方針決定会議
8ヶ月経過。
元NWOプレイヤーは、クエストに関して様々な意見を出しあって、NWOをプレイしていなかったものは、ひたすらにレイク収集に勤めていたようだ。
まあ、もともとNWOの基本思想は『自由』なので、何をしようととがめられるはずがない。
だがしかし、話が全く進んでいないのも事実である。
クリアする気があるのかどうかわからない。というのがゼツヤの見た感じの印象だ。
「で、会議が開かれると」
「そう言うことだ。ゼツヤも来るようにって生徒会長が言っていたぞ」
「何で俺まで……」
「いや、今回はゼツヤも来るのは当然だろ」
ゼツヤとしてはいちいちなにかを決める時に呼ばれるのは嫌なのだがな。攻略サイト扱いされているみたいだからである。アイテムについて色々な知識があるのは確かだが、しかしな……。
とかなんとかいっているが、行かなければならない。
「って。会議所を結局俺が作るんだな」
「まあ、誰かがNWO内のロードキャッスル城下町に会議所を作ったのをばらしたんだろうな。調べる方法はないから諦めろ」
「ほいほい」
ま、不便がない程度に突貫工事で仕上げておいた。
以前の会議所はギャラがあったからな。しかも、この世界ではさんざんメリットのないタダ働きが多かったし、優遇するつもりはない。ミズハや生徒会長、リトルブレイブスメンバーはそれなりのレイクも払ってくれたので(使う機会はなかった。素材集めで金額はかなりあったからだ)、別にどうこうしようとはおもわないが、それ以外は別である。
飯すら食っていなかったからな。本当に。
まあいいとして、会議室にはいる。
円卓なので何人でもいい設定だ。どれくらいいるのだろうか。
椅子の数は七つ。二つ空いている。ゼツヤとバスターの分だろう。
バスターがその内のひとつに座ったので、ゼツヤは空いた椅子に座った。
「さて、揃ったな。それでは、会議を始めようか」
生徒会長が言った。
集まっているメンバーの簡単な情報は、生徒会長からのフレンドメールで知らされている。
ちなみに、七つの椅子の内、ゼツヤ、バスター、生徒会長の三人以外は始めてみる。
「とはいっても、初見になるものがおおいだろう。軽く自己紹介をしようか。まず私は、ギルド『生徒会』ギルドマスター。クシルだ」
あれからソロではいられなくなった生徒会長である。
「僕は『サイレントアビス』ギルドマスター。『カイエン』だ。主にアタッカーが多いよ」
物静かな雰囲気の男性だ。リアルでは二年生である。
武器は片手剣。ギルドカラーは青だ。
「俺は『オーディン』ギルドマスター。『シャイン』だ。ま、よろしく。俺の邪魔にはならないでくれよ」
かなり上から目線の男性だ。ギルドカラーは黄色。武器は槍だ。リアルでは三年生。
「ん?俺か。俺は『アクセスコード』ギルドマスター。『アスラ』だ。情報ギルドで、俺以外に戦闘できるやつはいないけど、まあよろしく」
性格は軽いな(ゼツヤが言えることではない)。武器は無し。素手だろうか。ギルドカラーは赤。リアルでは三年生。
「私は『ライブラリ』ギルドマスター。『キュエル』だよ。全員が魔法職なんだ」
ほんわかしている。武器は無論というか、杖。ギルドカラーは紫。リアルでは二年生。
「『リトルブレイブス』ギルドマスター。『バスター』だ。まあ、みんな知っていると思うけど、よろしく」
バスターは平常運転だ。
「ゼツヤだ。所属ギルドはない。よろしく」
さて、全員の自己紹介は終わった。
「さて、早速始めよう。今回の議題は、これからの大まかな行動方針についてだ」
「会長はどういう風にかんがえているんですかい?」
シャインが即答した。
「行動範囲の極端な拡大だ。この世界に来て八ヶ月が経過したが、クリアのなるなにかがなにも発見されていない。あくまで私はこの世界のクリアを望んでいるからな。クエストクリアは後回しにして、エリアの拡大に勤めるべきだと思う。沖野宮高校の全校生徒は約700人。はっきりいって、この人数では、全員が動かないとなにも始まらん。町の数はかなり多い上、様々なエリアがある。とにかくエリアを拡大することが前提だ」
NWOにおいて、次の町に進むための条件など存在しない。あるとすれば、たどり着ける実力である。クエストは無論必要ないのだ。
「俺はそれには乗れねえな」
「何故だ?シャイン」
「クエストクリアよりもエリア拡大を優先する。別に案としてはいいけどよ。はっきりいって、すべてのエリアがクリアに関係する筈がねえだろ。はっきりいって効率が悪い。クエストクリア優先の方がいいんじゃねえか?」
まあ確かに、どっちもいっていることは正しい。エリア拡大は必要だし、だからと言ってクエストクリアを後回しにしていては、現在はクエストが重要とされているため(無論、確信しているわけではない)、探索だけで恐ろしいほど時間がかかるだろう。
だが、アスラがここで発言した。
「俺はエリア拡大に賛成だな」
「何?」
「クエストクリアを優先しようと言う意見が多いのは、特定のクエストをクリアすることによる、NPCからの情報入手が一般的な意見だ。だけど、NPCから情報が一切ないと言う状況もあり得るんだよ」
「なぜそういえる?」
「八ヶ月。それが、俺たちがここに来てから経過した時間だ。しかも全員が、プレイしていたゲームではもっとも強いキャラが選択されてこの世界にいる。しかも、戦闘職は全般的に、ゼツヤの生産によって常にもっとも高い数字をだし続けている。ゲーマーはなれるのも早い生き物だ。実質的に見るなら、ワープが可能になったエリアはかなり多いんだよ」
バスターを見ると頷いてくる。広くなっているのは事実のようだ。
「この中でNWOをプレイしていた人は、『ロードキャッスル』という町に聞き覚えがあるはずだ。実は、すでにそこまで到達しているんだよ」
ほう、まあ、八ヶ月もあったのだからある意味当然か。
「それなら今のペースでもいいんじゃねえか?」
「気づかないのかい?そこまで進んでいるのに、手がかりが見つかっていないんだよ」
そういえばそうだ。ロードキャッスル城下町は、高レベルに達するエリアで、それなりに始まりの町からも距離がある。
そこまでたどり着いているのに、手がかりが何もない。これは逆にどう言うことなのだろうか。
「実はそこまで進んではいる現状だけど、全体マップからしたら全然なんだよ。広げた方がいいと思うし、今はまだ発見できていないが、設定されていなかったダンジョンすら存在する可能性もある。このせかいは広すぎる。活動範囲が狭いと、既成事実にとらわれやすくなるよ。というか、君はリアルでも視野が狭いじゃないか」
「うるせえな。文句あんのか?」
「いや、思ったことを言っただけだ」
「まあまあその辺りにしておいてくれ」
バスターは強いな。
「まあ、別に意見が別れるのは私は構わん。だが喧嘩はよそでやってくれ。結果的にどうするかだ」
「俺もエリア拡大に賛成する」
ゼツヤも言った。
「今現在だと、最高峰のものがほとんど作れないからな。それに、仮に新ダンジョンがあったとして、そこでチートボスがいたときに、俺としては素材がないのが一番辛いからな」
「それはお前の私情じゃないか」
「私情で人の自由時間を半年も消す人たちに言われたくないね」
ゼツヤはどや顔である。
まあそんなこんなで、物理的な喧嘩もあったのだが、普通に勝利しておいた。
結果的にはエリア拡大になる。
本格的に、冒険が始まる。




