人災と少女
書き直すまですることになるとは…(言い訳)。
いや、遅れてすいません。
そこには二人の少女と一人の女性がいた。
場所はどこかの古代の遺跡のような風貌をした一室…。
そして、そこにいた者達は幸凱 千那、相模 美久そして、半透明の身体をした少女だった。
「なるほどな…それでお前達は私に案内役を押し付けたわけか…」
「そうだね、僕としては元々その予定が入る筈が無かったのだけどね…。
まさか、人災の暴走期というものが訪れるとは思わなくてね…あくまで魂だけを引き継いだのに不思議なものだよ」
相模は納得し得ないような表情で頷く中で千那は僅かに苦い表情をしながらそう言う。
「しかし、今の話からすると君もかなり危険じゃないのか?」
「ふふ、そこは安心して…僕は完全に救われた記憶を思い出してるから人災に心を侵食されるほど追い詰められていないよ」
『千那…あなたはそう言っていつも無茶ばかりするので心配ですね』
千那は何となしに笑って誤魔化すが半透明の少女がジッと千那睨んでため息を吐く。
「まぁ、それでこの話はこれくらいにして面白い情報を二人に教えよっか…依頼主は見た感じ曖昧だけど、相模は完全に原初とは無関係な人間だから」
千那は何となしに言う言葉は他の二人に対して深く突き刺さる。
明確にしているはずの自分の曖昧さを一人は感じるはず無いのに感じて…もう一人は可能性を否定された感覚…。
しかし、千那は知っていた。
この記憶…たしかに自分だったと言う意識はあるし、それを大事にしたいとも願う。
それに出てきた人間を求めたいと願う。
それでも…いや、されどもその自分と今の自分は今となっては赤の他人…そこで出てきた兄弟を守ることに意味は無いとは言わない…しかし、それはあくまで今の自分としては振る舞えないのだ。
それが分かって尚、記憶に固執してしまう…いや、させているのだ。
千那も勇馬も…。
一人はそうでなければ大切な何かを手放してしまうと感じたから…。
一人は未だ思い出せない罪の記憶から罪悪感から無意識のうちに全てを見限ってるようで全てを守ろうとして…。
千那はそんな思考が通り過ぎる一方で二人への解説を忘れなかった。
「人災というのはね…罪を背負わされた者達の集まりなんだよ」
その一言に二人は首をかしげる。
千那はそれを見て当たり前の反応に思っていた。
「そうあればいい、これが悪いのはあいつのせいだ…こんな嫌だ…気持ち悪い…様々な負の感情というのを一箇所に集めた結果であって成れの果て…今、苦しんでいる少女で言うのなら軽蔑を集めた結果の冷徹さが全て集約されたんだよ。
誰か一つを敵にした結果とも言うべきかな?」
理解が追いつかない様子で相模は首をかしげる。
一方で半透明の少女は納得の色を見せていた。
その頭の中では『要するに攻めやすくて罪もない人間に全部丸投げした』だった。
間違いでは無い…いや、むしろ的を射た解釈でこの場でそれを言っていたのなら千那に即採用されていただろう。
「まぁ、過去の英雄もそれを利用して負の感情の発散を行なっていたのもいたそうだけどね」
どこか怒りを含んだ様子で原初の頃の闇を語る千那は実感を含んでいた。
「まぁ、前置きはこの辺にして話そうか…。
人災の暴走を止める方法を…」
そう、少女は知っているのだ。
人災だからでは無い。
元々が彼女がそういう人災で生まれてしまった故の知識であった。
***************
俊王って何?
と聞かれたら俺は首をかしげるだろう。
意思のある武器?
原初の時よりある武器?
究極の武器?
はたまた最弱の武器?
そんな疑問の答えがこのようなのを筆頭に無数に出てくるだろう。
どれも正解でどれも間違いである。
意思のある武器?
間違いでは無い…しかし、機械的すぎる部分のせいで本物の意思かどうかと聞かれると首をかしげるだろう。ひょっとしたら自分の魂と同調しているだけの武器なのかもしれないのだから。
原初の時よりある武器?
たしかにこれは間違いでは無い。
ある一つの点を除けばの話であるが…原初の頃とは何かが違う…何かが抜けているように俺は感じているのだ。
究極の武器?
ある意味ではそうだろう。
しかし、本当の意味で究極かと言われると首をかしげる。
究極と言わしめるにはいかんせん足りな過ぎる。
最弱の武器?
これは言い得て妙である。
俺しか使えない兵器など通常の状態で何の価値があるのか?どちらかというと破壊対象になる原因である。
そして、他者が使えば身を滅ぼす可能性まで秘めた武器を最弱と言わずして何という?
結局、俊王とは何かの答えになっていない。
しかし、俺ならこう表せるだろう。
北条 勇馬の目的の近道を作ってくれる可能性のある武器だと。
誰かを守る…その為には誰かを傷つける力が必要だ…たとえ自分でもそれで誰かを救える。
諸刃の剣と言えば聞こえは良いものである。
しかし、これは違う。
救いたいものを守るがそれ以外を殺すという考えの表れでもあると俺は考えている。
目の前にあるのは氷に取り憑かれて苦しむ少女…。
朝焼けが僅かに入り込む部屋に照らし出される。
氷の桃源郷で俺は願った…。
目の前にいる少女を救いたいと…。
ならばどうするか?
簡単な話だ…彼女を戒めてる氷を砕いて無理矢理にでも教えてやればいい。
苦しむ必要などどこにも無いと…。
それにはそれを裂く力が必要だ。
その為には俺は俊王を使う以外他なかった。
「さぁ、教えてやるお前の間違えを…」
俺は知っているのだ。
彼女の間違えを…彼女のこの行動理由を…。
だから、否定はしない。
善悪論で言ってしまえば正当な感情の流れであり、善とも言えず悪とも言えない…。
それでも止めるという選択だけは止められない。
その瞬間、氷が辺りを覆い尽くす。
俺はそれに同調して動き出す。
氷の礫だけならまだよかった。
氷は俺の体まで侵食していく。
それを俺は裂いた。
概念的に物理的に…そう、引き裂いたのだ。
彼女は氷そのものになっている。
ならば、本来の彼女と氷の彼女の身体を裂いてしまえばいい。
そう、許された…そう、存在していた。
俊王の一つの力がここに権能する。
物理的も概念も関係なく二つ概念がくっついていれば俺は全てを元の個に戻すことができる。
しかし、それでも人災の抵抗は終わらない。
数百という氷の膜に覆われており、簡単に近付くことも救うこともできない。
俺はそう考えて内心舌打ちをしながら氷の膜を切りつける。
しかし、あくまで一枚の膜が敗れた程度でその氷の膜はすぐにでも再生していく。
俺はその瞬間何も考えずに4本の子剣に左手に取る。
「その剣の名は『壊王』」
その瞬間、蹂躙という言葉ぴったりに思えるほど完膚なきまでに一振りで膜の半分以上が砕け散る。
そうして、もう一振りと二本の剣を同時に振るう粉々に氷の膜が砕け散り、辺りに舞う。
そして、俺が見たものは二つの穴だった…。
いや、正確に言うなら二つの銃口が真っ直ぐに俺を見据えていた。
銃声が鳴り響く…。
俺の両肩に弾ではなく、冷気が押し付けられる。
すぐにでも飛び退いて体制を立て直す瞬間だった。
氷が俺の体に侵食する。
「そういえば、そうだったな…」
俺は思い出したようにそう呟くが氷の侵食は止まらない。
しかし、それに対して俺は無理矢理引き裂く。
体に大きな痛みが走る。
そんなものを気にする余裕などは無い。
そう判断して走り出す。
自然と身体が動く…まるで促されるように…そして、それは決定打となり得ると確信を持っていた。
「お前が殺してしまう?
そうだよ…そうなんだよな…」
人災は答えずに自然な動作で俺が振り抜く剣を受け止める。
普段なら能力に任せて打ち合いに持ち込むが俺はここで引いた。
そして、人災から来る第二撃を躱す。
俺もその隙を見て剣を振るうが氷が目の前に現れて時間を稼がれて避けられる。
「動きが単調だぞ」
俺はステップを踏んで背後を取る。
そして…裂く!
手を切るが傷は浅く、裂くほどの威力は出なかった。
「っっ!」
しかし、一瞬だけ人災は動揺した。
俺はすかさず第二撃、第三撃といくが防がれる。
それでも、人災も本能的な部分が強かったのか出してきた氷の大きさが異常だった。
俺は追撃を考えるが一瞬だけ動きが止まる。
気がつけば俺は咳をしており血を吐いていた。
何が起きたのか思考を回そうとするがその隙を突こうと人災は俺に飛びかかる。
4本の子剣を上手く飛ばしてそれらをいなすが体の動きの方は鈍い、まるで硬直したように…。
その瞬間、俺の目には先ほど俺が吐いた血を映る。
舌打ちを漏らしてしまうが仕方ないだろう。
なぜなら、血が氷になっておりその意味が分かってしまったからだ。
表面からではなく身体のうちから侵食が進んでいるのだから…。
俺は容赦なく自分の体を裂く。
体から血が出るが所々に氷が混ざっていた。
まさか、自分の傷から侵食が進んでるとは思わず苦笑してしまう。
容赦なく来る猛攻を子剣によって防いでいるがいつまで持つのか正直分からない。
早く決着を付けなければこちらが死ぬ。
ー覚悟を決めろよ
俺の中で誰かが語りかけて来る。
ーこのままじゃ、誰も救えない
分かってる。
それでも分からないのだ。
彼女の力はいくらでも分かる。
それでも、どう救えばいいのか?
ーその問答をまた繰り返すのか
いや、しないさ。
ただ、お前のした失敗は繰り返したく無いだけだよ。
ーそうか、あくまで違うのか…
ー俺は楽な方を選んだ…お前は…
そうだなお前は『殺す』ことを選んだ…でも、俺はあくまで『救う』のを選びたい。
ー少女を救うのではなく人災を含めた『利差』を救うか…
ー面白い…見せてみろよ俺に可能性を
笑っていた…俺に語りかけてきたものは…俺の言葉を聞いて…。
俺は知っているのだ。
人災の暴走を止める方法を…。
語りかけてきた存在を…。
そして、救うには…
一つは『少女』と『人災』を殺す。
一つは『少女』は救って『人災』を殺す
一つは『人災』を封じて『少女』を生かす。
一つは別の誰かが今ある『人災』を喰らう。
最後に『人災』と『少女』の調和。
後者になっていくほどそれは難しくなっていく。
そして、語る者は人災を喰らう道を選んだ。
調和させることは不可能だった。
故に自分の知る人災の力を喰らっていた。
「今、返してやる…お前の力を…そして、信じてる。
エゴでも何でもお前はそんなにやわじゃ無いだろ?」
俺は拳を握りしめる。
気がつけば剣を落としていた。
「んじゃ、どんと来い!」
その瞬間、俺の胸に剣が刺さる。
しかし、俺は笑みを絶やさない。
「あ…」
その瞬間、人災は初めて声を漏らした。
そして、崩れた。
「あ…あぁぁぁぁぁぁ!
どうして!どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!
何?何なのこの感覚は…感情は…私は…私は人災で私は…やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!
喰らった…喰らった筈だ!
それなのに何故?何故感情なんてものが残る?何故…私は私であろうということを否定する!」
突然、感情に人災…否、利差は壊れる。
俺が行ったことは簡単だった。
裂くのでは無く、ほんの少しだけ利差の存在と人災を噛み合わせたのだ。
たしかに彼女は人災に呑まれた。
しかし、残ってしまってるのだ自我が…。
故に人災はその自我に直接触れて表に出してしまったのだ。
だから…ただの概念であろうとするものが根本から崩れる。
要するに人災が例え少女を呑んでも完全な概念であることが出来なかったのだ。
あくまで人の感情から生まれた存在なのだから。
「利差…聞こえるか?」
「呼ぶな…呼ばないで…私は合わせる顔が…違う!
私は…やめろ?何をしようとしている?
すぐに剣を…」
「誰が抜かせるかよ…。
今からお前の持つ筈な人災を送ってやる」
その瞬間、俺は人災を利差に流し込む。
「なんだ?これは人災?
いや、お前…それと同時に何を流し込んでいる!
やめろ…やめて…それは嘘だ…だって私は…」
そう、俺は利差との記憶を同時に流している。
勿論、俺はその記憶を失う。
しかし、そんなことはどうだっていい。
「これで貸し借りは無しだ。
安心しろ…お前は化け物じゃない。
お前が悪くないなんて言わない。
沢山の人を殺した…でも、お前は誰よりもいい奴だよ」
俺は笑う…それと共に消えていく。
俺の持つ利差の記憶…原初の記憶の一部がゆっくりと…ゆっくりと流し込まれていく。
「そっか…私がやっぱり悪かったのか。
やっと思い出した…。
でも、安心したよ…私はいてもいいんだよね?
みんなと一緒にいていいんだよね?
この力があってもこの記憶に偽りは無いよね?」
俺の目でも分かる。
人災が消えていくのではなく…純粋に混ざっていくのだ。
そう、利差として一人の少女と一つの概念が重なり合う。
「あれ?
おかしいな…ちょっと待っててね。
すぐに戻ってくるから…」
それと共に再び感情が抜けるような表情を利差は見せた。
俺は胸に刺さった剣を引き抜く。
そして、再び目の前に人災が見える。
さっきまでとは違うように見えた。
それは記憶を無くしたからなのか…それとも、人災が変わったからなのか?
よくよく耳を澄ませば、外からは喧騒が聞こえる。
どうやら、もう既に体育祭は始まってるようだ。
そんな余計な思考をしながら俺は改めて剣を拾って構える。
「さて、最後の一仕事をしますか!」
その瞬間、氷と一つの閃光がぶつかり合う。
その度に氷が砕けて舞い散る。
その砕けた氷に閃光が辺り、あたかも幻想的な光が辺りに舞い散る。
そこにさっきまでの殺伐とした感じはない。
舞うような光はまるで踊るようにそして、勇馬は嗤い…感情のないはずの人災も僅かに笑みを漏らしていた。
ついに決着!
いや〜、大まかなストーリーはできても流石に細かい部分が出来てない所為で中々書けないものですね。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
おもしろいと思っていただけたり、これからも読んでいただけると嬉しいです!
よかったらブクマや評価の方もお願いします!




