荒廃都市の戦い 〜最終1
**刃月side
大きな穴が目に映る。
いや、そこまで大きなものではない…見た感じ1センチあればいいような穴が俺を覗き込む。
パッァンと破裂音が響くと共に眉間に大きな衝撃が走る。
眉間から漏れ出す血がその威力を語っている。
痛みと直接的な脳へのダメージによって頭が真っ白になっていく…その感覚を無くそうと思いっきり歯を鳴らして意識を保つ。
そうすれば自然と体が再生されていく。
少し前の自分の再生能力なら頭を貫かれた時点で大きなダメージとなり完全な再生は難しかっただろう。
しかし、今は違う。
感覚的に言うなら今までの肉体依存から捨て精神面へと依存先を変えてるような感覚だ。
「…死ね」
続いて聞こえてくる冷酷な言葉…次に映るものはまた違う穴だった。大きくはないのだろう…しかし、その中を嫌でも覗いてしまう。
これは…
俺を普通の弾丸で殺すのは無理と悟ったのか次に持ち出されたのはショットガンと呼ばれる日本語で分かりやすく言うなら散弾銃と呼ばれるものだった。
バァァッン
身体中に穴が開くそれは間違いなく貫通しており普段は空気に触れない器官が空気に触れて気持ち悪いようなくすぐったような異様な感覚を味わう。
それでも体は再生していく。
俺は自分を化け物じみてると思いながらも先ほどから銃を撃ってくる相手を見る。
目の前で銃を突きつけてきている少女は自分を零と呼んでいた。そして、何より厄介なのは俺たちの知る能力とは別の何かによって出てくる沢山の武器である。
あれではまるで武器の宝庫だ。
なによりも虚な目で的確に殺す気で来ている上に隙や油断もないときたものだ。
ターン制RPGで言うならこちらにターンが回ってこない…または攻撃が全て避けられてしまった状態である。
それでも彼女もまた出生はどうであれ人間だ…必ず何処かに穴が存在するはず。
剣を構える。
周りの様子を見るとかなり移動しているようで知らない通路にいる。そして、耳を澄ませばどこからか戦闘音まで聞こえてくる。
てか、地鳴りまで起きてるし崩れないだろうな…いや、いっそ…
「思いたったら吉日とも言うか」
俺は考えた事を実行する。
剣で軽く撫でるように振る。それは零を狙いそれを避けさせる。そして、すぐに攻撃に移行してくる零。
彼女が次に取り出したものはマシンガンと言う通称機関銃だった。どうやら、下手に一撃を打ち込むより再生の隙を与えない連射をする気のようだ。
衝撃自体は耐えればいけるが流石にショットガン以上に穴だらけにされれば再生できるとは言えでも危険である。
少し大きな風を起こして照準を狂わせることにした。
「っっ」
明らかに零はそれに対して歯噛みしており、その理由は彼女の素の腕力の低さと体重の軽さに起因していた。
ここ暫く観察して分かったことは彼女の4分の1は機械で作られていること、そして軽量化を重視し過ぎたせいかやけに軽い体重である。
それが何に関係するかと言うと彼女の取り出したマシンガンはかなりの重量のものであり、風などで揺さぶられれば彼女の素の肉体では支えきれないのである。
「悪いが引いてくれないか?」
「この程度で…私が重量操作できないとでも?」
本気の忠告は無視された。
仕方ない…前回のでヒントを得た更なる戦い方と言うものをするか…。
俺は巻かれていた布を外す…。
僅かに存在する照明によって自分の体が焼かれる痛みを味わう。
しかし、外さないと見えないものもある。
目の前に映るのは俺の作った能力の跡…斬撃待機線。
それは俺の剣の能力に存在するものであり、切ったタイミングを変えることができる技。これはあくまで切らないといけない為、結果的に意味はないように思える。
しかし、それは違う。
そこに斬撃の衝撃が生まれる為、例え切ってないものでも切ったものに接触してれば接触部分を切ることが可能である。
ただ、空気まで切った認識としてこの技を行うのは初めての試みである。
先程の斬撃は触れられていない。
空気を多少動かしたが常に空気とは移動しており、接触した瞬間をしっかりとねらわないといけない。
いくら、斬撃タイミングを変えることが出来るとは言えでも一振りでワンセットのため、接触した瞬間発動させてもかすり傷くらいの傷しか与えられない。
「何をしてるか分からないが死ね」
その言葉が放たれると共に大量の弾丸が迫りくる。
それを見て今だと剣を納刀する。
その瞬間、弾丸が砕け散る。それと共に先程切った壁が割れる。
「一体…何が…」
零は把握しようと何が起きたか見回す。
そんな中で上手くいかなかったと俺はため息を吐く。まぁ、それでもここまで出来ただけ成功だと思っておこう。
ガタンっと機関銃の落ちる音がする。
「な、なっ!私の…私の腕が!」
四肢と弾丸の全てを狙ったつもりが片腕と弾丸しか持ってけないとはな。
行ったことは言うほど簡単なことではない。
空気の流れを操り一番安全かつ切れるタイミングを狙ったのだ。
零は予想外のことに力が抜けているようだった。
このまま戦意喪失…はなさそうだな。
「まさか…片腕を失うとはな…と言うと思ったか!」
その言葉と共に零の右腕が再生される…いや、空気から腕を作り出してるから生成というべきか…。
ようやく、こいつの能力について当たりが付いた。
まさか、一番厄介な錬金術とはな…。
やっぱり生き埋め作戦にすべきだったかなぁ。
**
勇馬今、刹那の瞬間の思考の中で生きていた。
迫りくる、巨大な腕のようなコンクリートの塊や岩の塊が迫ってきており、避けるので精一杯な状況だった。
(これは…錬金術?しかし、こんな巨大な岩人形を作れるなんて聞いたことがないぞ)
目を見開き相手について探るが分かることは少なく、八方塞がりという言葉が似合うような状況だった。
(時間稼ぎは…)
考えながらも避け続ける…狭い通路の中では逃げ道は狭く少し避けるだけで壁にぶつかる…その壁にぶつかればその壁から同じように腕のような岩の塊が出てきてダメージを受ける…それは地面も同様…止まることができない…しかし、無駄に能力を使う訳にもいかない状況が続いていた。
(だめだ時間を稼いだところで何になる!倒す術を考えろ)
勇馬は考える。
ありとあらゆる可能性を術を…
(長期戦は無理だ…正面突破…逃走、交渉、弱点を見つける、短期決戦)
…
……
………
結論は出る。
(ダメだ…これじゃ倒せない。例え万全な状態でも勝つ術が…見つからない)
一瞬一瞬の思考がだんだんと薄れていく。
それでも動いて勝とうとするのは最早意地だろう。
それでも、ダメージを確実に負い続けて勇馬の思考がだんだんと薄れて消え入りそうになっていく。
そして、最後に迫りくる大きな口のような岩の塊が勇馬を飲み込もうとする。
しかし、それは叶わなかった。
光が見えた。
それは僅かなものだった。
しかし、そんな僅かなものが救いの一手となる。
天井が崩壊する。
口のような岩の塊が崩れ去る。
それと共に体を捻り勇馬は着地して大きく深呼吸する。
相手は現状の把握で止まってる事を勇馬は確認すると限界突破を限界まで引き出す。
出力で言うなら105%とでも言ったところだろう。
本来それだけの出力を出せば肉体は持たなく小さくはないダメージを負うはずである。
しかし、それなのに勇馬の体にはそれほどの傷ができずにいた。
それに気づいた勇馬は…
(まさか、100%以上を引き出したはずなのに…ここで制御ミス!?)
そう、想定より大きくなく…スピードも思ったより乗っていなかった。
よって起こり得る未来は…
「がぁっ!」
突然くる衝撃に勇馬は息を詰まらせる。そして、すぐに何が起きたか確認するが次の瞬間には次の何かが迫ってきていた。
(ガードに入らないと…)
捨身の戦法から一転して自身の身を守るように腕を前に出して体を固める。
しかし、それは予想外の衝撃によって簡単に崩れ去る。
背中に走る衝撃。
勇馬はそれによって一気に体の力が抜ける。
後ろからは岩の塊…否、岩でできた巨人の拳が勇馬を殴った存在だと認識する。
すぐにこの場から出ようとするが柔らかくなった地面に足を取られる。
燈は生き埋めにならないように先に上へ上へと行っていく。
勇馬は地面に足を取られて飛ぶこともできずにそれを見上げることしかできなかった。
腕を伸ばして飛べないかと必死になって足を動かす。
それでも足は思ったようには動かずにどんどんと奥へ奥へと吸い込まれていく。
まるで底無し沼に沈んでいくような感覚に勇馬は焦りを隠すことができていなかった。
段々と来る瓦礫によって勇馬には時間が無かった。少しでも遅れてしまえば生き埋めとなる未来が見えていたのだった。
**勇馬
足は地面に捕われて、逃げる術はない。
踠けば踠くほど足はどっぷりとハマっていく。
天井から落ちてくる瓦礫が少しずつ俺の周りを埋めていく。
手を伸ばすが届くはずもない。
飛んでいく燈の姿が小さくなっていく。
「燈…そうだよな…あの日俺は…」
思い出すのは燈の死際。
そう、原初の頃…俺が救おうとして救えなかった人間の一人だった。
**
原初の話だ。
俺はある事件を経てある王国でお世話になっていた。
「ハヤテさんハヤテさん」
「どうしたんだ、○○○○○よ」
ハヤテを呼ぶと返ってきた呼び名に俺は顔を引きつらせる。
「英雄名で呼ぶなよ…まぁ、聞きたいのだけど今回の遺跡調査…何故行うんだ?」
「全く、お前を英雄と認める者が少ないから呼んでるというのに…まぁ、いい。理由だったな?」
「うん、理由を聞きたい。あそこは基本的には今は使えないオーバーテクノロジーの塊だ…それを流用して豊かな生活になってるのは確かだが…」
俺は遺跡調査が無駄だと思っていた。
今なら分かるが原初では俺が生きていた時代より遥か昔には今の現代日本などのような科学が発展していたと思われる。
しかし、それは失われており、関係のない話だ。
「簡単に言えば…遺跡が活発化してるのが確認されたからだ。それの調査が今回の仕事だ」
「へぇ、遺跡が…俺の主観から行くと発電施設もないのにどうやって活発化させてるか気になるな」
「それは、都市からの盗電の可能性もある」
「昔なら盗電されてるかハッキリと分かったそうだけど…技術が低下してるこの世界ではもう分からないか」
俺はハヤテと話しながら気になる点を挙げていく。
彼も俺を呼んだのには俺なりの解釈を聞きたかったからだろう。
「はぁ、仕方ないだろう。人災という存在が現れてから文明の半分以上は崩れたんだ」
「確かに仕方ない。それで今回の遺跡の形態は?」
「数年前の報告ではビル型だ」
なら、そんなところを活発化させても意味はないな…。
そんなことを考えながらも俺はようやく重たい腰を上げて遺跡調査の準備を始めた。
そして、次の日。
俺達は遺跡の中に入っていた。
ハヤテが言ったようにビル型であり、34と書かれた場所が入り口だった。
その下を俺達は下がっていく。
遺跡にもよるが危険なものは少なく基本的に劣化して天然の落とし穴と化した床ぐらいしか命の危険はない。
「あ、ユウマ…そこ抜けるよ…」
「うわぁあぁ!」
「だから言ったのに」
まあ、天然の落とし穴に落ちるのは俺ぐらいのもので当時の遺跡探索のメンバーだったソラ、ユウノ、ユキネ、カガミ、ハヅキの四人に多大な迷惑をかけていた。
因みにハヤテは後ろで腹抱えて爆笑してた。
そして、10階に来た時…雰囲気が変わった。
今まではボロくて突然放置されたような廃ビルの探索だったのが変わり電気が付き明るい通路が浮かび上がり始めた。
「雰囲気が変わったな…みんな気を引き締め…ユウマ?」
ハヤテが周りを奮起させようと大きな声を出そうとするが俺は気になることがありとある部屋に入っていた。
そして、それを見つけた。
『終焉の一日』
そんなタイトルの付けられた本だった。
やけに印象的なものが沢山あったはずなのだが…内容の一切を思い出すことができなかった。
そして、俺はこう言っていた。
「何もなかったな…すまない。行こうか」
そう言って俺はこの場を去る。
しかし、俺の頭の中で一つの存在だけが頭に引っかかっていた。
友人を救うために勝てないと分かってもなお…死ぬと分かっててもなお助けるために一丁の拳銃を握って震える手で意地張った男の姿だけがどうしても印象に残っていた。
「全くなにしてんだか…」
「ソラ慣れたからって英雄に失礼だよ」
「大丈夫ユウマは一々そんなの気にしない」
「そんなことより、なんか嫌な気配がしてきたのだけど」
カガミの一言に全員がハッとしたようにある一点を見つめる。俺以外は
「え、何?あっちに何かあるの?」
「お前なぁ〜あの戦争で大暴れしたと思えないな」
「第一俺は戦闘特化でも万能系英雄でもない。基本的に戦闘はこの剣の力を頼りにしてるからな」
そう言って俊王を出す。
これを持ってる時は感覚が鋭敏になるので今まで感じ取れなかったものも感じ取れるようになる。
「…確かにあの先から異様な気配があるな…」
「…これは、ユウマに似てるような」
「えー、ハヅキ君それはないよ。ねー、三人とも」
「残念ながらユウノ達と違って俺は判別できるほど熟練じゃない」
「うーん、ユウマの気配を禍々しくした感じ?」
「ユキネが言うならそうなのかもね」
三人の反応にユウノは私の味方がいない!とショックを受けながらも平然としておりハヤテの方を見て指示を待っていた。
「とりあえず、あれが何か見てみる必要がありそうだな。その前に…ユウマの力で何か分からないか?」
「…何かノイズがかかったみたいに詳しいことは分からない…でも…」
わかることはあった。
何かのクローンがあそこにいる。
「そうか…」
しかし、ハヤテは何も聞かずに歩き出してしまった。
「え?おいっ!」
「安心しろ…俺の力でもある程度は理解してる…ただ、詳しいことが分かっていないのが残念だがな」
そう言って「進むぞ」と言って先に行ってしまう。ソラとユウノは「なんか、面倒くさい人でごめんなさい」と言わんばかりの疲れ顔で頭を下げてくる。
俺達は先に向かっていくとそこには五つほどの水槽があった。
それぞれ中には一人ずつ人間が入っていた。
「やはりクローン実験か…ただ、素体は別に見えるが…」
「いや、これは全部同じ素体だ」
「やはりそうか…でも、同じ素体ならおかしくねぇか?男女がそれぞれ存在してる」
ソラとユウノは疑問符を浮かべているが…
「この残滓…」
「どうかしたのかユキネ」
「ユウマ…このクローン実験…多分、私達と同じ存在が関わってる」
俺はそれを聞いて言葉を失う。
ユキネとカガミの時、強大な人災の封印の継続の為に二人が人柱に選ばれたのだが…
実情は違っていた。
封印はすでに何者かによって解けており、犠牲者として二人が呼び出されていたのだ。
「これは後に回収してこっちの方で保護する予定だが…まだ奥がありそうだな」
「これは…何かもっと厄介事がありそ…」
俺はその時気がつく。
水槽の中の存在が俺達全員に殺意をむけてることに。
咄嗟に近くにいたユウノとソラの体を伏せさせる。次の瞬間、俺の頬を掠めるように飛んでくるレーザーのようなもの…そして、向けられているのは指に取り付けられている銃口のようなものだった。
「ふぅ、改造人間と言ったところか」
幸か不幸か指からレーザーを出すのは一人だけであり、次々と水槽を割ってクローンが出てくる。
俺は息を飲む。
正確な戦力は分かっていないが推定では俺より上であり…ユキネとカガミと比べると少し弱いくらいだろう。
ハヤテ達の実力はハッキリとはしてない為に何とも言えないが相手の五人をこのメンバーで抑え切るのは難しいと思う。
「仕方ない…ユウマ。お前が先に行け…あとはハヅキだな。そして、嬢ちゃん二人は手伝ってもらうぞ」
「え、あぁ、二人はそれで大丈夫か?」
「あれを抑えるならそれが一番だと思う」
「いいんじゃない?正直、あれを倒すのは骨が折れるだろうし」
二人の意思の確認を取れた俺はハヅキを見る。
彼が頷くと俺とハヅキとで先へと走っていく。
後ろでは信じられないような音を鳴らして戦う音が聞こえてくる。
「ハヅキ!正直、何か嫌予感がする。そっちはどうだ?」
「嫌な偶然だな…」
俺はそうかと返事をすると先へと走っていく。
先程から濃密なエネルギーが俺たちを押しつぶさんと放たれており、明らかに歓迎はしてくれてそうにない。
ハヅキもそれに気付いてるようで布で見えないが嫌そうな素振りは見せている。
そして、二階。
そこは柱以外何もないフロアだった。
しかし、部屋…いや、フロアの真ん中には一人の少女が立っていた。
「侵入者に告げます。今すぐに帰りなさい。そうでなければ…殺します」
その一言と共に少女の手から拳銃が生み出されて俺たちに突きつけてくる。
「侵入者…ねぇ。君達は何故ここにいる?そして、何者だ?」
「答える義務はありませんし。答えられるものではありません。一つ言えるのはここは本条のうち東と南の家が作った研究施設です」
その言葉に俺は顔を引きつらせる。
本条…だと?
「そりゃあ、余計に帰ることはできなくなったな」
「ゆ、ユウマ!?」
「そうですか…では…」
少女はゆっくりと火花を散らせる。
そして、それが終わると共に
「死んでください」
一筋の光が見えた。それは無慈悲に俺の肩を貫く。
「っっ!」
痛みは遅れてやってくる。
一体何が起きたのか理解ができない。
理解をしようとする瞬間には再び一閃が走る。
次は足が貫かれる。
「ユウマ!ちっ」
ハヅキもまた、状況を理解できてなかったようで今になって動き出す。俺の盾になるように前に出る。
しかし、光の貫通力は高く人一人程度の壁じゃ防ぎきれず俺にまで届く。
「くっ!」
「ハヅキ!もういい!ようやく分かった」
俺の言葉にハヅキは笑う。
彼女のやったことは失われた技術の一つ電磁加速砲…通称レールガンの技術を流用した能力を利用した擬似的なレールガンの使用である。
「一番は射線に入るな!ブレもあると思え!速いから見ようとするな」
「わかった…ユウマは隙を見て先に行け」
俺は頷くと立ち上がる。正直、痛みで足が思うように動く自信がない。
「行かせると…」
「むしろ、行かせないとでも?」
少女は話を把握していた為一瞬でも俺に注意を向け過ぎてしまった。
俺でもハヅキの姿を見失う。
少女は失態に気がつき逃さないように出口の方に何発も弾丸を放つ。
しかし、何もいない。
「言っただろう?俺が相手だって」
その声に出口に向いた意識のせいで少女は反応が遅れていた。
ハヅキが少女の後ろを取り剣を振るう。
咄嗟に少女は飛び退く。
お返しと言わんばかりの少女の発泡が響く。
その間に俺は静かに歩いて…次のフロアへと行くのだった。
あぶねー。
流石は人の意識の隙間を縫うのは得意だなハヅキは。
にしても最後だけ…階段が少しだけ長いな。
コツンコツン
とやけに降りる音が響く。
不思議と上ではあいつらが暴れているのにも関わらず、揺れなどはなく穏やかなものだった。
ゆっくりゆっくりと降りていくが…降りても降りても終わりが見えない。
そして、どんどんと音が無くなったかのように無音の空間が続く。
心臓の音がやけに聞こえる。
息遣いが嫌になる程響く。
足音が反射して何度も聞こえる。
目がおかしくなるほど続く闇。
本当に勧めているのかはたまた気がつけば戻ってきているのではないかと疑ってしまう。
しかし、そう思い始めた頃だった。
ようやく終わりが見え始める。
途中から螺旋階段に変わっており、どうやら豪奢なエントランスのようだ。
赤い絨毯があり、艶のある床や壁。
天井から吊るされるシャンデリア。
そして、それに不釣り合いな一つの水槽が一際目立っていた。
「あれは…」
俺は駆け寄り、水槽を観察する。水槽の中にはどこかで見たことあるような風貌をした少年が入っており、水槽に繋げられた機器には何か書かれていた。
『燈』
と。
「燈それがこいつの名前なのか?」
気になりはするが…今のところ他のところより危険はなさそうだ。
どうやら、ここが終着点のようだし…何か…
そうして辺りを探ってるとバラバラに散らばった資料を見つけた。
律儀にページも振られており俺はそれの通りに直す。そして、それを読む。
『二代目真実のクローン実験』
「二代目?いや、それより真実って…俺の英雄のとしての…」
疑問点は色々とあるが先に読む必要があるか…だが、嫌に気になる単語が多すぎる。
「この実験は…存在が消えた二代目真実の復活実験だった。
しかし、東条家で出た英雄の方針により、それは変わっていった。それに変わるいや、それ以上の存在を作るための計画になっていた。
そもそも真実の英雄は知能、戦闘、指揮などと言ったそれらが優れている訳ではなく、個人の資質に依存していた。
よって強制的に人災へと変えさせた。
最初はうまくいったように見えた。しかし、それは失敗した。数日のうちに自壊してしまい使えるものではなかった。
その結果…我々は科学という力を頼ることにした」
そこまで読んで俺は読むのを辞めた。次のページからは様々な実験データなどがあり、その最終地点に一つ書かれているものがあった。
「人災と化した二条家の子の一人をこの実験に使った…か」
どうやらそれは成功したようで…その結果が目の前にある水槽…二条 燈が眠ってる水槽だった。
「お前も被害者なのか…絶対お前を助ける」
**
「…そうだ。お前を助けると誓ったんだ」
俺は手を伸ばす。
今なら飛べる気がする。
今なら…
「お前を!お前の鎖を解き放てる!」
限界突破
身体中からエネルギーが溢れ出てくる。
限界を超え…命を削り…体中からエネルギーが溢れ出す。
感覚的に分かる。
動かそうとしても…それは僅かなロスが発生する。
俺自身、細かいものが苦手であり今までは細かく決めようとし過ぎていた。
だが、正直今は100%とそれ以上…その違いだけで十分な気がしていた。
なら、一つ一つ脳を支配していこう。
限界突破は脳の稼働率を上げる技と認識している。いや、正確には違う。いかに自分のイメージした通りに動かす技かだ。
あくまでそれに必要なのが脳の支配なのだ。
なら、しっかりとエネルギーで…使う部分を少しずつ繋げていけばいい。
1%…10…30…50…80…100%
ここまではいい。
ここまでは…支配できるいや、僅かに仕切れてはいない。
それでも出来ている。
あとはそこにある奥の限界だけだ。
通称で言うならリミッター。
脳を支配することも十分にリミッターを外したと言えるだろう。
しかし、それだけが限界突破な訳がない。
120%とかは脳ではなく強制的に脳が命令する以上の強烈な命令に書き換える手法だった。
しかし、それはあくまでリミッターを無視しただけだ。
脳に存在するリミッターを確実にぶち抜く。
生存本能や…そう言った限界というのは必ず存在する。脳をいくら支配してもそれらまで完全に操ることは難しい。
それを越えればいい。
「ふーまずは一つ目…コネクト1…成功」
10%
「コネクト2…」
20%
「コネクト3」
30%
徐々に上げていく。
じゃないと脳が拒絶してしまう。
一気に上げるには状態を馴染ませないとダメだ。
短時間でリミッターを外すなら…ゆっくりと段階を踏んでいく。
「はぁあぁぁあぁ〜コネクト…8…」
80%のリミッターが外れる。
体が軽く感じる。
頭がスッキリとした感覚がある。
目が冴え渡り、暗闇の中今の状況が理解できる。
耳は遠くで仲間が頑張ってる声や音を拾えるほどに澄んで聞こえてくる。
「コネクト…10」
頭の全てが完璧に俺のエネルギーと能力と…固有能力『限界突破』と一つになる。
普段なら多量に消費されるエネルギーが全く消費されてる感覚が無い。
しかし、
「コネクトじゅ…っっ!できねぇか」
10以降…要するにもっとヤバいものを物理的限界を越えようとしたが無理だった。
「ふぅー…よし!」
経った時間はたったの一時間程度…。
既に崩落は終わっており、運良く出来た僅かな隙間で生き残っており、空気ももう既に薄くなってきている。
俺は足を曲げる。
そして、一つ覚悟を決める。
今から出す速度に自分の体は持たない。
能力者ならそんなしがらみは無いのだが…俺の場合は限界を超えているので適応されてない。
正確に言うなら能力者は自身以上の速度を出す時、自然出されるエネルギーによって体が保護されており自身の体が壊れるようなことはそうそう無いのだ。
俺は軽く地を蹴る。
それだけ…
いつものように
体操するように…
軽く…
軽く
ただワンステップ踏むように
跳んだだけ。
それだけで天井を突き抜けていく。
コンクリートが思いっきり体にめり込んでいきとんでもない激痛が走る。
それでも止まることはなく、上へ上へと行く。
そして…
気がつけば雲の上にいた。
**
何かが地の底から突き抜ける。
その衝撃は凄まじく大地に巨大な穴を開け、暗闇を作り出していた雲を突き抜けてこの地に何ヶ月ぶりかの陽の光が差す。
「つぇぇえあぁぁあぁっ!」
刃月は突然の陽の光に悶え苦しむ。
それをチャンスと見た零は銃を向ける。
しかし、気が付けば銃は切られていた。
「っっぅ!薬飲んでなかったら死んでたな」
刃月は自身の体質を抑える薬を作ってくれた人に感謝しながら納刀していた。それは彼の能力の発動の合図。
それに気がついた零は舌打ちをする。
一方で燈はこの状況で笑っていた。いや、恐らくは無意識の中だろう。
「殺す…勇馬…お前がいなければ俺は再び生まれることはなかった」
ポツリと呟く言葉。
そして、雲の向こうにいる勇馬はそれすらも聞き取っていた。
「そうかもな…俺が不甲斐ない存在だったからだ。でも、それを認めるわけにはいかないな」
勇馬は剣を掲げる。
そして、体を僅かに震わせるだけで摩擦でからだが焦げていく。
少しずつ落ちていく勇馬は空を蹴る。
ズゥンっ
それだけで辺りが揺れる。
身体中を摩擦で焦がし…それによって僅かに発生した火を纏い燈に迫る。
燈はそれに対抗するように無数の岩の腕で対抗する。
そして、それが交錯する瞬間…火花を散らすように勇馬の纏っていた火が舞う。
「擬似『流星火刃』」
炎が辺りを舞う…まるでひとつの星の如く。




