十五話
「兄さん!!」
近くで叫ばれる大声に、強制的に意識が目覚めさせられる。
あの場所から、戻って来たのか。
「う・・さい」
舌がうまく回らない。
さっきまで気絶していたからだろうか。
と、思ったが、すぐに違うと気づく。
多分、さっきまでは、イキに取り付かれたエマに殺されかけてたところだ。
あの場所でのライリンの言葉を考えれば、ライリンが止めさせた。と見るのが妥当だろう。
・・・・今ならわかる。なぜライリンがわざわざ妨害して、その後助けたのか。
まあ、そんなことは後回しだ。
現状の僕の様子だけど、まず身体が動かない。
血が巡ってる気がしない。
「だ、大丈夫?」
キアが顔を青くしながら聞いてくる。
「余・・裕だね」
ああ、余裕だ。
余裕だった。
少し前までなら、ここで喜んで死ねるぐらい、余裕だったんだ。
でも、あのバカ女のせいで、余裕が、無くなりやがったんだ。
だって、分かってるから。
ここで、僕が死ねば、きっと、繰り返す。
何度も、何度でも。
結果が分からないのなら、僕は、他人事で居られた。無関係で死ねた。
はぁ、本当に、やってくれやがる。
「ねぇ兄さん、死なない・・よねぇ」
ああ、死なないさ。死ねなくなった。
もう、顔もうまく動かせないから、一つだけ、たった一つだけキアに伝える。
「大丈夫」
言い終えると、ぼやけた視界の中で、キアが頷いた気がする。
「分かった」
きっと、気のせいじゃあないはずだ。
だから僕は、安心できる。
安心して、変われる。変えれる。
だから、最期の仙術だ。
『廻典・終わりと始まりの可能性』
・・・・バカ女が・・