無駄に疲れるクエストに遭遇した。
さて、バスターと生徒会長によって、自由時間が爆発的に増えたゼツヤである。
ミズハといろんなところにいって満喫しているのだ。
「平和だ」
「そうだね」
のどかな自然の村を歩いている。
「おお、そこのお二人さん。仲が良いねぇ」
NPCのお婆ちゃんが話しかけてきた。
「恋人なんでね」
「そりゃいいことじゃ。うちによっていくかいの?」
クエスト受注ウィンドウがなぜか出現した。
「まあいいか、よっていきますよ」
「こっちじゃよ」
で、『THE・民家』といっても過言ではない家にお邪魔した。
「こっちのへやじゃよ。なにかだすからちょっと待っていなさい」
「はい」
部屋に入ろうとしたが、廊下の反対側のふすまが空いていた。
ミズハが除きこんだ。
「可愛い。赤ちゃんが眠ってる」
「わしの孫じゃよ」
「へぇ。よく育ちそうですね」
「あれで賢いからの」
どう見ても一歳来ていなかったが、賢いとかわかるのか?
まあ、おばあちゃんの話を聞きながら茶菓子を食べていたりした。
食べたことがない味だった。残念な話をすれば、自分で作った方がうまかった。
その時、向かい側でガシャンというおとが響いた。
ゼツヤが急いで行ってみると、赤ん坊がいなくなっていた。
で、窓ガラスが必要以上に割られていた。面影がないレベルだった。
「あぁ、孫が!」
大体こういうときって名前で呼ぶものだと思うのだがな。まあ、それは重要ではないんだけど。
「じゃが、賢いからの。なにか残しておるかもしれんぞ」
んなアホな。
と思いながら赤ん坊が寝ていたかごを見る。
「あ、紙がある」
「え、本当に」
「ああ」
咄嗟だったのになんできちんと折りたたまれているのかものすごく気になるのだが、まあそれはいい。
「何が書いているんだろ」
開けてみた。
そこには、達筆でこう書かれていた。
『バブー』
と。
「分かるか!」
「見せるんじゃ!」
おばあちゃんに渡す。
「フムフム」
「え、何でわかってんの?」
「何が書かれていたの?」
「『バブー』」
「「…………」」
長い沈黙が訪れた。
「バビロニアの森に今すぐブーチェに2億レイクを入れて持ってこい。とかかれておる」
「それ書いたの誘拐犯かよ!」
何で誘拐犯がバブーなんて書くんだ?時間がないにしても省略しすぎである。
はっきりいってプレイヤーには絶対にわからんぞ。
バビロニアの森は、いまいる村から3キロ北にある森だ。ブーチェというのは、NWOでそれなりに高級の、防水性の高い革の鞄である。
二億レイクが無いわけではない。が、払う義理のあるクエストとも思えない。
「というか裏面に書いておったぞ」
「へ?」
見た。
『バビロニアの森に今すぐブーチェに2億レイクを入れて持ってこい。
PS ちゃんと読まなかったやつは注意力が無さすぎます』
「バカにしやがって」
特に語ることはない。見つけて、ボコって、取り返す。ただそれだけのことだ。
でも、クリア報酬はよかった。うん。
「精神的に疲れるクエストだったね」
「ああ」
「いろんなクエストがあるんだね。あれはあれで楽しかったかな」
「くそみたいなクエストもあるぞ」
「例えば?」
「始まりの町にさ、なくした金の指輪を探すクエストがあっただろ」
「あったね。思いでの品だったという設定だったと思うけど」
「じゃあ、始まりの町にかなり近いダンジョンにさ、特定のアイテムを出さなければ開かない扉があっただろ」
「開け方知っているの?わたし、何をおいても反応しなかったよ」
「いや、さっきいった金の指輪を持っていくんだよ」
「余りにも非人道的なクエストだね」
そういうウエストもあるのである。あまり遭遇したくはないが。
「他に面白いクエストってあるの?」
「そうだな」
そんな感じに平和な感じが今は続いている。
そんなヒトコマである。




