の次ぐらいに自立して動いていたっけな。
あと二人はどうも俺から離れようとしないし否定しないし…
「ん?」
もしかして今…記憶を…
「見つけた!」
俺の思考はそんな声とドアを思いっきり開け放たれる音に遮られる。
あー、折角何か引っかかりそうだったのに…。
「ユウ!」
「その呼び方は…」
誰だっけ?
なんか、珍しい気もするなぁ基本呼び捨てか君付けが多いからなぁ。
あーでもジャックも勇って呼んでたなぁ。
えーっと、俺は声の主を確認する。
どうやら、声でも分かっていたがドアを開けた主らしい。
えーっとピンク色の髪…あれ地毛か?いや、うちにもへんな髪はちょくちょく居るし失礼か。
髪は肩ほど伸びており、なんかよく見るような気もする。
でも正直、個人的に関わった覚えはない。
「…」
椿が無言で見てくる。
どうかしたのだろうか?
「いや、どうしたもこうしたも何故疑問符を浮かべながら彼女を見てるんだい?その呼び方はなんて言い方したのに」
「う、うん…まぁ、ユウだしね。私のこと分かる?」
そ、それはすまん。
分かるつもりが全然わからなかった。
と、内心謝るが声に出すことはしない。
にしても、彼女は人の良い笑みを浮かべながら問うてくる。
この雰囲気がどこかで見た気がするんだよなぁ。
「おい、お前歌手の円華を知らないのか!?」
「え、何遅れてね」
「円華様!そんな男なんて放っておいて私とお食事にしませんか?」
「相変わらず君の周りは過激だな」
「あら、あなたの周りもというより生徒会メンバーの方が厄介じゃない」
「そういう話をしてるわけではない」
「そういう話でしょ」
この二人の会話がどことなく怖い気がするが無視だ無視。
んー、円華?
円華?
俺は脳内で名前を反芻する。
多分歌手って情報は無駄だろう。
…
「南条 円華か!」
「当ったり!」
「楽しそうだな」
「まぁ、久々だからね」
彼女は嬉しそうに俺の方に近づく。結構距離が近くなっており周りからの嫉妬がすごい。
てか、男子はなんとなく分かるけどなんで女子までそんな殺さんばかりの殺気をダダ漏れにしてんだよ。
「相変わらず騒がしいだけが取り柄だな」
「生徒会長さんこそ嫌味が得意なようで」
「仲良いな」
「「いや、どこが?」」
ほら仲良い。
にしてもなんで今になって…
いや、今だからこそ俺が記憶を思い出して捻じ曲がる前のしがらみがのしかかって来るのだろう。
終わりにしたいことばかりが俺に来る。
「どうやったら出来るんだろうな」
「勇馬くん…」
ポツリと溢した俺の呟きに気づいたのは椿だけだった。
実際、俺も無意識だったし聞かれても言ったか覚えてない。
そして、その真意も俺じゃ測れない。
「おうおう、なんだこの騒ぎは!」
そんな時だった。
ひとりの男子生徒が声を上げる。
今教室に入ってきたばかりだろうか?
一応授業には参加していた筈だ。
俺はそっちに目を向けると心臓が跳ねた気がした。
「おう、転校生!お前のせいでこんな騒がしいのか?」
「す、すまない」
「悪りぃ悪りぃ、責めてるつもりはないんだ。にしてもモテモテだねぇ」
椿と円華の方を見てニヤニヤしてる男子生徒はそう言いながら俺の肩を叩く。
なんだろう、こいつの視線、見てない?
いや、そんなはずは無い確かに楽しそうにしてる。
「そうそう、自己紹介がまだだったな。俺は凛海 羽照」
それに答えるように俺は口を開こうとするが彼はその前に止めるように言う。
「おっと、自己紹介はいいぜ。朝しただろ?まぁ、そろそろチャイムだし席つけよ」
彼はそう言って自分の席へと行ってしまう。
俺は僅かに放心状態になっていたが授業の時間ということもあり頭を切り替える。
「円華、そろそろ自分のクラスに戻れ」
「え、もうそんな時間」
「今日も無駄な時間を過ごしたな」
「それはこっちのセリフ」
どうやら俺が凛海と話してる間も言い合いしていたみたいで時間を忘れていたようだ。
そんなタイミングで鳴るチャイムはどこか寒気を感じるような不安を過らせるものだった。
**火鎚side
帰りてぇ。
そんなことを想わず考える。
てか、まじねぇよ。
「何で誰もいねぇんだよ!」
一人切れている俺がいた。
いや、ホントねぇよ。
だってさ、だってさ無茶を言ってるのは理解してるいや、理解はしてるけどよ。
これはどーなん?
会議室にて誰もいない。
呼び出した本人すらいねぇときた。
そんなこんなで待っていると
「いやぁ、悪いな。仕事が長引いた」
「一時間遅刻なんだが?」
疾風が堂々とそんなことを言って会議室に来ていた。
それに対してすまんすまんと手を合わせる彼を見て俺は毒気を抜かれる。
「それで他の奴らどうしてんだよ」
「お前、口悪くなったか?」
「いいから答えろ」
「全く、目上に対する口の聞き方がなってないな。いいけどよ。他の奴らは…」
そう言って疾風は指を鳴らす。
それと共にモニターが起動されて映像が映し出される。
そこに映し出されるのは11の顔だった。
それは全てがだいぶ歳だというのは理解できるがその全てが若々しかった。
「よぉ、狸狐共」
「相変わらず絶対悪は口が悪い」
「『祓魔師』お前が言えた口じゃないじゃろ」
「『人類智』も人のこと言えた口か?てか、お前ら若返りの手段でも見つけたのか?」
絶対悪と呼ばれている疾風は堂々と話す。
主に話してる二人の人間に対して彼は特大の皮肉をぶつける。
「早く要件を聞こうではないか」
「『王国』はいい子ぶっちゃってるのかぁ?前回散々だったもんなぁ。まぁ、俺としては今日みたいに軽いノリでいられるのは楽だけどよ」
「『人外れ』もっと言葉を弁えろ。それとうるさいぞ。絶対悪の言葉を遮る気か?」
「相変わらず『暗部』はお堅いてか、うざい」
「ぶはっ、『世界の叡智』のアマに言われヤンの」
「『技の理』主ももう少し大人しくせい。このままでは話が進まぬだろ」
「『陽の陰』のいう通りだ。早く話を進めよう」
「ヘイヘーイ、俺は黙りますよ『法外者』さんヤ」
あーだこーだ自分達の言いたいこと好き勝手言う者たち。そこでずっと黙ってるのが一つある。
俺はそれが気になる。
「いい加減本題入るぞ。それと、いつも思うがやけに消極的だな『陰陽師』」
「はて、私は必要のない会話は避けてるだけですが?」
「それが消極的って言ってんだよ。たく、話が通じねぇ。まぁ、そんな話をするために来たんじゃなかった」
疾風はそう言って思いっきり俺の背中を叩く。
その姿に全員が反応する。
何かやばいことでもあるのか?
いや、そもそもなんでこんなに注目されてんの?
「その小僧は?」
誰かの代弁するように『陽の陰』が質問する。
それに対して疾風はニヤリと笑う。
「こいつは新たに12組織に加入する組織、『エーテル』のリーダーだ」
「は?」
俺はその一言に素っ頓狂な声を上げる。
てか、エーテル?なにそれ?
は?こいつの頭ついにおかしくなったか?
元からだわ。
「要するに12組織ではなく13組織になるってことか?」
「本当なら俺もそうしたいんだがなぁ『陰陽師』が言った通りな」
「何か問題があるのかのう?」
「そう、『人類智』が言うように問題がある。この中に裏切り者がいる。できれば裏切って欲しくないからこれは警告だ」
全員の顔がこわばる。
疾風は余裕そうな笑みでそのまままた、指を鳴らす。
するとモニターが切れてため息を吐く。
「ちっ、やっぱり狸だな。こんな状況でも困惑と警戒の表情を忘れねぇバレてんのによ」
疾風がそう言ってるが今はそれどころではない。
「エーテルってどう言うことだ!?」
「今から説明するから待て」
「ちゃんと理解できて納得できる説明がくることを祈ってる」
彼は俺の言葉を聞いてどこか嬉しそうにため息を吐き、「どこから話すか」と言葉を始める。
「まず、現状の敵についてどれだけ見据えられている?」
「シャルロットの勢力だろ?厄介なことに強者が沢山ついている」
「そうだな、なら、目的は?」
「…世界を滅ぼそうとしている?」
「半分正解だ」
なんだ、いきなり変な前提条件の確認は?なにが関係あるんだよ。
「奴の目的は完全な理の外にある存在魔神いや、終焉の力を利用することだ」
「わざわざ何でそんな回りくどいことを」
「終焉には世界の失敗、それが保存されてるらしい。俺は奴を討滅させることしか考えてないから実際どうなのかは知らんがな」
疾風は普段吸わない煙草を取り出して火をつける。
煙草を蒸しながら、言葉を続けていく。
「シャルロット…最低でも奴はなんらかの失敗やコンプレックスはたまたハンデを抱えている」
「いきなり何の話だ?」
「要するにだ。失敗のない世界を作りたくないか?」
「は?」
「誰もがとは言わない。しかし、最大限の人間が成功し、絶望などが最低限の世界をよ」
携帯灰皿を取り出す。
「要するにだ。こうやって灰皿で消せば使った形跡が残る。しかし、能力で完全に燃やし尽くせばほとんど形跡が残らない。煙草を吸ってなかったことにすんだよ」
「よくよく考えればここ禁煙だろ?」
「でも、お前と俺以外誰も知らないだろ?」
「でも、吸ったと言う…そう言うことか上書きするのか吸ったと言う経過を滅茶苦茶に」
「そう、奴は過程をぶっ壊して成功にする。言ってしまえば煙草を吸ってないって無理やりこじつける気なんだよ。結果が成功していれば過程が失敗してるなんて誰もわからないからな」
煙草で喩えられているがイマイチかと疾風は笑う。確かにイマイチだ。
だが、もし煙草が減ってなければもし、煙草の吸い跡がなければ彼は吸ってないと同義だ。
そうやって過程をすっ飛ばした結果だけを作って無理やりこじつけるなんてことをしようとしてるのだ。
「それでそれが一体どう関わってくるんだ?」
「ひとつ言っておく…今回俺がこれ以上手を出すことができない」
「…それは」
「勘違いするな『絶対悪』として動けないだけだ。だから、『エーテル』を作った」
俺は考える。
疾風の考えなんて簡単には分からない。
でも自然と彼の顔を見てると自然と入ってくる。
「なるほど組織としての目的と掛け離れ過ぎてるのか」
「そう言うことだ。結局奴らは終焉を作り出すことはない」
そう、彼はずっと警戒しているもの終焉。
それは世界の終わりの具現。
原初の頃…いやきっとそれより昔の世界をも飲み込んだであろう地獄。
「だが、何で俺がリーダーなんだ?周りの意向から考えれば勇馬がいいんじゃ」
「お前が一番リーダー向きだからな。あいつはリーダーと言うより誰かと共に戦う戦闘員だ」
その一言にどこか俺は納得してしまうのだった。
**
俺こと勇馬はもう既に数週間はここで過ごしており、夏休みに入ろうとしていた。
朝起きるといつものように隣には椿がいる。
「勇馬くん…何する…だい?」
普段は凛々しい彼女だが寝てる姿を見てると落ち着くような可愛らしさがある。
「全く…お前って奴は」
俺はまるで子供でも扱うように頭に触れる。
そして、俺が目を細めて笑うと共にパチリと椿が目を開く。
「…おはよう椿」
「おはよう。全く君は意外と私を甘やかしてくれるな」
嬉しそうにそう言って起き上がる彼女。
俺は咄嗟に手を引っ込めようとするが彼女にしっかりと掴まれており、ゆっくりとその手は頬に当てられる。
「それで、これでいいのかい?君は」
その質問に俺は答えを出せずにいた。
心のどこかでこのまま流されるのも悪くないのかもしれないと思う自分がいる。
しかし、そんなの許さないと叱責する自分もいる。
どっちの声が本当の自分なのか分からなくなっている。
だが、一つ言えることがあった。
「良くないな…良くねぇよな。少し遅すぎるかもしれないが動くか」
ここで引き下がれば俺は何かを裏切るのではと言う不安があった。
その不安だけは解消しなくてはいけない。
だから、俺は…このままでは終わらせない。
「だからお前の助けがいる。一緒に戦ってくれないか?」
「勿論だ。私は既に君の剣である」
そう言って跪く椿。
その時、カーテンがゆらめく。
風が部屋の中に入ってきて違和感を感じる。
いつ、部屋の窓を開けた?
そう思っていると事態が動く。
「ようやく、僕の知る君になってきたよ」
窓に立っている少女がいた。
「千那」
「さ、君の覚悟を知りたいよ。僕はさ」
そう言って彼女は一通の手紙を俺に手渡して「待ってるからね」と言って外に出て行ってしまう。
俺と椿は何が起きたかと呆然と立ち尽くしていたが、少し経ち手紙の内容を確認する。
その内容は
久々に七千文字と少なめ。
ちなみに最後はミスではありません。
今回は少し引っ張ってみようと思います。
久々の連続投稿でちょっと嬉しい自分がいます。
おまけ(関係はあるけどない。深く考えず)
二人から逃げたある日の昼休み
勇馬「なんかお前って変だよな、色んな人から無視されてるし」
凛海「ふっふっふっ、俺は限界を越える存在だ!」
勇馬「あ…(察し)」
凛海「ちょっ痛い奴みたいな目で見るな!」
凛海「という訳で勇馬も一緒に限界を越えるために軽く100キロ走行こうぜ!」
勇馬「いや、頭おかしいのか!?」
凛海「おかしいんじゃない!最高に突破してるんだ!」
勇馬「意味わかんねぇよ!」
凛海「勇馬も限界越えようぜ!」
勇馬「いや、そういうの間に合ってんで…てか、何で俺はお前と二人で飯食ってんだ…」
凛海「さぁ?」
勇馬「何でそこは突破したからとか言わないの?」
凛海「最高にハイだからじゃね?」
勇馬「さっきまでの熱さはどこに消えた!?」




