くろとしろ、あかとあお
昔も昔、とある村で双子がうまれました。
片方の子どもは黒髪で蒼い目をしていて、もう片方は白髪で紅い目をもった子どもでした。
温かい笑顔、心のこもった贈り物、自分に向けた愛情、そんな物を少年達は知りません。
ただ、自分があいされてない事を少年達はよく知っていました。
独ぼっちな世界で少年は何も感じませんでした。
ある日、村に少年と同じ色をした少女がやって来ました。
少女は少年を見たとたん抱きしめ、村人に向かって怒鳴りました。
「nanikore!! garigarizyanai!! omaerakonnnatiisanakoninanisitaaaaaa!!!」
抱きしめられた少年は残念ながら少女が何を叫んでいるかわかりません。
ただ抱きしめられたら温かく涙が出る、と言う事しか分かりませんでした。
少女の言葉は村人にも分かりませんでした。
なので村人は同じ色の少女と少年に対して、今まで通りに接しました。
外の世界から来た少女はどんな時も少年と一緒でした。
そしてどんな時も少年を庇い、少年に笑顔を向けました。
少年は不思議で仕方ありませんでした、なぜそんな事をするのか。
しばらくして言葉を覚えた少女は、笑ってこういいました。「こどもはおとながまもるものだから」
少女は少年に様々な事を伝えました。
自分は少年よりもずっと年上だと。
自分の世界でその髪は普通だと。
その宝石のような目も綺麗で大好きだ、笑った方がかわいくて好きだ、嫌いになったりしないと。
大丈夫、もうひとりぼっちじゃないと。
空っぽだった少年は少女と出会い、いつしかりっぱな青年になっていました。
青年は彼女が居たらそれだけで満たされ、幸せです。
そんなある日、二人の前にとある青年が現れました。
青年は笑いながら真っ赤な瞳を向け、言いました。
「ボクの物だから返してもらうね?」
昔々、とある村に双子の少年がいました。
片方は聖なる白子、片方は忌むべき黒子。
村の人たちは皆、聖なる子の周りに笑顔で集まり誉め称え、同じ口で忌み子を罵りました。
聖なる子には最高の食事と天蓋付きのベッド、忌み子には食べ残しと使い古したゴザ。
聖なる子は温かいお湯で体を清められ、忌み子は冷たい川で体を洗う。
聖なる子はいつでも高級な物が捧げられ、忌み子は拳を貰う。
温かい笑顔、心のこもった贈り物、自分に向けた愛情、そんな物少年達は知りません。
ただ自分があいされていない事しか知りません。
そう
少年達はひとりぼっちでした。
『聖なる子』という役割に向けられた賛美の言葉は少年の欲しい物ではありません。
『忌み子』という物に向けられた悪辣な言葉は少年の欲しい物ではありません。
自分に向けられるのは、汚れ切った瞳ただそれだけ。
それが、少年達にとっての日常。
真っ白な世界で、真っ黒な世界で少年達は何も感じませんでした。
しかし少女が現れ、『忌み子』と呼ばれた少年は変わってしまいました。
空っぽな『聖なる子』を置いて。
聖なる子は知っていました、自分に双子の兄弟がいる事を。
聖なる子は知ってしまいました、兄弟が幸せになったことを、そして自分は違う事を。
聖なる子はこう思いました。
忌み子が惨めな暮らしでも生きていられたのは、ボクの気まぐれのおかげなのに。
なのに、なんで……ボクじゃないの
微笑みながら、紅眼の聖なる子は青眼の忌み子に言いました。
「なんでキミはボクより幸せそうなの?」
「ボクに捧げられるべき供物なんかが、なんでキミののなりにいるの?」
「なんでボクをそんな目でみるの?」
「キミが悪いんだよ?」
「だってさぁ……」
「キミは『忌み子』でボクは『聖なる子』なんだから、キミがボクより不幸になるのは当然でしょ?」
この少年達の本当の物語はねじ曲げられ、それを知らない人々はいつしか彼らをこう呼ぶようになりました。
『深紅の悪魔(くろの忌み子)』と『悲藍の天使(しろの聖なる子)』とね。
おわり
久々なので、うまく書けなかった……




