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体育祭の準備

気がついた時には街は凍てついていた。

住民は皆凍り、氷の彫像と化していた。


何も無い、静かな氷、音も無く、溶けることもない…。


ある意味では理想郷…。


世界は恨みに溢れ、世界はなにかを分別して差別へと変わる…。


なにかを拒否してできていた。

これは私の拒否の心から生まれた氷の世界なのだろう。


やがて、ここにある彫像や建物は気が付けば石材などが消えて全てが氷に成り代わっていた。


そうしていくにつれて私の意思とは関係なく少しずつ氷は広がっていく。


原因たる私を殺そうとした者もいた。

しかし、彼も今となっては肉片など残さず氷の彫像と化していた。


そうして、私は何かを拒絶をし続けていたらこう呼ばれるようになっていた。


人災『氷の女王』


****************


「…というわけで俺達は今からしなくてはいけないことがあります」


俺こと北条 勇馬は現在、俺と同じ中学生である10人、刃月、世那、雪菜、那奈、火鎚、雪夜、雪虎、利差、紗雪、皆帰を呼び出して重大なことを話していた。


「えっと…いきなり呼び出されてよく理解できてないんだけど…」


「世那の意見は最もだろう…、それでも体育祭と聞いて俺達はしなくてはならないことがある」


予め、今回の件について話していた雪菜以外は皆、首を傾げた。


「一つ、質問する。

お前達の握力は幾つだ?」


「そんなの機器の問題上、手加減無しで測れないが?」


俺がそう質問をすると当然だろうと言わんばかりの口調で火鎚がそう言うと俺と雪菜は盛大に溜息をついた。


「んじゃ、日本の中学生の平均的な握力は幾つ?」


その質問に全員が頭を悩ます。


「60くらい?」


「そんなにあるか!世間知らずの旅人が!」


世那の言葉に俺は盛大にツッコム。


「ひどい、たしかに華ちゃんと一緒にサハラ砂漠のど真ん中で遭難したり、太平洋のど真ん中で難破したりしたけど、そこまで世間知らずじゃないよ!」


「今のどこに世間知らずではない要素があったのかは甚だ疑問だが、最早なにも言うまい」


最早ツッコムのすら疲れる問答になりそうなので他にも何か言っていたが無視を決め込む、


「お前たち…まぁいい答えを言うと大体24〜35くらいだ。

それで俺が言いたいことが何か分かるか?」


「近頃の人間は軟弱だと言ってる?」


「逆だ!逆!お前達が強靭かつとんでもない肉体なの!」


雪虎はいつも通り感はあるがもう少し、普通というものを知って欲しいと思う今日この頃だな…。


「ま、まぁ勇馬、落ち着いて…私はまだ思い出したばかりだからせいぜいいって90だから大丈夫だよ」


「話を聞いてた!?」


那奈の抜けた発言にさらに一層、心労を溜める。


「もう、俺嫌だ…雪菜よろしく…」


「やっぱり、そうなっか…」


雪菜は隅っこの壁の方に向かって体育座りをしている俺の近くに行くとみんなの方を向いて話し始める。


「まぁ、要するに勇馬が言いたいのは平均とか最大とか天元突破してる私達が普通に体育祭に参加するのはいけないから抑えてくれという話」


「あ〜、そのことな…」


「なるほどなぁ〜…」


それを聞いた雪虎と火鎚が納得したように頷く。

そして…


「「だが断る!」」


二人は全く同じタイミングと口調で宣言した。

そのことに対して最早、みんな呆れてる。

しかし、俺は聞いていた。


ピシリ


そう、誰かの何かに亀裂が入るその音を…。

それと同時にやけに明るい声が聞こえる。


「そっか!

そうだね、雪虎と火鎚が聞いてくれると思ったのが間違いだったよ…」


そう、雪菜がにっこりと笑ってそう言っているのだ。

なぜか雪菜の後ろに何か見えるような気がするのは気のせいだと信じたい。

いや、実際なにもいないのだろう。


ただ、それは恐怖というものがこの空間を支配してる故に見えたものなのだ。


ー最初からこうすればよかったんだー


何か篭ったような声が聞こえると同時に俺の耳に雪虎と火鎚の悲鳴が響く。


数時間後、なぜか俺の周りは9人いや、プラスで二人の屍ができていた。


「あとは私と勇馬だけだから立って」


「お、おう」


事前に相談していたとはいえ、この惨状を見ると怖くなる。

しかし、俺達は学生…普通でいなくてはいけないジャック達なら何とかなるかもしれないが俺達は変に目立つとなにが起きるかわからない。


「よし、準備できた」


雪菜はそう言うとすぐにそれを発動させた。


雪菜の手から鎖が飛び出して俺にまとわりつく。

そして、綺麗に俺の周りを回ると小さくなって俺の中に消えた。


「あとは、私だね」


そして、雪菜も同じように鎖が中に入ると集中が切れたのか少しよろめく。


「大丈夫か?」


「あ、うん…、とりあえず皆帰達は無理矢理あれを行ったから疲れただけ…」


「そうか…」


この9人…いや、11人の死体?を見て納得した。

おそらく全員、怖かったのだろう…しかし、抵抗してしまったのが運の尽きとも言えたな。


「ほら、全員起きろ…いま、雪菜にやって貰ったことの説明をするから」


俺は一人ずつ頭を叩いて起こす。


「あ、俺は…」


「一体…」


皆帰と雪夜が気がついたのかそう呟くとそれと同時に思い出したのか明らかに雪菜に対して怯えを抱いていた。


「お前、本当に何したんだ?」


「えっと…企業秘密?」


「企業ってお前…」


雪菜が首を傾げながらそう言うが可愛いとかあざといとか思うより先に悪寒が走る。


雪菜だけはあまり怒らせないようにしようと改めて思う瞬間だった。


「とりあえず、落ち着け。

今から雪菜にやって貰ったことについて説明しようと思う」


「何のためにあんな恐ろしいことを?」


利差が珍しく冬でもないのに表情が変化してる。

恐怖や怯えの表情だけど…。


「…本当に何が起きたんだ?

まぁいい、お前達には雪菜の固有能力もどきで封印を施した」


『封印?』


全員が声を揃える。


「要するにお前達の強すぎる力を抑えるためだ」


「そんなことしたら…」


「雪夜、お前の心配はよく分かる。

敵に攻められたら終わりだろ?

でも、この封印は解けるようにしてある。

まぁ、戦闘が終わると共に再封印されるけどな…。

そして、不意打ち用の雪菜の障壁もある。

その場合は必ず勝手に封印が解けるからすぐに動き出せる。

極め付けに同じ封印を持つ味方に場所を知らせたりする効果付きだ。

便利だろ?」


俺の説明を終えたあと、全員が黙り込む。

そして、一旦話を整理しているのか不思議な動きをしている。


そして全員纏まったようで一息つく。


『何?その無駄に高性能なの!』


これまた全員が声を揃えていた。

まぁ、これにも一応デメリットがあるんだけどこれだけ聞くと無駄に高性能だよな…でも、元々雪菜とは違う系列の固有能力だから完璧な封印解除が出来ないのだ。

それと、障壁も封印されてる本人の能力から使うため、全力の戦闘が終えた後は不意打ちに備えることができない。


「まぁこれにもデメリットがあるから完璧じゃないぞ。

それに今回、これを施したのは大丈夫だと判断できたからだ」


「どう言うことだ?」


皆帰が不思議そうに聞くが火鎚は薄々感づいてるようで何も言わない。

他は雪菜と世那以外は皆帰のように分かっていないようだ。


「今回の俺達の戦いあるだろ?

あれは、結果だけ見たら俺達は利用されたんだ」


「待て、それって…」


「皆帰、理解が遅いぞ。

今回の件はあいつらの尻拭いと実験の手伝いをしてしまったんだよ…結果だけ見ればな…」


その言葉でやっと、全員理解できたようで固まる。


そう、今回の件はあいつらが起こした問題を俺達が処理をして、更に魔獣や天魔、魔人の戦闘データが相手の方に入ったのだ。

更に厄介なのは俺達の戦力の情報が向こう側に入ってしまったことだ。


「てことは、今回の件は…」


「まぁ、必ずしもそうでもないさ…。

今回の件であいつらはまだ俺達とは実は明確な敵対関係ではないんだ」


その言葉を聞いた瞬間、全員が固まる。


「もとより、あいつらの目的の中に俺達は関係していない。

そして、俺たちにとってあいつらの行動が関係してるんだ。

前回、雪菜が襲われたのは半分以上は警告の意味が強かったんだろうな」


「いや、殺されたよね?勇馬…」


雪菜が呆れたように問い返してくる。


「それはあいつらも余裕が無かったからだろうな。

だが、今は違うどこで得たかは知らないが詳しい魔獣達の知識がある今ならあいつらにとって目的は後少しなんだ」


「んじゃ、そいつらの目的は何なんだ?」


恐る恐ると言った感じで皆帰は俺に問いかける。


「簡単だ…この世界を亡くしてしまうことだよ」


この場の誰もが混乱したような状態になる。


「色々と聞きたいだろうが、この話はまた追い追いしていこうと思う。

あと、封印だが鍛えれば鍛えただけしっかりと封印状態でも影響されるぞ、あくまでこの技法や霊格量がかなり制限されたこの封印状態での話だがな…。

封印解いた状態での訓練はいつでも付き合うぞ」


俺は言いたいことだけ言って部屋を出る。


「やっぱり、否定は出来ないな…あいつらの考えも俺は分からないわけではないから…」


俺は立ち止まってそう呟く。


「やっぱり…昔からそこは変わらないんだ…」


突如、声をかけられて俺は声の主の方を向く。


「なんだ、利差か…昔からって何だよ…」


「そのまんま…、原初の頃、私を助けた頃のままのことを考えてる」


「そうなのか?」


「うん、だって…何でもない」


利差は何かを言おうとしたところで言葉を止める。

そして、俺をジッと見る。


「一つ…聞いていい?」


「何だ?」


「…」


その言葉を聞いて俺は何も答えられなかった…。

いや、答えられなかったのではない…それを聞いて信じられなかったのだ…利差の奥底まで俺は思い出していなかったのだから…。



****************



「んじゃ、体育祭の出る種目を決めるぞ」


翌日、ジャックが教壇に立ち、黒板に種目を書き込んでいく。


種目に関しては長距離走でない限り身体能力は一般人並みにしているので心配する必要はない。

それでも、体力までは封印できないのは誤算だった。


火鎚と雪虎の二人は一日中筋トレしており、残り二週間を全部筋トレに費やす未来しか見えない。


まぁ、幸いにも体力テストは今週中なので異常な数値は出ないだろう…多分。


そうして、それぞれの種目が決まり俺は100メートル走、雪夜は二人三脚、紗雪は障害物競走、火鎚が綱引きになった。


後で聞いた話だが、雪菜と那奈はパン食い競争、利差は100メートル、雪虎が綱引き、刃月と世那が障害物となっているようだ。


「うちの体育祭は偶数クラスと奇数クラスで別れて勝負するから変に一対一のガチンコバトルみたいになるらしいぞ」


ジャックの物言いに生徒達が苦笑いする。

そうして、全員リレーなどの話になり放課後になった。


「もう体育祭なんて滅べ!」


放課後の練習に行くと何か叫んでいる人がいた。

隣のクラスの皇雷 皆帰に似てる気がするけど気のせいだ。

よし、現実から目を背けよう。


「おい、勇馬…さっきからひどい言いようじゃないか?」


気が付けばさっきから変なことを叫んでいる変質者が俺の肩に手を置いて怒っていた。

何でだろう?


「お前のその言いようが怒らせてるの!」


「はっ、声に出てただと…いや、お前はエスパーか!」


「お前、絶対わざとだろ!」


俺は素直に頷く。

そうすると皆帰は何を言えばいいか分からないような表情をしていた。


「まぁ、冗談はさておき…お前と俺ってどういう出会い方をしたんだ?」


俺は昨日のことが頭に引っかかり俺は自分が仲間とどのように出会ったか聞こうと思った。


「すまない、俺もそこらへんの記憶がなくてな…」


「いや、大丈夫だ。

興味本位で聞いたことだしな」


俺たちはそれから適当に話してると後ろから怒声が響いてきた。


「ほう、お前たち私が監視してると知ってのサボりか?」


俺はついこのあいだの朝の記憶が蘇る。

そして、周りを見ると既に練習が始まっており後ろから来たのが何かすぐにわかった。


「「すいません!ちょっと相談してただけです!」」


俺たち二人はそう言ってその場から全力で逃げること試みた。


「待て!お仕置きがまだ済んでいない!」


後ろから怒声が再び響く。

俺たち二人は今は逃げることだけを考えた。

今の状態で捕まれば間違いなく痛い、そして怖い。


俺達は無我夢中で走ったのだった。

今編は体育祭を主な視点となってます。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたなら幸いです。

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