荒廃都市の戦い 最終戦
北条 勇馬と二条 燈がぶつかる瞬間…
と、その前に二条燈という存在について語っていこう。
彼の生まれは信条と呼ばれる家から連なる二条家の一人息子だった。
それが原初での生まれだった。
彼の経歴は一言で言うなら一般人。
確かに良家の息子として生まれたものの原初の時代に権力が意味を為すのは一部の王族のような最高権力者の類だけだった。
故に彼は良家の息子と言えでも厳しい環境いや、その時代で言うなら至って普通の環境で育っていた。
そう、ある英雄が来るまでは…
引力と斥力の英雄、南条 義彦=グラィティ(なんじょう よしひこ)と呼ばれる英雄の介入だった。
英雄のしたことは簡単だった。
燈の拉致。
たったそれだけのこと。
燈は程なくして水槽に入れられて様々な改造手術を受けた。
燈の実験の頃にはもうすでに多量の失敗を繰り返した後であり手際良く実験が進んでいく。
(大丈夫だ…死ななければいつかは…)
燈はそんな希望を持ち、日々の苦しみを耐え続けていた。
きっと救いがあると信じて
いずれ解放される時を夢見て
願い、ずっと一人で耐え続けていた。
そんなある日のことだった。
燈にほんの少しの自由が与えられた。
もちろん監視付きだ。
それでも、燈は久々の外に希望を抱き遺跡の外に出る。
「…な、なんだこれ?」
そして、その先で見たのは知らない光景だった。
彼の知る町は存在していなかった。
「と、遠くに行ったからだろうな…」
それでも燈は希望を捨てずにそう言い聞かせる。
しかし、そんな希望を持つことさえ彼らは許すことはなかった。
「目を逸らすのはやめなよ…ホントは気がついてたんでしょ?」
「…」
監視役である女の子がそう言う。それに対して燈は答えることができない。
それは理解不能の沈黙では決してなく、肯定するように目を逸らしていた。
気づいてないわけがない。
違和感なんて何回も存在していた。
実験の過程で気がつけば人が変わり、燈の知る人のほとんどはすでに年寄りになっていたりしていた。
「俺の帰る場所は…」
「…」
時間の流れと共に消えてしまったんだな
**
あれから時は流れて燈は一人じゃなくなっていた。
それは自分より前の実験体である存在がいる場所に移されたからだ。
そこで彼の監視役である少女が前の実験の最高傑作であることを知った。
彼の基本的な実験は終えており後は調整をするために水槽内で長期休眠を行う予定だった。
「明日からか…眠る時間を考えるとお前と会うことがなくなるんだな」
「…そうだね。私も休眠はするし会おうと思えば会えるけどね」
「そうか、それならよかった」
そんな風に細やかな幸せがあろう未来へ想い馳せていた。
しかし、そんな彼に何かイメージのようなものが流れ込んできた。
「ぐっ、な、なんだ!?」
「どうしたの?急に頭を抱えて」
「…」
心配になって監視役の少女は声を掛けるが彼からの返事はない。
彼は虚な目である一点を眺めながら何やら呟いていく。
「…これは記憶?いや、違う。何かが違う。記憶とは少し」
「どうしたの!お願い返事して!燈!」
「そうだ…これは違うんだ…二代目は消えたんじゃない。いや、そもそも前提がおかしい」
「ねぇ、返事して!」
「どうして一人の人間が世界の核になれるんだ」
真実。
彼は確かにそれに辿り着いた。
いや、辿り着いてしまった。
今、世界に起きていること、世界が成り立つこと。
歪過ぎるその形を彼ーーーー二条 燈は見てしまったのだ。
「そうだ…結局…この世界救いは無い」
「燈!」
ゴッ!!
という鈍い音が響く。燈はその音と共に見ていたものが真っ白に染まる。記憶も白く染まっていき、何が起きたか抜け落ちたかのようにボーッとした様子で少女に殴られたであろう頬を撫でていた。
「…俺は」
「世界に救いがないとか意味わかんないことを突然呟き始めて…目の焦点は合ってないし…怖かった…」
少女は涙を流す。
彼がどこか遠くへ行ってしまうような気がしてしまったから。
しかし、そんな彼女の思いとは裏腹に彼は目を見開いて立ち上がる。
「そうだ…ここから逃げよう」
「え?急にどうしたの?」
「逃げるんだ!こんな場所から!こんな世界から!」
「だから一体どうしたの!?怖いよ燈」
燈は蒼白な顔で首を振るだけ。
まるで何かに怯えるように…彼はひたすら逃げようと言い続ける。
「もうやめて!不気味だよ…」
彼女は怖くなり、そう言ってその場から逃げ出してしまった。
「…」
一人残った燈は空を見る。
その表情には何かを恐怖するように怯えていた。
**
「本当かな零」
「は、はい。どうやら、記憶の混濁が見られるようで危ないように見えます」
零こと燈の監視役である彼女は彼女の生みの親である研究者に報告をしていた。
「なるほど。やはり他の人災や英雄のクローンとは違い真実の英雄は何か別の存在なのかもしれないな」
「私には分かりかねます。私は多少の遺伝子操作があるとは言え二代目真実を元にしたクローンの最高傑作のはずではあるのに今回の件は起きませんでした」
「ふむ、それも考慮すべきだな。にしてもやけに肩入れしてるようだな」
「しっかり監視はしていますが一応は彼と同じ立場の存在なので許していただきたいですね」
「いいさ、初めから実験で生まれた存在が思い通りに動くとは思っていない。好きにするといい」
研究者はそう言って奥の部屋へと入っていった。
報告を終えて安堵のため息を漏らす零。
(本来私に発言権などはない。全員が全員彼のような研究者なら燈みたいな被害者は出なかったのかな)
彼女が最近考えることはそんな事ばかりだった。
もしも…
そう言ったものを続け、どうすれば自分達にとって最良の未来が待っているのかと考え続けていた。
そんなifなんて何の意味もないことを理解しながらも考えずにいられなかったのだった。
そんなものが存在しては自分の存在がないこと頭から抜けながら…
そんな時だった。
ジリリリリリリ!!
と警報が鳴る。
「こ、これは…」
人災が現れた時に鳴る警報である。
いや、正確には違う。
一定以上のエネルギー量を持つ人災が観測がされた時に起きる警報である。
そして、その基準というのが…
この施設の持つ戦力じゃどうにかならないものを指している。
しかし、それでも零を始めとした戦闘が可能な存在は人災の足止めをしなくてはならない。
彼女は仕方なく現場に向かおうとする。
「あ、あれ?」
しかし、彼女の足が望むように動くことはなかった。
足は震え、固まってしまっていた。
「行かないと…行かないと…私はこの為に作られたんだ…戦わないで生まれた意味はなんだ!!」
自身を奮い立たせるように叫び震えている足を叩く。
奥歯を噛み締め、震える体を無理やり押さえつける。
「行かなきゃ」
**
一方、燈は人災を前にしても恐ることはなかった。
彼は本来は戦闘員ではない為、研究者と共に逃げ出す必要があった。
しかしこの混乱の中でその疑問を持つ者はいない。
ただ、見ない戦闘員だと全員、人災否、災害である存在、一体の魔人を倒さんと燈は前に出て行ってしまう。
「外なる者の眷属…いや、カケラ?なんだろう?人の感情からできてる?いや…」
彼は魔人について考えていた。
人間の感情から生まれる化け物。
それが人災。
しかし、燈からして見たらどこか違和感があった。
その存在がまるで別な意図があるように気がしたのだ。
何故それが分かるか分からない
何故それを知ることができるか分からない
いや、初めからわかっていたことだ。
分からないわけがない。
だってそれは…いや、それこそが
「うっ…頭が…」
しかし、彼がその答えに行き着くのを阻止するかのように頭痛が彼を襲う。
そうしてる間にも人災は増えていき、やがて研究所を取り囲むように群がってきていた。
「終わりだ…」
誰の言葉か分からない。
前線に立たされた戦士達かはたまた結局は一人として逃げることができなかった研究者達か…
それは確かに誰かの呟きだった。
それと共に
地獄絵図と呼べるような光景が辺りに広がった。
人災とは食らうために存在するわけではない。
人災は生物とは呼べず、供給するものもなくただ破壊と殺戮を広げる危険な存在と言える。
殺されたもの達の亡骸は踏み荒らされ、火は辺りに散らかり、地は割れ、恐怖と絶望の声が辺りに響き渡る。
そんな中…燈は動けないでいた。
足は震え…堪らずこの場から離れたいと思えてしまった。
「どうしろと…いうんだよ」
目の前に広がる光景は知ってる人が死んでいく光景…
どんどんと人が血を出し倒れ、踏まれて原型を壊して行く。
それなのに何故だろうか…
何故なのだろうか
ー自分だけが狙われていないのは
ふと、燈はそれに気付いてしまった。
「…おい…なんだよそれは…」
そこには鏡が落ちていた。
そして、そこに映るのは
体の半分が機械とエネルギーの塊で異形化した自分の姿だった。
燈は驚きはしているものの頭のどこかでは理解していた。
自分は紛れもない人災であると…
燈の体には人災の種となるものが埋め込まれていた。
それはこの人災騒動によって芽吹き始めて、そして今この瞬間に目覚めた。
その人災の力は脳を侵食しており、とてつもない破壊衝動が燈の中で暴れていた。
(おかしい……人災はこんなのではない!違う…いや、違わない…)
矛盾するような考えが燈の中で暴走する。
ただ、何もしたくないと思考がだんだんと鈍っていく。
あんな風に暴れたくない。
自分はその加害者でありたくない。
そんな考えが彼の甘えを作った。
人災であることを目を背けて何もしなければいいと目を塞ぎ、ただ固まるだけ…それは決していい選択とは言えない。
いや、選択ですらないのだろう。
それは純粋な自分の本能に抗うことを諦めたと同義なのだから。
そして、彼の意識は深い深い闇に包まれていくのだった。
彼が目を覚ますと目の前の光景に声が出なかった。
「…なんだよ…これ?」
嫌に日が差しており、眩しいくらいに目の前の光景を照らしている。
そこにあるのは血だった。
「嘘だろ…いや、いくらなんでも…」
知ってる存在の死体がいくつもある。
燈は首を振って何かを否定しようと一歩…また一歩と遠ざかろうとする。
その時、確認してしまった。
してはいけないことだった。
「嫌だ…嘘だ!嘘だ!俺が…俺が…」
手にこびりついた血…いや、それだけではない爪の奥まで入り込んだ人の肉片…
口を確認すれば似たような血の味となにかの肉片があった。
「やめろ…やめてくれ!」
止まった時間が動き出すように彼は認識し始める。
足元に流れてくる血を、充満した血の匂いを…
身体中にこびりついた血は消えない。
彼がどんなに水を生成して洗い流そうがごひりついた臭いが消えることはない。
そんな時だった。
何かの呻き声が聞こえる。
「…誰か生きてるのか?」
その声の主に縋りたい一心で燈はいるであろう人を探し始める。
しかし、どこに行ってもどこ見ても血と死体しか、無く先ほど聞こえてきた声が幻聴なのではと思い始めていた。
しかし、そんな時だった。
「…いた」
そこにいたのは6人の人だった。
全員が全員半身を失っており、生きているのが不思議と言わんばかりのだった。
そして何よりも彼の心を揺さぶったのは…
「零…なんで、お前が…」
「…っっ、どうやら…生き残ったの私達だけみたい」
彼女だけは唯一、意識を保って他5人の保護を行っていた。
6人の傷からは血が出ないように紐などで塞き止められており、近づけないように硬い障壁が張られていた。
「あはは、情けない話だよね。私たちは模倣すべき存在を超えるために造られたのに…それを超えられずに生死を彷徨うなんてね」
「…仕方ねぇよ」
燈の返事に零は僅かな怒りを覚えていた。
彼女は知っている彼がしでかしたことを…
しかし、
「どうしてかな…あなたを恨めないのは」
その言葉と共に零は気を失う。燈は急いで彼女の側へ行く。
「くそっ、早くこの傷をどうにかしないと…」
彼女はすでに息絶え絶えで、目が開かれることはない。
燈はどうにか傷を塞ごうとするがろくに道具もないこの状況で傷を塞ぐなんて出来ず血が流れていく。
「くそっ!何が二代目だ!何が真実だ!史実には何も残されてないのに何をしたかすら怪しいのにそんなもののために…」
彼は吐き出す今までの不安を…
しかし、彼の力で彼女を救うことはできない。
そもそもの話この研究そのものにだって問題が存在していた。
まず、二代目という存在はどうゆう訳か『いた』とされてるものの、それを裏付ける資料も何も無く一欠片のみ存在した痕跡から『いる』とされていた。
しかし、いくら何でも残った逸話にある行ったとされることがおかしかった。
億と呼ばれる人災の群れをたった一人で倒したという逸話だってあった。
彼らはそんなありえないものを実現しようとしていた。
いや、正確に言うなら研究者達はこの逸話を信じなかった。
その上で逸話を本当のことにしようと人災にまで手を出していた。
そして、それがいけなかった。
「何で…何で使えないんだ!」
彼がいくら頑張って傷を治そうとしてもたった少しの傷も治すことはできない。
彼の持つエネルギーを使えば本来であれば多少なりとも傷を塞ぐことをできる。
しかし、一切の傷を治すことができなかった。
それは燈が人災だったからに他ならない。
人災そのものは言わば人間の破壊欲求などと言ったものの集合体。
そんな存在に治す力があるわけが無い。
正確に言えば彼の持つ元の力が少しでも人を治す力に傾いていれば治すことはできた。しかし、治す力が少ない燈は人災という存在になってしまったことによりその力が失ってしまったのだ。
そして、燈が心のどこかで諦めが出てきた頃だった。
「彼らを助けたいのか?偽物」
そんな男の声が聞こえた。
燈はその声に反応して振り向く。
そこにいたのはどこか老齢な雰囲気を漂うローブの男だった。しかし、顔は見えないものの声などは若くチグハグな印象があった。
そして、
「え…」
燈が辛うじて出た声がこれだった。
息が止まりそうな程の緊張が燈に走る。
そもそもが一体何故にそんな存在がここにいるのかすら分からない。
そんな考えが燈が過ぎる。
しかし、間違えであるはずがない。
「…うそ…だろ?」
「偽物とは言えでも本質を見る力はあるのだな」
「なんで、何で…今この世界…いや、この宇宙内に真実がいるんだよ」
「失礼な物言いだな。自分がこの世界にいては不都合でも?」
「不都合も何も!お前は…」
「その前に質問に答えてもらおうか」
言葉を遮るように男は発言する。
燈はその威圧感に負けて思わず黙ってしまう。
「もう一度聞こう。君は彼らを助けたいのか?」
「そりゃ、助けたいよ」
「それならば協力しよう。まぁ、その前にこれを見てもらうが」
「それは?」
見せられたのは何か液体の入った小瓶だった。恐ろしく透明に澄んだその液体はぱっと見、空の小瓶なのではと錯覚を起こしてしまいそうなほどであり、それを見た燈に強い頭痛が襲ってくる。
(あれはなんだ?一体…いや、分からない…分からない…分からない分からない)
「やはりこの液体の正体は分からずか」
男は落胆したようにその液体を眺めていた。
「ふむ、まぁいい。助けて…おい、どうした?」
男は気を取り直して小瓶を仕舞った時、燈に起きた異変に気がつく。
そう、彼は気がつけば静かに息を引き取っていたのだ。
「いったい…なにが」
そうして、彼が次に目覚めた場所はどこかの水槽の中だった。
そして、彼が
北条 勇馬
が彼の前に立っていた。
**
時は現在と戻り、これまた勇馬と燈がぶつかる少し前。
別働隊として動いていた鏡、雪音、空、悠乃の三人はというと…
この研究所の最深部である場所に来ていた。
「これが…」
「間違いではないと思う」
「これがパンデミックの元凶か」
「空、パンデミックの意味違うよ」
鏡はそれを見て息を呑み、雪音は確認を取る。
空と悠乃は確かな確信をしていた。
そして、この4人のすることは一つ。
四人の目の前にある災害の核である玉型の何かを壊すこと、または封じることである。
「少しずつだけど無効化はできる…でも」
「悠乃無理はするな…何かを利用してるな力があまりにも大き過ぎる」
空は観察するように眺めるが、あまりにも巨大なエネルギー当てられて僅かに意識が遠のく…
「これは…未だこの核から溢れてくるやばいエネルギーは大きくなるみたいだな…」
「このままだと、私達も耐えれそうにないね」
「そんなものじゃない」
「雪音さん、多分これ宇宙なんて規模じゃないと思うよ」
二人は雪音と悠乃の推論を聞くとさらに顔を青ざめる。
「待って、これが宇宙規模じゃないとして、どう言うこと??わ、鏡馬鹿だからわかんない」
「パニクらない。いや、でもパニックにはなるかな」
「このエネルギーの広がり方は多分、空間の歪みを作ってるの。それは宇宙全体に広がるとかそう言う次元じゃないと思う」
彼女達は説明を続けていく。
それは、原初という別の世界を知るものだからこそ理解したこと…。
そう、宇宙一つが世界とすると、この災害は際限なく広がり、やがて別の宇宙、要するに別世界にまで広がるものだと雪音と悠乃は考えている。
「なるほどな。いや、俺自身珍しいくらい何一つ分かっていないがヤバいってことは分かった」
「まぁ、要するに私達はこの核を封印してぶっ壊せばいいと」
「あ、うーんまぁ、そんな感じ」
「二人とも脳筋思考だけどそんな感じだね」
覚悟を決めた四人は構える。
そして、一番最初に動いたのは悠乃だった。
エネルギーの塊が悠乃から放出される。
それと共に核から出てきた禍々しいオーラは消えていく。
彼女は特殊な力を持っており、外的に出たエネルギーを打ち消す…正確には鎮静化させる能力を持っている。
それは自分のエネルギーも同様であり、自身のエネルギーを攻撃に使うことはできない。
しかし、空などの助けを借りて能力が鎮静化させる一瞬のタイムラグによって能力によって作られた剣を振ることができる。
それが彼女の技の正体。
その次に動いたのは雪音だった。
広げられた翼が辺りを照らす。
そして、その翼は黒く染めていく。
その翼は彼女の意思とエネルギーの下で作られた擬似的な器であり、外の力を取り込むことができる。
そして、その翼がゆっくりと悠乃が消せなかった核のエネルギーを吸い出していく。
その次は鏡だった。
核だけが丸裸となったところに彼女は鎖を打ち込んでいく。
そして、その手には鍵が握られている。
「開け…封印の扉よ!」
それと共に出てくるのは一本の剣だった。
その剣は核に打ち込まれて、深く刺さる。
それと共に広がる鎖によって核の力が急激に弱くなっていく。
彼女の力は封印であり、鎖という可視化した概念ではあるものの記憶から力までありとあらゆるものを封じることができる。
雪菜と勇馬が力を制限するために打ち込んだ鎖も彼女の力が元だったりする。
そして、最後に空が動く。
彼は他とは違いに何かを行うとせずに核へと近づいていく。
そして、ゆっくりと両手を差し出す。
そして、その手が核に触れる。
ミシッ
その瞬間、ヒビが入るような音が響く。
そして、彼がしっかりと掴んだ瞬間それは起きる。
ミシッミシミシミシッ
と、ヒビが広がっていき最終的には核が割れる。
彼の力は内的、対象が己に留めているエネルギー鎮静化して破壊するものである。
故にエネルギーの集合体である核は呆気なく壊れる。
そのはずだった。
核は砕けていない。
いや、違う。
「これは…」
「雪音…これは一体!?」
「力がさっきより大きい」
「あくまでさっきのは力を抑えるための外装かよ!」
そう、核だと思われていたのはただの封印装置だったのだ。
本当の核のエネルギーが垂れ流しにならないようにという。
要するに核は元より封印されていたのだ。
封印された場所から徐々に漏れ出ていたエネルギーで一つの街を崩壊寸前まで追い込んでいるのだ。
そんな強大なものの封印が解けてしまった。
それは漏れ出すエネルギーに制限などなく、濃密なエネルギーが辺りを侵食していく。
「くそっ、そういうことかよ!」
空は忌々しそうに核を見る。
そして、地面を踏みしめて近づこうとする。
この場にいた四人全員。
本能的に何が起きてるか朧げながらも理解はしていた。
しかし、大き過ぎるものを正確に測ることはできない。
故に、空は手を伸ばす。
自身の力で打ち消すことができると考えて核へと手を伸ばす。
「空!ダメだよ!!私達の補助も効かないソレを壊すことはできない!」
悠乃は理解していた。
これがどれほど危険なのか…
そして、鏡と雪音もまた理解していた。
これを今のメンバーでどうにかする術はないことを…
故に…
「ごめんね空くん」
そう言って鏡は空を鎖によって動きを制限する。
「な、何をしやがる!あれを…あれを早く…」
空はそう言って鎖を砕こうとするがヒビすら入ることはなく、きっちりと空を拘束していた。
「な、何で…」
「そりゃぁ、私はこれでも巫女とか呼ばれててね。この鎖は私の能力で具現化してるけど特別性なんだ」
鏡は誇らしげに胸を張る。
しかし、空はそんなことを聞きたいわけでない。
「そんなこと聞いて…っっ!」
「落ち着く…落ち着かないともう一回」
反抗的だった空を止めたのは雪音だった。
彼女の翼によって打たれた空は顔を腫らしていた。
「まぁ、安心して…そろそろ時間だと思うから」
鏡はそう意味ありげのことを言いながら核の周りに剣のような見た目の杭を刺していた。
「えーっと、二人は何を?」
そして、その鏡のする作業を手伝いをする雪音を見て悠乃は当然の疑問を抱く。
「私達の知る能力ってのはあくまでも解明される部分の話ってわかる?」
「まぁ、それなら…勇馬や私の能力は今のところ不明点が多いとか言われてるし」
「その中でも詠唱や儀式と言ったものは完璧な解明は至っていない。ただの言葉如きがどうして現象を引き起こすのか?それとただの図形が大きな力などと言った力場を生み出すことができるなんて到底思えない。能力の回路を作るとかあるけどそれは一体何なのか?まぁ、そこら辺の専門分野にするのは六賢者だけど、私達はこう証明をしようと思っている」
鏡はそう言って鎖を一つ一つ取り付けていく。
そして、鏡の言葉を続けるように雪音が話し始める。
「これは一つの科学」
「科学?それってこの世界のルール?」
「当たりとも違うとも言う。私達の知る中では私達が技法と呼ぶ能力を魔法と呼ぶ人もいる。そして、私達が魔法と呼ぶ技術をそれと同じで魔法と呼ぶ。なら何故私たちは呼び分けたのか?何故私達はそこに違いがあるのか?」
「それは…俺達の解釈は細かくしすぎたからじゃないのか?」
空の返答に雪音は首を振る。
「違う…私達が技法という力を霊格という力を使えてしまっているからに他ならない」
「まるで使えちゃいけないみたいだな?」
「多分、本来なら使えない。そう、人間の体が本来持つ力…いや、使うに適してるのは間違いなく私達が認識している魔法…そして技法はその肉体…いや、世界に属さない力」
空はそれを聞いた時点でまた小難しい話と聞き流し始めていた。
そこで再び鏡が話し始める。
「要するに技法や霊格と言った力はこの世界を効率よく干渉するための力なんだよ。自分の世界を作るための力。二人はその傾向が強い。力を抑制や崩壊といった形でね」
「ふむ、少し難しいけど…私達は干渉能力が強いということでいいの?」
悠乃の疑問に鏡が頷く。
「本題に戻るけど、何をしてるかだっけ?
それは、今この環境を一つの儀式場としてる」
「え、でもそれって大きなエネルギーがこの場にないとできないんじゃ」
儀式とは周りに存在する大きなエネルギーを使いやるもの。故に行うには場所というのが重要なピースとなる。
しかし
「だから、今からそれが来るから作ってるじゃん」
彼女は知っている。
何が起きるかを
**
「…はぁ…はぁ…勝った」
刃月はそう言って瓦礫に寄りかかる。
呼吸をするのも辛い状態であり、刃月は立ってるだけで目の前が真っ暗になりそうだった。
「逃げて…夢宮 刃月」
「今…俺のなま…」
零の言葉に対して刃月話そうとした時、急激に強まった有害なエネルギーによって声が出なくなる。
僅かながらも刃月は正気を保っているものの、意識そのものは今すぐに飛びそうになる。
「早く…逃げて!もう、これは誰にも止められない!」
零から溢れる黒い何かを刃月知っている。
「嘘…だろ……それは……人…災」
人間と人災が一体化するという話は珍しくない。
しかし、彼女から出てくるのは明らかに彼女と人災別々の存在としてそこにあった。
(まだだ…まだ堕ちれない)
刃月は必至に意識を保とうと体を起こそうと力を入れる。
しかし、体力も力も底についた体は言うことを聞かない。
(こんなところで止まれば…勇馬…いいや違う。3代目真実に認められた影の名折れだ)
刃月は立ち上がる。
身体中の力が抜けていくことがわかる。
それでも、必死に力を振り絞って立ち上がる。
「こんなものに俺が…堕ちるかよ!」
刃月は声を上げて意識を覚醒させる。
そして、目の前にある黒い人災…
いや、何かに触れる。
(ぐぅっっ!やっぱりそうだ。これは俺達の知る人災じゃない!)
体そのものに黒い何かが侵食してくる。
段々と真っ白な肌が黒に染まっていく。
頭の中までもが真っ黒になっていく感覚がある。
虚無
その言葉が似合うほどにまで刃月の思考は消えていく。
段々と…段々と何をしてるのか
それさえも刃月にはわからなくなっていた。
完全な虚無。
「…」
そんな時だった。
何か声が聞こえた気がした。
**
勇馬と燈の衝突。
それは一瞬の攻防だった。
いや、違う。
攻防なんてものでもない。
ただの力と力の押し合い。
それはたった一撃同士のぶつかり合いにも関わらず、それによって起きた被害は常識外れの一言だった。
いくつも触手のように伸びた大地は溶けており、衝撃によって散っていた。
衝撃は決してその範囲に留まらず勇馬の通った後は大きく大地を抉っていた。
そしてなによりも、彼らが本当の意味でぶつかった場所は大きなクレーターが出来ており、その真ん中で燈は倒れていた。
「はぁ…はぁ、ありがとうな勇馬」
「ようやく正気に戻ったか大馬鹿野郎。今度こそお前の命を守れた…でいいんだよな?」
原初の頃勇馬は燈を助けることができなかった。
彼は死んでしまい、結果として勇馬の望む結果は得られなかったのだ。
「いや、すまないがそうじゃないんだ。勇馬…聞いてくれ」
「…まだ、何かあるのか?」
「その通りだな。俺の中にあるのはただの人災ではない。人に害意を与えるためだけに作られた人災らしくてな…その結果がこの町の惨状だ」
ゆっくりと燈は説明していく。
この町がこうなった原因と自分が置かれている現状を…。
纏めていくとこうだった。
原因となる核は地下研究所の奥深くにある。
しかし、その核は下手に触れれば人の自我そのものを壊してしまうもの。
燈と零の二人はその核のエネルギーで作られた人災を機械と一緒に植え付けられてしまったこと。
そして、その人災は核が放つエネルギーを供給し続ける限り存在し続け燈達の命ともリンクしている。
要するに現状を打破しようとすれば燈と零は死ぬ。
しかし、二人を殺さないという選択肢を選べば下手すれば世界自体を滅ぼす可能性を秘めている。
「あはは、やめてくれよ…馬鹿な俺になんつー厄介なものを押し付けてくれてんだよ!」
勇馬が軽く絶望し始めたその時だった。
辺りに存在していた有害なエネルギーの密度が増した。
(…意識が…手放せない…ここで手放したら…)
燈からは黒い何かが溢れ出てくる。
いや、違う…出てくるのではない。
集まってきているのだ。
そして、それは形作る。
何と聞かれれば悪魔と形容するのが一番近いだろう。
黒い機械染みた翼。黒くて大きい角。黒い靄を纏い勇馬をじっと見つめていた。
『サンダイメ、キサマヲコロス』
勇馬僅かに笑っていた。
勝てるとかそんな希望ではない。
そこにあったのは絶望だった。
(なんだこれ?勝てるわけがない。今まで対峙してきた相手にも化け物はいたけど…これはそんなものじゃない)
理不尽そのもの
それが今の燈だった。
感じ取れるエネルギーからむしろ弱くなったような気もする。
しかし、それは明らかに間違いだ。
溢れてるエネルギーだけなら読み取れる勇馬確信して言える。
溢れてる微量なつもりのエネルギー自体が勇馬のエネルギー総量よりも多いのだ。
(もう、対抗する術はない…どう勝てばいいんだよ!どうすればいいんだよ)
それでも諦めがないのはきっと元の質なのだろう。
彼のエネルギーは既に尽きており、何もできない。
しかし、それでも諦められない。
諦めきれない。
勇馬の手にはもう武器はない。
自分の武器はもうこの拳しかない。
ゆっくりと深呼吸をする。
そして、しっかりと相手を見据える。
燈…だったものは力を溜めている。
(できることは一つ…シンプルなものだ)
勇馬は構える。
目から、口から、鼻から、腕から、腹から、背中から、頭から、首から、耳から、足から、膝から、腰から、拳から
体の全てからしぼりだす。
血が沸騰するように熱くなっていく感覚を勇馬は感じていた。
それと同時に身体中の血管はち切れたのか血が出てくる。
「コネクト…20!!」
脳の200%…否、限界のその先…それは法則をも超える何か…
勇馬の体から血の気が抜けていく。
辺りの空間が揺さぶられるようにねじ曲がったような景色へと変わっていく。
勇馬の準備が整うと共に燈だったものの準備も整う。
そして、互いにぶつかり合う。
燈だったものは一気に近づいて伸びた爪で引き裂こうとする。
勇馬は拳を振るう。
**勇馬side
遅い!
遅すぎる!!
まるでスローモーションでも見ているような感覚だった。
相手の動きはコマ送りに感じるほどにまで遅く感じる。
しかし、それではダメなのだ。
俺の拳は更に遅い。
もっと、もっと早くだ!
絞り出せ!もっと、力を絞り出せ!
限界を…世界が超えられないその先に…
光そのものが揺らぐ、だんだんと思考が加速していく。
世界が止まったように感じる。
体がより重くなる。
それも気にしてる余裕は今の俺にはない。
迫りくる爪がいくら止まってるように見えようとも確実に俺の首へと迫ってきている。
もっともっとだ!
全てがモノクロへと変わっていく。
いや、違う。
これは…そんなものではない。
俺の視界は動いていない。
そのはずなのにこの戦場の全てを目視してる気分になった。
見える…今なら見える!
黒い靄に触れている刃月の姿。
儀式場を建てる鏡達の姿。
この状況で倒れながらも必至に戦う斎藤さん達や祓魔師の人達。
そして、遥かな上空で今、剣を引き抜こうとする存在も確認できる。
その剣は今引き抜かれる。
**数十秒前
疾風は現在、勇馬達の戦う王国の上空…雲の上にいた。
ヘリに乗っており今か今かと待機していた。
「あの、ボス?これは降りられないんですが…」
「なら、勝手に降りるとするか晴れたら頑張って降りるなり梯子を下すなりしてくれ」
疾風は運転手の忠告を聞いてドアを開ける。
「さぁ、降りるとするか」
疾風はそう言って飛び降りる。
そして、目を瞑って笑う。
「感じる絶望の声が…その分だけ希望を望む声が!」
そう言って手を掲げる。
「その希望を奇跡を生み出そう。だから、聞け!人民よ!そして、その声に応えろ!願え!お前達の望みは、希望はなんだ!」
確かに聞こえる疾風のその耳にはたくさんの声が。
『もう、戦いたくない』『こんな思いするのはもう嫌だ!』『誰か私を止めて!もう誰も殺したくない!』『こんなの俺達の望んだ未来じゃない』『ただ、普通の日々を望んでいただけなのに』『なんで自分ばっかりこんな目に』『誰でもいい!俺を殺してくれ!』『やめてくれよ…もう戦わないでくれ!戦わせないでくれ!』『なんで…なんでこんなことになったんだろう』『苦しい辛いよやめてよ』
「あぁ、分かったよ。思う存分ぶつけろ!そして、届けろ!ミリカル王の剣!」
彼の手を掲げた先に台座に乗った剣が現れる。それは小さな光の粒を集め形を持っていた。
「さぁ願いを叶えろ!」
剣が引き抜かれる。
その時、光が辺りを支配した。
暗く重い雲は晴れ、狂化を引き起こした有害なエネルギーは浄化されていき、狂化された人々が本来の姿を取り戻していく。
そして、
**
鏡達が作った儀式場に大きな力が通る。
それは疾風が送った力であり、鏡と雪音はそれを待っていた。
その儀式は彼女達だけではない空と悠乃の力を大きく増大させるために使われ、再び核の破壊のために四人は動き出していた。
悠乃は腕を軽く振るう。
たったそれだけで核の纏ったエネルギーの大半は沈静化される。
そして、雪音の翼が沈静化されなかったエネルギーを吸い出していく。
その時、核は抵抗するように自ら大きな力を放とうとする。
しかし、それは既に遅かった。
鏡の手によって力の放出を制限されており、抵抗は許されなかった。
そして、空の手が伸びる。
バギッ…バギバギッバギッ
バッギッン!!
今度こそ核が砕け散る。
**
黒く黒く染まった刃月の思考は疾風の力でも戻すことはできなかった。
「…」
透き通った白い肌、綺麗な銀髪は見る影もなく、黒く染め上げられた肌と黒い髪の何かへと成り果てていた。
そこに何か現れた。
「ようやく、ここに来れたよ。敵さんはどうやら、私の知り合いみたいだね」
それは少女と呼ぶには明らかに若くなく、女性と呼ぶには若い微妙な歳の女だった。
特徴的な赤と黒の入り混じった髪をしており、その手には杖に似た何かを握っていた。
刃月は薄れゆく意識の中で彼女を確かに目視した。
その直後をそれは起きた。
光だ。
少し違う。光とは違う何かの輝きが彼らを包む。
そして、刃月は目を見開き確かに認識した。
(なんだ…これは…分からない…分からない…何も分からない)
そこには理解を超えた何かが存在していた。光が刃月達に取り憑いていた黒い何かを取り除き、刃月と零の体はもう元通りとなっていた。
しかし、刃月は理解しようとしていた。
唐突に現れた女性がしていることを…そして、彼女について…知るはずの無い記憶が徐々に刃月を支配する。
しかし、彼女はそんな刃月の様子を知ってか知らずか光が消えると共に
「さてと、今日はよーく働いたぁ!てな訳で定時なんで帰りますか…って、私に定時なんてないや」
そんなことを呟きながらどこかに消えていくのだった。
**勇馬side
「っっ!」
体から大量の血が出て頭がぐらつく。
「ダメだなぁ……から、だが…言うこと…」
瓦礫の山の中で俺は倒れる。
いや、ここを瓦礫と呼ぶのは相応しくないかもしれない。
巨大なクレーターのど真ん中で俺は倒れていた。
黒い何かと燈の能力で大きく抉られた大地は遠くにまで吹き飛んでおり、何やら高い塔のようなものが遠くにあるように見える。
俺は手を伸ばす。
「こんなもんかよ…」
正直、自分の不甲斐なさに呆れてしまう。
結局、俺は何も出来やしなかった。
そう、俺は彼を助けることが出来なかった。
俺の手で彼を…燈を助けられない自分に溜息を吐く。
「何ため息吐いてんだよ…英雄さんよ」
俺の倒れてる横でぼろぼろな様子で座っている少年が話しかけてくる。
「あん?俺が英雄だって?やめてくれよ。結局は俺が救えたもんなんて微細なものだ」
「何言ってんだよこうして俺を…二条 燈を助けたのは間違いなくお前だろ?」
「冗談がうまいことで…実際みんな俺を英雄と言うが俺がいなくてもみんな救われていた。それに今回はあの人のおかげだからさ」
俺はそう言って起き上がると丁度着陸を終えた疾風を見る。
あいつも力をかなり消耗したみたいで降りた瞬間に体がふらついていた。
「そうか、あの光はあの人が起こしたのか」
「そうそう、あの人の能力は人々の持つ希望や絶望を糧として奇跡として力を発露させる。それが彼、疾風の能力」
「そんな力が…」
「仕組みは分からないがあるんだよ。そんなあり得ないような力がな」
本当にあの人の力は昔から化け物染みている。だからこそ彼は人々の上に自然と立っているのだろう。
そんなことを話してると疾風が俺達に気づいたようで駆け寄ってくる。
「てことで、一週間の仕事お疲れさん」
「あんたが出てくんなら俺達いらなかったらだろ!」
「すまないな。俺に仕事が入っててな。それと、今回の件は俺だけの力じゃどうしようもなかった」
そう言われて俺は何も言えなくなる。
文句は言いたいがたしかに疾風の能力だけでは恐らくこの結果を作り出すことは出来なかっただろう。
あくまで彼の出来ることは全員が望む希望を限りなく叶えること…そして、それは叶えられない願いなども存在する。
死者蘇生などと言ったことは不可能である。
彼の出来ることは癒すことと力の譲渡である。
物を破壊することなどは間接的となる。
そして、この狂化の元凶の核を破壊するには俺たちみたいに先に潜入してる人間が壊す必要があった。
「はぁ、全く…とりあえずこれで終わりで…」
その瞬間何か異様な気配を感じた。
「どうした?二人とも」
燈はそんな俺に疑問を持つが気のせいのような気がして俺は首をふる。
しかし、疾風の方も同じような感じか…何かあるのか…それともただの気にしすぎか
「なんでもない…きっと気のせいだ」
「そうだな、少々神経質になってるだけかもしれない」
「それならいいんだが二人して怖い顔するから驚いたよ」
とりあえず、緊張を解いて息を吐く。
そして、ようやく落ち着いたタイミング携帯が鳴る。
俺は誰からか分からず開くとそこには…
『北条 勇馬様へ。
炎の意思を持つ物を失いたくないのであれば戻ることを推奨します』
簡潔な文だった。それだけで何の話か分かる。
自分が消える覚悟の決着をつけて無理矢理に笑うバカの姿を。
「すまない!疾風、燈…今すぐ行かなきゃいけない!コネクト!10!」
そう言って俺は走り出す。こんなじゃ遅い!それでもいい!間に合わせることができれば!物理的な限界をもう一度超えてでも間に合わせる!
「たくっ、自己犠牲精神ってのはつくづく厄介だな!」
**
数時間後の事。
勇馬が去り、疾風がお偉いの人と復興について話してる状況を眺めている二人の男がいた。
「これのどこが楽しい余興なんだ?」
「おやおや、初代真実君は大変痛いことを言ってくれるねぇ」
初代真実と呼ばれた男は黒髪の男であり、どことなく勇馬と雰囲気が似ていた。
そして、もう一人の男は銀色の髪を持ち笑っていた。
「しかし、今回平穏に収まったように見えるが…そうではないのだよ。これが火種となるのだ」
「なるほどな…俺は面白ければなんだって良いんでね」
二人がふふっと笑っていると一人の少女が彼らに近づいていた。
それは六賢者の一人だった。
彼女は普段のような半透明な虚像ではなく生身の肉体を持ってして彼らの前に現れた。
「あなたが私の弟を騙くらかしたのかしら」
その言葉は初代真実に向けられた言葉だった。
「あ?誰かと思えばシャルロット リレイの姉か」
「知り合いなのかい?初代真実君」
「知り合いってほどじゃねーさ。ただのモンスターペアレンツならぬモンスターシスターってやつだ」
初代真実はそう言って彼女をみる。
彼女は舌打ちを軽くすると杖のような物を持つ。
「六賢者の一人、そして四盾の女神もとい巫女と呼ばれる私に喧嘩を売るとは良い度胸ね」
「良いねぇ!そー言ういかにも強者って奴は!その自信をへし折るのが楽しみだよ!」
初代真実は彼女が纏うエネルギーを見て興奮した様子でその身に宿る力を解き放ち、戦おうとする。
「はい、待ちたまえよ真実君」
「くっ、止めんじゃねぇ!あんだけの実力を秘めてる奴を見て戦うなと!」
「僕達の目的は確かに争いに身を投じることだ。しかし、それは今ではない。…違うかい?」
男の言葉に冷静さを取り戻した初代真実は自分の力を引っ込める。
「ちっ、分かったよ」
「すまないね。ブレイスの賢者君。僕達は君に構ってる暇はなくてね」
「逃がすと思ってるんですか?大地は剣、大気は炎、放てっ!『作成:剣』『火炎放射』」
彼女の言葉により大地が動く、大気が震える。
大地より作られる剣は二人の男を貫こうと射出される。
大気より現れる炎は真っ直ぐに二人の元まで燃やしていく。
「ちっ、本来なら俺がやりたいが仕方ないから先に引いておく」
「流石は初代真実。引き際は弁えてるようだね。僕がここはやっておくよ。『作成:剣』と『火炎放射』で良いのかな?」
男がテキトーにそう言うと全く同じ現象が起きる。
それは、彼女が行った攻撃全てを相殺していった。
相殺した勢いで砂埃が舞い互いに視界が塞がる。
「まさか、真似してくるとは…でも、そんなんで…」
そして、相殺された際に舞った砂埃が晴れる。
彼女が言葉を詰まらせる。
それはもうすでに人影ひとつもなかったからだ。
「逃したか。仕方ない帰るか」
彼女はそう言ってその場から去るのだった。
**side???
私はひっそりと状況把握のために勇馬達を眺めていた。
手に持つ携帯にはメッセージを送信した後の画面だった。
「みんな、ここからだよ。奴らが介入し始めたのは…さぁ、私達が誓ったあの人を守りましょう」
私がそう言うと共にずっと潜んでいた人影がいくつも出てくる。
それらは一人一人頷いて私の言葉を肯定する。
「さぁ、決戦を始めましょう。私達の主が望む最高の未来を繋ぐために」
久々に書けた…構想は練れても中々にどこで何を出すか難しい。




