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火鎚と雪虎

『辺り一帯の炎』


『流れ込む災厄と呼べる猛獣達の群れ』


『俺は手を伸ばした』


『俺は英雄になりたかった』


『生きたいという願望が俺を突き動かした』


『自分の手の届く全ての者を守りたいと願った』



『『しかし、現実は残酷だった』』



『辺りは焼け焦げ、自分がいつ死ぬか分からない』


『弱く脆弱な俺は自分という犠牲を使っても最低限しか守れない』


『そんな終わりなんて嫌だと願い続けた』


『嘆き哀しむことを忘れるほど己の身を削った』



『『そう、俺は身を売ったのだ』』



『生きるために…』


『守るために…』



『『たとえ、自分の中の何かが抜け落ちようとも…』』



『俺は手を伸ばした』

『俺は罪を犯した』



『『その後の俺たちには後悔しか無かった』』



『自分が自分では無くなる感覚』


『自身が殺されるべき咎人になった自覚』


『それなのに俺は生きることを諦めない』


『それでも俺は英雄でありたいと願う』



『『そう、間違いであるはずがないんだ!』』



『しかし、許されない』


『俺は人であることを辞めていた』


『生きる余裕のない俺が誰かを気にかけてはいけなかった』


『守りたい大事な者を危うく俺は自らの手で殺してしまうかもしれなかった』



『『怖かったんだ』』



『自分が支配されていく感覚に…』


『気が付けば刃を向ける自分に…』



『『そんな時一人の人災に出会った』』



『竜のような鱗を持つ者』


『半身から炎が吹き出ている者』



『『そう、不意に憧れて嫉妬してしまった』』



『生きる術を持つ者に…』


『誰かを救える者に…』




ー故に俺達は更に道を踏み外した



**



暗い暗い、外れの森の中。

ここは皆帰が天魔へと変わった魔獣と交戦した場所だった。


今、その場所で呻き声が響き渡っていた。



森のあちこちに火がついては消えていき、暗い森の中で明滅していた。



「あぁぁぁぁ!」



壊れるような叫び声の主の左半身には黒い何かが炎と一緒に纏われておりそこから炎が何度も拡散していく。



「まだ…ぐっ…てい…こうを……やめる…わけ」



それは男の声だった。

男が口から言葉をこぼす度に炎は激しくなり、男は抵抗するように左半身を抑えて右半身で飛び散った炎を吸収する。



『無駄なことはよせ…我が依り代よ』



ひどく重低音の声が男の中に響く。

その声は男の中以外には届いていなかった。


しかし、それと呼応するように炎は強く激しくなっていく。



「やめろ…俺はもう!」


『何をだ?

依り代よ、貴様は変わらぬ…今も昔も我に身を委ねた』


「やめろ…俺は……違う…!」



男は必死に頭を振り否定を行う。

しかし、無慈悲にも男にある言葉が突き刺さる。



『違わぬ。

なぜなら、貴様は自ら化け物であることを望んだのだろう?』


「いや…ちが…」



男の中には否定の言葉が消えた瞬間だった。

そして、男の抵抗が一瞬消えた。



『そう、貴様は被害者ではない。

加害者である!』



その言葉に男は何も言えない…いや、ずっと閉ざしてきた自分への肯定が砕けていく。



「ちが…俺はただ…」


『生きたいだけとは笑わせる!

その結果が我を呼び寄せ!

自身の手で沢山の命を奪った!

それでただ生きたいだけとは!

お前は自身を正当化し、死んだ者の重荷も背負わず自分のためだけに全てを犠牲にして、そんな貴様に生きる価値などあるのか!

いやない!人の尊厳を踏みにじり、悪魔と呼べるような我と契約した貴様にその言葉を言う資格はないだろう』



その言葉に男が一瞬止まる。

しかし、反論しようと口を開いた瞬間、それは起きた。



『眠るがいい。

己の罪を悔いながら』



その瞬間、炎は荒ぶり男を飲み込む。



「俺は…!」



その最後の言葉は誰も届かなかった。

そして、炎が収まり黒い人の形を成していた。

鎧のような黒く硬い皮膚と怪物のような顔をした化け物の姿へと男は成り果てていた。



「ふはははは!

儚いものだ…こうも簡単に人とは壊れていくのだから」



男だったものはそう高らかに笑いながらそう言う。

そして、口が裂けるように笑う。



「さぁ、果たそうでないか。

我が生まれた意味を」



その言葉とともに歩み出す…はずだった。


その瞬間、一閃の風が通り過ぎる。

不自然すぎるくらいな強大かつ鋭利な風…。



「何者だ?」



そう呟いて男だったものは辺りを見渡すが何もいない。

そう、何もいないはずなのだ。



「悪いが不意打ちさせてもらうぞ」



その瞬間、一人の男が後ろから現れて刀を振るう。

それを直感的に動き男だったものは腕で刀を抑える。

それは当然であるが如くの印象を男だったものは抱いている。

しかし、男だったものにとっては不可解なことでもあった。



(バカな…我が見破れないだと)



そう、近づいてくるまで男だったものが気がつくことができなかったのだ。

故の疑問…しかし、それは一瞬で払拭される。


刀で斬りかかった男は跳びのき刀を構えて男だったものの周りをゆっくりと歩く。



「貴様は…あの時の!」



男だったものは炎を身体中から噴出させて威嚇する。

しかし、刀を持った男はそれを気にせず口を開く。



「久しぶりだな。

悪いが今度こそ決着をつけさせてもらうぞ!」



そう、刀を持った男は田中 陸也だった。

そして、陸也は刀をゆっくりと動かして一定のタイミングで止まる。



「来るなら来い!

炎の顕現者を簡単にやれると思うな!」



男だったもの…いや、今は炎の顕現者…属名イフリートはそう奮起して炎を陸也に放つ。


そして、陸也が地を踏みしめる。



「一挙重斬の型、秘技『重縮地』」



陸也が一瞬ブレる。

その瞬間には約20メートル左に移動して炎を大袈裟に避ける。



「逃げても無駄だ!」



炎は陸也を追いかけるように動かす。

しかし、その瞬間にはイフリートは炎の制御を失っていた。


いや、正確には大きなミスに気がついたのだ。



『闇夜』の型、基礎『残滓』



それは自分がいた場所に自身の能力として使用するエネルギー要するに霊格や技法などを置いていくことにより、残像を作り出す技。


イフリートがそれに気がついた時にもう既に遅くイフリートの背後から斬撃が飛んでくる。

それに何とかイフリートは反応して炎を展開するがそれを突き抜けて浅い傷をイフリートは作る。



「チッ…あと少しだったな」



その呟きを聞いてイフリートが反撃に出るが時すでに遅く、残滓を残して陸也は既に引いていた。


そして、気が付けば無数の残滓が辺り一帯に残されていたのだ。

そして、それは今もなお増え続けている。



陸也が現在行なっていること『残滓』と『重縮地』とは、『残滓』先に説明した通り敵を翻弄する技として見れる。

しかし、残滓を作り出す瞬間を見られれば簡単に見破られてしまう技である。


それを補うために『重縮地』の使用を陸也はしたのだ。

重縮地とは名の通り縮地の途中または縮地が終わった直後に縮地を行うことにより、方向転換などを行う技である。


そして、その二つの相性はとても良く縮地が終わった瞬間に残滓を残すことにより、大量の残滓を残して、なおかつ作った瞬間には退避が済むという利点があるのだ。


そして、これを実はこう呼ぶ。



『総重』の型『闇縮地』



と。



しかし、それでも陸也が有利とは言い難かった。

イフリートには強靭な肉体があり、すぐ治ってしまうようなかすり傷を与えるのが精々だった。


それを分かっているからなのかイフリートは余裕の表情で少しずつ迎撃していく。

そして、幾ばくかの時間が経った時、それが起きた。



偶然やマグレの産物かもしれない。

しかし、それでも通常ではかなり危険な状態となった。


それはイフリートの迎撃により陸也の持つ刀が折れたのだ。


しかし、それは普通ならの話だ。



「『音砕き』」



陸也のつぶやき。

その瞬間、地面が大きく抉れイフリートの体を傷つける。

そして、イフリートが陸也を再び見たときには5メートルはある大太刀を背負っていたのだ。



「久しぶりに振る感覚は気持ちいいな」



そう、これが陸也が本来使うはずの魂と同化してまで刻んだ武器『風狩り』である。

鞘は無く、巨大さだけが目立つだけで綺麗でシンプルな色と形をしていた。



「しかし、それがどうした」



イフリートはそう呟くと陸也との間合いを詰める。

それを対処するように陸也は大太刀を振るう。



「間合いを詰めればやりにくかろう!」


「おもしれぇ、やれるものならやってみな!」



甲高い音を立てて両者ともにぶつかり合う。

それは半径20メートルを巻き込むような命の取り合いだった。



**雪虎



「ぐあっ!」



俺は修練場の地面に倒れこむ。

これで何度目だ?

俺には誰かを守るような力がない。

だから、欲しい。

それは間違ってることだろうか?


いや、間違っていないはず…大切な何かを救うのに間違いがあるわけがない。

しかし、それと共に俺は何かを失って行く。


原初の時は人を失った。


そして、また今世でも何かを失おうとしているのかもしれない。



「ほれ、また暴走しておるぞ。

まぁ、もう聞こえないだろうがのう」



その瞬間、俺の胸に衝撃が走る。

気がつけば倒れ込んでおらずに吹き飛ばされていた。

どうやら、また暴走して戦っていたみたいだ。



「くそっ、まだだ!」



すぐに体制を立て直して俺は剣を構える。

視界はぐらつく。

今すぐにも倒れ込んでしまいたいくらいだ。

それでも俺は何度も立ち上がる。

強くなるために…。



「何を急いでおる。

お主はもう強い…このままじゃ一生弱いままじゃよ」


「んなもん分かったんだよ!

だから、強くなるためにこの力を制御しようとしてんじゃねぇか!」



俺はまた意識を飛ばす。

そして、再び意識を戻した時は宙に浮いていた。

いや、正確には吹き飛ばされたのだろう。



「分かっておらん。

その証拠にまるっきり成長しておらんではないか」



うるさい。

強くならなきゃいけないんだ。

今度こそ姫さん達を守るために。

俺の手で誰かを胸張って守れるようになるために…。



甲高い音が鳴り響く。



俺は何度も剣を振るい爺さんの隙を伺う。

しかし、そんなものなんてあっという間に崩れた。


再び俺は暴走して次の瞬間には壁にぶつかっていた。



「次だ!」



俺がそういった時には爺さんは刀をしまっており、出口に歩いていってしまう。



「待ちやがれ!まだ…」


「休憩だ。

こんなものをいつまでも続けても意味がない」



俺にそう言って爺さんは出て行く。

それを俺は見送ることしか出来なかった。


俺も渋々と剣を消すと台所に向かう。

そして、軽く料理を作って机に置いて行く。



「うむ、いつも通り美味しそうではないか」


「それはどうも…って、明日美は?」


「奴なら大事な用が出来たからとか言ってどこか行ってしまったぞ」


「そうか」



どこに行ったのかと気になるが今の俺がどうすることもできないと思い、軽く味噌汁をすする。

しかし、普段より味を感じることはなかった。



「情けないな…」



俺はそう呟いて血の味のするご飯をかきこんだ。



**勇馬



俺は現在、ある密室の中で俺含めた男5人で過ごしていた。

いや、過ごすとは言ってもほんの数時間のことで特に問題は無い。

しかし、これから起きることからメンバーの主に加藤さんと斎藤さんそして、健斗が緊張しているようだ。


刃月と俺が依然として変わらず気楽なものだったりする。



「…勇馬、少しあの二人について聞きたい」


「えっと、あぁ、あれか火鎚と雪虎のことか?」



俺の言葉に刃月はゆっくりと頷く。

まぁ、気になるよな…あの二人がなんであそこまで暴走してるのかわからないのだから。



「まぁ、言っちゃえばあの二人は本当にイレギュラーなんだよね」


「どういうことだ?」


「まぁ、そのまんまの意味。

二人とも自分の精神的な問題じゃ無いから厄介なんだよ」



俺がそう言うと僅かに納得したように刃月が頷く。

しかし、やはり疑問が残るようで布越しでもその表情が優れていないのが目に見える。



「そうだなぁ…火鎚は自分以外の精神が中にいるからあんなにも暴れているんだよ。

それと折り合いを付けなくてはこれは一生続く。

そして、雪虎だが…あれは分不相応と言うべきかな?」


「火鎚はわかった。

しかし、雪虎はどう言うことだ?」


「そのままの意味だ。

でも、それさえ乗り越えられれば下手をすれば俺なんかよりも強くなれる…あいつはそんな奴だ」



刃月はこれ以上聞いても無駄だと思ったのかそれっきり黙って考えていた。

その瞬間だった。


ブーブーブー


と音が聞こえてくる。



「全員、着席してシートベルトの着用を!」



その音を聞いた俺はすぐに指示を出す。

そして、全員が緊迫した雰囲気になり次のことが起きるのを待っている。

俺たちの現在持っている腕時計型の端末にはカウントダウンが行われており、健斗はソワソワしながらそれをじっと見つめていた。


加藤さんと斎藤さんは実践歴が長い為か落ち着いており精神統一を行なっていた。


俺と刃月に関しては今回の目的などの確認を二人で行っていた。


そして、カウントがゼロになる。

その瞬間、揺れが起きて僅かな浮遊感が起こる。

それを感じた瞬間には遅く、傾くように側面部分に向かって引き寄せられる。


そう、俺たちは現在コンテナのようなものに積まれて落とされているのだ。


まぁ、その不快感もじきに収まり僅かな浮遊感を残したまま正常な状態に戻る。

パラシュートが展開されたのだ。



「全員、安定したが立つなよ。

降り立つまで決して安心するな」



俺のその言葉が起因となったのかその瞬間、また落ちるような感覚が復活する。

要するにパラシュートが壊されたことを意味する。

まぁ、無事に着陸できるとは思っていなかったので予想通りである。


俺たちはそれぞれ身を守るようにする。



そして、それは訪れた。




ドスンッ




と音が鳴り響く。

それと共にすごい衝撃が俺たちに伝わる。

普通なら死ぬような衝撃が来たのだ。



「な、何とかなりました」



しかし、予め訓練していた為か俺と刃月は勿論、他3人も無事に…衝撃を耐えていた。



「それにしても…これからどうするかだな」



斎藤さんがそう言うと俺達は苦笑いする。

先程とは違い、側面の部分が地面となっておりそして、俺たちが入っているコンテナのようなものは地面に刺さっているようなのだ。



「これは…コンテナの頑丈さを喜ぶべきか設計が不親切なのを嘆くべきか…」



刃月の呟きはこの中の全員がひどく同意したのだった。

勇馬の方はこれでしばらくの間出番がありません。


さて、火鎚と雪虎はこれからどう転ぶのでしょうか?


そもそもが読んでくれている人がいるのかどうか?

いや、寧ろ趣味で書いてるので別にいいですけど…。



もし読んで頂いているならありがとうございます。

たとえ何があっても宣言せずにどころか本編以外でネタバレはする予定はありませんをモットーに書いてます。

それってネタバレじゃ無いよね?


最近、シリアスが多いのでふざけたくなった今日この頃を存分に後書きでふざけました。



よかったら感想(誤字や脱字の報告があれば頑張って直します)やブクマ(やる気向上)をお願いします!


あれ?打算しかない。

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