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那奈との過去

前々回のエピローグの後に来たのは閑話という名のちょこっとエピソードでした。

朝、俺が起きると誰もいなかった。

いや、正確には同じ中学に通ってるはずの奴らがもう出た後だった。

一週間ぶりの学校で俺は浮かれながらも登校した。


そう、その時の俺は皆帰達のしてくれていた警告を忘れていた。

それはつい最近まで俺が寝込んでいて今日から再びとか皆帰達も焦っていたというのも原因といえば原因となるだろう。

しかし、俺は侮っていたのだ。


皆帰達が警告をするまでの相手について…。


俺は捕まっていた。


「よう、北条?

連絡したはずなんだがな〜よくまぁこうもぬけぬけと朝練をサボるなんて喧嘩売ってるんだな?」


そう、頭を思いっきり鷲掴みされて…。

俺を現在捕まえている先生は体育の教師で先輩達曰く、鬼教官と呼ばれる女の先生だった。

イタズラした日にはグランドを全力で20周させられた人もいれば、体育の授業でパスするように見せて思いっきり当てられる。

そして、彼女は体育祭の運営を主に取り仕切ったりしてるとかしてないとか…おまけに生活指導部で遅刻者を今の俺のように取り押さえて反省文書かせたり、長い説教をすることでも有名だ。


それでも相手が常人故に痛みはない…しかし、恐ろしいほどの殺気が俺に飛んできている。

まさか、戦いの中以外でそんな殺気が飛んでくるとは思わず、俺はビクリとなる。


「い、嫌だな〜、相模先生…少し忘れてただけじゃないですか?」


「そうか?お前はこれから私と大縄をやりたいのか?」す


そうして、先生が大縄の縄の端を持つ。

何故か持った時のくねりが鞭や蛇などに見えて仕方ない…というかそれ縄じゃなくて凶器ですよね?

というか、最早話が通じてない!


「まぁ、今回は目を瞑ろう。

病み上がりに無茶させるのもよくないしな」


先生はそう言って俺から手を離す。


「あ、ありがとうございます」


俺は持ち場に戻ろうとする先生にお礼を言うと先生は立ち止まる。


「言わなくてもわかってると思うが、次遅刻したら…」


「は、はい…」


謎の威圧感に襲われて俺は後ずさる。


「ただで済むとは思うなよ?

最低でも、グランド70周だ」


「…は、はい…」


皆帰達が警告をした理由が分かった気がした。


****************


「アハハハハ!」


「世那…笑わないでくれ…」


午前の授業が終わり、昼休みに入って世那が俺のクラスに来て笑っていた。

理由は朝の件についてだった。

俺がビクリと後ずさったりしたことが珍しかったらしくやけに笑っている。


因みに世那は今回の件でこちらに転校してきており、現在隣のクラスの三組在籍である。

クラスが離れたのは少し不便も感じるが学校ではこんなことでしか話せないのであまり気にしなくても大丈夫だったりする。


「でも、今回は悪いわね。

伝え忘れていたのではなくて伝えて無いのだもの…」


その瞬間、俺は黙った。

そして、じっと世那を見る。


「ごめんなさい…だから睨まないで」


「アトデオシオキ」


「ちょっ!なんでカタコトなの!?」


こんな感じでいつも通りみんなと(火鎚と雪虎は相変わらずサボり)話してると利差が何か思い出したかのように頰が少し動く。


「利差?どうかしたのか」


「ごめん、用事を思い出した」


利差に声をかけると焦ったような様子で利差は去ってしまう。


「…俺なんかしたっけ?」


「…いろいろと?」


「いや、それは皆帰だけだと願いたい」


紗雪が意地悪な表情でそう言うと俺は真剣にそう言う。


「いや、俺も……いろいろとやってるわ…」


皆帰は否定しようとして今までの自分に起きたことを思い出して顔を暗くする。


「まぁ……事故…だからな」


雪夜はなんとも言えない表情で皆帰の肩を優しく叩く。


「優しさが痛い…」


この場の全員が引きつった笑みを漏らしていた。

うん?何か忘れているような…。


「あ、そういえば行くところがあったは…今日の昼は終わるまで多分帰れない」


「うん?どこに行くの」


俺の言葉に雪菜は探るようにジト目で睨む。

いや、何というか浮気を疑われる人間ってこんな目で見られるのかな?


「いや、那奈のところにさ…多分、お前ら学校では会ってないだろ?」


「そういえば…」


「会ってないな…せっかく仲良くなれたのに学校では余所余所しいとな…」


雪菜がハッとしたような顔で呟く。

雪夜が悲しそうに呟いて周りを見る。


「まぁ、気にすんな…普段は変な所でボッチ気質だからアイツ」


俺はそう言って一人、教室を出る。




ガタン!ガラガラガラ




「なんか前よ…」


ら変な音になってないか?

と言うとしたところで俺は口を塞がれた。


「グア、ファンガ?(ちょっ、何だ?)」


俺はいきなり口を塞がれたことに動揺する。

すると、目の前に那奈が現れて顔の前に人差し指を立てながら小声で喋りかけてくる。


「(勇馬、静かに…耳をすませて裏の様子を見て…遮音障壁は張ってるけど下手に勇馬に話されたら砕けちゃう!)」


とりあえず、分かった。

俺は頷いて口から手を退いて貰う。

そして、軽く跳んで自分が出た入口の上に乗ってそっと耳をすます。


「ん?何か音が聞こえた…」


すると男の声が聞こえてきた。

俺はバレないようにそっと見るとどうやら同じ学年の男子のようだ。

まぁ、そこそこ顔はいいのかな?

そして、もう一人は…って利差!


「いいから、要件を言って」


普段から無表情だから分かりにくいが明らかに不機嫌な利差が男にキツイ口調で言う。

それを気にしてないのか気付いてないのか男は顔を赤くして利差を見る。


「お、俺とつ…「ごめん無理、諦めて、出直すどころかもう来ないで」て何も言ってないのにひど「私の時間をこんな無駄なことで奪ってそれ?」って、無駄って、こ、告白を勇気を振り絞っ「無駄でしょ?どうせ私は断るのだから」いや「もういい?先に戻ってくれないかな」えっと…「これ以上何かある?まぁ、聞く気は無いから早く行って」クソォ!」


そしたらとんでもない断る瞬間を見た。

甘酸っぱさも下手くそもない…、というかバッサリどころか聞いてすらいない…。

男の人は泣いて帰ってしまったけど大丈夫かな?

まぁ、もし利差の風評被害を出そうものなら俺が…。


「利差さんってあんな人でしたっけ?」


「いや、多分あいつは人見知りもあるからな…分からない」


俺と那奈はそれぞれの感想を述べる。

もちろん、聞こえないように…。


そうこうしてるうちに利差は屋上から出ようと歩き出す。

そして、出る瞬間に…


「二人とも興味があるのは分かるけど趣味悪いよ」


そう言って出て行った。

いや、バレてました。


「あはは…」


「はは…」


二人で乾いた笑みを漏らしなが顔を見て見合わせる。


「「すいませんでした!!!」」


二人の声が屋上に響きわたったのはいうまでもない。


****************


「そうだった、用があって来たんだった。

この屋上について雪菜達に言っていいか?」


「あぁ、そのことか。

別に大丈夫ですよ。困ることもないし、むしろ大人数でお昼を食べるのは憧れてたんだ。

あと警戒するのはこの学校でも姉とかが昔通っててこの屋上の扉が開いてしまうことを知っている人も時々いるから今回みたいに人が来ることがあるなんてこともあるから」


嬉しそうに那奈は頷く。

那奈は昔から友達は意外と少なかった為、未だに複数の人で済む方式の住み方にそわそわしているようだ。


「わかった。

それで他にもあるんだが、お前と俺の記憶を擦り合わせていいか?」


「いいですよ、まぁ後は原初の記憶を少しだけ思い出したくらいですけど」


那奈はふうと息をついて空を見上げる。

俺も同じようにリラックスしてお互いに話し出す。


*******二人の語り部*********


初めて会ったのはそう、神社の境内だったよな?


はい、まぁそれは原初の頃じゃなくて数百年経ったか分からないくらいの話ですね。


俺は境内から見える街の様子を見ていた。


まぁ、なりそめは今更ですしこの弓について話しましょう。


そうだな、って取り出さなくていい。

あの時のお前の質問は俺でもビビった。


「どうして、そんな悲しい表情をしてるの?」


あの時ですか…ちょっと厄介な『祓魔師エクソシスト』が日本に入り込んでいると聞いて私も急いで来たんですけど…。


え?あれって『祓魔師フツマシ』だったのか?

でも、能力なんて…。


いえ、あれは見習いで少し信心深い程度の人間なので逆に『祓魔師エクソシスト』の方に抹殺、または捕縛を依頼されたんです。

一応、あの頃の陰陽師は日本の裏世界を牛耳っていましたから。


なるほど…。

話が逸れたな。

あの時の俺はこの質問に答えることが出来なかったんだよな…。


今も…ですよね?


そうだな…。

まぁ、そして俺は黙ってなぜ謝ったんだよな…。


「悪い…」


そう言って去ろうとしたところで私が腕を掴んだんですよね…我ながら大胆でした。


「何なんですか?

謝るのはこちらです!

多分、勇馬は物事を全部一人で抱えすぎ!」


あの頃のお前の剣幕は凄かった…。


言わないでください。

恥ずかしいです、あれはノリで…。


でも、そうなると何であの時、俺が陰陽師の首を刎ねた時は何も言わなかったんだ?


いえ、あまりにもデジャヴ過ぎて少し混乱したのが大きかったんです…。


なるほど…、そして…気がつけば俺は神社でお世話になっていた。


「怪我はないですか?」


「大丈夫だ…」


「どうかしました?」


「お前は俺が怖くないのか?

俺は何一つ怪我なく、あいつらを理不尽に殺したんだ…」


「…」


「悪い」


「いえ、勿論、怖かったです…それでも…私はあなたが変に無茶することが許せませんでした。

あなたはいつもそうでした」


「何の話だ」


「フフ、分からなくていいですよ。

ほら、怪我は確かに一つもありませんね」


あの時の俺は知らなかったんだよな…原初の存在を…。


まぁ、私もその時は半信半疑で言っていたような記憶があります。


雪菜とかにそう言ったものがあると聞くまで忘れてたんだよな…。


…。

大丈夫ですよ。

あれは…いい記憶と言えませんので…私達の黒歴史でもありますから…。


そ、そうか。

まぁ、そうして夜が明けていたんだよな…。


あの時はお楽しみでしたよね!


…何もしてないはずなんだが…。


あれ?覚えてました?


やっぱり嘘か…。

とりあえず、話すぞ。

そして、あれが起きたんだ。


魔獣の災厄…開戦による魔獣の大量発生…。


あの時の俺達は何もできなかった。

目の前にいる魔獣をひたすら殺すことでしか自分が生きることが出来なかった。


そんな時にあれが完成してしまった。

私のいた神社の霊樹の枝から作られた弓、『桜霊樹の弓』が…。


「ふぅ、全く戦争ってのはいつの世もこんな感情が揺れ動くものなんだな…」


「仕方ないですよ…戦争なんですから」


「そうだな…」


「あれ、それは何ですか?」


「うん、あーこれはお前に渡そうと思ってな…その剣は確かに強いけど手加減し難いだろ?」


「あぁ、霊王のことですか…確かに手加減し難いですね」


「次戦う時は期待してるぞ」


そして、俺は那奈に弓を託した…いや、託してしまった。


私はその時は知らなかった。

勇馬が全力で仕上げた一品にはとんでもない力を込めていて勇馬の技法と霊格が枯渇していることに…。


そして、その二日後に俺は千近くの魔獣と対峙して秘策を使って相打ちした。

ここから先は那奈が語ってくれ。


****************


そして、それを知った時わたしには言い知れない不安を覚えた。

また、死なせてしまったと…。


そして、怖くなりました。

ずっと背中を合わせて戦ってくれた人がいなくなったことに対して…。


「何で…どうして……この弓を使って一緒に戦うって言ったじゃん!」


わたしは暫く神社に引きこもって泣き続けた。

そんな時に一人の男がわたしのところに訪れた。


「いつまで何の力を持たないガキに対して泣いている、これじゃ寺十院も落ちぶれたものだな」


その男は近くの管轄をしていた陰陽師の一人だった。

私の家とは仲が悪く、この地域に私がいたのもここが通常じゃ管理仕切れない土地だと知ってこの男が裏で手を回していた。


しかし、その時の私はそんなことなんてどうでもよかった。


力が何なんだ?力全てが証明してやる!私の家なんてどうでもいい…でも、勇馬の侮辱だけは許せなかった。


私は弦を弾く。


そして、矢も何も無い弦を離して弾いたはずだった。

その瞬間、轟音が響き渡り神社は砕け散っていた。


その瞬間、理解した。


この世界には技法がある。

その力と霊格の融合した武器がこの弓なんだと…私は理解できた。

技法の使い方も弓の使い方も…。


「な、何を…」


私は考えた。

勇馬の為にできることを原初からこの自分になったという自覚は少しだけある。

しかし、これは神のいたずらなのか何らかの力なのかわたしには理解できない。


「ならば…私は勇馬に代わって魔獣達を一匹残らず殺してやる!」


その瞬間、霊格が弓に集まる。


そして、私は歩き出す。


「待て!貴様、何をするつもりだ?」


私は歩みを止めない。


「何って?簡単よ…私は私のやるべきことをやる…ただそれだけよ」


「何を言う!貴様ごときが魔獣を…」


瞬間、男の横にとんでもない質量の風が吹く。


「これでも…無理かしら?」


私はそう言ってその場から離れて、弓を構えた。


霊格で出来た矢は綺麗に魔獣達を射抜く。


「まず、八匹」


目の前に映るもの、私が捉えられるもの、何一つ逃さなかった。


時には気配を消す奴が、時には真正面から来るものが、それでも私はただ、弦を弾くだけだった。

指は血だらけになり、体が軋む。

霊格も限界に近い、涙が溢れそうになる…倦怠感と嘔吐が激しくなる…それでも私は弓を弾く…。


何度も…何度も…何度も…殺す。


名誉なんていらない、お礼なんていらない、あの時の私が欲しかったものはたった一人がいる日常、それだけ十分だった。


もう、それは無い。


それでも、その一人の願ったことだけは私が守りたかった。


そして、気がつけば私は弓を手放していた。


もう握れない…もう動けない…。


それでも、その最後の一つ…それだけが残っている。

私は弓を取ろうと手を探る。

どこにも無い…私はせめてな抵抗で殴る。


その魔獣は絶叫を上げて私を無理やり突き放す。


痛みが私に襲う…私は顔を引きつらせて、もう一撃…としたところで私の腕が飛んだ…。


「うそ…」


私には再生やくっつけるための能力は無い…私はそのことをひどく後悔した…あと少し…あと少しが届かない…。


何も出来ないのか?


それは嫌だ…何度も彼には救われた…今回も前回も私の希望として…。


なら、せめてその救いに報いたい。


彼は望んで無いことなんて知ってる…彼は首を振ることも知ってる…それでも、私にとっては大事なことなんだ!


「…こんなところで!

…終わらせたくない……まだ、戦える!」


こんなにも私はどうしようもない人間だったか分からない違うなら彼が変えた…私に必要なものは前に突き進む…その、一歩だけなんだ。


魔獣と私が触れる。

その瞬間、魔獣のなにかが崩壊する。

少し砕け散るその魔獣の体はチリとなっていく。

それと共に私の命も尽きるように壊れていく…。


そして、最後の声が聞こえた。


「まだ、救えるようだ…『事象回帰』」


その瞬間、私の砕けていく体が元どおりになる。

でも、それと共に私の命の光は消えた。


それでも、今の私は転生して生きている。


****************


「大雑把に説明するとこんな感じでしたね」


「うん、大雑把過ぎたな」


那奈の話を聞いてどう反応したらいいか分からず俺は苦笑いをしていた。


「そうか、俺が死んだ後にはそんなことがあったんだな…」


「いえ、結構省いています」


「まじ?」


「はい、大マジです」


「なら、今度じっくり聞こうか。

丁度、昼休みも終わったことだし」


タイミングを見計らったかチャイムが鳴る。

俺達は立ち上がり、教室に戻る。


あの日の答えは実はもうある。


「それは俺が真実を知らないからだ…」


「はい?」


教室に向かう途中だった為、那奈はそれを聞いて首をかしげる。


「あの日の答えだ…また後でな…」


そう、俺は知っていたはずの真実を今はもう知らないのだ…。





ー陰陽師編ー完ー


次編ー氷の孤独ー

陰陽師編はこれで一応終わりとなっています。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたなら幸いです。

久々の究極の日常?の話はただいつも通り勇馬が被害に遭うだけで終わりました。


よかったらブクマ、感想などをよろしくお願いします。

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