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炎の魔人

全てが暗転した。



走馬灯のようにあの日の記憶が頭の中に過ぎる。


俺こと火鎚はそんな中ゆっくりと目を開く。

いや、正確には意識が無くなったのだ。



それを意味することは自身の精神の昏睡。

要するに今の俺は夢の中にいるようなものだ。

あえて言うなら「あ、これ夢だな」と思うような状況と似てるかもしれない。


まぁ、実際にそれと同じと言っても否と答えるだが…。


とりあえず、複雑な状況であることは変わらないのだ。



「思った以上に手強いな」



俺はポツリとそう呟く。

今回の件に至っては自分の精神の主導権を取られることも考えていたがこれほど早いとは予測ができていなかったのだ。

その上、完全に自身の精神を抑え込み、このような状況になってるのだ。


非常に厄介である。



「とりあえず、対話は必要だよな?

イフリート」



俺はそう言って目を向けた先には炎の塊で出来た魔人が立っていた。

その魔人はゆっくりと顔を上げるとゆっくりと俺を見る。


今俺のいる空間は先ほど説明した通りだが、別の言い方ではもう一つある。


それは、俺と言う人間の深層心理に当たる場所である。



『まだ、しぶとくも残っていたか』



魔人はそう呟く。

今俺の目の前にいる魔人は現在、俺の体を使っている魔人である。

そして、目の前にいるのはその深層心理、要するに表には出ていない精神である。



「あぁ、しぶとく残ってるよ」


『そうか、ならばここで死んでもらおう』


「相容れないか…イフリート…いや、お前はそんな名前じゃなかったな」



そう、俺は炎の魔人に対して一つ勘違いをしていた。

彼の名前はイフリートなんかではない。

イフリートとは、この世界における神話などで語られる存在。

しかし、こいつの原点は違った。


炎の魔人の原点とイフリートは原初を知る者にとっては混ざってしまった神話なのだ。

そんな混ざりの中で存在が希薄となり、融合してしまい『イフリート』という存在となった。


原点は炎を恐れた人間達が結びつけた魔人や魔獣の一つ。

それをこう呼んだ…



「『ガイロ』」



その瞬間、炎が上がる。

俺の呟きと共に炎の魔人…否、イフリート…否『ガイロ』は喜びの笑みを露わとする。



『ようやく思い出したか、我が依り代よ。

だが、その間違った認識が貴様の敗因の一つだ』



ガイロはそう言って俺に近づいてくる。

そんな中、俺は別のことを考えていた。



(敗因?いや、今はいい。

こいつに勝つ手段なんてない。

でも、どうにかしなくてはいけない。

こいつは俺が乗り越えなくてはいけない壁なんだ!)



その瞬間、炎がぶつかり合う。



**陸也



風を切り、音を切り、炎を切る。


呑まんとする無限の炎は辺りを燃やし、息が苦しくなってくる。

おそらく隠蔽班などの存在を陰陽師や疾風が派遣してくれなかったら山火事だと大騒ぎだろう。

それでも、俺は動きを止める訳にはいかない。



「ゲホッゴホッゴホッ!

ハァ…ハァ…ゴホッゴホッ!

厄介…な力だ」



俺は呟いてグラつく視界を安定させる為に頭を叩く。

その瞬間、後ろから小さな音が聞こえる。



「チッ…思った以上に早いな!」



迫り来る炎を俺は刀でぶった切り、走り出す。

少し迂回をしながら炎が来た方向に向かって。

そして、人影が見える。

それはどこか刺々しい鎧のような体を持つ人。



「見つけたぞ!イフリート!」



俺はそう叫んで刀を振り下ろす。

しかし、それは腕で抑えられて傷一つ付けることが叶わなかった。

どうやら、全盛期に戻って来ているようで簡単に斬れそうにない。



『ガッカリだ。

昔に我を追い詰めた人間がこの程度とは』



完全に舐められている。

しかし、間違いではない。

こいつを追い詰めるにはただ純粋な能力程度じゃ話にならない。


だから…


俺は自分の刀を弾くように振りかぶる。

それを見たイフリートが次の攻撃を仕掛けてくる。



「『信念』は此処に在り」



その瞬間、真っ赤な何かが俺に降りかかる。

その時には俺の姿勢は振りかぶった姿から何の構えもないゆったりとした姿勢となっていた。



『なっ…!』



驚きを隠せていないイフリートは炎を放って俺から離れる。

しかし、今の俺には避ける必要性すら感じない。



「どうした?

こっちも本気なんだ。

少しはやる気出したらどうだ?」


『…貴様…何をした』


「何って…」



俺は見据える。

大きな傷を胸に作っているイフリートはとんでもないほど俺を警戒している。

もう、息苦しさなどがない。

だから、淀みも焦りもなく答える。



「『信念』の英雄。

陸也=クレードの『信念』だ!」



そう言って俺は走り出す。

そして、刀を振るい確かに捉えた。


そう思った瞬間、イフリートの口が動く。



『そうだったな英雄さんよ』



その瞬間、何の感触も無く刀が通り抜ける。

何が起きたのか俺は分からなくなる。

しかし、すぐに何が起きたのか気がつく。



「…炎化」



そう、イフリートの体が炎となったのだ。

故に物理的な攻撃はすり抜けた。


しかし、



「その程度で『信念』を破れると思ったのか!」



刀が光を纏う。

その瞬間、俺は体に力が入らなくなる。

その刀はイフリートに届くことは無く、落ちていく。

俺は地面に倒れ伏せて体は思うように動かさなくなる。



『あぁ、破れるとは思っちゃいない。

お前の能力は把握してる。だから、炎化は愚策だということも分かってる。物質、非物質関係なく攻撃できる力には意味がないからな』



イフリートの言葉すら俺の耳には入らなくなって来てるが僅かに何を言ってるか分かる。

しかし、今状況について俺は分かっていない。



『しかし、貴様の力は捨て身だ。

極限の攻撃を手に入れる代わりに免疫は落ちる。だから簡単に貴様の神経を焼くことができる』


「…」



俺は言葉を紡ごうとするが、喉もやられているようで音すら出ない。

そんな時、ふと下らないことを思い出す。



そういえば、こんな手段があるじゃないか。



俺はある事に思い至り実行しようとする。



『さて、そろそろ現世とのお別れも済んだか?

まぁ、どちらにしろ声も出ないようだし聞いても意味ないか。

だから…さっさと死ぬがいい』



その瞬間、視界が戻っていく。

そして、視界の端には真っ白な炎が迫って来ていた。

それを見た俺は刀を手に取り炎を斬る。



「悪いがまだ死ねないんだ」



俺はそう言って刀を振るう。

しかし、それには非物質を斬る力は無く。

イフリートの体を薙ぐだけだった。



『何故だ…』


「悪いがもう一人、捨て身の能力持つ奴がいてな…そいつを参考にしたんだ」



そう、俺の体は治ってはいない。

強制的に動いているだけだ。

補助としてエネルギーの糸を垂らしてるが気休め程度のものだ。

だから、結局のところは未だにピンチだ。



『ならば、慈悲は無く殺そう』


「そうか、なら俺は死ななければ勝てるな」



俺は刀を振るう。

イフリートは炎を放つ。

お互いに殺さんとする中、俺は致命傷だけを避けて動く。


炎と刀がぶつかり、拮抗し合う。




**火鎚



炎と炎がぶつかる。

お互いに拮抗したように見えたがそれは一瞬のこと、片方の炎が呑まれ、呑んだ方の炎が迫る。


呑まれた俺の炎で呑んだのはガイロの炎だった。


俺は即時退避をしてガイロに近接戦を挑む。

しかし、すぐに炎化をされて俺は離れるしか無くなる。



『何度やっても無駄だ。

我が依り代の炎は所詮、我の炎の模倣にしか過ぎないのだから』



俺はそう言われて何も言い返さずに炎を放つ。

しかし、ガイロはその言葉を証明するように同じように炎を放ち俺の炎を打ち消して、俺の方に向かってくる。


なんとか避けるもののこちらには攻撃手段はなくジリ貧状態である。


そう、俺の技法は炎しか使えない。

その影響か固有能力も炎の強化などである。


それは『ガイロ』が中に眠っていたからに他ならなかった。

故に俺は炎しか使うことができずにいた。


しかし、あくまでそれはガイロの影響でありそして、ガイロの力でもあった。

故に俺だけが使うことのできる炎はガイロの劣化品でしかない。

炎しか使えなくなる以前の頃は確かに水や風なども使えた。

しかし、今の俺はその使い方すら忘れてしまっている。



『依り代じゃ、我には勝てない。

大人しく消えろ』


「それは了承できないんだわ。

俺はそのために戦ってるからな!」



俺はそう言って走り出す。

おそらく、ガイロの炎を喰らえば簡単には立てない。

でも、存在が一瞬で消えるわけでもない。


俺はそう言い聞かせて拳を握りしめて思いっきりぶん殴る。


当たりの良い音が響く。


顔面に入った一発はガイロに直撃した。



『それで満足か?』



そう、あくまで直撃しただけでガイロには効いていなかった。

一瞬、俺は拳を下げようとしたが思い直す。


このままでは負ける。


死にたくない。

嫌だ…俺は何もできずに終わりたくない。



「あぁぁぁぁぁぁ!」



俺は何度も殴る。

蹴る。

精神世界でも痛いものは痛い。

血だって実際無いものだとしても流れる。


俺の頰には血がへばり付く。

しかし、その血はガイロの血ではなく俺の拳から流れている血だった。


しかし、それでも止まらない…いや、止められない。

死にたくないのだ。

何度も何度も…殴り…俺は叫びながら殴り続ける。

少し今回は短めです。

因みに陸也の時のイフリートは誤字ではありません。

なぜなら、まだ陸也はその答えに行き着いてないのだから。

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