戦闘1
俺こと北条 勇馬は奥へと続く通路を歩いていた。
「まさか、こんなところまで一人でノコノコとやってくるなんてな」
突然、声が聞こえて俺はしっかりと前を見ると通路には二人ほどの陰陽師だと思われる男がいた。
通路自体広くて端っこの方で二人が立っていたのもあり、大きな力を放出しているものを探していた為、見逃していたようだ。
「まぁ、腕試しには丁度いいな」
もう一人の男が呟く。
どうやら、自分との力量の差も分からない半人前のようだ。
「さて、何分持つか…」
言葉の途中で男は話さなくなる。
それを不思議に思ったもう一人が男の顔を覗き込んだ瞬間だった。
ドサリ
と男の首が転げ落ちて胴は仰向けに倒れて行った。
「ひぃ!」
何が起きたか理解できない男は腰を抜かして転んでしまう。
ヒュンッ
と何かが飛来する音とともにもう一人の男の首もおちる。
それを行なったのは簡単だ。
俺の周りに回る四本の剣の形をしたエネルギー体が起こしたのだ。
その四本の剣は彼らの首にまで飛び、首を刎ねたにしか過ぎないのだ。
俺は何も無かったかのように歩き続けていた。
ただそれだけなのだ。
今の俺の中では彼等は気にする価値も無いただの物体としか認識していない。
「どこだ…どこで行なっている…」
俺は呟く。
今の俺は一刻も早く、魔獣の生成を止めなくてはならないのだ。
故にそれを探すためにひたすら集中してエネルギーなどを感知している。
******雪菜*******
また一匹、また一匹と障壁に捕らえて、魔獣を殺していく。
近づいて来れば容赦なく切り裂き、遠ければ捕らえて地獄を味あわせる。
そんなことを繰り返して私は戦い続ける。
しかし、そんなことをしていても一向に戦いは終わることは無い。
殺した以上の魔獣達が次々と生み出されていくのだ。
「キリがない…」
私は呟きを漏らすがここで焦れば負けは確実である。
極力、能力は節約していかなければ不測の事態で危機的状況になりかねない。
「グルァァァァァァ‼︎」
雄叫びが聞こえた…。
私はすぐに雄叫びの上がっている場所に赴く。
「なにそれ?」
そこには信じられない光景があった。
それを目にした私は驚きを隠せなかった。
「魔獣が魔獣を喰らってる…」
一匹の魔獣が他の魔獣を喰らっているのだ。
それは肉片をただ貪り喰らうわけでは無い。
存在ごとを喰らい自らの存在を明確に変えているのだ…。
このまま放っておいてはいずれ強力になり、動き出した時が危険だ。
最優先事項として殺す。
私は空を蹴る。
それにより切り裂く瞬間だった。
カンッ
と音が鳴り響く。
「邪魔はさせないよ。
それと、この前の決着をつけようか」
一人の少女が刀を握り私の剣を止めたのだ。
私より確実に年下に見える少女…。
それに見合わない大きさの刀…。
「あなたは…」
「やっぱり、覚えていてくれたんだね」
少女はニッコリと笑う。
忘れるわけがない…その顔を…忘れるわけがない…その刀を…姿形が変わっていないことなんて些細な疑問にしか過ぎない。
しかし、今は個人的な感情を優先させる時ではない。
早くあの魔獣を殺さなくてはならない。
「邪魔をしないでくれない」
「やだと言ったら?」
答えは簡単だ…。
殺すか無理矢理にでも押し通る。
ガンッ‼︎
私が動き出す前に少女が動き出して私に刀を振るう。
しかし、その刃は私の障壁に阻まれて肉体に届くに至らない。
しかし、出遅れたとは言えでも始まった以上呆然としている暇などない。
私は剣を振るう。
相手がいくら速くても私を殺すことはできない…お互いに決定打に欠けるなら…魔獣は他に任せて私は足止めをする。
******皆帰*******
「…妙だな」
俺は何もいなくなった境内でポツリと呟く。
そのタイミングで俺の言葉を聞いていたかのように魔獣が現れる。
しかし、先程からずっとこんな感じでまるで最低戦力で俺を留めたいのかのようだ。
先程から魔獣を作るためのエネルギーを別の場所に送ってるようで他ならない。
っと、考えてる場合じゃなさそうだ。
すぐに俺は剣を振るい一匹残らずに殺す。
「やっぱりそうだな…」
霊格を使用できるようになってからいろいろなものに対しての感知能力が上がっている。
そこでエネルギーの流れがさっきまでとは違う動きになっているのが分かる。
要するに現在、あの神社の奥で何かやってる余波のエネルギーを誰かが意図的に利用していると考えるのがしっくりくる。
俺自身よくは知らないが魔人などを作る際に必ず不要なエネルギーというのができるらしい。
それを上手くやればまた更に同じ工程を繰り返すことができると刃月が言っていたな…。
「とりあえず、ここの雑魚に構う必要はなさそうだな」
俺はそう結論付けるとエネルギーがどこに向かっているか辿る。
その際に邪魔は何度か入ったが難なく凌いでいく。
そして、目的の場所だと思われるポイントが近づいた瞬間のことだった。
大きな戦闘音が響き渡る。
俺は少し身を潜めて様子を伺う。
そこには俺の目的地から少し離れたところで雪菜が戦っているのが見えた。
どうやら、互角のようでお互いにぶつかり合っている。
俺は一瞬、加勢をしようか悩むがすぐにその判断を改める。
下手に手を出すより確実に警戒すべきはエネルギーが向かってる地点だ。
もし、加勢をしてそちらの方がやばかった場合の方が俺達が死ぬ可能性がある。
なら、エネルギーが向かってる地点に何があるかだけでも確認しなくては判断はできない。
俺は雪菜の戦っている相手に見つからないように目的の場所を見える場所に行く。
「なんだ…あれ?」
それは異常の一言に尽きる。
あんなもの…思いついても普通はやらないぞ。
だって、喰らった本人の魂が逆に侵食される可能性もあるのだから…。
魔獣が魔獣を喰らうその光景は俺に驚愕と恐怖を与えた。
そして、俺の本能が訴えている。
ーあれを放置したらまずいー
俺はすぐに剣を構えて切り掛かる。
しかし、その瞬間今までにないことが起きた。
そう、今までの魔獣にはない行動をこの魔獣はとったのだ。
「えっ?
受け止めた…」
魔獣の頭から角が生えておりそれにより俺の剣を受け止めたのだ。
他の魔獣には角がない個体も多いが角がある個体でもそんな行動をしてくることは無かった。
すぐに俺は一歩退いて、剣を鞭に変える。
連接剣のいいところは場合に応じた戦い方と距離を離しながらでも攻撃できる点にある。
それにより、距離を取ることが容易になるはずだった。
魔獣は半歩後ろに下がり別の方向へ走り出す。
「逃す…」
俺は追いかけようとした直後に足を止めた。
ブオンッ
そんな風を切る音がすぐ近くで響く。
もう後、半歩…たったそれだけ動いていたら俺は死んでいた。
そう、すぐ近くに魔獣はいた…。
油断はここでは死を意味する…これは戦場での基本だ。
「次こそ…捉える」
俺の戦いはここで幕を開ける。
******火鎚*******
煌く炎が周りを包み込みひと段落が着いた。
魔獣達の影はもう既に何処にも無く紅蓮と蒼く燃える炎だけが俺の目に映っていた。
「誰だ?」
俺はふと近くで俺の様子を伺っている人影に気が付いた。
かなりの実力者のようで俺自身、気付くのに遅れた。
「へぇ、さすがと言うべきかな?
北条 勇馬に惹かれた人間なだけはあるね」
暗闇から現れたのは一人の少女だった。
年齢は同じくらい、赤黒くも綺麗な紫色の髪と白い肌…何より薄く銀色の瞳が存在を際立たせていた。
その時点で俺の中ではこの少女は強者だと訴えていた。
「何者だ?」
「ふふっ、この場面なら普通は『さて、何者でしょう?』と答えるのが定石だけど…僕自身が答えたいから答えてあげる。
僕の名前は千那って言うんだよ。
幸凱 千那」
少女は笑いながら長い髪を下の方で纏めて結いながら答えた。
そして、少女は一伸びしてから剣を取り出す。
紫色の刀身が怪しく光っていた。
「行くよ『心ノ幻想』」
千那が剣の名前を言うと共に言い知れない恐怖に襲われる。
千那の剣から火が溢れ出す。
「コネクト イフリート」
千那の言葉を聞き逃さなかった。
その名前は…俺の剣と同じ…。
火の粉が周りを舞う。
剣が無限の炎を広げて一つの空間を作り上げられていた。
炎の天井に炎の壁…現在の俺に逃場は無い。
「舐められたものだ…誰が逃げるかよ」
「ふふふっ、そうだね。
これはただ単なる演出だよ。
すぐに消えるから安心して」
千那はそう言って刀身に火を纏う。
俺も剣を構える。
その瞬間、お互いにぶつかり合う。
ガキンッ
「っっ!」
いま、押されたのか?
俺は今ぶつかった瞬間を判断できなかった。
剣の技量を圧倒的なレベルで上回れていたのだ。
一歩退き、すぐに体制を立て直して再び切り掛かる。
千那の胸元に剣が届く瞬間、千那は剣で割って入り俺の剣をいなす。
そしてすぐに剣を俺に振るってくる。
「くっ!」
ギリギリだ。
首の皮一枚と言ったところだろう。
少しでも反応に遅れていたら首を切られていた。
圧倒的な戦闘センスと動き…才能と実力において俺は今現在負けている。
「ふーん、この程度なんだ」
何かに落胆したような声を上げると千那の周りの炎が消える。
そして、続いて突風が吹き荒れる。
「コネクト シルフィード」
瞬間、とんでもない風が辺りを吹き散らかす。
これは…風を操っている?
しかし、これだけ大きな風なんてどれだけの力量が必要だと…。
「『六色七斬流』『秩序』の型『陣地一線』」
今なんて?
『六色七斬流』だと?
それは…。
とりあえず考えている暇はない。
瞬間、千那を中心に殺気が放たれる。
そして、その濃密な殺気が俺に到達した瞬間だった。
千那は俺の前で剣を振り終えていた。
悪運が強かったのか俺は剣を前に突き出しており、それにより剣が砕け散るだけで済んだ。
しかし、肩に一線の傷が出来ている。
風の刃により切られたと認識するのに少し時間がかかる。
その傷が深く無いのに気付くのも少しの時間を要した。
そうして、頭の中を整理をし終えた瞬間に俺は後ろに跳ぶ。
体制を立て直すとかは考えていない。
ただ単純な恐怖から来るものだった。
ここまで圧倒された経験自体が俺には殆ど無かった。
「君は本当に北条 勇馬の仲間なの?
弱過ぎない?」
その言葉が俺の中に突き刺さる。
その直後、俺は笑ってしまう。
まさか、敵に気付かされるとは思っていなかった。
俺はどこかで弱いから仕方ないと割り切っていた。
未だ、前世の自分を超える時とではなと…。
そんな甘ったれたことなんてもう言えない。
再び、俺は高揚し始める。
そう、今この瞬間が覚えている限りの自分を超える時だ!
「待たせて悪かったな『イフリート』」
相棒に呼びかける。
瞬間、紅蓮の炎が周りに駆け巡る。
「ふふっ、やっぱりこうでなくちゃ面白く無いよね。
さぁ、君はどこまで僕を楽しませてくれるかな?」
千那が何か言っていたが気にも留めない。
俺はただ頭を真っ白にして全身全霊を掛けて障害を断ち切る!
ここで俺の今日の戦いの第二幕が開けた。
******雪夜*******
どこからか視線を感じる。
おそらく、気のせいとかではなく本当に視線があるのだろう。
そして、どこかで感じたことがある気配が先程から感じる。
俺は今のところ最後の魔獣を殺して周りを見る。
しかし、どこにもその視線の正体は確認できない。
俺はとりあえず視線のある方向に歩き出す。
「待てよ…これは…嘘だろ?」
俺が視線の正体に気が付いた。
これはあり得てはいけない…だってこの気配は…。
「やっぱり、気が付かれたか…流石は雪夜と言ったところだろう」
その瞬間、後ろから賞賛の声が聞こえる。
俺は振り返ると見慣れない男の姿があった。
しかし、俺はその人を知っている。
前世で何度も見たことがある。
「レイトさん、あんた…裏切ったのか?」
「はてさて、どうだろうな?
それはお前達の見方次第では無いのか?」
彼はレイト…。
前世ではかなり優秀な剣士だ。
何よりこの人には兄弟がいる…なら…?
「てことは、ライト達もか?」
「無駄話はこれくらいにしないか?
雪夜よ、俺に勝てる未来が見えるか?」
聞きたいことをはぐらかしてくる。
おそらく一番最悪な場合だろう。
いや、裏切りがレイト達だけとも限らない。
俺は槍を構える。
昔の仲間とは言えでも敵対するなら容赦はしない。
「へぇ、いい殺気を放つじゃ無いか…んじゃ、俺もやるとしますか」
そう言うとレイトは一本の剣を取り出す。
しかし、俺はレイトに構える隙も与えずに槍を振るう。
カンッ
「危ねぇ、今のは並みのやつだったらすぐに終わってたぞ」
やはり、受け止めてきたか…。
レイトはそのまま、後ろに下がり剣を逸らす。
しかし、すぐに俺は一歩退いて突きを繰り出すがレイトはそれを簡単に避けて剣による突きを俺の肩に入れる。
「くっ…」
俺はすぐに退いて剣を抜く。
すぐに水でコーティングをして血が出ないようにする。
やはり、強くなってる。
これは油断していたら俺が死ぬ。
俺は槍を再び構えて集中する。
躊躇うことすら今は許されない。
全力で殺しにいく!
まだまだ場面を書く予定でしたが文字数が自分的に丁度いいところまでいったので他の場面は次話となります。
読んでいただきありがとうございます。
面白いと思っていただけたなら幸いです。
良かったらブクマ、評価、感想、レビューなどもよろしくお願いします。
励みにしますので…(個人的な願望)。




