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答え

「氷の世界」


利差がそう言った瞬間、世界は氷だけになったと錯覚するように冷気と氷に包まれる。


「邪魔よ」


氷は一瞬で砕かれ、辺りの氷は一瞬で溶かされていく。

それを行ったのは身の丈に合わない刀を持った少女だった。


「ちょっ、利差無茶だ!

せめて封印を…」


「勇馬…今からやること…出来れば怖がらないで欲しい…」


何故か泣きそうな利差に俺は言葉を失う。

いや、分かっていなかったのかもしれない。

本当の意味で俺達が抱えているもの…俺が抱えているはずのものについて…。


利差の周り鎖が現れ砕け散る。

瞬間、あたりが氷に包まれる。

もし、ここが居住区なら一体どれだけの被害があったのか分からない。

まるで、彼女が触れたものすべてを氷に変えてしまう…そう錯覚してしまうほどにまで…冷たい。


何でこんなことになっているかはあの決意から翌日のことだった。


****************


「雪菜、これで合ってるか?」


「うん、状況はよく知らないけどあの時は確かこの感じだった記憶が僅かにあるよ。

まぁ、すべての記憶を思い出した訳じゃないから細かい部分は分からないけど…」


「いや、それで十分だ。

そもそもこの本の情報がすべて間違いではないと分かれば後々、どうとでもなる」


俺と雪菜は現在『失われた神話』について調べていた。

情報が合ってるか間違ってるかの確認などを主に行っており、一ページ一ページ確認していた。


「ふう、やっと半分か…」


「そうだね…もう朝だよ…」


俺達二人は時計を見て乾いた笑みを漏らす。

徹夜で作業をしていたせいか最早眠気なんてなく、何故か変にテンションが上がってしまいそうになる。


「学校は…」


「今日は休みだよ」


俺が準備しようと立ち上がると雪菜が眠そうに答えてくれる。

そういえば今日は土曜日だった。


「そうか、ならもう少し…」


俺が気を引き締めようとした時だった。

ドアをノックする音が聞こえた。


「勇馬、起きてる?

那奈だけど、今日の予定忘れてないよね?」


俺は首をかしげると隣からじーっと視線が飛んでくる。


「あれ、まだ寝てるのかな?」


ドアの向こうでそんなことを那奈は呟くとドアノブが回り出す。

そして、それを察した俺達二人は反射的にやばいと思った。

座る場所がなくベッドの上で二人して座ってる。

そして、那奈は地味に前回のことといい妄想癖があるようで何かと勘違いしやすい。


そして、俺達はそれを悟るだけで終わった。

ドアは普通に開いて那奈の姿が見える。

寝間着は和服のようで淡い薄ピンク色のものを着ていた。


「へ?」


しかし、そんなことを考えている場合では実は無かった。

いや、本当にどうすればいいのか…。


「えっと、おはよう…」


苦し紛れに挨拶をするが那奈からの反応はない。


「あっ!」


何かに思い至ったのか那奈は手を叩いた後、顔を真っ赤にしながら一歩後ろに下がる。


「えっと…朝だからあんまり激しくはよしてください」


そう言って那奈はドアを閉めた。


「「…」」


俺達二人は黙って考え込む。


「「まぁ、いいか」」


どうせ、後から弁明すればいいだろうと俺達は楽観して再び本に目を向ける。


「とりあえず、続きをするか」


「そうだね」


ガタンッ


その瞬間、ドアから音がなる。

二人して悟ったのは言うまでもない。

弄りたいという思いに駆られるが今は少しでも情報が欲しいから急ぐか。


「んで、ここなんだが…」


「えと、ここは確か…」


どうやら、ここに書かれていることは噂が主だったようだ。


それにしても、この本は噂から事実まで色々と書かれているな…。


「な、何の話をしてるんですか!」


バタンッとドアを思いっきり開けて勘違いで真っ赤になったのか別の意味で真っ赤になったのか分からないがとにかく真っ赤な顔して那奈が入ってきた。


「勘違い、おつかれ…見れば分かるだろ?」


「いや、見ても分からないから勘違いしたような…」


那奈も中々痛いところを突いてくるな。


「そうだ、那奈は原初の記憶はどれだけ持ってる?」


「いきなり…ってこの本は…そういうこと…。

それでしたら少しですね」


やっと俺達のやってることに得心したようで素直に答えてくれる。


「まぁ、少しでもあるなら手伝ってくれ」


「いいですけど、約束は忘れてないよね?」


那奈はそう言ってジト目で俺を見る。


「もちろん!」


「そっか、なら…」


「忘れた」


「「…」」


何だろう、女性陣からのこの冷たい視線は俺は特殊性癖がないから嬉しくないぞ。


…うん。


「すいませんでした!」


これは全面的に俺が悪いわ。


その後、暫く二人に女性や女子の扱い方などについてひたすら言われ続けた。


「…それで何の約束だっけ?」


「はぁ、まぁいいや」


那奈は呆れたように溜息をつくとしっかりと教えてくれた。


「私が携帯を持ってないことやまともな服が少ないことで買い物に付き合ってくれると言ってましたよね?」


そういえば言った覚えがあるな。

ある程度ならお金も出すと…。


「んじゃ、行くか」


「「え?」」


俺が立ち上がると二人して驚いていた。


「二人ともどうかしたのか?」


「いや、だってこれはやらないんですか?」


那奈は本を指差して問いかけてくる。


「今すぐにでも欲しい情報じゃないからな。

それに約束したなら少しでも多く付き合った方がいいだろ?」


俺がそう言うと何が嬉しかったのか満面の笑みで頷いた。


「勇馬、ならこの本は私が持っていていい?

勇馬がいない間に進めておくから」


「いいのか?」


雪菜はコクリと頷く。


「わかった頼む」


「うん、今日中に終わらせておく!」


妙に張り切って雪菜は本を持って部屋を出た。


「あいつってあんな感じだっけ?」


「勇馬は下手に人に全部任せることをしないからだ思いうんだけど…」


「それがどう関係してるんだ?」


「個人的な意見なのでこれ以上は…」


那奈は少し口ごもらせながらそう呟く。

俺としてはサッパリ分からない話だった。


****************


「へぇ、これが噂に聞くスマホ…」


携帯ショップから出ると那奈は目を輝かせながらスマホを持っていた。


「ジャック、悪いな付き合わせて」


「平気だ。

お前達の歳じゃ契約なんてできないからな、それに那奈だけ持っていない状況は色々と不便だ」


ジャックはそう言うとここにくるときに使ったバイクに跨る。


「んじゃ、俺は研究のレポートの続きをするからここで先に帰ってるよ」


ジャックはそう言うとともにバイクを走らせて去る。


「そういえば月にお金がかかると聞いたのだけど大丈夫何ですか?」


「そこは静域とかの辺りが払ってくれるから安心しろ。

悪いと思うなよ、俺達の歳じゃ稼ぐ方法はないし、あいつらから言い出したことだ。

それにとやかく言うのは失礼だろ?」


「そうなのかな?」


「多分そうだ」


俺はそう言って誤魔化して服屋に向かう。

服屋に着くと那奈は携帯と同様に目を輝かせて服を一着一着見ていく。

俺は那奈のすぐ側に立って周りの人に那奈の同伴アピールをする。


「勇馬、試着って試しに着て見てもいいの?」


「そうだが、お前…いままで服をどうやって買っていたんだ?」


「えっと、お父さんやお母さんが適当に見繕ったものやお祖母様から着物をよく貰いましたね」


なるほど、通りであんまり服の種類がないわけだ。


「でも、オシャレしたいとか思わなかったのか?」


「いえ、あの頃の私は修行に集中してたから…」


「そうか…陰陽師というのも大変なものなんだな」


俺の言葉に那奈は少し苦笑いしながらいくつか服を手に取ってチラッと俺を見る。


「この服はお前に似合いそうだな…」


と似合う似合わないなどの感想を述べていき暫く那奈の服を見繕っていた。


****************


「いや、こんなに買ってもらって…」


「そこはもう気にしなくていい。

なんなら今度、飯を奢ってくれ」


買い物を終えて那奈はかなりお金を払ってもらったことに負い目を感じているのかさっきから不安そうだった。


俺の言葉にまだ納得いっていないのかじーっと俺を見ている。


「それなら稼ぎが入った時に半分返してくれ。

残り半分は再会の祝いだと思ってくれ」


「でも…」


「もう気にするな…それと俺は用があるから先帰っていてくれ」


俺はそう言うと一方的に別れた。

少し後ろを見たが那奈はやはり納得いかないようで不安そうに見ていた。


しかし、追いかける訳でなさそうなので安心した。

俺はゆっくりとある場所を目指す。


「ふぅ、ここで合ってるか」


俺が行き着いた場所は街から離れて誰もいない建造物が殆ど無い場所だった。


しかし、一つだけ建造物があった。


小さいがしっかりとした祠があるのだ。

この辺りで祀るものが無いのにも関わらずあるその祠を俺は見て今まで考えていたことを確信に変える。


「っと、その前に…。

出てこいよ!」


その瞬間、木々の合間から影が飛び出す。

その影は俺の目の前まで来ると同時に俺に攻撃を与える。


「チッ…」


俺は避けようとするが身体能力が下がってる分遅れてしまう。


胸に一線の傷が入るが封印の安全機能としてあった障壁のお陰でそこまで深く入らなかった。


そして、鎖が目の前に現れて砕ける。

一時的に封印が解けた証拠である。

しかし、俺は下手に大事にしたくなかった。


故に封印の解除を一部分で止めてなんとか雪菜達に封印が解けたことを知らせないようにした。


「さて、答えは出ましたか?

もし仲間にならないならもう関係なく殺しますよ。

ここもバレたから」


俺がそうこうしているうちに首元に刀を突き付けられる。

そう、またあの身の丈に合わない刀を持った少女が現れたのだ。


俺は笑う。


そう、やっと見つけたのだ(・・・・・・)


「あぁ、答えならもう決まってる」


「そうですか…なら早く答えを述べてください」


そう、俺は答えを決めた。

俺を急かすように刀をより首に近付けて切れるか切れないかのラインで突き付ける。


「俺はあんたらに明確な敵対関係を持ち込んで宣戦布告をここに宣言する!」


その瞬間、刀が振るわれる。

しかし、それより早く俺は封印を解除して避ける。


それを分かってか少女は二の太刀を振るう。

先程より速く。

最後に見た時より鋭く。


俺はすぐに『俊王』を取り出して防ぐ。


重い斬撃が何度も放たれる。

明らかに前までとは別人レベルに強くなっている。


「それでも、変わっているのはお前だけじゃ無いんだよ!」


全力で弾き飛ばす。

少し前の俺なら逆に力に少しだけ振り回されていておそらく押し負けていただろう。


封印は実はただ力を封じるためだけのものとしてつけていた訳ではなかった。


元々、記憶を頼りに能力を使っていても現在の俺たちの能力も肉体的にも成長が著しい。

すぐに感覚が変わってしまう。

特に俺の場合はそれが顕著に出ていた。

前回も技法を使う際に精密なものになると途端に技法を使うのが遅くなっていた。


しかし、封印の段階解除を実は施しおり主に火鎚と雪虎の全力で訓練をして少ない能力での戦い方や大きな力の扱い方を磨いたのだ。


「強くなったはずなんだけど…。

まぁ、今更だけど断った理由は?」


「はぁ、本来なら付き合う必要はないが一つだけ言っておこう。

決定打はこの祠だ。

これを見るまでは明確な敵対関係を避けていたが…この祠…人の力を少しずつ奪っているだろ?」


「なるほど、君の領域を侵してしまったというわけか…。

ありがとう…もう死んでいいよ」


瞬間、俺についていた胸の傷が大きく切り裂かれる。


「…な…にが?」


気がつけば俺の胸は血が噴き出した後であり、『高速再生』で治った時には血が足らなくなり目の前が歪んで倒れてしまう。


「ひさびさに使ったよ『死斬り』の能力をね」


俺は何とか首上げて少女の刀を見ると赤く波紋を広げるように綺麗な刀身が波打っていた。


「さよなら」


そうして、刀を少女が振りかぶった瞬間、黒い髪が目に入る。


「氷の世界」


その瞬間、世界が氷だけになったように錯覚を起こした。


「邪魔よ」


氷は一瞬で砕かれ、辺りの氷は一瞬で溶かされていく。

それを行ったのは身の丈に合わない刀を持った少女だった。


「ちょっ、利差無茶だ!

せめて封印を…」


「勇馬…今からやること…出来れば怖がらないで欲しい…」


何故か泣きそうな利差に俺は言葉を失う。

いや、分かっていなかったのかもしれない。

本当の意味で俺達が抱えているもの…俺が抱えているはずのものについて…。


利差の周り鎖が現れ砕け散る。

瞬間、あたりが氷に包まれる。

もし、ここが居住区なら一体どれだけの被害があったのか分からない。

まるで、彼女が触れたものすべてを氷に変えてしまう…そう錯覚してしまうほどにまで…冷たい。


「『氷結の皇帝』」


どこまでも冷たく、どこまでも悲しい氷が全てを凍らせる。

冒頭の部分は必要なのか最早わからないけど雰囲気作りになってるかな?


読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたなら幸いです。

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