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一方その頃

火鎚や雪虎の暴走、勇馬と刃月が仕事で出発している中、居残り組居残り組達はどうしてるかというと…。



「では、この問題解ける人?」


「はい!」

「はい!はい!」

「はーい」



そんなカオスな喧騒の中で刃月の弟『夢宮 ユン』は窓の外を眺めていた。

現在、ユンは最寄りの小学校の6の3にて算数の授業を受けているのだが、上の空と言った感じである。

因みにユンと同い年である華はというと同じクラスで現在ノートを取るという名の落書きを行なっていたのはまた別の話。



「そうねぇ、誰にしようかしら」



担任教師は手をあげる人をみて悩むような素振りを見せる。

そして、ふと考える中でユンが目に入り『よし』とわざわざ口に出す。



「んじゃ、珍しく起きてるし夢宮君、お願いできる?」



その瞬間、ユンは「うそ」というと表情をするが先生は依然として笑顔のままだ。

実際、ユンは授業中に基本的に睡眠を取るにもかかわらずテストの点数は常に満点というある意味困った生徒として先生方からは認識されていた。



「…はい、わかりました」



ユンは先生を見て逃げられないと悟り黒板の前に出て回答を書き込んでいく。

その際もユンは考え事をやめなかった。



(勇馬にしては珍しく不干渉を貫いている。

しかし、それは聞いた話からして仕方ない)



ユン自身もまた勇馬の意見にも納得してはいた。

しかし、ユンの中にはある疑問が尽きていなかった。



(しかし、本当に可能なのか?

同時に二つの存在を有することは?)


「正解です」



ユンは考えながらも受動的に先生の言葉を受けて自分の席に再びついて窓の外をまた見る。



(確かに原初の頃は今から考えると不思議な現象が多数起きていた。

まるで現象そのものが安定しないように…いや、待て…安定?)



そう、原初の頃は元は魔獣などといったものや人災も存在しなかった。

しかし、それが生まれたのは原初にあった概念に他ならない。

だが、そのことをユンは知る余地もない。



(アホらしい。

そもそもが推測の域を出ない。

でも、兄さんの派遣については分かる。

おそらく食料が直接的に必要とならない戦力だからだ)


「チャイムも鳴ったことですし三時間目の算数はこれで終わりですよ。

では、起立!」



すぐに自分の考えの否定を行い放棄をしたユンは現在直面している疑問に戻す。

その際に掛けられた先生の号令などユンの耳にはもう入っていない。



「夢宮君!」


(でも、なんで勇馬はついて行ったんだ。

戦力の補強は分かる…でも、雪虎も暴走してるはずだ。

なのになんで…いや、雪虎にも問題があると考えればいいのか?

なら、一体何が?)



そうして、どんどんとユンは思考のドツボにはまっていき、先生の声など届いていなかった。

ユンはどんどんと考えては打ち消してを繰り返して頭を掻きむしろうとしたその時だった…。



「ユン、立ちなさい」



綺麗で透き通った声がユンの中にやけに響いた。

そして、気がつけば何も考えずにユンは立っていた。



「では、夢宮君も立ったことですし。

気をつけ、礼」


『ありがとうございました!』



流れるようにそのまま号令が終わり、ユンは自分の失態に気がつく。

そして、苦笑いしていると華がユンの方に歩いてきていた。



「悩むのは分かる」



透き通った声でそれだけ言うと華はユンの席の前に立ちじっとユンを見つめる。



「悪いな、迷惑かけた」


「いや、確かに悪いけど、不完全燃焼になるような説明をした勇馬にも責はある」


「そうだよなぁ、あいつにしては珍しく絡まないんだよ」



ユンの疑問は結局はそこにある。

勇馬という人間の共通認識とは案外原初の頃から変わっていない。

目の前に苦しむ人間がいるなら余程でない限り手を出す善人という認識であった。


しかし、それはあくまで一部の認識でもあった。



「ユン、一つ言うと勇馬はそんなに善人ではない…いや、善人ではあるけど、寧ろ知りすぎた故に善人過ぎた」


「…そうか、確かにそうかもな」



ユンにとってはそれは繋がった。

意味のわからないはずの華の言葉はユンにとっては理解できるものだったのだ。



**



その理由は、かつて原初の頃ではユンと刃月は生き別れていた。

理由は簡単、純粋な離婚であった。

その際にユンは母親側に刃月は父親側に…。

そうして、ユンと刃月が原初の頃で再開したのはかなり先の話であった。


その中でユンは貧民層として生きていた。


母は早くに流行病で亡くなり、明日へと繋ぐためにゴミを漁り、ものを盗み…生きるためにありとあらゆることを行った。

それにはいくつかの願いがあったからだ。


一つは兄と再開する。

他にも豊かな生活をすることや最低でも誰か一人を幸せにすることだった。


しかし、それも閉ざされるような一つの事件が起きた。


ユンの住んでいた町では英雄が顔をきかせており、英雄だからという横暴がまかり通っていたのだ。

その英雄は一人の人間に罪を押し付けて全てを解決するなんて方法を取っていた。


それはその時のユンが後に知ったことで意図的に人災を生み出して、人災の要因の一部を発散しているらしい。


しかし、ユンにとってそれは認めたくなかった。

自分と同じ貧民層の人間が月ごとに一人、また一人と消えていくのだ。

それを恐怖という以外何があるのか?



そうしていくうちにとうとうとユンにその災厄は降りかかろうとしていた。

その時、ユンを救ったのが兄である刃月だった。

自ら人災の力を取り込み、苦しむ刃月を見て最初は誰も動けなかった中でユンは守らないとと思い至り、刃月を連れてその場から逃げ出した。

その際に邪魔をする人間なんて一人や二人ではなかった。

何万という人間から逃げて時には殺して気がつけばユンは人災になり始めていたのだ。



『世に逆らう鬼』



そう呼ばれた頃、俺は自分の意思で守るためでは無く無関係の人間を殺した。

人を殺せば殺すほど強くなる、そうして、自分は強くなる。

そうして、兄を守ることができるなんていう夢を見ていた。



ー本当に夢だったのだ。



それが兄を…刃月を苦しめていることにユンは気付くことができなかったのだ。



ある日、ユンが刃月の元に戻った時だった。

ユンは刃月に飛びつかれて首を噛まれた。

驚きのあまりに突き放そうとするが強く抱きしめられており、突き放すことが出来ずにユンは暴れようとした時だった。


首筋に何かが落ちてきたのだ。


それに気づいた時、ユンは何の言葉も出なくなっていた。

ユンが気が付いた時には刃月は既におらず、ユンは普通の人間に戻っていた。

その時に自覚したのだ、自分が人災になって暴れたことが刃月にとって重荷になってしまったことに…。


何も無くなり一人になったユンの前に一人の少年が現れた。

いや、少年と言っても当時のユンより大きい。



『失敗して無くしたのか?」


『違う、俺が…俺が……』


『そうか…、俺からは何も言えないな』



少年の言葉に対してユンは素直に受け取ることができなかった。

自分の罪を兄に背負わせてしまった自分への後悔や恨みなどが溜まっていく。



『でも、一言だけ言わせてくれ』



立ち去ったかと思えた少年の声が響く。



(放っておいてくれよ…)



少年にはそんなユンの願いは届かずに声を出す。



『お前はそれでいいのかい?』



その言葉はユンに酷く響いた。



『なんだ、やっぱり自覚はあるのか…。

だから、あの意地っ張りの兄もまた悪い』


『違う…俺が…』


『そう、お前も悪い。

でも、結局はお前に同じ苦しみを与えている兄も悪い』


(あ、そうか。

そうなのか…俺は全然分かってなかった)



ユンの中で文面だけは理解しただけの苦しみを罪悪感を理解した。

これも兄が感じた気持ちなんだと。



『だから、今度はお前の手で止めよう。

あの意地っ張りな馬鹿兄ってやつを』


『でも…いや、ありがとう。

やっと目が覚めたよ…決めた!』



ユンはそれと共に立ち上がり目の前の少年を見る。

すると、少し少年は笑い手を差し出してくる。

ユンはふと手を伸ばすが一瞬、引いてしまう。



『俺は北条 勇馬=*****だ。

一時的だがよろしくな』



そう言われて始めてユンは少年いや、勇馬に手を伸ばす。



『よろしく、俺は…』



(そう、別に大それたことなんて考えなくていい。

兄さんを幸せにするのも兄さんを助けるのも…どうだっていい!

俺は…夢宮 ユンは勝手に夢宮 刃月という男を救う!)



**



(そういえば、あの時もあいつは俺が行ってきたことを知ってもなお許してたな)



ユンは自分の罪を思い出して苦笑いをしながらそう考える。

基本的に勇馬という人間は俺たち人災が何をしてきたのか知っていた。

しかし、それであってもユン達を殺すことは無かった。

いや、もちろん殺した人災もあるのだが基本的に人災に対して敵意や殺意を向けたことがなかったのだ。

むしろ、共犯者を見るような目をしていたような気さえユンはしていた。



「ユンは英雄を知ってる?」


「いや、言葉だけならわかるが具体的なものはサッパリだ」



華は唐突にそう聞くがユンとしては何らかの繋がりがあるのか考えながらそう返していた。

その答えに納得したように華は頷くと話し出す。



「英雄というのはある概念を生まれながらにして持った者達のことを言うの。

でも、あのご時世ではもっと複雑だったけど」


「生まれながらにした概念…それって能力みたいなものか?」


「詳しいことは分からない」


「そうか、でも何でそれが英雄?」


「彼らしか人災を止める人間がいなかった」



華の言葉にユンは言葉を詰まらせる。

人災とはもとより人知を超えた存在とも言える。

人間の思いや情念からできたことから一種の神様といっても差し違えはないと言えるだろう。

そんな存在を唯一止められる存在はまさに英雄と言っても過言ではないだろう。



「それなら…何で」


「今は聞いて」



ユンが疑問を口にしようとしたが華がそれを止めた。



「多分、雪虎は…英雄になりたかったんだと思う」


「え?」



ユンにとっては意外だった。

付き合いは何世代に渡りあるため長いがその雪虎が英雄になりたいなんて思っても見なかったのだ。

そして、あんなにも強い雪虎が英雄に何故なりたいのか不思議だった。



「そこだよ。

誰だって弱かった。

その結果が雪虎なの」



ユンの心を見透かしたかのように華が呟く。


意味がわからない。


ユンの中に残った疑問だった。

弱かった。

理解はできた。

でも、ユンにとっては何故そこで英雄に行き着くのか理解ができなかった。



「ユンは魔獣という生き物が正確には人災ということは知ってる?」


「なんとなくは…」


「なら、原初の頃に起きた災害。

グリアム王国悲劇は?」



その華の言葉にユンは全て行き着いた。


グリアム王国とは

原初の暦を現代風に表すなら紀元2000年に起きた話だ。

1人の英雄が人災の起こりうるエネルギーの制御に失敗して起こした事件だった。

その結果、大量の魔獣が街を襲ったという。

親が離婚したばかりのユンもその悲劇に巻き込まれていた。

必死に逃げ惑ったことをユンは今でも覚えている。



「それが…どうかしたのか?」


「雪虎は…その悲劇の中でしんがりを務めた騎士だったの」



絶句…今度こそユンの言葉は本当の意味で失った。

原初の頃の彼らにはそれを抑えるほどの力なんてあるわけが無かったのだ。

英雄でさえも半分をなんとか削って死んでいったのだ。

そんな中でしんがりを務めるとは死ぬと同義だったのだ。



「それが、雪虎という人災の正体…多分…」


「しんがりを務める中で何か必死に強く生きたいとか願った…ということか?」



華の後に続いてユンはそう言う。

タイミングが良いのか?悪いのか?チャイムが鳴り、2人にはそのチャイムの音が妙に虚しく聞こえていた。

それもそのはず、あの悲劇は地獄と言っても良いのだから。




**




「今度こそ救わなきゃ」



千那はそう呟いて家を出る。

その目の中に映るのはグリアム王国悲劇だった。

彼女がたどり着いた時にはもう、グリアム王国は焼けて誰もいなくなっていた。

そうして、彼女は普段半透明の少女と会う場所に行く。



「少し急用が…あれ?」



千那が中に入るとそこには誰もいなかった。

それに対して彼女は首を傾げていた。


そして、半透明の少女が机として使っていたところには一つの手紙が置かれていた。



『少し急用ができて日本国外に行ってきます。

本体はこちらにありますがあまり刺激しないでください』



千那これを見て苦笑いを浮かべる。

あまりにも突飛なことだが彼女にとってはそんなこと関係なかった。



「本体の場所、知らないんだけど…」



つまりそう言うことである。

そのおかげか先程まで焦っていた様子もなく千那は冷静な思考を取り戻していた。



「まぁ、とりあえず助けを求められたから来たけど君はいらないんだ」



千那は後ろを向いてそう呟くが何も反応を示さない。

しかし、彼女としてはそこにいるという確信がある。



「ねぇ?朱嶺君、だっけ?」



千那のその一言に観念したのか一人の男が現れる。

その姿の所々は異形な姿をしており、到底人とは思えない姿だった。



「やはり、貴様は不穏分子だったか幸凱 千那」


「どういうことかな?僕は元から忠誠なんてある人以外に捧げる予定がないけど?」


「それは誰だ?」


「さぁ?間違いなく自分が強いと勘違いしているお馬鹿さんではないことは確かだね」



千那の挑発的な言葉に朱嶺は顔をしかめる。



「自覚ありだね」


「囀るな。

立場というものが分かっていないぞ」


「それはどっちのセリフかな?

どちらにしろ君には実力で勘違いを正してあげた方が良さそうだね?」



千那がそう笑った瞬間、周りに大量の神主の服を着た男達が現れる。



「教えてあげるよ。

数を揃えても無駄だとね?

まぁ、安心して殺しはしないから」


「ならこちらは貴様がいかに傲慢なのか教えてやろう。

安心しろこちらも殺さない、ただ性格などはともかく見てくれはいい。

自分の生きていたことを後悔させてやろう」


「変態」


「なんとでも言え」



その瞬間、戦いが起こる。

神主達の炎が千那に迫る。


そして起こる爆炎の中で千那呟く。



「早く解決しなくちゃ、『イフリート』が使えなそうだな。

それに、あの人ばかりにもう頼りたくないしね」



そう笑った瞬間、千那は剣を出して動き出す。

気がつけば一つのサイドができていた。

まぁ、仕方ない。

ユンは常々空気だったので一度しっかりと再認識させたかったのが大きいです。


では、次からはおそらく火鎚達のサイドになると思います。


ここまで読んで頂きありがとうございます!

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