賭け
いつものように誰かと言い合い、誰かと笑い合う。
そんな毎日…そんなくだらなくもつまらない毎日の中を望んでいたのだろう。
「どうして?」
それは突如として歪んだものに成り代わっている。
何が起きたかわからない…辺りには逃げ惑う人々…その誰もが顔見知りでよく話していた。
そう、あくまでそれは幻想だった。
自分の危険というのに直面した中で俺を見るものはいなかった。
炎から逃げ俺を押しのけて去っていく。
『貴様の望みとは儚きものだな…』
俺以外誰もいなくなった炎の街の中で声が聞こえる。
それに対して俺は肯定も否定も見せない。
親は死に自身のみが足掻いてあがいて生き延びた。
ただそれだけのことでも、俺はそこらの逃げ惑う人々と何ら違いはないだろう。
『ハッハッハ!
貴様はやはり面白い…我が依り代や』
「黙れ…あくまでお前と俺の生きるための利害の一致にしか過ぎない」
声に対して俺はそう返事をするとフードでうまく隠している左の顔と包帯の巻かれた左手足を軽く一瞥する。
『安心しろ、依り代を壊すような真似をそう簡単にはしないさ』
「それならいい」
俺の心配したことを見透かすような言葉に苛立ちながらも納得したように呟くと俺は歩き出した。
逃げ惑う人々とは逆の方向に…。
**火鎚
俺は勢いよく飛び起きる。
そして、左の顔に手を添える。
「大丈夫だ…そうだ…何ともない」
俺は自分にそう言い聞かせて部屋を出る。
今日の授業を思い出しながらリビングに行くと雪虎以外の全員が揃っていた。
「お、やっと起きた。
もう少ししたら起こしに行こと思ってたが…」
勇馬そう言って笑うとまじまじと俺を見る。
「どうかしたのか?」
「…いや、昨日の件もあって少し気になっただけだ。
気にしないでくれ」
そう言って勇馬は椅子に座って朝食の続きなのか食べかけのパンを齧る。
他の奴らも朝食を食べているようで勇馬ほど気にかける様子はない。
いつもの風景である。
「そうだ、雪虎は?」
俺のその質問に対して勇馬は肩をすくめて分からないと首を振る。
他も分からないようで何も言わなかった。
「朝早くから出たことは知ってるけど雪虎が学校に早く行くとは思えないからな…」
皆帰の言葉に各々がそうだと頷く。
この信用は感心せざるおえない。
まぁ、俺も人のこと言えないけどな…。
そして、俺は空いている椅子に座って朝食を取り始めて数分のことだった。
「寝過ごした!」
そう言ってリビングに入ってくるスーツ姿の男がいた。
その顔立ちはどことなく欧米風で眼鏡がよく似合っていた。
「ジャックさん、まだ出ていなかったんですね。
パンならそこにありますよ」
この状況でいち早く那奈が丁寧な言葉使いでジャックの近くにパンを寄せると再び自分の朝食に戻った。
「ありがとう。
あ、そうだ…勇馬、雪虎についてはもう知ってるか?」
「え、いや知らないけど…」
「あいつ…やっぱり言わなかったか…。
まぁいい、あいつは少し用があるそうだ。
そのついでに山籠りをするとかなんとか…」
ジャックはそう言い残してパンをくわえて家を出る。
慌ただしく出ていくところを俺たちは見送るが、一瞬だけ華の様子がおかしかった。
雪虎に対してではなくその用について気になっているようだった。
勇馬は全く気づいてないようで小さな声で「山籠りをついでって…」とか呟いていた。
周りというか俺たちは全員(最近仲間入りした那奈を除く)して諦めた表情をしていたに違いない。
そうして笑った時だった。
一瞬だけ視界がブレる。
「っう…」
俺は頭を少し抱えてゆっくり深呼吸をする。
頭痛が僅かに残っているがマシになると俺は立ち上がって学校の準備を行なった。
それにしても朝から頭痛とは幸先が悪いものだ…。
俺はそう心の中で愚痴をこぼしながら勇馬達と家を出た。
**
眠い。
つまらない。
自由が欲しい…
そう、あの鳥のように…。
いつものように頭をぼーっとさせながら俺は聞こえてくる声を右から左に流す。
そして、決意した…。
数分後…俺は学校から抜け出した。
そして、いつものように軽く店などをふらついた後、見晴らしのいい公園に向かう。
「いやー、自由って素晴らしい!
あと二時間はふらつくか…歴史は偏ってるから聞いてて面白いし」
俺はそう言ってベンチで一休みを取る。
そしたら、周りから敵意を感じる。
それを感じて俺はため息をついてしまう。
「テメェが華城か?
この前うちの者が世話になったみたいだな、ちょっとツラを貸せ」
素行の悪そう(ブーメラン)な男たちが俺の周りを囲ってリーダーらしき人がそう話しかけてきた。
「生憎だが名も知らない者に貸すツラは持ち合わせてなくてな…拳の貸し出しならいつでもいいけどよ」
「テメェ、この状況を分かって言ってんのか」
「弱い犬がギャンギャン喧しく吠えて群がってきている程度の認識だな…迷惑な奴らだな」
俺がそう言うとリーダーの男だけではなく周りの男達にもひたいに青筋を浮かべて怒りを露わにする。
流石に言い過ぎたのかと思ったが、別に事実を言ったので間違ってないと言い聞かせて男達を観察する。
「覚悟はできてるんだろうなガキが!
少し喧嘩が強いくらいで調子に乗りやがって」
そういえば俺は中学生で彼らは確か高校生だっけ?
通りで身長差などがあるわけだ。
「別に覚悟を決める必要はないけどさ、お前達だってここでやり合うのは都合が悪いだろ?」
俺はそう言って周りを見る。
それで察したのか男達は「付いて来いと」と一言言って俺たちは空き地に行く。
「ここなら暴れても平気そうだな」
俺がそう言うとともに男達は飛びかかってくる。
いきなりのことで動揺…はしないな。
何となくわかっていたし。
俺は拳を握って男達に殴りかかろうと振りかぶる。
その時だった。
男達はいきなり倒れる。
気絶とかではなく純粋に地面に叩きつけられるような感じだ。
そして、飛びかかってきた男達を地面に叩きつけた本人はフードを深くかぶっており顔はよく見えない。
しかし、俺より少し低身長で僅かにワイシャツのような服がパーカーの奥から見えており、おそらく学生だろう。
すぐに男達の標的は俺からフードを被った人に変わり男達が襲いかかる。
しかし、男達は全員地面に叩きつけられて気絶までは行かなくても圧迫されるような衝撃に耐えられずに立てずいた。
「な、何もんだ!」
リーダーの男の精一杯の言葉だった。
フードの男は何も答えずにリーダーの男に綺麗な飛び蹴りをして気絶させる。
それを見たフードの男はすぐに俺を見て顎で付いて来いと言う。
なんとなくフードの男の正体についてわかり俺は仕方なく付いていく。
そして、先程の公園まで俺たちは戻ると俺はフードの男にここで初めて話しかけた。
「ここら辺でいいだろ?
それで、お前まで授業を抜け出して何をしてるんだ…勇馬」
「やっぱり、案外すぐばれたな」
勇馬はそう言って苦笑をしながらフードを取る。
**勇馬
俺はフードを取って火鎚の方を向くと少し呆れたような表情が読み取れた。
「一度は抜け出して見たくてな、それと昨日こともあったしな…」
正真正銘の本音を一番最初に言って火鎚をよく見る。
今のところはおかしなところは無さそうだが人災の暴走があるとなると注意するに越したことは無いと思っている。
「悪いな、すぐに話さなくてはとは思っていたんだが中々いえなくてな…」
火鎚は俺の言いたいことに気づいたのはバツの悪そうな表情でそう言うと自分の左半身に一瞬目を向けた。
「そうだな…まず、勇馬は俺の記憶はあるか?」
「いや、それほどないかな?
一応、お前のだと思われる喰らった人災の力は見つけたけど記憶がまだ曖昧で…」
「そうか、そうだな…。
なら、一つ言わせてくれ俺はあくまでもお前に救われた…でも、俺の心を救った人間はもう一人いたんだ」
「っっ!
その記憶は?」
俺はそれを聞いて反応せざるおえなかった。
英雄…その情報がどうしても俺は欲しかった。
自分の過去である英雄とは何かそして、人災などから人々を守るのを英雄だとは分かった。
でも、俺だけが英雄というのはあり得ないのだ。
それは利差に与えた記憶で一応、渡していない記憶がそう告げていた。
町の長と思われる人と話した記憶では『口しか能がなく、碌な力を持たない貴様が英雄とは笑わせる!』と言われていた。
要するに俺は英雄として半端と言えてたのだ。
それは他の英雄がいることを意味していた。
「悪いな…細かい記憶が虫食い状態になっていてな最後の方の記憶しか無いんだよ」
「そうか…悪いな」
「別にいい。
俺としてもそこは気になっていたからな。
あとついでと言っては何だが…お願いを聞いてくれるか?」
「内容によるな」
「それなんだが…」
そう、俺は知らなかった。
それを受け入れた時、火鎚の賭けが既に始まっていたことに…。
**火鎚
あれから数時間が経ち、学校から帰って俺は部屋に入る。
そして、部屋に入った瞬間視界が歪む。
そして、俺は倒れてしまう。
「思った以上に………早かったな…。
…とりあえず…何が起きた…のか……確認を…」
俺はそう言って体のあちこちを右手で触れる。
そして、十分ほど要して確認を終えると俺は笑ってしまう。
「やっぱりそうか、久しぶりだな…」
一人で俺は呟くが勿論返事はない。
しかし、俺は苦し紛れに笑いながら言葉を続ける。
「いきなり左目を持って行きやがって…『イフリート』」
俺がそう言うと左目が急激に熱くなる。
あまりの痛みに堪え切れずに俺は声を漏らす。
そうして、俺の賭けは始まった。
そう、お互いの生存権を賭けた最悪の賭けを…。
**
全部で五つの絶望を見た。
一つは自分の価値
一つは生き足掻こうとも人を救う少女
一つは何かのために人災になった男
一つは俺を救ってくれてもなお出来損ないだった英雄
一つは理想の英雄を求めて自分と英雄を否定した英雄
そのどれもが今の俺を結びつけたもの…。
俺が決して屈しない理由…。
俺が人間でいられた理由だった。
だから、今度は自分だけの力で賭けに勝つ!
俺は俺の手で絶望を乗り越える。
その決意と共に俺の世界が砕ける。
僅かに俺の意識は外にある。
しかし、意識が中に入ってしまうのは時間の問題だろう。
持ってくれ…あと、少しなんだ…。
歯を食いしばり俺は願った。
自分が消えないことを…恐怖を押し殺して歩みだした。
あれ、何を書こうと思ったのだったか?
いや、何も書こうと思ってなかったな…。
はい、章設定忘れてました!
ごめんなさい。
ハイペースに見えるかもしれませんがここからがかなり長くなるか短くなるかは文字におこすまでわかりません。
では、ここまで読んでいただきありがとうございます。
おもしろいと思ってまた読んでいただけると幸いです。




