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技法武装

炎の中で少年は膝をついていた。

幼い頃から聡明だったその子供は今の状況を鮮明に理解していた…いや、できてしまった。


ここまで自分を育てた親は死に…自分は奇跡的に生きている。



「もし…それがいきていると言えるのなら…な」



おかしくも笑いながらそう言う。

もう、その笑いには力はなく…生を感じられない。


そして、その体は左の半身が焼け焦げていた。


少年は炎を何とか避けながらも生きられるとは思わなかった。

それでも、何とかしなくてはと言う本能が少年を急かし続ける。



「身体は…もう、生きていてもダメだな…」



僅かな思考と絶望…治せる者はいるかもしれない。

それでも、対価を差し出せない少年は無理だと諦めた。



『…』



そんな時だった。

重く暗く低い声が響いた。



「誰だ?」



少年は僅かに体を動かして辺りを見回す。

しかし、誰かがいる様子もない。

気のせいかと思った時…少年は見た。




炎から生まれた化け物を…



そして、少年は笑い手を伸ばした。



*******************



「全く…こんなに大規模なんて聞いてないぞ…」



俺こと北条 勇馬はため息を吐きながら隣にいる二十代くらいの男、疾風に愚痴る。



「わるいな…まぁ、こちらとしては助かっている。

組織の強化に繋がるからな」



そして、疾風は心底ありがたそうにお礼を言って甘目の前に起きていることを見る。


それは、見ようによってはリンチと言えるのだろう。


複数人の人間が一人の人間を全員で攻撃している光景がいくつも繰り広げられていた。

その一つ一つがが最低でも二十近い人数で一人と戦っている様はなのだが…よく見ると複数人の方が遊ばれているのが分かる。


その中で酷いのが約四十近い人数を相手取っている雪菜だった。


彼女は技法による障壁を主に使って隙を伺って剣で切るというスタイルなのだが…。



「はは…何の能力も使わないとか酷いな…

おまけに身体能力の制限も入ってるとか…」



そう、相手は能力などを使っている中で彼女は一切の能力を使わず己に掛かっている身体能力などの制限すら外さずにあくまで常任レベルであしらっているのだ。



「お前も結構大概だぞ」



俺の呟きを聞いていた疾風はジト目を俺に向けながらそう言う。



「何のことだか…」



俺は素っ気なくそう言って振り返ることにした。

なぜ、今このような状況になっているのか…。


まず、利差は無事にいや、パワーアップして戻ってきており、今も雪菜達と同じようにリンチのやられ役に見えるような状況で遊んでいる。


まぁ、このように利差は何とか人災に打ち勝ち俺たちとまた歩んでくれている。


そして、現状だが…。


疾風の作った組織の構成員の訓練中である。

その中で指導員として俺達が疾風に頼まれたのである。

まぁ、知っている人もいるしということで許可して全員で来たのだが…思った以上に人がおり休憩などを挟んだ人数配分が大変だったのだ。


ちなみに俺は伸び代の良さそうな人を見つけて相手をしろだそうだ。

それだと、加藤さん達を選ぼうとしたが既に陸也が鍛えているらしい。

故に今のところ待機である。



「それにしてもめぼしい奴はいないのか?」


「あぁ、たしかに全員才能があるけど一律してるからな…特出した人間は…」



そう疾風に返事をしてる時だった。

俺は左目に違和感を覚える。

波のようなものが目に見えた人の一人一人に見え、それぞれ別の流れが見える。



「っっ!」


「大丈夫か?

最近、時折目を抑えているが…」


「いや、利差の一件のあたりから少し変なものが見えるだけだ…気にするな」


「逆に気になるんだが?」



俺は疾風の言葉に笑って誤魔化してふと周りを見た時…何か見たことあるようなものが目に映る。

その人の顔を見るが髪が少し立っている部分が多い以外特に特出したところは無く可もなく不可もなし…と言う感じである。


しかし、顔を見ても何も感じない…。

正確にはその周りの流れを見たことがあるのだ。

俺は僅かに考えた後、疾風に話しかける。



「なぁ、あいつは?」


「うん?

あぁ、健斗か…」



俺が誰について聞いているのか分かったようで少し考えていた。



「でも、あいつはたしかに戦闘センスは一流だけど他がなぁ…。

お前、少し鈍ったか?」


「まぁ、たしかに戦闘センス以外はダメだけど…あれはひょっとしたら掘り出し物かもしれない」


俺がそう言うと疾風は訝しげな目を俺に向ける。

何かを探るように俺を見るが分からなかったのかため息を吐く。



「理由を聞かせてもらってもいいか?」


「…まぁ、賭けに近いけどこれかな?」



俺は疾風の問いに僅かに考えた後にある銃を取り出す。

それは俗に言う突撃銃に分類されるような形状をした銃だった。

しかし、材質や仕組みなどを調べても現在ある銃に該当するものが見つからないと思う。



「これは…というか、どこから出したんだ?」


「あー、そういえば言ってなかったな…」



俺は軽くこの銃をどこから出したか伝えることにした。

それは『心王』の能力で一度見た武器の具現化…まぁ、正確には本来の持ち主に刻まれていない武器を見たときに記憶されるのだ。

それによって出来た武器は本物であり、もう失った武器であっても具現化が可能…要するに本来の持ち主に刻ませることや一応、自分で使うこともできる。



「えっと…要するに健斗はこの武器の本来の持ち主…要するに適正者の可能性があると?」


「まぁ、概ねその通りだな。

流れもかなり同じだし…多分?」



その瞬間、健斗と戦っていた火鎚がガタンっと剣を落とす。

そして、俺をチラッと驚いたような表情で見た後に我に帰ったのかすぐに態勢を立て直して素手で対処してから剣を拾う。



「あいつ…どうしたんだんだ?」



普段はやらないミスに俺は少し首をかしげるがそんな日もあるかと思ってすぐに銃について調べる。

実際、自分でもどこで見たか分からないような銃なので扱いや安全性の確認をしないと不安だった。



「とりあえず、次の休憩が終わった頃に呼んでくれないか?」


「わかった」


疾風にそう頼んで俺はしばらく武器の性能テストを行なっていた。



**



「えっと…よろしくお願いします」



休憩が終わり、健斗が俺の前に立って敬礼をしていた。

まぁ、それはいいだろう。

何故か疾風と火鎚がすぐ近くにいるのだ。

火鎚曰く、自分の担当時間が終わったから暇つぶしにだそうだ。

疾風に関しては面白そうだから。


意味がわからん。



「まぁ、そんなに緊張するな…と言っても無理な話か…。

とりあえず、やるからにはしっかりと話を聞いてくれ」


「わ、分かりました!」



緊張は一向に解けてずに俺は入ることにした。

客観的に見ると中学生のガキが大人に指導する光景は如何なものかと思ったが別に困ることもないので気にしないことにした。



「まぁ、とりあえず武器について説明しようか…『俊王』」


「おぉ!」



そう言って俺が剣を取り出すと健斗は目を輝かせる。

確か、この人は25くらいなのに下手したら中学生の俺より子供に感じるな…まぁ、これが日常化するレベルで使ってるから俺が鈍いだけかもしれないけど…。



「えっと、武器とは固有能力などを内包した特殊な武器のことですか?」


「まぁ、その認識で間違いはないな」



俺はそう言うと軽く4本の子剣を出して周りに飛ばす。

それを見てまた健斗は感嘆の声を漏らしていて俺は苦笑いしかできなかった。



「まぁ、俺の場合は子剣を飛ばして戦うが主な能力だな…。

まぁ、その話はいいとして…まずはその特別な剣の成り立ちでも教えようか…」



俺はそう言って予め用意していたホワイトボードを取り出して健斗を座らせた。



「まず、こういった特殊な武器のことを技法武装と俺は個人的に呼んでいる。

まぁ、呼び方は人それぞれだが…一番の特徴である能力がどこから来てるかだな…」


「そういえば、能力を持っていると言ってもどうして特定の能力しか使えないか不思議ですね」


「まぁ、実際よくわかっていないが説として一番有力なのが波長だな」


「波長?ですか」


「ああ、特定の人間しか使えない武器、そして特定の能力というのは武装そのものに特殊な波長が常に出ており、所有者と合った波長が合って初めて能力が完成されるとされている。

まぁ、あくまで予想の部分が多いからわからないがな…」



そんな説明でも健斗は頷いて真面目に聞いていた。

俺だったら興味が湧かない限り絶対になるのになぁと思いながら話を続ける。



「そして、どのようにできるかはいくつかあるが大体は三通りの方法で生まれるな。

一つは普通の武器が所有者に長年使い込まれることによって出来ること。

二つ目はその波長に合わせた武器の製作。

最後は自然現象だな」



俺が説明すると何か引っかかったのか首を傾げていた。



「どうした?

何かわからないことがあったか?」


「いえ、最初の二つは理解したんですけど自然現象でできるものなんですか?」



それを聞いて俺はそういえばと少し遠くを見つめる。

いや、説明はできるのだが少し面倒というかし難いというか…。



「諸説は沢山あるけど信仰という形で生まれることが稀にあるな」



そんな風に考えていると疾風が口を開いて話し出していた。



「まぁ、他にも環境による変化などもあるけど一番有力視されているのは一種の信仰だった。

勇馬、それについて軽く説明してやれ」



いきなり話を振られて戸惑うがすぐに頭の中を整理して話し始める。



「そもそもが環境による変化による事例が少な過ぎる。

そして、よく物語である剣が主人を選ぶ的なシーンがあるだろう。

事例としては殆ど無いが昔に何度か起きているんだ。

それは波長のあった人間のみが使えると俺は考えている。

まぁ、この話は関係ないように聞こえるが実はかなり深い関わりがある。

例えば宗教的な神器、英雄が使っていた武器、それらは一種の信仰を集めて時折力を秘めることが確認されている。

まぁ、要するに岩に刺さった剣は人々の噂からその力を秘めたということに他ならない。

まぁ、アーサー王が実在していたかは知らないがな」



長い説明を終えると健斗は軽く思案顔で話を飲み込もうとしているようだ。

まぁ、意外とここら辺は複雑だから理解するのも結構時間がかかるのは仕方ないか。



「えっと、要するに伝承というものから生まれる技法武装があるということですか?」


「そうだな、実例が一番多いし、他は怪しいから自然発生は基本的にそれと認識しておいてくれ。

まぁ他にもパワースポットでも生まれるとかという話もあるが実際に生まれた話はあまり聞かないな」



あっても、いつのか分からないような産物で本当にパワースポットの影響か分からないんだよな。



「まぁ、前置きはこの辺りにして今からこの銃を進呈しよう」



俺はそう言うと先程、試し撃ちをしていた銃を取り出して健斗に渡す。

健斗はそれを受け取ると首を傾げて俺を見る。



「えっと、これは突撃銃ですか?

いや、でもなんで今?」


「これはプレゼントだ。

とりあえず使ってみろ」



俺はそう言うと軽く的になるようなものを予め用意しており、そこに撃つように促す。


一瞬の戸惑いが見えたがすぐに気を引き締めたようで顔が引き締まっていた。

そして、ゆっくり銃を構えて照準を合わせる。

そして、引き金を引いた瞬間…



爆音とも取れるような巨大な破裂音が辺りに響き渡る。

そして、的どころか後ろの壁も蜂の巣にしてしまうほどの球数と破壊力のある弾が放たれる。

壁はしっかりと強化しており辛うじて貫通はしなかったが、的は粉々に粉砕されており破片が辺りに飛び散っていた。

気がつけば反動に負けたのか健斗の手からは銃は離れていた。



「へ?」



健斗が戸惑う中、俺は額に手を当てて失敗したと思っていた。

この銃の名称は『爆撃銃』という爆弾でも詰まってそうな名称だが名前とは違う力を持っている。


『精神操作』『心理の弾丸』


意味のわからない二つの情報が入った時は自分の頭がとうとう壊れたのかと思った。

しかし、この銃の性能を見て確信した。

とんでもない壊れ物の銃と能力であると…。


『精神操作』

これはマインドコントロールではない精神による弾速などの変化が起きるのだ。

落ち着いていればいるほど一発の威力は高く、精密な射撃が可能となる。

焦れば威力は落ちるし弾のブレやばらつきが酷くなる。

まぁ、それでも昂ぶっていれば威力は上がる。


『心理の弾丸』

これは思った通りの弾が装填されるという特殊な能力であり、一度装填されると変更は出来ない。

しかし、一発ごとに決められるようで弾の種類のルーチンなどを決める事ができる。



要するに彼は初めて使う銃に昂ぶった状態で俺が渡したことによる過剰な期待がその二つの能力により強くしてしまったのだ。

ゆえの威力と反動である。


その後、軽く銃の説明をして自分で銃の使い方を試行錯誤させ始めた。

俺はそれを見て時折アドバイスを出すことに徹した。



「勇馬ちょっといいか?」



そうして、ある程度様になってきて暇になってきた頃に俺は火鎚に声をかけられる。



「どうした?」


「あ、いや、少し聞きたい事があってな」



火鎚にしては歯切れが悪くそう言うと剣をなぜか取り出して俺を見ていた。



「勇馬、その『心王』?の能力で俺の剣を複製できるか?」


「いや、そもそも所有者が…」



予想外の言葉に戸惑いつつも能力上取り出せないと言おうとした時だった。

『心王』が反応して火鎚の剣が目の前に出てきた。



「は?」



俺は理解できなかった。

しかし、火鎚は理解していた。

いや、知っていたのだろう。

自分の剣が複製できるのを…そして、どこかでそれを知ったのだろう。


そして、それを意味するのは…



「悪い、先に帰ってる。

安心しろ、勝手に出ていくようなことはしないよ」



火鎚がそう言って去っていくのを俺は黙って見ていることしかできなかった。



**



やっぱり、そうだった。

あいつの言う通りか…俺はまだこの剣に認められていない…。


違うな…


まだ、俺の奪い合いが続いているんだ。

あいつが言っていたのはまだこの剣が剣であろうとせず俺を奪おうとしていることなのだろうか?



わからない。



一つ分かるのは俺は所有者ではないと言うことだ。


早くしないと…早くしないと…



俺が消える前に決着を付けないと…



「あの野郎…教えてくれたことは助かったが…あいつ…本当に敵なのか?

勇馬の『心王』と似た能力を使っているが…」



そう、あの体育祭の日それを教えてくれた少女に対して悪態を吐く。


あの日、勇馬を受け止めていた少女に対して…悪態を吐いたのだ。

そう、あの日俺だけが見た隠れてバレないように勇馬を抱きしめながら俺に話した内容を今でも思い出せる。



『君の剣はまだ完全じゃないのかな?』



俺は軽く空を見上げてその言葉を反芻した。



「わかってるよ…もう逃げていい期間は終わったんだ。

勇馬だって利差も一歩踏み出したのだから」



俺はそれに向かって拳を握る。



さぁ、始めようか俺とお前(・・)の生死を賭けた戦いを…

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