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禁域2

禁域2


なんでお前が…


お前達のせいで


俺にも生を寄越せ


もっと生きたい


私はまだ死にたくない


助けて


おかしい、ふざけるな



お前だけがなんで生きてる



**


「…甘かった?」


私は首を傾げる。

一体何が、勇馬の中であったのだろうか?


それ以前に一体何を彼は見ているのだろうか?


「そうだな、正確に伝えるなら俺の予想ではお前が歌を歌った時点で本体は無理でも無理矢理分体を認識できると思っていた」


それは一体、なんの話を…


「そう、今の那奈は全盛期の片鱗、足元すら見えないレベルにまで弱くなっている。だから」


その言葉に私は





一つの絶望…そして壁を見た。



「覚醒を果たしたお前ならいけると思っていた」


そう、私にとって簡単に超えられない壁…



超えることのできない…



「今から二つ…選択肢がある。戦うか逃げるか」


あれは私にとって簡単に超えられないもの。


「君がこの選択をする必要はない。君はまだ普通の人間として生きて死ぬ権利がある。故にこれを選んで欲しい…」


勇馬は口を開く。


「逃げろ」


その言葉に私は何を思ったのだろう。いや、思ってることは普通のことだった。




いやきっと普通ではなかったのかもしれない。普通の中でも至る過程が壊れてるのだらう。


私一つの身で叶えられるなら…



**



祈が選択を迫られている一方で


「ぐぁっ!」

「誰…うわぁ!!」


俊介はテロリスト達の制圧をしていた。


彼が相手にしたテロリストはこれで12組ほどあり、規模から考えて、今までの中に大きな組織があり、まだ全員捕えきれてないか、まだまだ沢山の組織がテロに参加してるか…あるいはその両方か…


少なくとも


「また交戦の音が聞こえる」


まだまだ参加してる組織は多いことだけはわかる。


「ここに一般人はいないから次に行くか」


俊介は地面を踏み締めて走り出す。現在、彼がいるのはビルの18階。向かいのビルまでの距離は軽く50メートルはある。


その向かいのビルまで跳ぶ。


窓が割れる音共に飛び出した俊介は空中に放り出される。


だが途中から失速し始めて高度を落としていく。


「勇馬みたいに限界は越えられないけど…」


息を吸う。


「空気を蹴るぐらいならできる!!」


ドォォン!



衝撃で辺りが軋む。

周囲のガラスは割れ、俊介はそのまま隣のビルに突入する。


「チッ新手か!!」

「くそっ、こんな時に…」

「くそ!退路はまだないのか!」


入った瞬間、目に映るのは複数人の男たちだった。

男達は必死に何かから逃げている。


次の瞬間、黒い一閃が男達を襲い…



絶命させる。



俊介は息を呑み武器を確認する。


(正直、まだ完全に強化しきれてない状態なら銃が欲しいが…ナイフ…しかないか)


ナイフに手をかけて警戒する。


3人ほどの足音が響く。


そして、それは現れた。


「シャルロット…」


俊介の呟きに歩いてきた先頭の男が反応する。


「なぜ、俺の名前を…あぁ、君か」


男…シャルロットは警戒を解いて俊介を見る。

俊介は油断せずにもう二人を見る。


一人はよく知っているヘレネアという少女。

そして、もう一人は


「あんたは…6賢者…の」

「やっほー6賢者、世界を担当してるだけでなく、シャルロットの姉、シャーロットだよ」


ピースをしながら自己紹介をする茶髪の少女だった。


「お前達は…」

「おっと、勘違いしてもらっちゃぁ困るよ…はぁ、」


シャーロットがそう言ったあと一気にテンションを下げる。


「ま、今回は君たちの味方でね。12組織の下部いや、改革と改変の手始めとして私たち…意味合いとしてはこの組織名はかなり間違ってるけど『セカンド』だよ」

「セカンド?」

「私達は疾風に言われてこの組織を立ち上げた仮のリーダーとしてこの私、シャーロットが勤めている」


…俊介は何からつっこめばいいのか悩む。


無表情で淡々と喋ってるのに声色が豊かであり、その時点でツッコミポイントと化し、それだけではない疾風が云々も俊介にとって聞きたいポイントである。


たが、それよりも


「なんでここにいるんだ?」

「あ、えーっと、シャルロット?」

「いや、姉さん忘れるなよ…確か…この辺りで何か面倒ごとが…」


二人とも戦闘で頭を切り替えており目的を完全に見失っていた。


「ずっと言いたかったのですけど私たちの目的はライブ会場の防衛と緊急時の即戦力としての行動が主任務だったはずです」


ヘレネアの言葉に二人とも固まる。


「ここって…」

「確か…ライブ会場からは…」


そんな二人にあきれて俊介は


「ここ2キロは離れてるぞ」


二人は目を泳がせる。


「なぁ、俺はなんでこんな奴に苦戦したんだ?」

「あの時はシャルロット様はちゃんと気を張っていたので」

「張ってないとこうなるのか?」

「まぁ、…はい」

「苦労してるんだな」

「わたしは良いんです…ただ後で疾風に怒られないか心配です」


ヘレネアの言葉に俊介は苦笑いをしてシャルロットを見る。


「信用して良いのか?」

「…さぁな。俺はこの世界を壊してしまった方が早いとはいまだに思ってる。だが、希望はまだあることも理解した。だから迂闊なことはもうしない」


その言葉を受け止めて俊介は力を抜く。


「なら、早く行ってこい」

「いいのか?」

「少なくとも俺よりお前の方が強い。それになんとなく、今の勇馬にはお前のような奴が必要に思えたんだよ」


俊介がそう言うとシャルロット達はお礼を言って去っていく。

残った俊介は…


「俺は弱い…」


悔いるように拳を握りしめていた。


「ん?…あいつらの言ってた場所はわかるのに…何だっけ?」


すこしの影響に疑問に思いながら。


**



雨が降る。


雪矢はその雨に反応する。


「雨?…おかしいな、雨なんて振る状況じゃないはず…」


それに気づけたからだろう。


雪矢はそれを理解した。


「誰だ!」


返事はない。


ただそれが通り過ぎたことにより雨が止む。


雪矢それを追いかける。


いや、追いかけてしまった。


それを見る。


全ての水が止まる。


そこにいるのは水のような青い髪の少女。


「さて、あなたは…殉教者とお見受けします」


少女は嫌悪の殉教者と対峙していた。


「ヒヒッまさかあなたから来るとは…水の『上位要素』だったかな?」

「私を知るなら手っ取り早いですね。最近の颯や四剣の巫女の暴走などはあなたが関与してると私は考えています」

「ヒヒッ、それはどうかな?」

「そうでなくても、私があなたを殺す理由はわかると思いますよね?」


殉教者の男は今、一人だ。

これなら倒すことも可能かもしれない。


故に…


「その話、俺も混ぜてくれないか?」


前に出た。

少女は意外そうな表情を俺に向けて、殉教者はわらっていた。


「あなたが出てくるとは正直思っても見なかったです」

「ヒッヒッヒ、中々に面白いことになったじゃないか」


男が動き出す。

それは俺たちとは逆方向に…


「しまっ…逃げる気か…」

「逃げられると思った?」


水が動き出す。


「水よ…我が意に従え」


嵐が巻き起こる。

いや、正確には違う、ありとあらゆる全ての水が刃のように弾丸のように殉教者を襲う。


あり得ないと思った。


だって、俺は俺以上に水を使える存在を知らなかった。


「ヒッヒッ…これは逃げられそうにないですねぇ」


…本当にそうか?


本当に俺はそう思うのか…


「ヒッヒッ、やはり感情を介入しない能力は私の天敵ですね」

「なら、早めに死んでくれると助かります。私も長時間地上にいるわけにもいかないので」


知っている。


知らないわけがない。


水が落ちてくる、槍となり…


「ちっ!この雨雲の中じゃ厄介ですねえ!」

「上だけじゃない…」


上下左右全ての方向から水の弾丸が無軌道に殉教者を狙う。


「ですが、取らせていただきますよ!!」


殉教者が少女の懐に入る。

そして、攻撃を…


「っっ!やはり…分体か…」


少女は水の塊に変わり宙を泳ぎ始める。


「いや、これもまた本体ではあるよ…ただ水の顕化として存在を変えたにしか過ぎない」


少女はそう言って空へ登る。


そして…


槍が降る。

いや、正確には弾丸のように放たれた水が落ちてきた。

周辺の地面を蜂の巣にしてもまだ降り注ぐ。


これが…いや、あれが…



俺が辿り着きたかった存在。


水の顕現にして全ての水の支配者。


『水の上位要素アークエレメンツ』水無月…。


なんで俺はこの女を知ってる?


いや、違う…そうじゃない。


知らない方がおかしかったんだ。


「くっ、やはり厄介ですね〜…正直勝ち目がないと言いましょうか…」


俺は深呼吸する。

そして、槍を握る。


「お前の相手はあの女だけじゃないぞ」

「おや、『要素エレメンツ』いや、お情けで称号を手に入れた擬ですか」


知っている…ただ、共鳴している。


俺は息を吐く。

多分、これを普段からやれと言われたらできない。

でも、今なら…


「我が下に還れ」


ただそう言っただけだった。

瞬間全てを理解したような全能感が溢れてくる。


なんでなんだろうか…


今まで…


「こんな雑魚相手になんで感情を向けていたんだ?」


その言葉で殉教者の顔色が初めて変わった。


「くそっ、力が…だが…」


殉教者は動き出そうとする。

だが、その足は木々に絡まれていた。


「くそっ!これだから水の要素は厄介なんですよ!感情を介さない、感情を示さない…ただ…」


水が落ちてくる。


「1000メートル」


さっきの少女の声。


それと同時に全身に圧迫感が襲う。

だが、それに対して俺は耐える。


だが、殉教者は…


「くそがぁぁ!!」


押しつぶされて死んでいた。


「終わったのか…」

「いいえ」


俺の言葉に否定の言葉を空から降り立った少女は言う。


「よく見て」

「あれは…誰だ?」

「知らないわただこの普通に見える男を依代として活動していたみたいね」

「てことは…」

「まだ本体は生きているはずよ」

「そんなことできるのか?」

「通常の手段なら不可能と私なら答えるわね…ただ」

「通常じゃない何かがあるのか?」

「さぁね…私にはできない技術だから私にはわからないよ」


そう言って彼女はこの場を去ろうとする。

だが、本当にそれで良いのか?


知りたいこと聞きたいことが…


「待ってくれ」

「なに?」

「えっと…」


俺の呼び止める声に彼女は振り返る。

その後の言葉を考えておらず少し目を泳がせて…


「髪色…さっきと違くないか?」

「あぁ、そんなこと?」


そう、彼女は今黒髪である。先ほどまでは水を想像させるような青色だった。


「これは水の概念的総合認識…だったっけな?なんか昔詳しい話はされた覚えはあるけどごめん私にも説明はできないかな」

「そ、そうか…それでお前は何者なんだ?」

「何者…それを君が聞くのか…水蓮 雪矢」


俺は息を呑む。

まるで全てを見透かされてるような瞳に身慄いすら感じる。


「やっぱり、俺はお前を理解できるんだな」

「記憶はないとは聞いてはいたよ。でも、私より私の生まれ正体、なぜ生まれたのか、そして、私は何者なのか詳しいはずだよ」


それは…そうだろう、何一つ記憶にも何もないが…直感的に分かる。


俺はこの少女に追いつくために生まれた。

そう思える。


「そもそも、君達の持ってる本を読めれば分かるでしょ?質問はそれだけ?」

「いや、もう一つある。お前は俺たちの味方か?」

「…どうだろうね。君の味方ではない。ただ、北条 勇馬の味方ではあるとだけかな」


それと同時に少女は消えていた。

何が起きたのかわからない。


でも、一つ言えることは…



雨が止んだ…


ただそれだけだ。



**勇馬side




「その選択に後悔はないんだな?」


彼女は頷く。


人は彼女をおかしいと言う。


でも、俺はそうは思わない。


目の前に傷つくものがない世界、そのために自己を犠牲にする。

それが例え敵であっても。


そんな思考はいたって普通に普遍的に存在する。


ただ多くはないだけだ。



誰だって自分のために生きるのが人間だ。


でも彼女は残った意識的な自己はアイドルをすること。


ただそれだけだった。


でも…


「なら、君は人を傷つける覚悟がある?」


俺は彼女を…北条 祈を戦わせたくはない。

それは根本的に彼女が戦闘に向いた性格じゃないから。


でも


「私も戦わせて…私は理想論だけじゃない!」


強い意志を感じた。

だから…


それが…


それは…



「なら、やろうか」


笑った。

久々に心から…


「その代わりもう戻れないぞ。一度戦えばもう退くことはできない。いざとなれば人を殺す選択なんていくらでもある…それでもだな?」

「うん、私は覚悟してる。例え私が望まない結果でも…それを…私は受け入れる」


やっぱり、良いものだ。

人の成長というものは見ていく価値がある。


「祈、お前の性質は分かるな?」

「うん、さっきやったからね」

「なら、お前は那奈の力を解明してみせろ…俺は戦う」


ガシャドクロとの戦闘に再び移る。

このガシャドクロもまた分体の一つと言える。


その性質を理解すれば簡単な話だとは思える。


だが、那奈が、いや祈も…自分がどれだけ埒外な存在なのか理解する必要がある。


「完全にパワー負けしてるか」


自分の感情を少し取り戻している。

なら、これが使える筈だ。


「感情の剣」


名前はわからない。

でも、記憶を失って…いや、感情を失ってからこの剣の存在を知った。

俺の中に眠るとかではない。


誰かから支援を受けてるような力だ。


ただ一つ言えることは感情を糧にこの剣は力を増大させる。


ガシャドクロに剣を振るう。

だが、その剣はガシャドクロを切り裂くことはない。


「やはり、差は歴然…か」


正直、勝てる未来が浮かばないのが本音だった。

俺の全盛期ならいけたかとか言われてもいや、無理だろバカじゃねぇのとか言うけどさ。


でも、今の那奈勝つことはできるはずだ。


ガシャドクロをどうにかする術が見つからない。


自分の体など羽のように吹き飛ばされる。


「はぁ…いってぇな」


攻撃を弾く。

どうすればいい?


正直これ以外の分体を認知しなくてはならない。

だが、今の祈じゃ…


いや、そんなことを考えてる暇はない。


今の認知じゃ俺の力も全然引き出せない。


「それでも…傷つけられないわけじゃない」


ガシャドクロに傷を与える。

だが、それと同時に左腕の感覚が失った。


左腕を見ればそこには腕はなくなっていた。


痛みが走る。

それも激痛で動悸が走る。


だが、頭は冷静だった。


「勇馬!今歌を」

「今は歌うな!まだ、お前の力を消耗させるな!」

「で、でも!」

「これくらいなんとかする!」


超速再生を持ってない俺にこれを直す術はない。


自力なら。


透明の液体の入った瓶を取り出してそれを自分に掛ける。


「っっ!ぐっぁ!」


凄まじい激痛と拒否反応の末に左腕が再生した。

汗が大量に出てくる。


「悪いな、この瓶一本で俺の命100個分は補えるんだ」


嘘をついた。そんなには補えてない。

いや、今みたいに腕の一本なら100本くらい補えるけどさ…精々、即死を防げるのは25回と言ったところか…時間を掛ければ再生するから死ぬことはないけど、悠長なこともできない、あと3本、残機にして100回…やるか。


踏み込む。


ガシャドクロの攻撃を避けていき、懐に入る。


だが、次の瞬間にはガシャドクロの腕が追いつく。

ガシャドクロの体とは離れている。


良くない状況と言える。


分体を倒す必要はあるが、この一番弱い分体にすら勝てる見込みがない。


剣を使って受け流す。

そして、そのまま腕の骨に乗る。


振り払おうと振り回されるがなんとか離れないようにしがみつく。

そうしてるともう片方の手が押し潰そうと迫ってくる。


「早く…」


登ろうと走り出すが…


空中に放り出される。

この状態で回避が効かない。


両手で潰そうとガシャドクロは腕を広げる。


一つ目の残機がこれで…


「いや、まだだね」


空中を歩行する。


「空を飛ぶ技術くらいならいくらでも使用できるんだ」


強力な力ではなく経験や技術が大事な空中歩行や飛行術は今の俺には相性がいい。

そして、今ここでそれを見せる時。


「こんなドクロで唯一、見える頭部の中の光はなんだろうな!」


迫る。

そして、目から中に入ると…


「無数の骨兵士かよ」


スケルトン或いは骨兵士とも呼べる存在達が大量に待ち構えていた。


「ちっ、今の俺のエネルギーじゃ数に押し負ける」


基本的に火鎚とかを引き合いに出すが、あいつらは基本的に強力なエネルギーの膜と常に膨大なエネルギーが体に負荷を与えているために肉体がそれに耐えられるように作り変わっていく。


結果的にそこらの兵器じゃ通用しなくなる。


だが、今の俺は違う。

完全にキャパオーバーの力の結果バランスを崩してボロボロに劣化した体は強く変化することはなく弱々しいものとなっている。

それでも、魂が肉体を支えていれば…と考えるが…今の弱くなった俺の力だと…


「うだうだ考えるのやめるか…」


そう、今更関係ない話だ。

ただひたすらに戦うしかない。


骨の兵士を蹴散らしていくが…


後ろから槍が心臓を貫く。


「っっがっっあ!ってぇな!」


即座に槍を抜いて骨を砕く。

すぐに再生するが…


「一つ目…」


頭から真っ二つになる…


即座に再生して反撃に移る。


「二つ目…」


鎚により体の大半が消し飛ぶ。


即座に再生して骨を砕いていく。


「三つ目…」


四つ…五つ…六つ………








24…



「まだ…出てくるのか…」


どんどんと湧き出す骨の兵士たちうんざりする。


「こぉの!」


骨を砕く。

そして、一刻も早く…光を…


矢が刺さる。


それは致命傷ではない。

だが、一本ではない。


「あ…」


体から力が抜ける…


「一気に三つ…」


落ちていく。


これじゃぁ、瓶を取り出す余裕も…


「なんてな、この水は別に使用するのにわざわざ掛ける必要はない!」


願うだけでいい。


体が再生していく。


「もっとだ…」


骨を切り裂く。

群勢との戦い。


体が傷つき、再生し、殺されて、再生して…壊す。



「うぉぉぉぉ!」


まだ、終わらない。


「おかわりか…」


延々とつづく戦いの中で希望はない。

勝ち目なんて…


気がつけば…ガシャドクロの外に放り出されていた。


「いつの間に…」


腕に潰される。


内臓も骨も全てが圧縮されて嫌な音が響き、俺はまた死んだ。


だが、まだ再生する。


「あと、10回か…まだいけるな…」


剣を再び構える。

走り出す。


骨を砕く。


「だんだんと慣れてきてね!」


まぁ、ガシャドクロの骨もすぐに修復されて反撃に移るわけだが…。


首が飛ぶ。


気がつけば持っていたガシャドクロの大鉈によって俺の首は吹き飛んだ。

首は蒸発する。


それと同時に首は元通りに胴体と一緒になっていた。


「危ねぇ、今のは流石に肝が冷えたわ」


ボロボロの服をエネルギーで補強して服を顕現させる。


「この技術は無駄な技術に見えるかもだが、実際、服の強化だからな…舐めんなよ」


舐める相手なんていない。

でも、まだ終わらない。


大鉈が出てからは防戦一方…いや、何もできずにいる。


「これであと一つ…」


嫌な汗が流れる。

これで終わりにするわけにはいかない。


踏み込む。


鉈は鋭く、剣で弾こうとしても剣ごと逝かれる。

なら、避け続けるしかない。

でも、そうしたら攻められない。


「なら、被弾覚悟でやるしかない!」


走り出す。

振り回される鉈を剣で受け流す。


てか、重い…流しきれない…でも…


突き抜ける。

剣が折れても戦える。


剣から手を離してそのまま踏み込む。


ガシャドクロの中に入り、その光まで突き抜ける。


だが…


胸に槍が突き刺さる。


中の骸骨に槍を突き立てられる。


あと少しであの光に手が届く。


このまま…落ちる…


必死に手を伸ばし、ガシャドクロの外に落ちていく…そんな時だった。


目に映るった。

それは太陽に思えた。



俺は息を呑む。



知らない…


知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない…



でも、


知ってるだろ北条勇馬。


炎が全てを飲み込む。


そして、そこに立っていたのは黒と赤の髪が入り乱れる男。


「よぉ、勇馬、手伝ってやろうか」


爽やかな笑顔でその男は俺にそう言ってきた。


なんとか再生した体を起き上がらせて、その男を見る。


誰か…いや、俺は知ってるはずだ…。



そう…彼は…


「一条…烈」


男は驚いた様子で俺を見ていた。


「俺を覚えてるのか?」

「いや、覚えてない」

「え?んじゃなんで俺の…ってそんな場合じゃないか」


飛んでくる攻撃に烈はひらりと避ける。

当の俺は…


切られていた。


「勇馬!」


流石に目の前で真っ二つになった様子に祈が反応するが…


「あれ、君は…あぁ、なるほど新しい子かなら心配だよな、大丈夫だよこいつはその程度死なないよ」

「いや死ぬわ!」


俺はすぐに起き上がる。


「ほら、生きてる」

「今のはお前の…てか、やっぱり俺の知ってる存在なのか烈」

「おーそうそう、俺の力は活性…正確に言うなら熱であり炎であるって言ったところだ」


何故か知らないが、こいつの能力のおかげで俺はすぐに戦線復帰ができた。


「さてと、力を借りたいか?」

「悪いが俺1人…いや、2人じゃ無理だ」

「わぁってる他に出しゃばれるやつが来るまでの間一緒にやってやるよ」


俺は烈と一緒に構える。


「っと、その前にほら嬢ちゃんこの本を受け取りな」


そう言って烈はとある本を投げる。

祈は慌ててそれを手に取る。


「あれは…失われた神話…」

「ん、あーアカシックレコードのタイトルか、まぁそうだな勇馬はあれを読んだことあるのか?」

「いや、殆ど読めていない」

「だよなーむしろ読めてたら引いたわ」

「それは…火鎚に」

「あいつはボコした、これ以上話してる暇はないぜ」


そのようだ。

ガシャドクロが動き出す。


「一つ言うが残念ながらあの光は弱点じゃない」

「わかった」


二つの炎が舞う。



**



綺麗と感じた。


美しいと感じた。



闇を煌めく二つの炎が縦横無尽に舞う。


「うぉぉぉお!!」


勇馬の剣から無数の炎が舞いガシャドクロの動きを止める。


「相変わらずお前の炎は攻撃に使いづらい!」

「うるせぇなぁ!ただの熱であり火なんだから当たり前だろ!」


烈の刀がガシャドクロの腕を切り落とす。


『ーーーー!ーー!ーー!ーー!!ーーー!ー!ー!ーーー』


ガシャドクロから叫び声が聞こえる。


何人のも悲鳴が折り重なったような気色悪い声。

私は…私、祈の今することは…


「この本を読み解くこと…」


見た瞬間…


「おぇぇぇぇぇ!!!!」


全てを吐き出す。

気持ち悪い、何コレ?


戦争?


何コレ?


は?


神?


何?


無数の使徒?


死人…みんな死んでる…。


ここは…



荒野。


そこに1人立っている少女がいた。


無数の死人の上に1人立っていた。


その背後には無数の呼び声を背負って。


「あなたは?」


少女が桜色の髪をした少女が私に話しかける。


「那奈…さん?」

「…?」


不思議そうに私を見ている。


「誰?」

「あなたの名前…」

「私の?私は…『ーーー』」

「は?本当にそれが?」


その名前は聞こえなかったのではない聞き取れなかった。


いや、正確には無数の名前が折り重なっている。


ゆうき、ひめ、こうや、けんと、アズール、ゆうと、かずみ…



無数の名前が聞こえた。


「あなたは…何で?」

「え?」









何で生きてるの?



目の前にいる少女から血が噴き出る。

瞳から光が失い、私の首を絞める。


「っが!…や、…やめて…」

「死んで、ねぇ、何で私に頂戴、その命、その人生」

「っっ!ぁ…」

「羨ましい、欲しい、何で何で?何で?何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で…


私にその生を寄越せ」


意識が…消えて…


「呑まれてんじゃない!」


現実に引き戻される。


勇馬に頭を叩かれて今いる現実を見る。


「お前が何を見たか知ってる」

「…うん、それって」

「那奈の本性だ」

「でもあんなに優しくて…」

「分かるはずだ…もっと深く知れば本当の感情が」


勇馬はそう言って再び戦う。


「本当に拘束以外の使い方が分かりづらいな!」

「むしろのこの力で良く拘束ができるな!」


2人で戦っている。


「あ、そうだ嬢ちゃん…あれが剣と呼ばれる理由もちゃんと考えなよ」

「那奈さんが…剣?」


対極に見える。

でも、一体何が…



再び本を読む…


頭が痛い…次は一体…




「おめでとう君は巫女に選ばれた」


これは記憶…でも情景が曖昧で那奈さんしか見えない。


「聖院の奴らよりも早く巫女として選ばれたんだ!」

「お前は天才ユキナに勝ったんだ」

「お前は誇りだ」

「何でお前が」


那奈さんは何も言わない。


「これは私の意識ではないです」

「え?」


明らかに私に話しかけていた。


「これはただの記録にしか過ぎません」

「…」

「いつしか、この記録を見る誰かのために…」


那奈は手を伸ばす。


「元来の私は誰かの期待に応えたいなんて考えていませんでした」


情景が変わる。

自然豊かな場所。


「ここは陰陽師の隠れ里です。ここで私は生まれて平穏な日々を過ごしてました…戦争なんて他人事で」


那奈さんと思われる女の子がガキ大将をして周りを引っ張って遊んでいた。


「元の私は今のように大人しいとかそんなものではなくやんちゃで明るい元気な女の子でした」


確かに、印象が全く違う。


「あれ、他の人の顔は?」

「忘れました…私の自己認識の上で成り立つ存在であり、私の記憶にしか記録されない存在なのでアカシックレコードにも記録されません」

「そのアカシックレコードってのは?」

「そんなのも知らずにアカシックレコードにアクセスしてるんですか?」


呆れたように私を見ている。


「アカシックレコードとはこの世の全てを記録し、未来を予測する究極の世界装置。端的に言えば世界で最も当たる預言書です」

「当たらないことも?」

「ありますよ…いえ、正確には預言書によって無数の予測と予言が記されています。これまで記録した情報の上に成り立つために当たるとも言えます。今の私もまたアカシックレコードに登録された擬似人格の一つ」


それが…アカシックレコード。


この世の全てを記した究極の世界装置。


私は息を呑む。


規模がデカ過ぎて頭が理解を拒んでいる。


「話の続きをしましょう。私と言う禁忌の成り立ちの続きを」


那奈さんは先を歩いていく。


そうしていくうちに景色が変わる。



「私にはいくつもの変化が訪れていていました。まず最初に生贄」


目の前には那奈さんが吊るされていた。


「あれって…」

「大地の力を私に取り込ませて器にする…それによりこの隠れ里が成り立ちました…それが私が地脈と共鳴できる理由であり、龍脈を自在に操れる理由」


苦しむ様子の那奈さんが目に映る。


「あぁぁぉ!いだい!助けて!やめでよ!ねぇ!お母さん!お父さん!みんな…やめで!いだいよ!いだいだいだい!!あぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


私は嘔吐する…。


「もちろん、人の身に地脈の器にするということはその人を殺すことを差します。人としての矜持も人格も壊して現人神にする。それがこの里の秘術」

「こんな…こんな残酷なものが許されていいの!?」

「残酷?面白いことを言いますね。これはこの時代の世界にはありふれた結末であり、流れです」


これが…普通?


これが?


「はい、この世界は人々が生きるには辛い世界でした。たった一つの神のせいで」



**



「おいおい新しい分体が出てきたぞ…」

「あれは…龍…いや、…」


勇者は息を呑む。


目の前にいるのは竜?いや、龍?


否…断じて否である。



そこにいたのは力そのものが龍の形をしたものだ。


落雷が起きる、雷鳴が支配する。


世界が揺れる。


大いなる力の前にひれ伏すしかない。



彼が相手するのは世界なのだから。


「ふざけてるだろ?」

「今の烈の方がふざけてるだろ」

「はは!違いない…それでどうする?ガシャドクロはともかく、あれはキツイぞ」

「確かに」


海が生まれる。


火山が噴火する。


世界は揺れて彼らを襲う。


ちっぽけに水を放つ?火を起こす?


そんなものは無意。


ただそこにある災害はちまちまと戦うなんて洒落臭い真似を消しとばして、ただ羽虫を潰すように勇者たちに襲いかかる。


だが、そこにいるのが…




炎でなかったら決着は着いただろう。



海が蒸発する。


火山はそれ以上の熱によって消しとばされる。


「さてと『上位要素』の力を見せてやるかな」


災害を遥かに凌駕する炎。



そんなものは彼の称号としては不十分である。



炎を否定するものは全ての熱を背負って龍の前に立つ。


勇者もまた立ち上がり、2人で龍と髑髏に立ち向かう。



**



「それが私の生まれ」


目の前にいるのは誰だ?


感情のない人形が歩いていた。


人形はまるで今まで通りに動いている。


だが、私には分かる。


そこに




「感情がない」

「そう、あれは私の抜け殻に取り憑いたものであり私を真似たもの…いや、正確には今の寺等院 那奈の人格の大元です」

「嘘…でしょ?」

「禁忌とは人間にあらず者…正確には世界からかけ離れた者達の総称です。ですがまだあれは禁忌にはなっていない」


目に光がない。

まるで人形のように笑って私を見ている。


真っ暗な闇が私を支配する。


吐き気がする。


こんな悪夢が現実にあったのか?


こんな邪悪があるのか?


なんて恐ろしいものが平然と語られているのだろうか?


「この肉体はとても相性が良かったですね。やがて人形は形を成した」


人間がいた。



人間のフリをした何かが村の長にいた。


あれは、気になったことは全てした。


「時に人を殺しました。理由は…語ってくれてますね」

『どんな感情を見せてくれるの?ねぇ、教えてよおじさん』


目をくり抜き、爪を剥ぎ、歯を抜き、鼻や耳を削ぎ、指を落とし、愛するものを殺し、腕を落とし、足を落とし、そして命を殺した。



「私は人の感情を知ろうと殺し、奪い、壊し、癒し、慰め、消して、脅して…人を実験台にして様々なことを学び、そして里の長になりました」


こんなのあり得ていいのだろうか?

こんなのが、本当に救われるべき人間だと言うのだろうか?


今救おうとしてるのは、この世の悪意を煮詰めても辿り着けない、純粋な光であり、悪である。


「その結論はあなたの感想ですね。もちろん理解はします」

「こんなのが許されて…いいっていうの?」

「許されてます。少なくともこの里では」


吐き気がする。

頭痛がする。


目の前が真っ暗になる…



「はぁはぁ…何なの?何なのこれは!私の見てるものは…本当にあなたのものなの?」

「はい、私の記憶であり寺等院…いえ、寺院 那奈の記録です」


絶望だ。


それは絶望でしかなかった。


「私には二つ目の変化が訪れました」


そこに映るのは死体だった…もう既に殆どが白骨化しながら玉座に座っている。


「これは…」

「私です」

「え?」


その死体は動き出すことはない。


「死んだ…の?」

「いえ、地脈は死ぬことはありません…ただ器が限界を迎えて朽ちているだけです。ただそれだけでは終わらなかった」


声が聞こえる。



『お前のせいで』

『こっちに来い』

『お前がいなければ』


あぁ、あれは今まで那奈が殺してきた人達だ。


「それがあなた達が言うガシャドクロ…龍の骨の成り立ちです」


巨大な骨が里の人間を殺して食べていた。


その光景に私は唖然としていた。


「怨念が私を支配して、生命を殺していきました」


人を食べて、殺して、踏み潰して…



「笑ってるの?」

「はい、その当時はひどく楽しかったみたいですね」


淡々と語る那奈に私は恐怖を感じる。


「ただ、力は長く続きませんでした」


骨が砕けていき、やがて崩壊していく。


そうして里に平和が訪れる。


「死んだの?」

「いえ、ここに」


そこには巨大な桜の木があった。


「これが三度目の変化です」


**


桜が咲いた。


「一体何が…」


炎が呟く。


そこにあったのは桜の木だった。


「ま、まずい!烈!離れろ!」


勇者の反応は早かった。

美しい桜の木はその瞬間には血に染まる。


「な、何が…」

「その桜の花弁は毒だ!」

「通常の毒なら…効かないだろ…」

「あれは体を壊す毒じゃない、魂を壊す毒だ」


そう、あの桜は生き物を殺すためにだけの生物兵器。


触れたものは壊れて死ぬ。


そんな毒を辺り一帯にばら撒く毒の巨木。


あれこそ災害そのもの。


「燃やすか?」

「燃えるならそう指示してたよ」


そう、あれは木ではない。


一つの生命体であり、その一つの形であり、骨である。


「ーーー!ーーーー!ーーーー!ー!ー!ーーーー!ーー!ーー!」


桜の巨木から鳴る…無数の怨念。


「本格的にやばくなってきたな…」

「朗報というか悲報言っていいかい勇馬」

「なんだ?」

「あと一つ分体が残ってるんだわ」

「……ふぅどうするか…」


災害が2人を殺しに行く。



**



「やがて私は変化しました」


桜の木の下に少女がいた。

それは那奈さん…いや那奈にそっくりな桜色の髪をした少女。


彼女が何をしたのか?


簡単だった。


外敵を全て駆除していた。


残酷に残忍に笑っていた。


それに対していずれ里のもの達は恐れて那奈を


「あはは、変なの?君たちは私のおかげで生きてるのに」


ノイズが走る。


「あ、申し訳ありません。私以外の記録は不完全なのでノイズが走ることがあります」


そうして敵対するもの全てを殺して行ったら気がつけば、那奈以外の存在が村から消えていた。


桜の木は気付けば消えて1人の少女が笑っていた。


ただもう何も言えない。


もう、吐き気も感じない。


ただ怖い


目の前にいるのは本当に人間なのか?


「ねぇこれは?」

「4度目の変化です…これが私の全てのルーツですよ」



**


勇者達は息を呑む。


「なぁ、今見えたか?」

「こっちの炎に触れるまで気づかなかった」


勇者達の目の前にいるのは幼い子供だった。


ひたすら笑顔だけが網膜に焼き付き気がつけば勇者達の首に刃を突き立てる。


「まじやばいって強いとか弱いとかならいいけど、これは殺しに来てる!」

「それだけなら本当に良かったな!」


純粋な戦力としての数え方しかされてない炎を否定するものは別の強さを見せつけられて焦る。


「とりあえず面で」


勇者が炎を撒き散らすが少女は巧みそれを掻い潜る。


「いつの間に…」


意識なんてできない、気がつけば少女が刃を突き立てる。

だが


「俺を忘れてんじゃない!」


炎が勇者を守る。

強いねぇ…おっとこれは本音が…。


「勇馬!不用意にやるな!隙をつかれるぞ」

「それはこっちのセリフだ!」


今度は勇者が助ける。


「あとはこれらを倒して本体を引きづり出すだけなのに」

「それがひたすら遠いな」


2人はこの状況に冷や汗をかく。



**



壊れる日常の中で那奈は別の里の陰陽師に保護される。


「やはり素晴らしい逸材だ」

「聖十院の物にも引けを取らない」

「新たに寺等院の名を与えよう」

「素晴らしい力だ!」

「君が次代の巫女である」


そこでは彼女にかける期待の声が多くあった。


那奈は笑うだけだった。


期待に応える意思なんて…


「…あ」


ようやく見えた。

感情が…


「私は巫女として選定された」

「ねぇ、嘘…吐いたでしょ?」

「なんの話かな?」


那奈は巫女となり戦場に立っていた。


無数の羽を持つ化け物達を相手にしながら前線で立ち続けていた。


「ふふ、お前を殺せばいい…お前がいなければ!」


那奈はひたすらに羽を持つ化け物達を殺していく。

それは何かに駆られるように、それは何かに怯えるように…。


見えてきた那奈…いや、那奈さんの感情が…。



そうか、ずっと私は彼女を拒絶していた。


だから見えてこなかった。


「死んで!死んで!」


ずっと那奈さんの頭の中に響く音…いや、声。


それは…



「なんでお前生きている」

「お前だけずるい」

「お前も死ね」

「なんで我々が死ななくてはいけない?」

「死んで!死んで!」

「お前を殺せばいい」

「お前さえいなければ」


怨念だった。

彼女が背負ってきた苦しみと、殺したきた者達…死んでいった者達が彼女を縛り上げている。


「俺たちにも戦わせろ」



那奈の…いや、那奈さんの心が死んだ瞬間だった。




**


「出てきたぞ!本体が!勇馬!」

「おう、わかってる!」


見えた。


巫女服を着た那奈の姿が…それを貫く!


走り出す。

花弁を避けて、掻い潜っていく。


遠い。


無数の攻撃の中で走り抜けろ!

負けるわけにはいかない!


抜けていく。


そして、見えるのはその先にいる那奈。


「お前をここで…」


ニヤリと笑う。

それは俺ではない。


那奈の口が開く。


「ーーーー」


ば、バカな…これは…



腹が貫かれる。


血を吐いて俺はその場に倒れ伏す。


「違う…これは分体だ!」

「バカな!那奈の分体は四つのはず…いや、待てまさか…」

「最後に那奈のこの力を見たのはあの時期だ」

「そうかよ…この分体はあの日の那奈ってことか…」



俺立ち上がる。


「すまないな、烈、全力でできるか?」


烈は大きくため息を吐いた。

そして、笑った。


「いいんだな?」

「お前の本気を見たい」

「ほんとうに記憶がないのか疑わしいぞ勇馬」

「ないさ、でも知ってるそれだけだ」


炎が消える。


烈は剣をいや…


刀を構える。


「ふぅー久々だから怖いな…六色七斬流」


静寂が訪れる。

まるで嵐の前の静けさとも言うこの状態に俺は息を呑む。



六色七斬流


これは要素達が作った技であり、今ではその基礎からさまざまな技へと昇華した技術。


それに誤りがある。


確かに要素…が作ったものだ。


しかしそれは…今目の前にいる。


「原点、真・炎の型」


上位要素が作り上げた技。


「坂巻」


弾けた。


いや違う。


圧倒的な炎が全てを焼き尽くさんと渦を巻いて舞い上がる。


少女が炎を掻い潜り烈の首元にまで刀を振るう。


もう助ける必要はない。


「祈、お前の選択を俺は尊重する」


見てるだけだ。

この戦いは祈を守る戦い。


分体を本体が出てないタイミングで倒したところで意味はない。

正確には色々と違うが今回は特に意味が…


寒気が走る。



「焦土」


「獄炎」


「烈火」


「炎獅子」


烈が少女と龍を追い詰めている。

そして…



領域テリトリー展開、そして超越者の境地…究極!」


隔離空間を作り出す。

俺は目の力を利用して中を見る。


そこは真っ暗な世界。


「幾万幾億の時を流れ、その光は熱を失う、その光は熱の象徴である、我が世界における光よ、一つになれ!全ての熱は我と共に!『永劫を夢見た荒野』」


隔離空間から炎が吹き荒れる。


そして、この禁域は炎の海に沈む。



「って殺す気か!!」

「これが本気なんだから言っとくがこれでも被害は抑えた方だぞ」

「そりゃぁ領域がなければ周囲一帯蒸発するほどの熱だっただろうけど…」

「逆に言えば今のを使わないと分体を一つを殺すことができない」

「まぁでも」


俺たちが向く先には復活し始めている分体達の姿、てか…


「全部巻き込んだのか…」

「一応な」


これで少しの時間稼ぎにはなるが…


「烈後何回?」

「うーん今のなら…まぁ、100回は余裕だけど…もっと大きなのはできないな」

「それは錆び付いてるからか?」

「んーそうとも言えるし違…」


咳き込む音に俺たち二人は振り返る。


そこには吐いている祈がいた。


「おかえり」

「はぁはぁ…ねぇ、勇馬…」

「なんだ?」

「本当に那奈さん…ううん那奈を救うべき存在だと思ってるの?」



その質問に俺は最初に答えることはない。

それを決めるのは俺ではないから。


だから…


「まず君の回答は?」

「私は彼女をこのまま…死なせてあげることが正解だと思う」


この回答に本来の北条 勇馬は何を感じるだろうか?


いや、もう既にそれを知ることはできる。


「かもな」


それが俺の回答だ。


「え?」

「どうした?否定して欲しかったのか?」


祈は考えて首を振る。


「わからない…私には…答えは出せないよ」


多分分かっていた。

だから祈を逃がしたかった。

那奈の過去を知り正体を知る過程は何よりも残酷なのだから。


それは那奈に限った話ではない。


俺だってそうだ。


だから残酷な何かを背負うことがない少女に見て欲しくなかった。


でも、


「一ついいことを教えてやる、俺もようやく理解したものだ。この本、アカシックレコードは何だ?」

「この世で最も当たる預言書?」

「なら分かるはずだ。お前が見た嘘を」


言いすぎたかもな。


頭痛くなるな。

たくっ、あんまり話せないのもきついな。

情報を隠すつもりはないのだけど…。


「そろそろ、でしゃばりが来る頃合いだな」

「てことは烈は帰るのか?」

「まぁ、そうなるな…もしかして寂しいのか」


ニヤニヤと俺を見てくるが俺はため息を吐いて首を横に振る。


「たく可愛げないな」

「そんなものだろ」

「まぁいいやもう少しの間力を貸してやるよ」

「助かるよ」


そのまま烈はこの場を去る。

貸してくれるねぇ、なるほど…全く完全に俺の能力についてあの男は理解してるみたいだな…


「さて、ここからが本番というところか…」


だんだんと分体が形を取り戻す。


減ったのは少女型のみ、となると不意打ちの危険性は無くなるが、ただそれだけにしか過ぎない。


ガシャドクロが形を成す、桜の木が咲き誇る、龍が轟く、そして那奈の形をした何かが動き出す。


抑えきれない、圧倒的な戦力差。


だが、それを覆すのは…



黒いエネルギーが辺りを包む。

力の流れが変化して、俺への攻撃が全て逸れる。


「よお、勇馬。大変そうみたいだな」

「…君は」


目の前に現れた男を俺は知っている。

ただ誰かわからない。


でも、わかる。


そう、彼の名前は


「シャルロット、そしてシャーロット最後にへれネアか?」


シャルロットの後ろにいる人も含めて聞く。


「そうだが、なんか俺の知ってるお前じゃないな」

「そうかな?私的には過去にこんな状態の勇馬を知ってるけど」

「あのー私はこの方についてよくわかないのですが…」


へれネアと勇馬には特に関わりはないはずだからその反応は当然だろう。


とりあえず


「力を貸してくれるんだな?」

「今はな」

「私はいつでも」

「シャルロット様がやるのでしたら私も」


さてと、ここからが正念場だ。

さっきのあいつとは違って戦力的はダウンしてるがどこまで喰らいつけるか。

随分久々に書き終えました。

展開を考えていく中で表現と言葉選びに悩みました。


さて、結構中途半端になってるので次も禁域3へと続きます。

もう少し浅く終わらせようか考えましたがここが深掘りポイントだと思い書かせてもらいました。


テンポが悪いかもしれませんが面白いと思って頂けたら嬉しいです。


作品上かなり複雑になり始めてるので気になったことや疑問があれば明かさない系やストーリー上関係ない、私の書き方についてや物語そのものの良し悪し以外ならコメントしていただければ返信or輪廻メモ帳でお答えできるかもしれません。


最後に評価、ブクマしていただけるとやる気と元気がアップします。

今後ともよろしくお願いします


よくよく考えたら祝100話!?

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