ゼツヤの完全復帰
ミズハは狩りをしていた。
まだ現状としては、クリア条件は見つかっていない。
クエスト。その中でも今までになかったクエストをクリアすることが発見に繋がる。と言うのが全員一致の意見だ。
「ゼツヤ君大丈夫かな」
動いていないところを最近見ていない。
だがその時、何かが見えた。
「竜。しかも、あれって召喚獣だ」
誰かが操っているのだろうか。確かに、近接武器を扱う戦士職とは違って、召喚魔法はMPさえあれば出すことはできる。
「……誰かのってる」
どこかで見たことがあるようなシルエットだ。
竜はミズハを発見すると、普通にこっちに来た。
「お久しぶりです。ミズハ様」
「ご……ゴディアス?」
「紛れもなく」
「私もいるよ」
ゴディアスの後ろから水色のワンピースを着た少女が顔を出した。
ソウヤだ。
「ソウヤ……ああ、成る程。この竜は……」
「私の召喚獣です。ジョブスキルで乗れるようになったんですよ」
成る程。だから乗ることができたのか。
「ゴディアス達は装備がいつも通りだけど、大丈夫なの?」
「私たちもある程度状況は把握しておりますが、我々はNPCですから、わざとなのかあえて見逃したのかは私にもわかりませんが、NPCのほうは無事でした」
「じゃあ、オラシオンは……」
「ひとつを除いて、全てのアイテムがありませんでした」
「残ったひとつって……」
ゴディアスはウィンドウを操作して、一つの剣を取り出した。
あの黒い長剣だった。
「一番残ってほしかったものが残っていたのね」
「工房とほぼ同じ領域に設定されているアイテムですから、恐らく、アイテムのみを消そうとしたゆえに残ったのでしょう」
「成る程。オラシオンには今はアイテムは他にはないの?」
「何一つ残っていませんが、原型のみはとどめています。現在は戻すために奮闘中ですよ」
「それもそうか」
まあとにかく、この剣があってよかった。
「私ってさわれるの?」
「マスターが登録しておりますので、普通に使用できますよ」
「良かった。私からゼツヤ君に渡しておくよ」
「お願いします。素材ができ次第、そちらに送りますので」
「ゼツヤ君に伝えておくよ」
「はい。それでは、私たちは戻ります」
「また会いましょう」
ゴディアスとソウヤは竜にのって帰っていった。
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ゼツヤは剣を受け取った。
「まさか、NPCたちがこっちに来ていたなんてな」
「ちょっとビックリだよね」
「ああ、早速仕上げよう」
数分後。
山のようにアイテムが出現した。
「ゼツヤ君。やっぱりこれって正式チートじゃない?」
「俺もそう思う。あと、顎が疲れた」
何回アイテム名をしゃべったのかわからん。
剣の特殊ストレージは新しく作ったが、剣の中にアイテムはなかったので、新しく作らなければならない。だが、それを入れても今まで以上に楽なことに代わりはなく、そもそも熟練度は完璧なので、持ってくる素材次第である。
「ふう、やっと自由時間ができる」
「今までお疲れ様」
「さて、どうするかな」
この剣の真骨頂は生産能力だが、それ以前にステータスは圧倒的に高い。初心者が行きなりトッププレイヤーになるような者なので、ぶっちゃけて言うと色々ヤバイのだが、まあ仕方がないな。
「ふむ、どうするか。まあ一応バスターには話しておくか」
という訳なので、呼びました。強制で。
「ふむ、その剣が戻ってきたのか。ちょっと想定外だ」
「それは当然だ」
「圧倒的なステータス。生産過程を蹴り飛ばす効果。しかも、素材次第で強力なモンスターを創造できる。公式チートとはよくいったものだ」
「問題はどこまで広めるかだ。広まった先に何が待っているのかさっぱりわからないからな」
「それは俺にも予測はできないよ。確実なのは、狙われるだろうね。回収できるけど」
「ああ」
強い武器がある。それならほしいと思うのは誰だってそうだろう。
「ゼツヤ君。入るぞ」
ノックなしで生徒会長が入ってきた。
「何ですか?」
「いや、私は実はスミスでな。この空間に来る前に工房武器であるレイピアを作っていたのだが、今日、その時のNPCが持ってきたんだ」
この人鍛冶出来るのかよ。
「まあ、自分が使う用に鍛冶スキルをあげていたからな」
まあそういう意見もあるだろう。
「工房武器ですか」
「ああ、そっちはどうだ?」
「……こっちも今日です」
「ほう、実はな。工房武器を作ったプレイヤーたちは、全員が今日戻ってきたといっているのだ」
偶然ではなかったか。
となると、工房武器のデータとしての記録方法は他のアイテムとは異なっており、そうした感じで残されていた。と言うことか。
だが、工房の場所と今現在のこちらの拠点の距離が同じはずがないので、偶然とは言いにくい。
だが、仕組まれたにせよ、メリットがあったことに代わりはない。
「ところで、ゼツヤ君の工房武器はいったいどのようなものなのかな?」
「これです」
今思えば、なぜ渡したのかと思わなくもない。
「ほう……」
「頭に来るステータスですよね」
「そうだな。だがゼツヤ君」
「何ですか?」
「君は『オラシオン』だったのだな」
今年度最大の墓穴を掘った。




