荒廃都市での戦い 2日目の2
ようやく書けた。
深く深い地下の中でユウマ、ハヅキ、ハヤテ、ソラ、ユウノそして、黒髪の和服の少女が二人、計7名で歩いていた。
「いや〜、まさか疾風も付いて来るとは思わなかったな。まぁ、騎士様付きだけどね」
ユウマはそう呟きながらソラとユウノを見る。
二人はどこか恐縮した様子でぎこちない愛想笑いを浮かべるだけでそれ以外の反応はない。
「あれ、俺って嫌われている?」
「バカかお前…英雄であるお前に対してそうそう口を聞ける奴の方が珍しい」
「あれ、そうなのか?」
先程の調子とはユウマは一転してハヤテに聞き返す。
その反応にユウマ以外の一同は一斉に溜息を吐く。
それもそのはず、英雄とは圧倒的な実力を持ち人々を救う存在を言う。
そんな人間相手と話そうということ自体がおこがましいのだ。
「そもそも、ふつうに暮らしてたら分かるだろう?」
「いや〜、俺のところは…いろいろとあったからな…」
ユウマのその反応を見てハヤテはなにかを察して何も言わずに話を逸らすために視線を変える。
「というか、お前も女を連れ込むとは思わなかったぞ、おまけに二人も…」
「あーいや、ちょっとここに来る前にやんちゃしたせいでね…改めて二人の実力を見ようかと…」
ユウマの目を逸らしてるのを見てハヤテは最近見た資料を思い出す。
「お、お前…まさか東の方で起きた儀式真っ向からぶっ壊した英雄ってお前のことか!」
「あはは、バレた…?」
そう、話し合いながら一同は先へと進んでいく。
この先になにがあるかも知らずに…
**
「さて、この状況で何かするにしても一番は情報だな」
外に出てしばらくの頃、俺はそう言って話出す。
それに対して健斗が一番に反応する。
「そんなの分かってますよ…しかし、今は他にあるかもしれない生き残りを探すことになったじゃないですか?」
「いや、それはそうだけど俺が言いたいのはそう言うことではなくて、この固まって行動することだよ」
そう言って今状況を確認する。
現在、五人という人数を分けずに俺たちはただ、当てもなく歩き回ってるだけだ。
最低でも2グループに分けて回ったほうがいい。
「しかし、狂化した能力者に会ったらやばいとお前は言ってたよな?」
「斎藤さんは手厳しいな…でも、それこそ戦闘をしなければいい。先程までならとにかく目的という目的はなかった。しかし、協力者の確保という目的があれば話は別だ。わざわざ、自分達の足で命張ってまで情報を集める必要性が無くなる。おまけに戦力な確保によってより動きやすくなるってもんだ」
そうやって俺は説明する。
要するに、いっそ戦力を分散しまくって情報集めに徹する。
そうして、協力者を確保してから厄介な問題を一気に片付けるということだ。
「だが、勇馬。この状況で生き残りがいなかったらどうするんだ?」
「いや、それこそあり得ない」
刃月の意見を否定する。
「刃月なら分かるだろう?どこからかビリビリと来るんだ…」
「分かるが…その説明は分からない」
そうやって俺は刃月に睨まれる。
感覚的にはどこかで何度か戦闘が行われた感覚だ。
場所は分からないがおそらく複数箇所で行われている。
「まぁ、よくわかりませんけど、とりあえずは生きてる人がいるということで間違いはないですか?」
健斗の質問に俺と刃月は頷く。
そこからは戦力を分散する方向で話は進んでいき、話し合うのだった。
**
現在健斗は一人で歩いていた。
それは先程の話の結果であり、健斗にとっては納得のいかないものであった。
「何で、五人いるのに…全員、一人ずつ別れてんだよ…」
そう、分け方の問題となり、その結果決まったのは五人全員をそれぞれの方向に分散させるということだった。
健斗としては勇馬と刃月を一人で探索させて自分は斎藤さんと佐藤さんと一緒に探索というのが望ましかったのである。
しかし、その意見は三方向だと効率が悪いからと却下され、結局チーム分けがめんどくさくなったのかチーム分けもすることなくそれぞれ分散させるという形になったのだ。
正直、健斗は戦闘用として訓練させられているので何とかなるという自信はあるのだが、未知の敵との遭遇なんて初めてのことであり、勘弁願いたいところだった。
そう溜息をつきながら自分の銃を顕現させていた。
この状況で派手な戦闘をすれば彼にとって良いことではないかとは分かりきっており、アタッチメントを取り付けるのだ。
そもそも、魂に刻んだ武器にそういったことはできるか?という話もあったが、出来るということは分かっている。
「全く、これでも頑張っているのに、いつもこれじゃ遅いって言われるんだよな」
そう愚痴をこぼしながら銃にサプレッサーを顕現させる。
一つ一つの機能を毎回変えるため、想像してしっかりと練りこまないと顕現で取り付ける事が出来ないため、その練り込みの技術も問われる。
しかし、彼が一度にいくら練りこんでも一つのアタッチメントを取り付けるのに最低でも1分はかかっている。
他にも改造の仕方などを教えられており、行うこともできるがアタッチメントと比べるとかなりの時間を要するため、実戦ではあまり使えず半分諦めていたりする。
「よし、とりあえず音はなんとかなった。
まぁ、威力はどうしようもないから接敵する前に潰す手段くらいは作っておくか」
健斗も一応は佐藤達ほどにないにしろ感知系の固有能力を保有している。
故に現在、自分達の周りで様子を伺っている化け物達の存在に気付いていた。
化け物達は元々、全員で行動していた辺りからずっと様子を伺っており、一番弱そうな健斗に大半が来ていた。
「全く、複数で行動すると一人の方に集中するから面倒だってしっかり言えよ…」
健斗はそう言って銃を顔の前に持っていく。
「さぁ、この銃がどこまでできるか試してみるか…」
そうして、健斗はいくつも特殊な弾を想造していく。
空間歪曲、炸裂、拡散、誘導弾…並べていくだけでも膨大な数な弾、ただ能力を複合したものまである。
そうして、火を噴く銃が一気に辺りにいる化け物達を一掃していく。
終わった時には健斗は目の前に広がるグロ光景に耐え切れずに後悔する羽目になるのだった。
**
勇馬は現在、息を潜めていた。
物陰に隠れて、身を縮めて、同化するように黒いコートを羽織る。
そんな勇馬の目に映る光景はまるで相談するように自分を探す化け物達の姿だった。
「全く、ひょっとすれば元に戻す方法もあるかもしれないって戦えなくなるじゃないか」
そう呟いて身を翻して極力化け物達から隠れて先を急ぐ。
別にこの時にいくら化け物になった住民を殺しても罪に問われることはない。
しかし、殺さなくていい状況だとやはり彼はどこかで躊躇してしまっている。
因みに、そのことについては他の人には教えてはいなかった。そのせいで死なれる方が彼にとっては心苦しかったのだ。
なら、極力被害を減らす方法を考えた結果、全員別々という方法だった。
健斗はともかく、他の奴らは極力無意味な戦闘を避けるはずだと考えてのことだった。
さらに言ってしまえば集団行動だと隠密に向かずに避けられた戦いをしなくてはいけなくなるのは今の彼の状態だとあまり気が向かないのだ。
(とりあえず、ここには多分あいつらがいるはず…)
勇馬は確信めいた何かに引っ張られながら先へと進んでいく。
そう、この先に聞こえてきてるのだ。
何かがこの先にあると彼に告げてきている。
(あれ?なんで俺はこっちに何かあると思ってるんだ?なんで…あいつらがいると思ってるんだ?)
そんな彼に僅かな疑問が浮かぶが動き出した足は止まらない。
そう、その先に何かがあると確信して…
**
「…半日で」
アリアは絶句したかのようにつぶやく。
そう、それこそ驚きや呆れとも違った怒りに近い感情…。
「方向音痴とかというより集団行動が向いてないだけじゃないですか!」
そう叫んでいた。
なぜなら、あの時あった巫女の二人と一緒に行動していたのだが、二人して自由人で単独行動、急に走り出す、急激な方向転換、急停止。
それがバラバラのタイミングで起こり、頑張って二人とはぐれないようにしていたのにも関わらずに気がつけばアリアは一人になっていた。
「ううっ、どうしてこんなことに…私が悪いの?…頑張ったよ…もう、嫌だよ…私は必死について行ったよ…でも、二人していきなり別々どころか反対方向に走り出されたら戸惑うよね…無理だよね…私が悪いのかな?どこで間違えちゃったのかな?そもそも、上司も上司ですよ…いつもいつも、訓練真面目にしないくせに…今回の案件だっでみんな立ち向かう以前に逃げ回って…なんで指揮してくれる人が一番に逃げ出すの?」
アリアは近くの瓦礫に寄りかかりながら体育座りで泣き始める。
そこから出てくる言葉は溜まった鬱憤の塊だった。
よっぽど祓魔師社会で若いながら苦労を抱えてきたのだろう。
アリアはどんどんと縮こまり顔を伏せる。
そんな時、アリアが気が付けば周りには化け物達の包囲があった。
(あぁ、これが最後かな?)
もう、走馬灯すら見えない。
逃げる気力も湧かない。
助けてくれる存在はもう現れない…。
諦めアリアは体を脱力させる。
ゴォ!
その瞬間、風が巻き起こる。
「こっちだ!」
何かに手を引かれる。
先程の轟風によって開かれた化け物達の間をすり抜けていく。
アリアは目の前にある光景が信じられなかった。
(目の前にいる助けてくれる人は誰だろう?なんで助けてくれるのだろう?)
そんな疑問ばかりが尽きない。
でも、アリアの中で答えは出ることはない。
一つわかることは目の前で自分の手を引く人物は自分をあの状況から救った。
たったそれだけのことなのに…アリアは気が付けば目の前の存在を信じてしまっていた。
**勇馬
どうして、こうなった?
そう叫びたい。目の前には知らない少女。
見た目としては銀髪碧眼の美少女と言えるだろう。
しかし、咄嗟の状況とは言え助けたことは間違いないだろう。しかし、何故か後悔しなきゃいけないような気がしてならない。
言うて自分は他人の感情に対して鈍くない。
敢えて無視したりしてる節も沢山あるが、何故だ?
「と、とりあえず無事か?」
「は、はい。正直諦めていたところです」
まぁ、それは一瞬見た自分でもわかる状況だった。
にしても、なんだろう?この少女は霊格に似た力を感じるのだが、どこか違うような気がする。
「えっと、ここにいるということは所属とかあるよね?」
「あ、そうですね。『洗礼の会』と言ったら分かりますか?」
「それは昔聞いたことあるけど…」
いつだったかな?
特に昔という話ではない。
第1、最近出来たもののような気がするのだが…。
「えっと、『洗礼の会』というのは教会とは別組織で作られた祓魔師の組織です」
「あー、どっかで聞いたと思ったら祓魔師のことか!」
「はい、祓魔師は昔に廃止された制度のなのですが、その中でもその位置にこだわるもの、力を有効活用したいものの集まった組織です。
構成員の半分以上は力を使えませんがかなり巨大な裏組織なので聞かないということは無いと思うのですが…」
どうやら、結構大きな組織のようだ。
にしても、大丈夫なのだろうか?昔(『意思と因縁』参照)にヘマして目を付けられてるからな。
確か、あの時は会議を偶然立ち聞きして…いや、多分下克上をしようとしてた下っ端みたいだったし大丈夫のはず多分。
「どうかしましたか?」
「あぁ、悪い。ちょっとあってな。まぁ、俺も一応所属言っておくか」
俺はそう言って自分の所属を確認するために資料を取り出す。
「え…えと、これ?いや、うん…」
「どうかしましたか?」
戸惑ってる俺を心配したように見てくる。
仕方ない、腹をくくるか。
「ぜ、『絶対悪』っていう組織だ」
痛い、なんか色々と痛い。
昔の価値観のままならそんな風に思わなかったのだろうか?
でも痛すぎてなんか嫌だ。
「え、ぜ、絶対悪…って」
そんな俺と正反対に驚きで少女は固まっているようだった。
**
地響きが辺りに鳴り響く。
天井は僅かに崩れてきて、逃げ遅れた者が下敷きになる。
そんな中で空と悠乃はそれを引き起こした相手を見据える。
「空、相性が悪そうなんだけど…あれはできる?」
「あれか?でも、こっちの消耗が激しいんだが?」
二人はそう言葉を交わしていく一方で目の前にいる化け物は少しずつ近づいて来ていた。
『ナンダ?イマサラサクセンカイギナンテムダダゼ』
一回り他よりデカイ化け物はそう言って顔を歪める。
その体から溢れてくる膨大なエネルギーはそれだけで他の化け物達からエネルギーを奪っていく。
「仕方ない。正直、俺だけじゃ貫けそうにないしな」
「流石は空、話が分かる」
「まぁ、でも少しは時間がかかるから待ってろ」
化け物は動き出す。
それと同じタイミングで空は槍を顕現して攻撃を受け流す。
『ナニ!』
「たく、ただ力自慢な攻撃を流したくらいで大袈裟だな」
そう言って空は軽く槍を薙ぐ。
化け物の腕が飛ぶ。
そして、槍はそのまま勢いに乗って化け物を裂いていくが、どうしても首の辺りが突きでも薙ぎでも傷を付けることができないでいた。
『ダカラムダダッテイッタノニ』
その言葉と共に空の腹に衝撃が走る。
それはいつの間にか再生していた化け物の腕による攻撃だった。
『ハッハッハッハ、マズハヒトリ。アッケナイモノダナ!』
化け物は叫びながら悠乃に近付いていく。
『イノチゴイナライマノウチダゼ!オレハヤサシイカラヒョットシタラミノガスカモナ!』
化け物は心にも無い事を言いながら悠乃に迫る。
しかし、悠乃は空の吹き飛んだ方向をただ見てるだけだった。
『タッタコンダケノコトデコワレチマッタノカヨ!マァイイ』
そう言って化け物は腕を振り上げる。
その時だった。
「いいの?」
悠乃のその言葉に化け物は止まってしまう。
一瞬、ほんの一瞬だけ化け物は本能的に恐れをなしたのだ。
「このままだと負けちゃうよ」
この言葉が引き金となる。
化け物のプライドが冷静さを無くしてしまった。
『ソレガオマエノサイゴノコトバダァァァァ‼︎』
「『六色七斬流』『一挙重斬』の型」
悠乃は何も持たない手でまるで刀を持ってるかのようにゆっくりと体を動かす。
「悠乃!準備はできた!」
その瞬間、再び化け物の動きが止まる。
『ナ、ナゼダ!カ、カラダガイウコトヲキカナイ、、』
「チェックメイトだよ『疾風』‼︎」
刀が悠乃の手の中に現れ振るわれる。
そして、起きたのは一瞬の出来事で、いくつもの斬撃が化け物の命を刈り取る。
それと共に悠乃の手の中にある刀も壊れるように消えていく。
「終わったようだな」
空の言葉に悠乃は反応しない。
それに対して呆れるように空はため息を吐いた後、壊れた槍の柄で悠乃を殴る。
「いたっ、ちょっと人が考え事をしてる時になんてことしてくれちゃってるの!」
「問題がまだ山積みなのにボーッとしてるお前が悪い」
「うぅ…」
何も言い返せないようで悠乃はブーくれて空を睨みつける。
「うざいから、それやめろ。それで、何を考えてたんだ?」
「いや、この人って理性もあったし能力の使い方も分かってたから狂化した能力者なんだと思うのだけど…それにしてはやけに人を殺すことに執着してたな…って」
空もそれに関しては疑問があった。
野生的になるにしても好戦的すぎるのだ。
更に、耐性がある程度あったはずの能力者もかなり好戦的になっていた。
「まさか、ひょっとして…」
空は先程の戦闘もあり真実に近いところまで来ていたことにこの時は気づいていなかった。
**
どこかの地下にある研究所で一人の男が歩いていた。
「全く、こんな段階から奴は動いていたとはな…」
男はそう呟いてどんどんと奥へと歩いていく。
そこにある最奥には何かを入れられたカプセルがあった。
「これは…」
目の前にある物に男は目を見開く。
そうここにはある研究がなされている。
それは複数あり、この事態を引き起こした研究、
そして、男の探す…
「やべっ、道を間違えたわ。どこにあったかなぁ?終焉の情報」
そう言って男はこの場を去っていく。
三つ目の研究の場所を残して…。




