それぞれの深慮
「おいおい、黒い影の被害が増えてるらしいぜ」
和は僕にそう言ってくる。
黒い影を見たのは二回、一回目は何か分からずに見た。
二回目は僕が何者かに殺されそうになった時。
「最近はどんなことがあったの?」
「なんか、この学校周辺で風井を待っていた不良たちがボコボコにされて正門前に放置されてたらしいぜ」
「カメラとかなかったの?」
「いや、何も映らなかったそうだ」
一体どう言うことだろうか?
そんなこと考えてると隣の席のユージスが立ち上がる。
何かに反応したみたいだけど…。
特に何もない。
**
「よぉ、久しぶりだな」
「なんだ、凛海か」
俺こと勇馬は凛海に呼ばれて階段の踊り場あたりで話していた。
「にしてもユージスってなんだよその名前。最初お前だって分からなかったぞ」
「色々とあったんだよ」
「そうだな、生徒会長、椿の婚約者であるあんたが死んで、椿は今引きこもってるって専らの噂だぜ」
「まぁ、そんなもんだな」
俺の言葉に意外そうにする凛海。
「どうしたんだ?」
「いやーお前がこんなに俺を信用してるとはな」
「そうだな、俺も意外だと思う」
凛海は照れくさそうにしながらそのまま去っていく。
俺はため息を吐く。
「なるほどな…ね
何に理解したか即座に忘れてしまう。
しかし、それが確信に変わる。
***
場所は変わり喫茶店で俺はコーヒーを飲んでいた。
苦いものは然程苦手でもないし香りが良い。
「マスターもういっちょう!」
「おやおや、よく飲むね君は」
マスターと俺が呼んだ女性は金髪碧眼の外国人っぽい人だが、日本在住のハーフらしい。
「それで、なんでウチと2人で来てるわけ?」
「いや、ほら他のだと、距離感近いからさまだ、距離感のわからない月葉と仲良くしたいなって」
「キモっ!いや、キモくはないけどもう少し言い方はないわけ?」
「ないな」
「ま、そっか、それ以上の言い方はうちにも思いつかない。つーか、勇馬最近よくこの喫茶店に来るけど、なんか理由とかあんの?」
「いや、たまたま見つけた名店だなと安らぎを与える空間でな」
「あっそ、確かに雰囲気はいいね」
相変わらず月葉は冷たく見えるが言葉の端々は優しいので俺としても助かってる。
にしても不思議な客がここは多いなぁ。
目を閉じていて車椅子に乗ってる少女とか、カウボーイハットなんて被った男とかキャラ濃いなぁ。
「てか、月葉は学校行ってないのか?」
「え、あーうん。まぁ今文化祭準備期間中で気まずいと言うか今更どんな顔して混ざればいいのかわからないと言うか、ま、恥ずいって感じでさ」
「なるほどなぁ、それは確かに恥ずい」
「うるさいなぁ、そう言うそっちはユージスなんて恥ずい名前名乗ってるけどその意味は?」
「ん?あーそれは数ある俺を表す名詞であり、継名だ」
「ん、ちょい待ち、正確にはあんたの名前じゃないと?」
「うん」
「あーなるほど、本当に前世持ちって抱えてるものが多すぎて理解ではないわ…ウチのようなパンピーには理解できない世界ってやつ?」
「吸血鬼狩りをしてた野良吸血鬼がパンピーねぇ?」
「それ言われたら痛いけどさ、あんたらよりかはマシっしょ?」
「それはそうだ」
俺はコーヒーを飲み終わり周囲を見渡す。
「そう言えば、月葉は黒い影について知ってる?」
「知ってる知ってるというか最近有名な怪異でしょ?」
「俺は見たことなくてな」
「まぁ、都市伝説のようなもんだしそんなもんじゃない?」
「それならいいけど」
そうして俺たちは店を出て家に帰るのだった。
***
「ほら、恭平、音がズレてる!」
俺こと恭平は親友の平八にギター指導を受けながら必死に演奏しながら歌を歌っていた。
3人のボーカルがそれぞれ別の歌を歌い、それをキーボード、ドラムで調律するとか言う荒技をしようとしてる親友に俺はドン引きだが…
「幾人も桜さんもうますぎる」
俺は1人だけ劣等感を募らせながらも練習を続ける。
桜さんは現役のトップアイドル『ブロー』だからわかるとして、なんで幾人はあんなに平然とした顔でできてるんだよ。
瑠衣は俺と一緒で戸惑ってる。
不思議と安心してしまう。
それに自己嫌悪する。
「かっこわる」
そう自嘲するのだった。
文化祭準備のライブ練習も終えて俺はとある喫茶店で幾人と話していた。
「それで話したいことってなんだよ!」
俺の強い口調に気まずそうに笑う幾人。
俺はそんな彼にイラっとするが…すぐに口を開いた。
「すまなかった…謝って許されることではないことはわかる。でも、あの日あの時、俺たちは厄介な相手に狙われていて、何も言わずに出ていくしかなかった」
「それで?なんで狙われたんだ?」
冷たく言い放つ。
そんな説明で理解できるわけない。
「前世があると言ったら信じるか?その都合で俺は静育と名乗っていた時期がある」
俺は意味わからない発言訝しげに見るが。
嘘はない気がした。
「はは、俺の周りは特別な奴ばかりでな、俺なんて所詮は凡人だよ」
そう笑っている。
謙遜とかではなく本心からの言葉に見える。
だからこそこいつに前世があっても違和感はないように感じる。
「それで?」
「え?」
俺の問いかけに幾人は戸惑う。
「お前の言い方てきに特別である必要があるみたいに言ったな?」
「じゃなきゃ仲間と歩めないからな」
「そんなの誰が決めた?」
俺は切り捨てる。
「特別ってなんだ?チケットか?それとも特権か?違うだろ!それは証だ!個人の証だ!でもそれを持ってないことが罪なわけじゃないだろ!」
幾人はポカンとしている。
「俺はなぁ!俺たち家族は!何も言わずに何も相談せずに、出て行ったお前にむかついてるんだ!一言くらい何か言え!俺たちが家族に思えなかった?それでもいいから言ってくれればよかったんだよ!」
俺の言葉に幾人は息を詰まらせている。
「言い過ぎた」
俺はそう言って逃げるように去る。
***
残された俺、幾人…いや、静育は…
泣いていた。
別に自覚してたわけでも声を出してたわけでもない。
自然と流れていた。
「残酷だなぁ」
思う。
特別でなくていい。
それはひどく残酷で暴論だ。
しかし、確かに…
確かにだ。
俺はその言葉に救われた気さえした。
こうやって見てみると転生って大変だなぁ。
昔と今で絡まって空回りして。
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