決着1
何とか書けた。
「く…クソが!」
舞った煙の中から朱嶺が顔だして叫ぶ。
「あの程度じゃ倒せないか…」
「ど、どうやらそのようですね…」
どうやら、奈那としてはかなりの威力で放ったようで、ケロリとされていたら落ち込むか…。
「気にするな…あいつは別格だ。
そこらの奴らなら貫通して100人くらいは最大でも巻き込める筈だ」
「そ、そうかな…というか…思い出したの?」
「まぁ、お前のことはな…全く、紛らわしいことをしてくれる…まぁそれでも気がつかない俺もおかしいけどな…」
「それは…唐突にあんな記憶…妄想だと…」
まぁ、分からなくもない…でも…あの時、屋上で会った時、『どっちの意味で?』と聞いた時に奈那はたしかにこう言っていた。
『どっちって一つしかないですよ』
その言葉はたしかに俺の質問に迷うことがなかった。
それは彼女の中でもう一つあることを意味していた。
「まぁ、今更気付いてもな…結局その弓に教えてもらうまで気が付かなかったし…」
俺がそうこう言っているうちに朱嶺が動き出す。
「ちょっ!話してる最中には攻撃しないのは鉄則じゃないか?」
勿論、現実ではそんなもの通じない。
ていうか、俺もやるし…。
かろうじて朱嶺の攻撃を避けて奈那にアイコンタクトを送る。
「やってみる」
それに気が付いた奈那はすぐにそう返事をして弦を弾く。
そのタイミングで朱嶺が奈那に向かう。
しかし、遅かった。
「があっ…。
これは…霊格だと…」
通常の攻撃では扱いにくい霊格の攻撃に朱嶺は驚き戸惑う。
「悪いがそれを待っていた。
『五剣一閃』」
四本の剣とともに同じ場所に突きを入れる。
「グアッ!小賢しい!」
無造作に振るわれた朱嶺の腕は綺麗に空振り、しゃがんで避けた俺は足払いを行う。
そして、体制を崩したところで剣の一薙と行きたいが、先程の攻防で通常に切り付ける程度では効果ないことなど知っている。
故…
「『六色七斬流』『総重』の型『桜花乱斬』」
瞬間、刃が霞む…いくつも分離するかのように消えたように見える刀身は周りを塵に返すほどに全てを刻む。
しかし、朱嶺は切れたとは言えでも腕を一本持っていった程度だ。
普通の相手じゃ話は別だがある程度の能力者なら再生は容易だ。
「グゥ、今のはかなり危険だったぞ…左腕を持っていかれるとは…思っても見なかった…」
朱嶺はそう言って俺から距離を取る。
「悪いけど私を忘れてもらっては困るよ」
しかし、その距離を取ったのは正に悪手となる…。
霊格…否、能力の塊がいくつも枝分かれをして朱嶺に直撃する。
しかし、奈那の攻撃はそれだけでは終わらない…、二撃三撃と撃ち込みそして、朱嶺のいる場所にまで移動をする。
「それは悪手だったな」
朱嶺はそう言って拳を振り下ろす。
「知ってる?…この弓はね確かに使いやすいんだ…」
瞬間、朱嶺の腕に一閃の傷が刻まれる。
「でも、勇馬にこの弓を貰う前はこの剣を使っていたんだ」
そして、奈那の手には一本の木剣が握られていた。
俺はこの剣を知っている。
霊剣『霊王』
この剣は俺の俊王にある四本の剣の一柱だと予測している…。
実際、俺自身は俊王は四本の剣を召喚する以外の使い方があるか分かっていない…。
そして、四本の剣も曖昧に作られている。
それでも、四本の剣にはそれぞれにモチーフがあると考えている。
何度も使っているから分かるが、四本の剣はそれぞれ違った才能がある。
能力などは分からなくても技法の通りなどがそれぞれ違ったりする。
「グアァァァァ!何だ!何なんだ!これは俺が俺が崩れていく!」
どうやら、この一閃で決着はついたようだ。
精神の崩壊…それはある意味普通の死よりも残酷な死に方…。
朱嶺の身体は崩れていき…そして…。
「これで終わっ…」
「勇馬?どうかしたのか」
俺は奈那の方に振り返る。
その時に口を止めてしまった。
それに対して奈那は首を傾げているが今はそんなものどうでもいい…。
俺の中の何かが訴えかけてくる。
ーあれはダメだ…世界を壊すー
そう、朱嶺が立ち上がっているのだ。
無限に近い力を吸収している。
「魔人…いや魔神?」
違う…魔人にしては強すぎる…魔神にしては弱すぎる。
それでも…あれに勝てるのか?
「っっ!嘘!
何で朱嶺が…」
ようやく奈那も事態を把握したようで俺のところまで下がってくる。
ーそう、決して許してはいけない存在ー
ー天魔ー
瞬間、俺の中で何かが弾けた。
大きく空間を揺らす。
俺はすぐに朱嶺の背後に回り、剣を振り下ろす。
「っっ!」
しかし、その剣は朱嶺を切り裂く事は無く朱嶺の手により受け止められていた。
パリンッ
すぐに剣を放棄して空間…いや、障壁を張り蹴る。
懐に入り込み四本の剣を掴んで振るう。
一撃じゃ、避けられる。
二撃三撃と攻撃を続ける。
「『限界突破』」
この時、俺は固有能力を作動させる。
これは一時的にとんでもないスペックを手に入れる代わりに身体にその分の負荷を掛けることになる。
「壊れる前に終わらせる…」
パリンッ
たった一度の障壁の破壊された音…。
しかし、それだけで多角からの攻撃を開始していた。
それを見た朱嶺はニヤリと笑う。
そして、ゆっくりと俺が向かってきているところに障壁を張る。
バリンッ!
しかし、その音は障壁が割れたことを意味する。
朱嶺は一瞬の動揺を見せるが、俺の攻撃をしっかりと避けて油断の無い構えを見せてくる。
その間に俺は剣を回収する。
解除して再び顕現させるエネルギーが無駄だと考えた結果である。
油断は死…勝者には純粋な強さが必要…。
「奈那…桜霊樹の弓を貸してくれ」
「え、はい」
若干置いていかれた奈那は戸惑いながらも俺に弓を渡してくる。
「さてと…いくぞ…」
俊王と弓を共鳴させる。
「多武複具」
瞬間、能力で出来た矢を放つ。
それに対して朱嶺は軽く避ける。
しかし、朱嶺の避ける動作と合わせて俺は背後に回り剣を振るう。
そして、甲高い音が響き朱嶺の腕と剣が続けてぶつかり合う。
******奈那*******
いま、私は恐れていた。
いや、正確には怖かった。
何も役に立たない自分が…。
この戦いは今の私が逆立ちしてもたどり着けないような領域にある。
ゆえの速さ…、ゆえの強さ…。
その一つ一つが場を砕き、消失させていく。
目で認識させることすら許されない攻防戦…。
援護をしなくてはと、考えるがそれは無駄なこと…この領域に下手に踏み込むことは逆に迷惑をかける。
お互いにぶつかり合い…とんでもない余波を飛ばしていく。
弓があっても無くても今の私じゃどのみち足手纏いだとわかる、いや、分かってしまう。
お互いに尋常ならざる反応速度で避けて、反撃する。
そして、時にはお互いに腕を吹き飛ばされて再生する。
そんなことが行われていく認識が狂うような戦いに終止符が打たれようとしていた。
甲高い音が響き渡り、それはやがて耳鳴りのような音に変わっていくを
「があっ!」
次に私が見た光景は朱嶺が壁に叩きつけられるところだった。
******勇馬*******
何千何万という攻防を終えて、俺はゆっくり剣を構えていた。
「ちくしょう…強さを得ても届かぬとは…」
「最近の中じゃ強い部類だったぞ、安心しろ」
俺がそう答えると朱嶺は笑う。
「ハハ、ハハハ…フハハハハハハハハハ!」
トチ狂ったような笑いをする朱嶺を見据えて俺は剣を振りかぶる。
「さようなら、朱嶺」
その時だった。
一陣の風が吹き荒れる。
それ共に甲高い音が鳴り響き俺の剣は弾かれる。
そこには小さな体にその体に見合わないような大きな刀…。
「何で…お前がここに…」
あの日の少女が俺の前にはいた。
「どうやら、タイミングとしてはよかったようだね」
少女は俺が一歩引いたのを見て刀を納めて朱嶺の方へと歩き出す。
「さて、君はよくやったよ。
朱嶺君、さっさとこの場を退散するよ。
今回の情報はある程度取れたから」
「誰がにがっ…‼︎」
瞬間、意識が遠のく…俺はそれを何とか抑え込むが立つのもままならない状態になる。
「この調子じゃ私達を止めることは無理そうだね。
んじゃ、この前の話色好い返事を期待しているよ、シャルロット様はいつでも待ってくれているから」
そう言って去ろうとする少女を何とか追いかけようともがくが一向に身体は言うことを聞いてくれない。
その時だった。
今までの空気が一転する。
「まぁ、生き残ることができたらだけどね?」
少女の言葉と共に天井に巨大な穴が開く。
そして、そこには今までとは比にならないほどの大きさの魔獣がいる。
「嘘…だろ?」
もう、身体は動かない…あれを倒す術はもう…。
「勇馬!弓を」
瞬間、奈那により現実に引き戻される。
まだ、手段はある。
「わかった!
できれば倒して欲しいが時間を稼いでくれ!」
そう言って俺は奈那に弓を渡す。
それに対して奈那はしっかりと頷き、弦に指を掛ける。
「何をしようとしてるかわからないけど、無駄だよ…あれは既に天魔の領域の化け物…今の疲弊している君じゃ無理だよ」
んなものわかってる…でも…やらなきゃいけない。
「君達も大変だよね。
一般人を巻き込まない、被害を出さないために最大限の障壁などを張り続けてるのだから…」
確かにそうだ…この担当は俺ではないけど、一枚は噛んでいる。
これによる技法の消費も凄い。
「だから、間違ってると思わない?
何で技法などという力が知られない世界なんて?」
「…」
ーああ、そうだよ…正論だよ、屁理屈でもあるけど考えてない訳でないんだよー
ーだって、間違ってると何度も考えたんだからー
「勇馬!もう持たない!」
奈那からの声が聞こえる。
「えっ…勇馬?」
しかし、そのすぐあとに疑問の言葉が浮かぶ。
俺は項垂れ、一切の体制が変わっていない、四つん這いな状態。
「だからね、本来あるべきもの…またはこんな世界…」
ーああ、そうだなー
「「無くしてしまえばいい」」
瞬間、時が止まったかのようだった…。
その突拍子も無いことに奈那は困惑している。
「分かってるんだ君は…もう、押し付けられた理想なんて捨てなよ」
そう、少女は諭してくる。
そんなことはよくわかっている。
そんなことは知っている。
嫌なら捨ててしまえばいい。
でも…
それでも
「…無理だわ」
その一言だけだ。
理想なんてものは捨てない…何故なら俺の理想でもあるのだ…。
世界なんてものは初めからどうだっていい。
でも、あいつらの居場所だけは守らなくてはならない。
いくら綺麗事を並べても結局は俺のエゴの塊なんだ。
それをただ押し付けているだけだ。
間違ってる?
俺達だろ?
この世界に何も間違いなんて無い。
あるとすれば、それに外れてる俺達だけだ。
俺は立ち上がる。
「今…なんて?」
「やっぱり…無理だわ」
俺は一言そう告げると今できる全てを振り絞る。
「お前達を否定する気は無い!
勝手にやってろ、その過程に俺達があるならいくらでも潰してやる!
だから教えてやる…‼︎」
俺の答えはいつだって一つだ。
「あいつらを守る!ただそれだけだ!」
踏み出す。
勝てるか分からない。
それでもあの魔獣に勝てなくては何も守れない!
刃が魔獣を切り裂く。
しかし、浅く致命的な攻撃には至らない。
すぐに次の攻撃には入る。
その時だった。
ー動けない?ー
技法や霊格の枯渇…今まで動くために身体中に糸のように張り巡らされた能力によって動いていた。
しかし、それは停止されて完全に身体が動かなくなる。
そして、思いっきり蹴られて地面に叩きつけられた。
「まだ…だ。
これじゃ、何も…守れない」
俺は身体が悲鳴をあげるのを無理矢理制して立ち上がる。
「どうなったっていい。
時間を少しでも…」
俺は奈那を見て逃げるように合図をする。
しかし、それでも奈那は逃げようとせずに首を振って弓を構える。
「くそっ、どうすれば…何だ…あれは?」
それは唐突に起きた。
空に無数の龍が飛び交う。
雷、水、氷、土、火、風を宿し龍達が何体も飛び交う。
それは魔獣の元に向かい食らう。
絶対的な死…自身の届かない領域により、魔獣は悲鳴も上げずに死を迎えた。
「うそ…何あれ?」
少女の呟きにより、この状況は少女の意図していないことであろう。
俺は必死で探り、それを見た時…俺は驚きが隠せなかった。
「皆帰…何でお前が?」
構想は出来ていても文字に起こすのが大変ですね。
定期的に更新はしたいですがそれはまだ先になりそうです。
読んでいただきありがとうございます。
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