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炎と虎龍の軌跡2 誰かを守るという思い

あ、前回の次回予告とは違う話になった…

英雄という存在に憧れていた。


人々を守り、誰からも認められて、力のある存在を…



しかし、時が経つにつれて気がついていた。



英雄とは、生まれた時から決まっていることに…。


しかし、俺は諦めたくなかった…終わりたくなかった。

夢をなくしたくなかった。


故に騎士になり、誰かを守る仕事に就いた。

そして、気が付けばどんどんと出世して気が付けば俺は第一王女の側近騎士となっていた。

それから、決めた…。


俺の全てをかけてでもこのお方を守る…と。









**




小鳥の囀りが聞こえる。

心地よい風が俺の体を撫でるように通り抜けて行く。

穏やかな日の温もりが、俺を微睡みに誘う。



「お…トラ…」



声が聞こえた気がした。

うん?俺を呼んでるのか?



気のせいだ。


そう、俺はサボってなどいない。

ただ、疲れて休憩してるだけ…そう、それだけなのだ。



だから、きっとこの呼び声は俺ではなく別の人にかけられた呼び声だろう。


そう、俺のすぐ近くに人がいたとしても違うはずなのだ。



「いい加減にしろユキトラ!」



その瞬間、俺の腹に衝撃が走る。

この感触、何か棒のようなもの…これは…



「いきなり何すんだ!」



俺が飛び起きるとそこには大きな盾を振りかぶる男の姿があった。

彼の名はライト、同じ第一王女の側近騎士である。

俺と同じようにこの国の騎士団でそこそこの階級を持っていて、実力もかなり高い騎士である。



「全く、姉姫さんの呼び出しをサボってお前寝てんじゃねぇよ」


「うるせぇ、仕事はきっちりやってるんだ。

それと、どうせまた英雄の経過報告だろう?

俺には関係ないね」



俺はそう言って近くに置いてあった大剣を持ち背中に下げる。

そして、鞘の留め具の位置をしっかりと確認して外す。

そして、剣を抜いて構える。



「それで、どうよ。

久々に模擬戦でもしないか?姫さんの側近になってから訓練に出れねぇから鈍って仕方ない」



俺はそう言ってライトに剣を向ける。

そう言うとライト渋々…いや、嬉しそうに盾に仕舞われてる長剣を取り出す。



「ふん、負けてなくんじゃねえぞ」


「ライト、テメェが言えたセリフか!」



その瞬間、ぶつかる。

俺の大剣とライトの盾がぶつかり、止まる。

その瞬間をライトは突く。

しかし、振るわれる剣に体重はあまり乗っていない故に足に装着された鎧のブーツで弾き返す。



しかし、俺が体制を立て直して攻めるよりも早くライトは動く。

盾を押し込むように突き出して俺の剣を弾き返すと盾を鈍器として俺に振るう。

バランスを崩した俺はそれを避けるよりも崩し返した方が楽だと考えて鈍器(盾)に突っ込むように体当たりをする。

流石に予想外なのかライトも咄嗟の判断が遅れて隙を作る。


剣を握り直して盾を弾くように思いっきり弾き飛ばす。

しかし、次に更なる予想外なことが起きた。

盾が弾き飛ばせたのだ。


いや、弾き飛ばすように剣を振るったのだから当然なのだが、この感触は明らかにライトが途中で手を離した感触だ。


要するに次の瞬間にはライトの攻撃が来る。

盾を陽動とした攻撃に流石にも対処は思いつかない。

しかし、経験から体が動き防ぐ。


そこからはただの剣の打ち合いと化す。


互いの技術と技術をぶつけ合い、フェイントも入れながらどちらがより相手の攻撃を防ぎ読むのかと言うただの打ち合い。


大剣という大振りな武器を使ってる俺の方が不利にも見えるがその分、腕鎧などでの格闘戦も行い、ライトは盾以外は基本的に軽装でいざという時の手数で攻める剣士である。



互いに大振りや守りとは思えないような手数の戦い。



しかし、その戦いも終わりを告げる。




パンっと手を叩く音が聞こえる。


その瞬間、俺もライトも動きを止める。

そして、互いに武器をしまい埃を払う。



「こんなところに何用でしょうか?姉姫様」



俺はすぐさま手を叩いたお方…この国の第一王女に疑問をぶつける。



「ここは城の中庭ですよ。

私がいたら変でしょうか?」


「い、いえ。

しかし、お、お見苦しいところをお見せ致しました」



未だにこのお方には末恐ろしい何かを感じる。

これで未だ7歳のとは思えない。

しかし、王族でおまけに時期国王である以上そこらへんの教育は小さい頃から成される。

ゆえの聡明さと思慮深さ、おまけに未だ小さいとは言えど優れた容姿。

見た目以外はとても7歳には見えない貫禄があるのだ。



「見苦しいなんて卑下にするものでないですよ。

二人ともとても練度が高くて素晴らしかったですよ」


「「恐縮であります!」」



俺たちは二人してビシッとした姿勢で敬礼をする。



「ほら、あなたからも何か言ってあげなさい」



すると、姫さんは少し後ろを向きそんなことを言う。

先程から緊張で気づかなかったがそこには第二王女である妹姫さんがいた。


彼女は姉姫さんの後ろに隠れてぽそり呟く。



「…すごかった」



それだけ言うとすぐに隠れて姉姫さんに抱きついていた。



「「大変恐縮であります」」



俺たちは怖がらせないように先程とは打って変わって優しい声で言うと姉王女様は微笑んで小さな声で礼を言っていた。



「それで、何用でございますか?」



ライトがそう聞く。

すると、姉姫さんの後ろから三人の人影が見えた。



「貴方達二人がここで訓練をしてるそうなので見学に」



姉姫さんはそう言って微笑む。

おそらく後ろの三人が教えたに違いない。


あの三人とは俺と同じ王女の側近騎士であり、ライトの弟と妹である。


長男がライト。

次男のレイト。

末の双子の兄妹のジンとユム。

ジンが男でユムが女である。



「全く…あいつら」



ライトは小さな声でポツリと呟く。

流石に姫さんに模擬戦はあまり見られたくなかった。


まぁ、別に見られても困るようなものではないが…。

でも、気持ち的にはこの人達にはあまり戦いというものを知って欲しくはなかった。

現国王も同じことを思っているのか姫さん達は戦争のことは知ってるが基本的に知ってるだけで収められているのである。



「それにしても、二人ともいつもの経過報告とはいえ、サボるとは感心しませんね」



ニッコリとした微笑みで言われる。

というか、テメェもサボってたのかライト!


そういう目でライトを見つめるがライトはサッと目を逸らすだけで何も言わない。



「では、二人ともしばらく滞ってる仕事でもやってもらいましょうか」


「「は、はい」」



俺たちには逆らう言葉も術もなく、そう言って歩き出してしまう王女様達について来るしかなかった。



**



「…あぁ、ダリィ」


「…少し黙れユキトラ…今回は仕事をサボった俺たちが悪い」



現在、俺たちは側近の騎士として与えられた執務室で書類仕事を行なっていた。

それは英雄の経過報告の際に取られたメモを正式な書類として書き換えたり、姉姫さんと妹姫さんの行動記録の書類などである。


それはここ数週間、俺たちがレイト達に押し付けた仕事である。

それはかなり滞っており、量が尋常じゃないほどある。


普段なら側近騎士隊長と副隊長なので確認だけでいいと言い張れるが仕事を堂々とサボった結果、仕事量を強制的に増やされた。


因みに護衛はレイト達が現在しっかりとこなしてくれている。



「くそっ…どうしてこんなことに…」


「一介の騎士の頃だったら基本的に鍛錬や訓練だけで未だ楽だった」



俺たち二人は役職を持ったことにひどく後悔しながら書類仕事をこなしてく。

因みに勿論一介の騎士の頃にも書類仕事はあった。

しかし、その量も質もそんなになく楽な仕事であった。



「はは、ライトおかしいぜ…未だ終わる気がしねぇ…」


「気のせいだユキトラ…黙々とこなせばいつか…」



悲壮感漂わせる中、扉が強く開け放たれる音がした。



「誰だ!」



ライトと俺はすぐに戦闘態勢を整えて扉を見る。

すると、そこには一人の騎士の少年が立っていた。



「君は確か…」



ライトの言葉と共に俺は驚く。

一般騎士…要するに最下級の騎士である。



「君、立場の騎士隊に対して失礼ではないかね?」


「す、すいません!

し、しかし、すぐにでも報告せねばならぬことが…」



立場上、ライトが叱ろうとするが雰囲気上それどころではないようですぐに口を閉じる。

俺の目から見ても彼の様子はどうもただ事でない。

まず、立場の上下を明確にされている騎士がこんな失礼な行為を不用意に行うとはとても思えなかったを



「それで…要件を早く言ってくれ」


「は、はい…。

実は、英雄の実験の失敗により大量の魔獣がこの街に向かってきています」


「なんだと!」



俺たちは驚きを隠せずにうろたえてしまう。

しかし、こう言ったことは冷静を失うほうが危険が伴う。

故になんとか焦りを抑えて話を聞く。

ここは隊長であり、こう言ったことに慣れているライトに任せる。



「英雄は失敗した際に抑えるのではないのか?」


「はい、しかし、量が多く持ち堪えることができるのも約一時間…おそらくもう…」


「わかった。

国王様にそのことは?」


「はい、伝えました。

国民の避難勧告と姫様がたを逃せとのお達しで…」


「国王様達は死ぬ気か?」


「いえ、しかし、最大限騎士で応戦した後に逃げるそうです」



話を聞く限りどうやら事は一刻を争うようだ。

応戦するための騎士もどれだけ集まるかわかったものではない。

準備も何も無く、前兆も何もない。


そして、情報が後手に回っておりおそらくもう、英雄も死にかなり近くまで大量の魔獣が向かってきてるのだろう。



「助かった。

なら、俺たちは王女様達を連れて逃げよう。

何事もなく終わり、ほとぼりが冷めたら戻ってこよう」


「はい、王もそのようにと…」



話が終わった瞬間、俺は窓を突き破って外に出る。



「ちょっ!ユキトラお前!」



かなりの高さから降りるが俺は壁を走るように下っていく。

ライトの止める声が聞こえるがそれを無視して突き進む。

姫さん達は今日、城下の方にいるはずだ。


俺は地に足を着けるとすぐに城門を潜り抜けて普段から姫さん達と一緒に行く場所に向かう。


しかし、現在避難勧告が出されており、普段よりも人が多く慌ただしかった。


そんな中、泣き声が聞こえる。

俺は人の隙間を通りその泣き声のした場所に赴く。



「妹姫様…ひとりですか?」



そう、泣いていたのは妹姫さんだった。

俺の声に気がついたのか妹姫さんは涙を拭いながら俺を見る。



「ユキトラ?」


「はい、あなたの騎士の一人…ユキトラでございます」



俺はそう言うと妹姫さんを撫でる。

そうしてると落ち着いたのか泣くのをやめて安心したような表情をする。



「では、失礼します」



俺はそう言うと妹姫さんをおんぶをする。

突然のことだったが姉と同じように聡明なのか状況を理解しているみたいですぐにしっかりと体を預けてくれた。


そして、俺はすぐに走り出し姉姫さん達を探す。



「妹姫さん、さっきまでどこにいましたか?」


「えっと…姉上と一緒にご飯食べてそれから、商店の辺りで人がいっぱいきて逸れちゃった」



なるほど、かなり遠いな。

人波に飲まれたのだろう。


俺はあまり姫さんに負担がかからないように配慮しながら人の波の中を縫って進む。

そうして、人混みから抜け出した時それは来た。


大きな音が鳴り響く。

それは、街の周りにある外壁を破壊された音である。

そして、次々となだれ込んでくる魔獣は逃げ遅れている人に確かな恐怖を与えた。


騎士ならここで戦うのだが、妹姫さんを背負ってる今、戦うわけにはいかなかった。



「チッ!少し揺れるので気をつけてください」



俺はすぐにその場から離れるために跳ぶ。

そして、屋根の上から今のところ一番安全な城のある中心部に向かう。



俺が城の前に着くとそこにはレイト達がいた。



「あ、ユキトラ副隊長!」



俺に気がついたレイト達は俺を見るなり、かしこまる。

普段は決してしない態度。

緊急時くらいは弁えてるのだろう。



「すいません!

俺たち、姫様達と逸れてしまいました!」


「申し訳ありません!

いかに突然の避難勧告の中とは言えでも…」


「私達が目を離さなければ…」


三人が頭を垂れる。

今回のは確かに彼らの失態である。

しかし、三人とも優秀じゃないわけではない。

今回は特に簡単に動ける事態ではないだろう。

俺がなんと言えばいいか悩んでる時、ライトがこの場に来た。



「三人とも落ち着け!

確かに今回の件はお前達の油断から来たミスだ!

しかし、ユキトラが妹姫様を見つけてくれた。

お前達のすることは二つに一つだ!

わかるな?」



ライトの言葉に三人とも頷く。

そして、動き出そうとした瞬間だった。

俺たちのすぐ近くにある城門と城壁が破壊される。

そして、空には気がつけば鳥型の魔獣が辺り一面を埋め尽くしていた。



「チッ!ライト!妹姫さんを頼む!」



俺はすぐに妹姫さんをライトに預けて剣を構える。



「待て!ユキトラ、何をする気だ!」


「簡単だよ。

俺がここで抑えてる間にお前達が妹姫さんを守りながら逃せばいい。

そして、お前らが行けば俺は姉姫さんを探しに行く!」



俺はライトの制止も聞かずにそれだけ言って魔獣の群れに突っ込む。

三人のうち誰かが同じように応戦しようとしたが、それは無理な話である。


確実にどっちかの姫さんを逃さなくてはならない。

故に今いる妹姫さんを死なせるわけにいかないのだ。

だから、より生き残る可能性の高い方をライト達は選ぶしかない。

俺を捨て駒として、妹姫さんの護衛に注力する。



そんな確実な方法が分かっていたのかライトの迷いは少なく俺を殿とする方針をすることにしたようだ。



「ユキトラ!」



そして、俺が戦い始めた時、声が聞こえた。

妹姫さんの声である。


俺は僅かに声を失う。


しかし、すぐに笑う。



「どうか、生きてください!」



その瞬間、俺は目の前の敵に集中する。

妹姫さんの泣き声が聞こえてくる。

彼女は聡明だ。

おそらく、俺のしようとしてることに気づいたのだろう。

でも、俺は止まらない。


必死に俺の後ろは通すまいと戦う。


しかし、英雄が一時間抑えるのに精一杯だった敵だ。

質はあまり良くないが量が多くてとてもじゃないが一時間も俺一人じゃ持ちそうにない。


俺の他に応戦する騎士はいたがその殆どが数に飲まれて死んで行く。


俺も長くは持たない。

しかし、この場所だけは通さない。


でなければ俺が騎士になった意味がわからない。


先程、ライト達が城に入って行くのは確認した。

おそらく、王族用の抜け穴を使うのだろう。


だから、城の中さえ通さなければ妹姫さんを守ることができる。


俺は次々とくる魔獣を薙ぎ払う。

しかし、大振りな攻撃は次々となだれ込んでくる魔獣の格好の的である。

それでも、俺は鎧を使って格闘戦を行ったりして極力ダメージを受けないように戦う。



それでも、多勢に無勢…数の暴力とは恐ろしいもので体力だけではなく、いつ終わるか分からないという精神力までもが削られ、数故にダメージが蓄積されて行く…。


そうして、戦ってから数十分ほどで俺は地に膝を付けた。



「はぁ…はぁはぁ…くそっ!

動け!動け!」



必死に体を動かそうとするがもう、体が言うことを聞かない。

まだ、通すには早すぎる。


しかし、俺の目の前の魔獣達は理不尽にも俺に襲いかかってくる。


強くなりたい…英雄のようになりたい…。


いつしかそう願わなくなった思いが蘇る。

しかし、現実はこれだ。

俺は英雄ではなく、ただの一介の騎士にしか過ぎなかった。

故に魔獣達を短い時間しか抑えることができずにここで死ぬのだ。



「いやだ…終わりたくない!

まだ…戦える!」



しかし、俺の心は折れなかった。

立ち上がって戦おうと必死にもがきながら剣を滅茶苦茶に振る。

それによって、ほんの少しだけ時間が稼げる。



「俺は…俺の全てを賭けてでも…守りたい!

何でもいい!なにかを…守りたいんだ!」



自分を鼓舞するように俺は叫ぶ。

思いが止まらない。

もう、止めらない…後悔を決してしたくない。


濁流のように止めどなく溢れでてくる思いに俺は冷静さが消えて行く。


僅かにだが、体が動く。


限界を訪れた体が急に軽くなったように少しずつ動きだす。



「うおおぉぉぉぉぉ!!」



気がつけば獣のような咆哮を俺はしていた。

頭が真っ白になって行く。

もう、自分というものを抑えらない。


ただ、行き場のない感情を吐き出すかのように俺は暴れ出す。

てことで、今回は次回予告とは違う話になりました!

いや、次こそ前の次回予告と同じ話になりますよ!多分

今回は雪虎の意外な一面が垣間見えたと自分的には思ってます。

さて、皆さんはどう思ったのでしょうか?



では、ここまで読んでいただきありがとうございます!

おもしろいと思っていただけたなら幸いです!

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