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炎と虎龍の軌跡2 死の淵で望んだこと

少し短いですね。

爆発音のような何かが瓦解する音が辺りに轟く。


それと共に不吉を届けるかのようにそれぞれに形の違う歪な鳥の化け物達が空を飛び回る。


そして、瓦解したであろう街を守るための壁からも形の違う獣の形を成した歪な化け物が乗り込んでくる。



それらの化け物の種類は多彩で物によっては辺りに火を撒き散らし、家やお店などの建物に燃え移る。


そう、それらの存在が人災または魔獣と称されるものである。



そうして、時間が経っていくが、そう長い時間を必要とせずに煙は昼の太陽の陽を遮り、炎は夕焼けのように燃え上がっている。


町の住民は避難勧告が出されており、もう既に別の場所に移ってる者もいるが、人混みで動けない間に逃げ遅れた者、知らずに逃げ遅れる者、はたまたそこから動こうとしない者や誰かを助けようと戻ってしまう者までいた。



しかし、そんな人達の事情なんて知ったことではない魔獣達は目の前にいる人を喰らい、時には火を放射して焼き殺し爪で裂き無情に殺されていく。



そして、そんな中にヒヅチはいた。



彼は避難勧告が出された時、店で作業をしており、聞き逃したのだ。

それに加えて、避難勧告がギリギリなのもあった。

実際、魔獣達が壁を破壊されたのは避難勧告を出されてから僅か30分。

いち早く動いた者なら完璧な避難はできただろう。

しかし、ワンテンポ遅れた人達は簡単に魔獣に追いつかれてしまう。


結局、大半の人々は避難が間に合わずに魔獣に襲われて殺されていく。



要するに作業に没頭していたヒヅチは逃げ遅れるどころか逃げれていなかったのだ。

それに気付いた父と母は急いでヒヅチの作業室に乗り込む。



「どうしたんだ?

父さん、母さん」



ヒヅチはいきなり焦ったように扉を蹴破って入ってきた二人に驚きながらも聞く。

しかし、二人はヒヅチを逃がすことで頭がいっぱいで話に要領がえない。


しかし、早く避難しなくてはならない。

それだけはしっかりと認識できたヒヅチはすぐに立ち上がり緊急用の最低限の荷物を持って建物を出ようとしたその時だった。


軋むような壊れるような一瞬では判断すらつかないような音が家の中に響く。


しかし、それを認識しようとする頃にヒヅチに新たな衝撃が走る。

思いっきり背中を押されて無理やり外に出される。



「…っ!」



言葉にならない。

それが誰がやったのか理解はできた。


しかし、なぜ?


しかし、そう考えを巡らせる暇すらヒヅチに与える前に次の衝撃が飛び込む。




燃え盛った自分の家が瓦解していく光景だった。

それは自分を押し出した両親を飲み込んでいく。

咄嗟に出た左手は一緒に飲み込まれる。



その瞬間、ヒヅチには痛み…いや、熱が駆け巡る。

炎が自分に燃え移り駆け巡る。

左半身に来た炎に我慢ができずにヒヅチは倒れこみ暴れる。


その瞬間、奇跡が起きた。


そう、炎は左半身をある程度、燃やしただけで収まり、死ななかったのだ。



しかし、この状況を生きていると言えるのか?



左半身は完全に燃えており、皮膚は燃え尽きている。

左目はもう既に開かず、例え開いたとしても目が見えるかは怪しいところだった。


奇跡的に右半身は何故か大丈夫だった。


しかし、それはヒヅチという男を絶望させるに十分な事だった。



目の前で死んだ両親。



失った左半身。



それら恐怖となって直に彼の心を抉る。

いっそ、自殺してしまおうかと考えた。

しかし、目に焼き付けられた助けた両親の最後の姿がそれを許さなかった。



ヒヅチは聡明な男だった。



故に自分のしなくてはならないことは分かっていた。

少しでも長く生きなくては両親の死は無駄になる。


今は自分を責めてる場合ではない。


そう考えてヒヅチは地を這う。

辺りには火の手が回っており、とてもじゃないが逃げれるとは思えなかった。


しかし、ヒヅチは進む。


這って這って…進んでいく。

目的もなく、当てもなくどうしようもない中で必死に這う。


そんな中でヒヅチは考え続ける。


しかし、考えることのどれもが最悪なことばかり。


考えていけばいくほど自分に対しての罵倒しか出てこない。

生きる…そんなことが許されていいのかさえ思い始める。


しかし、そんなことを自分が決めていい訳がないとヒヅチは考えもする。

なぜなら、助けられた命…あるはずのない命…それを自分の一存で決めていい訳がない。


そんな考えまでもが往来する中でヒヅチはもがく。


生きる…それが今のヒヅチの唯一絶対の価値であり必要な意味である。


そして、一つの感情に至る。



(生きなきゃ…生きたい…死ねない…何を売ってでも生きなきゃ…)



それは自分の感情からできたのかもう、ヒヅチにはわからない。

でも、たしかに生きたいという感情はヒヅチの中に芽生えていた。


故に助かる見込みなんてなくても這い続ける。

たとえ、その結果死んでしまっても…。



炎が辺りを漂う。


何故か…ヒヅチはその炎に見惚れた。


本人自体は何故かは理解していない。

しかし、儚く散っていくその炎と自分を同一視していたのかもれない。


そして、ヒヅチは改めて自分の姿を見よう近くの壁に寄りかかる。


そして、笑みがこぼれる。


それは決して綺麗なものではなく自嘲気味の汚い笑い。


もう何もかもが分からなくなる感覚がヒヅチの中に立ち込める。



(もし、助かっても左半身は…もうダメか)



理想的状況を考えてしまう。


しかし、その時だった。

一瞬だけ煌めく。


炎がヒヅチのもとで静止してまるで見定めるかのごとく近くを漂う。



そう、その時ヒヅチは決定的なものを見た。




ヒヅチの右頬に涙が流れていく。



「あぁ!そうさ!生きたいさ!死にたくないよ!こんなとこで終われるかよ!お前もそうだろう!俺を見て…俺という下を見て自分の生きた意味を見つけたい!そんな、自己満足しか求めずに生きて足掻いて生きたいんだろ!俺だってそうだよ!死にたくないよ!死ねないんだよ!自分が死ぬ…そんな想像今までしたことないね!無責任とか短絡的とか罵れよ!あんただってそうだろう!生きるのも一瞬!お前が消えれば次のお前が生まれる!悔しくないのかよ!何もかも生まれた時から決まって!自分が何しようが変えられない死を!死にたくないって足掻くことがいけないことなのかよ!お前だって足掻けよ!生きようとしろよ!こうやって足掻いてる!自分が馬鹿じゃないか!なんでだよ!なんで!なんで!俺だけが取り残されて!俺が足掻いてもこんな姿で!生き残る道なんて初めから無いんだよ!なんで!これなのに死にたいって言う感情がないんだよ!どうしてだよ!こんな姿で生きられねぇのに…なんで…なんで…俺は死にたく無いって情けなくもカッコ悪くも考えてんだよ!」



叫び…唯一動く右手を伸ばして叫び続ける。

ヒヅチの瞳からは止まることのない涙が延々と流れ続ける。

目の前にあるのはただの炎…しかし、ヒヅチの目にはたしかに別のものが映っていた。



この街でずっといるとされる炎の魔人…ガイロ…そう、人間の伝承から生まれた魔人…否、人災がいたのだ。



意思の無き炎の存在として…やがて鎮火されて消える存在として存在し続ける。


しかし、この時…炎の魔人に初めて意思が生まれる。

その意思がごく単純…



生きたい。



そのヒヅチの意思と合致する。

知らず知らずのうちに魔人も手を伸ばす。

そして、炎が辺りに飛び散らす。




そして…ヒヅチを炎が飲み込む。




(あぁ、これが最後か…くそっ!)




炎は消えない…ヒヅチも消えない…炎はやがてヒヅチの左半身に収束して…一つの存在を形作る。







「俺は…生きて…るのか?」




ヒヅチの中に純粋な疑問が駆け巡る。

そして、ヒヅチの頭の中に声が聞こえる。



ー我が願いと我が依り代の願いが合致した…故に我が依り代やお前は生きた



疑問より納得が先に来たとはこのことだろう。

ヒヅチは不思議とその言葉を理解する。



そう、結局は生きたいのだ…。



故に…全てを捨てた。


人であることを…そして、自分の存在をも…。


ヒヅチの左目は開く。

そして、周りを見る。


そして、しばらく歩くとヒヅチは立ち止まってしまう。


そこにはまだ避難し切れなかった住民の姿。



醜い



ヒヅチらそんな感想を純粋に抱く。

周りを見ずにとにかく我先と押し合いそれは避難をより遅らせていた。


もちろん、そこに知り合いがいないはずもなく、ヒヅチは何も言えない気持ちになった。



そして、ヒヅチは何言か『ガイロ』と言葉を交わすと避難する方向とはほぼ逆方向に歩いていく。



その時、見たのだ。



瓦礫に挟まってる友人を…そして、それを助けようとする王女様の姿を…。

次回はサブタイが思いつきません。

とにかくおそらく過去が最後になると思います!

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