禁域4
禁域4
救うか…救う…ね。
少し心が暖かくなる。
なんか違う気がする。
とにかくだ…。
「さてとならまずは分体をどうにかしないとな」
俺の言葉にシャルロット、シャーロット、祈が気を引き締める。
ヘレネアはおまえがしきるなみたいな目をしてる。
「あなたが仕切らないでくれる?」
てか、言ったなぁ。
「ヘレネア、今は勇馬以上のこの状況をどうにかできる人間はいない」
「シャルロット様がそうおっしゃるのでしたら」
相変わらずなことで。
にしてと、頭が異様にすっきりとするなぁなんでかな?
「あれ、勇馬に感情がある?」
祈の言葉にハッとする。
そうか、俊王を再び出したことによって感受して引き出されてるのか。
なら憂うことは何もない。
「んじゃやろうかみんな…祈は備えろ。詠唱の仕方はわかるな?」
「えーっとはい」
俺とシャルロットは踏み出す。
その瞬間、何もかもが消える。
いや、彼女の分体がなくなった。
そうか、次のステップに入ったのか。
俺たちはこの禁域において、彼女の過去を知った。
それは彼女に対する理解そのもの…。
それは
彼女の本体が現れることを意味する。
『意思は枯れ、骸は砕かれ、桜は散る。生命の灯火は、反転し、暗闇となろう』
世界が暗闇に染まる。
目の前にいるのは那奈だ。
しかし、これは…
「二の太刀…」
那奈はこれまで過剰な龍脈のエネルギーを活性化させて、息吹を与えた。
だが、その逆は?
二の太刀。
それは奪うものである。
少女が笑う。
だが、それは問題ではない。
だが、早すぎる。
あれに勝つには…
何もない。
咄嗟に前に立ち…
俺は引き裂かれた。
**
現在、避難所となっている公園には混乱と絶望が波及していた。
アイドルの歌も届かないほどの混乱が存在した。
「このままみんな死ぬのかよ!」
「知るわけないだろ!てか、同時多発テロとかどうなってるんだよ!」
「なんでこんなことになってるの!?」
「家に帰りたい」
「ふざけんなよ!」
「どうしろっていうんだよ」
秩序が保たれなくなってる現状を天馬は由々しきものと捉えている。
しかし、どうにかするものもない。
半径10キロがテロによって通れない。
その中心で台風の目のように安全なこの場所はかえって人々の不安を煽っていた。
「どうする?どうすればいい?」
誰の呟きかわからないアイドルの4人の誰かか?あるいは天馬なのか。
それだけに混迷としている。
俊介がたまに救助した人間を担いでここに来るがそれを余計に事態を混乱させていた。
広がる不安の波及。
そして
「そんだけ強いなら俺たちを守って脱出できるはずだよな?」
誰の言葉かわからない。
しかし、その一言は可能不可能を深く考えずに人々の不満を爆発させるトリガーになった。
より混迷とし、人々の怒りや不満がアイドル4人と天馬に向く。
「そもそもお前たちがいなければこんなことにならなかったんだ!」
誰かのセリフは無常で残酷なものだった。
「おまえ!それを祈に言えるのかよ!」
死んでしまった。
いや、正確には死んでいない。だが、目の前で彼女の自殺を見た彼らにとって怒りを覚える言葉だった。
ここにいる人間をすくおうとした足掻きを彼らは否定したのだ。
銀杏が我慢できずに殴りかかる。
気がつけば喧嘩が起きていた。
それを止める者はいないどころか周りを巻き込み、無秩序な狂乱となったその時。
降りてきた人間がいた。
『みなさん大丈夫ですか!?』
それは黒ずくめのライダースーツのようなものを着た男だった。
『一般人の暴動がありますが問題なさそうです』
彼は即座に通信したのち、喧嘩に割って入る。
その場にいる相手を1人ずつ拘束していく。
『申し訳ありません、ここで暴れられては守りきれません』
そう言って拘束を終えると男は再び通信をする。
『安全は確保完了です、作戦実行の合図を』
その瞬間、大量の同じように黒いライダースーツを見に纏った男たちが空から降ってくる。
『これよりテロ鎮圧作戦を実行します!』
その一言がある意味では、市民達の不安を取り除いた。
***
疾風は空高くで指揮をとっていた。
そして、彼もまた同じようにヘリから落ちる。
「総員、お前達はもう今までのお前達ではない。俺が鍛え上げた精鋭達だ。誇れ、そして、最後の憂いをなくそう」
絶望の声、希望の声を疾風は聞く。
「こんな絶望も希望も全て我々にとっては試練にもならないと声を上げろ!お前達はなんだ!」
『絶対悪』
「そうだお前達はどれだけ世間から政府から認められても暴力装置の絶対悪だ!それが誰かを助けてはならない道理になるか?」
『ならないです!!!!!』
「ならその絶望を俺たちの手で希望に変える奇跡を起こすぞ!」
剣の台座が空中で作られる。
そして、剣が光り輝く。
「さぁ、絶望を希望へと変えろ、希望と奇跡の剣!『ミリカル王の剣』」
剣が抜かれる。
その大きな力は奇跡を起こす。
この場でテロに抗うもの達が大きな力を持つ。
「今日はお前達が主役だ!」
****
「おいおい、あの人何したんだよ」
ポツリと俊介がつぶやく。
それはその異様な光景だった。
そもそも俊介にとって絶対悪という組織は、強いけど普通の組織。
要するに突出はしてない。
そう、
たった1人で今暴れてる能力者達を制圧する力なんてない。
様々な弾丸が、あたりを蹴散らす。
斉藤がその膂力を持って敵を蹴散らす。
加藤が敵の動きを予測して全てを避け制圧する。
そして、
陸也が
「なんで俺まであの地獄の特訓する必要あったんだ!!!!!」
叫んでいた。
「お前達そんな目で見るな!同情するなら金と休みをくれ!」
彼は一応は勇馬達と同じ転生を繰り返してきたものでありその実力は折り紙つきなのだが、疾風は
「ついでだからやれ」
と扱いた。
陸也の実力はとても高い。
そして、このしごきを受けて…
あまり成長はしなかった。
そして、その際に疾風が言ったことが
「やる気あるのか?」
「ふっざけんな!やる気もクソも!錆び取り作業じゃなくて底上げ作業すればある程度完成した器は強くなれねぇよ!」
と陸也は今憤慨してるのである。
瞬間止まる。
刀をピンっと張り詰め止まる。
「六色七斬流、一挙重斬の型『刹那』」
彼に迫っていた能力者達の体の一部が消える。
神速の斬撃は一瞬のうちに何重にも折り重なり、切り裂いたのだ。
「あめぇよ」
思わず俊介はかっこいいと思ってしまった…が、
「あぁ、本当、誰か休みをくれ」
大人の苦しみがとても情けなく見えてしまった。
「でも、明らかに戦況が変わった」
それが俊介の評価だった。
数百人規模の強力な戦力となった絶対悪は間違いなくこの戦場の終わりに導く…
「あぁーあ、全くこれで終わりと思われるのは癪だな」
1人の男が歩いてきていた。
俊介はそれを見て何も感じなかった。
だが、反応したものがいた。
「総員、あの男には手を出すな!」
陸也だけは知っているあれが何か。
俊介は明らかに戸惑う。
明らかに危険性は少なそうな人畜無害そうな少年。
だが、次の瞬間
「まぁ、あんたでいいか」
その言葉を聞こえたのはそれが起きた後だった。
俊介の腹に拳がめり込む。
「がっっ!!!!」
痛みに俊介は言葉を詰まらせる。
だが
「条件は揃った」
傷を受ければ受けるほど倒れれば倒れるほど、俊介は強化される固有能力。
『七転八倒』
が発動される。
だが、
少年は俊介を吹き飛ばす。
即座に体勢を立て直す俊介の顔面に蹴りが入る。
そしてそのまま、踵を落とそうとしている。
だが
「一挙重斬の型『天変』」
陸也がそれを止める。
高速の斬撃を軽々と少年は避けて笑っている。
「流石はレジスタンスだった者とでも言われたら嬉しいかい?」
少年の問いかけに陸也はつぶやく。
「初代真実だな?」
「ほぉ?俺について知ってるとは意外だな」
圧倒的な剣撃で攻める陸也の剣を全て軽やかに避けていく。
「それならもっと密度を濃くして」
「どんな剣技も弱点がある」
陸也の刀を指で持つ少年。
それだけで陸也の刀は動かなくなる。
「攻撃する前に止められれば無力だろ?」
そこからは一方的な暴力だった。
蹴り、殴り、掴み、投げ、踏みつける。
「所詮はこの程度か?」
初代真実は呟く。
そこにさらに割り込んだものがいた。
「おや、懐かしい顔だな…」
「そうだな、俺も会いたかったぞ」
そこにいたのは疾風だった。
「嬉しいことを言ってくれるね。あーもしかして知りたいのかい?俺が君や四災を暴走させたかって?」
「わかってるなら話が早い、できるだけ早く口を割れば…」
「そうだよ」
「は?」
あまりにも早い回答に疾風が固まる。
「いやー戦争の火種がないからね。疾風が暴走すれば特大の火種になるかと思えばすぐ3代目に助けを求めるから計画失敗してねー」
そんなこと言いながら飄々とする初代真実。
「だからあの子達にも仕込んだんだ」
「相変わらずだな」
「あぁ、いつも通りさ。そうしないといけないほど世界は脆いんだから当然の対処だろ?」
「同意はしかねるが理解は示してやろう」
疾風はしっかりと初代真実を見据える。
「ただそれだけだ」
「そうだ、それだけだな」
2人がぶつかる。
「やっぱり弱いね!リソースのほとんどは支援だもんな!」
「お前こそ相変わらず総合エネルギー量は少ないみたいだな、軽いぞ」
2人の戦いはしばらく続くのだった。
そして、状況についていけてない俊介は…
「これが、本物ってやつか」
届き得ることはない世界を見たと感じていた。
***勇馬side
疾風の奇跡を受けたのは表面的なものだけじゃない。
俺もまたその奇跡を受け取った。
引き裂かれた体を再生させる。
目の前にいるのは真の意味で禁域を作動させた那奈の力だ。
「勇馬!大丈夫!?」
祈が心配してるが他3人は特に何も言わない。
その奇跡を見逃すわけにはいかない。
この世界で見えるはずだ。
透明な刃が迫ってくる。
少女が笑っている。
そう、これは…見えない剣…いや、違う。
精神そのものを剣としたもの。
故に本来は肉体を傷つけるものではない。
だが、あまりにも極まったその力は肉体をも引き裂く。
それを防ぐ。
「見えるなら対処はできる」
だが、それだけだ。
でもだから仲間がいる。
「ヘレネア!お前の力を今ここで見せてやれ!」
「は?ここで私!?」
「今以外ないだろ!」
苛立ってるようだが動いてくれる。
それならなんとかなる。
だがもう少し、俺も一矢報いないとな。
前に進む。
透明な剣を弾きながら走り出す。
少女は明らかに首を傾げる。
そして、嗤った。
それを見た瞬間にはもう遅い。
逃げられないほどに埋め尽くされた剣撃が迫り来る。
「シャルロット!」
ズレる。
その少しのズレが俺を救う。
傷はできるが、大きな傷は一つもない。
「捕まえた!」
少女の肩を掴む。
そして…
***
ムカつく!
私に指図して!
でも、シャルロット様がいいと言う。
いや違う。
本当は知っている。
私がむかついてるのは、彼が私にできないことをするからだ。
それは私が最もしたかったことであり、私が他人に頼みたくないこと。
『お願い、シャルロット様を救って』
涙ながら懇願する記憶。
そんなことをしたことはない。
でも、したんだ。
私はあの男に全てを託した。
それが偽りであるわけがない。
苦しみの中で涙を流して死に絶えた私の記憶。
私は知ってる私だけが知ってる。
何度も繰り返されている。
1回?
2回?
50?
いや、そんなんじゃ足りない、万なんかではない。
一億回目の苦しみ。
今私はここにいる。
ムカつく。
あの男は必死に足掻いた。
必死に見つけた。
救いのある未来を
だから
「シャルロット様、今は私の意思で行ってきます」
見たくなった。
彼が望んだ世界を…だから最後までやり切ってやる。
加速する。
音速を駆け抜ける。
「それで足りるか!!!」
勇馬からの叱責。
イラっとくる。
私にできるのはそれだけ…いや違う。
まだあるはずなんだ。
考えろ…
「チェンジ!『バスターモード!』」
自然と出た言葉、次の瞬間には私の手には巨大な剣が握られていた。
何が起きたかなんて知らないし知る気もない。
ただ速さが少し落ちたが圧倒的な威力が少女に向く。
違う殺す力じゃない。
この子は何度も何度も苦しんでいた。
何度も何度も何度も…救おうと言う選択肢すらない時があった。
『やっぱり無理だよ…こんなの私には背負えない』
そんな弱音を吐いた祈の世界もあった。
でも今は違う。
彼女は強く、そして、今誰よりも救いを与えたいと望んでいる。、
C
切り裂くのは
「お前じゃない!」
剣が引き裂く。
それは世界を…
そして、晴れ渡る。
ライブ会場に私たちはいた。
そして、次の瞬間、祈は一本の剣を投げて彼女に突き刺した。
***
詠唱について知っている。
でも、それは私の意味を作り出せと言うこと。
何があるのかわからない。
刺したその剣に込める思い…
一体…
「余計なことは考えなくていいんだよ」
シャーロットさんがそんなこと言う。
余計なことは…
「そうか、私の思いはいつも一つ」
苦しみのない世界へと
望んだ。
それが間違いとしても
あの日に交わした約束は嘘ではない
救うと助けると願い誓い全てを殴り捨てて私は今あなたの願いを叶える
時は経ち恐れられ
その孤独の果てに
骸へと変わる
恨みを重ねて人を食い
嘆く
花を散らし溶かす
守るべきものはなく血に濡れて
私は死を望む。
いいわけない!
それが救いではない!
私が愛そう、私が見守ろう、その隣を歩もう。
私が見てるから私たちがいるから。
苦しんでもいい、背負い続けて嘆いていい。
ただあなたがそこにいることをわたしが望んでいる!
だから!
君は生きていいんだ!
歌い終える。
私の真価はこの歌にあると思った。
だから、
歌った。
汗が流れる、息が苦しい。
意識が朦朧とする。
受け止めるんだ彼女を…。
この歌が私の存在証明だ。
苦しむ声と共に何かが少女から剥がれ落ちて私に向かう瞬間。
それを見て私は成功したと微笑み膝から崩れ落ちる。
**勇馬side
よくやった祈!
あとはシャルロットが存在をずらす。
俺が錬金術によって肉を作る。
シャーロットがその肉に世界への適応を与える。
やったことは簡単だ。
祈の持つ概念は一つ。
『生贄』
である。
彼女は自身に那奈と守護者の負った傷を背負うために剣を刺し、詠唱をした。
そして、離れた守護者を祈からずらして、俺とシャーロットの力で肉体を作る。
そしてここに…
「ヘレネア!」
「わかってるわよ!」
因果を手繰り寄せる。
だが、それでも…
「ここは…」
彼女が声を出す。
***
目を覚ますと私を掻き立てる慟哭は聞こえてこない。
そして、綺麗な世界が見えた。
あぁ、こんなふうに誰かのフィルターもなしに世界を見たのはいつぶりだろう?
そうか、私は…
「ありがとう、勇馬、祈、あとそこに居合わせてる君たち…私の生を肯定してくれて」
結局は一瞬の軌跡にしか過ぎない。
私の体は崩れていく。
そこに
「君…なの?」
那奈が起きる。
次の瞬間、彼女に私は抱きしめられている。
あぁ、痛いじゃないか…あぁ、これが痛みなのか…自分の体が初めてで全てが新鮮だね。
「なんで!なんでそんなふうに受け入れてるの!」
「別に特別なことではない。私は初めから存在してないのだよ」
「だからって今受けた生に縋り付いてよ!」
那奈、君は本当に優しい子だね。
泣かないでおくれ。
私が苦しいだろう?
あぁ、何を泣いているんだい?
祈、他の少年少女たちも。
それに勇馬…
「君はこの結末を知っていたのだろう?」
唇を噛んで泣くのを堪えている。
あぁ、そうだよ同情しないでくれ。
私が辛くなるだろう?
「185756回だ」
「それは?」
「この結末を見た回数だ」
「そうか、やはり輪廻は止まり循環し、繰り返していたのだね?」
「…」
いいさ、そんな申し訳なさそうにするな。
私は嬉しいんだ。
君がずっと私を肯定してくれたことが。
そうか、これが嬉しいんだね?
「あぁ、わからなかったことだ。知らなかったことだ…ふふ、皮肉だね…こうして消えようとしてるのに嬉しいのだから」
私目を閉じる。
「そんなこと言わないで!」
那奈?
どうしたんだいそんなに顔をくしゃくしゃにして、可愛い顔が台無しだよ。
「そんなこと言うな!私はあなた!あなたは私!そして、ようやくあなたと私は巡り会えた!その奇跡を台無しにしないで!」
「台無しじゃないさ。こんなにも暖かいのだから」
「私はあなたに会って伝えたいことがたくさんあった!救ってくれてありがとう!助けてくれてありがと!私の罪を背負ってくれてありがとう!いろんな感謝が私にはある!」
「そんなこと言ったら私は君のおかげで今を泣けるんだよ」
「うるさいうるさいうるさい!そんなものどうだっていい!死なせない!私の力で!」
全く、こんなわがままになってさ。
確かに君の力は息吹かせる力。
それを使えば私の体は再生する。
でもねそれより早く崩れていくんだよ?
「どうして!!どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!なんで!なん…でどうして…」
ありがとう。
私を救おうとしてくれて。
私を肯定しようとしてくれて。
「花鈴」
??
なに?それ?
「あなたにつけようと思った名前よ」
那奈が鈴がついたリボンを外して私につける。
「桜…花と鈴、あなたの苦しみと悲しみ、そして、これからの幸せにぴったりな名前だと思ったのに」
「やめてよそんなこと言われたら…苦しいよ」
ダメだよ。
死にたくなくなる。
これでいいんだよ。
これが正解なんだよ。
「花鈴」
誰の?こえ?
勇馬?
「生きたいか?」
なんでそんなこと聞くの?
なんでそんな直接的に言うの。
やめてよ願いを聞かないで…そんなこと言われたら。
「生きたいに決まってるよ!例え、人が世界が全てが私の罪を否定しても、私の罪を責めるとしても生きたいよ!…」
…
…
「君たちと共に歩みたかった」
崩れて消える。
あぁ、なんて…
残酷な終わりなのだろう。
「待って消えないで!お願い!」
消えてしまった私をどうにか掴もうと那奈は足掻く。
ありがとう…私の最初の友達。
「花鈴…花鈴……かりん…」
泣かないで…もう大丈夫だよ、もう1人で君は大丈夫だから
***
「かり…ん」
那奈が涙を流す。
祈も、シャルロットもシャーロットもヘレネアでさえ。
だが、彼女は言った。
「生きたい…なら」
俺は息を呑む。
「俺を信じろ!」
叫ぶ。
それは自分にも言い聞かせたものだった。
「ゆう…ま?」
那奈が俺を見る。
涙で崩れた顔を見てられない。
でも正面から言える。
「すべての希望も絶望も!俺に預けろ!」
「…うん!」
那奈が返事をする。
「そうだねまだ終わってないやりきってない!救うまでが私たちの役目だよね!」
シャーロットが笑う。
「全くお前とやってると俺までバカになりそうだ」
シャルロットはやれやれと言いながらも俺の胸に拳を当てる。
「やるぞ俺だって中途半端は嫌だからな」
シャルロットはそう言ってまっすぐ見据える。
「私も…彼女が救われてはいけない存在には感じない…こんな最後を認めてはいけない!」
ヘレネアは誰よりも熱い思いを持っていたんだな。
「彼女を私は救うって言ったんです。私が救いたいって言った!だから、私は諦めたくない!」
祈もか
「どいつもこいつも諦めが悪いな」
全員にお前に言われたくないと言われる。
俺は笑う。
「いくぞ!リ・ビルド!」
俊王が再び再生成される。
それは俺たち全員の思いを背負った絆の剣。
俺1人じゃ奇跡は起こせない。
俊王は奇跡の剣ではない。
ならこの力を与える先は違う。
「疾風!!!」
俺は叫ぶ。
「聞こえてるか、聞こえないが知らないが!お前は奇跡を起こす王なんだろ!ならたった1人の少女のために、たった1人を救うために、お前の奇跡を寄越せ!」
**
初代真実と相対していた疾風がふと虚空を見つめる。
「どうした疾風」
「すまんな希望を奇跡を願う声があってな」
「いいさ、俺も絶望は嫌いだからな」
呆気なく初代真実は引く。
それに対して疾風は嘆息を吐く。
「相変わらず素直じゃないなあいつも俺も」
疾風はそう言って、手を伸ばす。
「リ・ビルド」
凄まじいエネルギーの奔流が発生する。
それに耐えきれず、疾風の体が傷付く。
(重い…本当に重い願いだ)
決して今まで受けてきた願いが軽いわけではない。
決して今まで背負ってきたものが小さいわけではない。
ただ…
たった1人の為に背負った慟哭が、思いが感情が重い。
その力は分散されずにたった1人に注がれている。
「抜けない…」
ミリカル王の剣が重く疾風の腕を拒む。
そして、別の場所では…
「重い…」
勇馬もまた俊王を抜けずにいた。
凄まじいエネルギーは全てを超えて2人の体を蝕んでいた。
「何が…王だ」
勇馬は呟く。
「たった1人を救えなくて、奇跡なんて笑わせる」
疾風は呟く。
その重みで体が傷付く、剣にヒビが入る。
だが、それでもそれを受け止める。
「「たった1人を救えない王なんて笑わせる!」」
引き抜く。
「信頼と絆の剣『俊王の剣』!!!」
「希望と奇跡の剣『ミリカル王の剣』!!!」、
それは全てを超越した力を持っていた。
それに耐えきれないが、2人は即座にその奇跡を起こす。
勇馬は疾風に…
疾風は奇跡へと
体が再生成される…だが、すぐに…砕けていく。
「くっそ!まだだ!」
「こんなんで奇跡なんて笑わせる!」
別々の場所にいても疾風はその奇跡を認識できる。
だから自分を嘲笑する。
「救えない奇跡が奇跡であっていいはずがない!」
崩壊より生成が速くなる。
だが、それよりも崩壊も加速する。
「「王っていうなら!たった1人の少女も逃してるんじゃねぇ!!」」
だが、その崩壊は止まらない。
2人の体はすでに血だらけで骨はひしゃげている。
たとえ治る傷だったとしても、完全に壊れればその奇跡を実行できなくなる。
そこで
「2人でダメなら3人で」
歌が聞こえる。
祈の歌が2人の傷を肩代わりする。
「3人でダメなら4人で」
シャーロットが世界の法則を読み取り、その法則に沿って再生成を強化する。
「4人でダメなら5人だ!」
シャルロットが崩壊という現象を否定する。
それでも止まらない。
「5人でダメなら6人!」
ヘレネアが彼女の運命を干渉する。
だが、それでも足りない。
それでも加速し続ける崩壊に届かない。
「お願い!花鈴!6人でダメなら!7人で!」
那奈が再生を促す。
だが、それでも足りない。
「お前は生きたいと望んだんだろ!花鈴!」
勇馬が叫ぶ。
「それならお前が!お前自身が生きると足掻かなくてどうする!?お前が生きようとしなくてどうする!?お前が救われたいなら!お前も救われるために戦え!」
花鈴が目を開く。
「そうだな、そうだね…」
涙を流す。
「そうだ、私が生きたいんだ…それなら私が生きようとしなくてどうする?」
花鈴は手を握る。
「精霊よ、我が意に応えよ」
花鈴の本当の力。
地脈から生まれ、エネルギーの原初を司る者。
それは
『精霊』
の根本概念。
「お願いだ、私の構成する全てを!作り出せ!お願いだ!私は生きたいんだ!」
崩壊を再生成が上回る。
そして、現実が、現象が生まれ変わる。
…
**
あぁ、なんて綺麗なのだろうか?
あぁ、綺麗だ。
生命に豊み、緑が覆い尽くすライブ会場で私は仰向けになって笑っていた。
痛いだろそんな抱きしめなくても私はもう消えないよ。
ずっと私にしがみつく那奈を撫でる。
「本当に仕方のない子だ」
頬に水が伝う。
これが涙なのだろう。
あぁ、そうだこの言葉を言わないと…
「私を肯定してくれて、私を人間にしてくれて、ありがとう…みんな」
私は笑う。
そうこれは、赦されるものではない。
そうこれは多分ハッピーエンドじゃない。
これは…
私が生まれたただそれだけの話だった。
みんなに支えられて、まだ何も知らない私は今ここで産まれたのだ。
ちなみに作者の頭の中には祈の歌にメロディなんてないです。
と言うか音楽の才能がないので組めないです。
なので皆さんで補完してください。
もしも面白い、あるいはもっと別の何かを感じたのでしたら是非、ブクマ、感想、評価をしていただけると励みになりちょっぴり更新早くしようと勇気が湧きます。
また、更新は不定期になりますが、まだ物語は始まったばかりです102部目ですがね。
それではここまでの読了ありがとうございました!




