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グリの分離   作者: 霜月淡美音
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羽化

りゅうの存在は私が覚えてる限りではベビーカーに乗っていた頃から。ただ乗せられるがままに揺られるベビーカーの中で、私は初めてりゅうの存在を感じた。言葉にならないりゅうが私に伝えて来る感覚。まるで他人の様で、私の中にいるんだとは到底思えない。だけどりゅうはあの頃から私に訪れる未来これからを予想していたんだろうと思う。


りゅうが私の前に現れた切っ掛けは兄だった。

兄はとても我が儘な性格で、歩くより楽しいと、私が揺られるベビーカーに強引に二人乗りしたのである。私は恐怖心で母と、一緒にいた叔母を探したけれど、覆いかぶさっている兄で視界が見えない…ただ流れる不安定な時間の中、耳だけが周囲を捉えていた時、母達は笑っていた。『何しているの?いつまでも甘えん坊ね。』そう言った母は兄を下ろそうとせず、圧迫感で苦しい私が不快感の頂点に達した時、まるで分裂したかの様に身体が何かと入れ代わった。りゅうが来た。


私はガラス張りのケースに閉じ込められた様な感覚に陥って、ただ肉体から何者かが動かす私を映写されていた。言葉がままならない筈の私から伝達して送られてくる情報は、見える筈のない何者かの顔付きと、考えていること。その何者かは私と瓜二つだけど何だか違う…そんな人。

そして何者かは言い放つ。鮮明に私の脳内に『どけ糞ガキ。歩け家畜。おい親!コレ見てお前らは何も思わないのか?世間話の前にこの豚どけろよ!』

私は一瞬何が起こったのかわからなかった。ただ、私が私を取り戻した頃には、あった筈の苦しみはそこには無く、ジタバタ暴れた形跡だけが残っていた。私じゃない…私がやったんじゃない…。でも気がつくと兄は歩いていたんだ。


あなた私を助けてくれたの?

ねえ? あなた ダレ?

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