3 リオの日常に付き合うルナードの苦労
さて、このNWOには、金持ちが何人か登場している。
まず、一番最初に出てきたのは『ヘリオス』である。まあ語る必要はない。兄もいて、この二人は本当に高校に入学してからの竜一を振り回した。
次にバスター。リアルではデュリオ・クレメンティであり、竜一のクラスメイトである。
さて、その二人が庶民に見えるほど多くの資金を持っているものがいる。
リオである。
そして、彼の活動範囲は恐ろしく広い。
そして、必要なのかどうか実質不明だが、SPがいる。
もはや専属といってよいほど担当しているのがルナードなのだ。
この日もそうである。
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「なあ、リオ」
「なんだ?ルナード」
「俺ってさ。簡単に言うなら派遣SPみたいなもんなんだけどさ。もはやお前の専属だよな」
「僕もそう思う」
最初はそれぞれリアルネーム(リオ・新川修 ルナード・三浦達郎)で呼び会うのだが、二人しかいない場合はもう普通にキャラネームで呼びあっている。
「あとさ。何でリムジンに乗っているのに、俺のいっこ後ろの席に座っているんだ?」
「別にいいじゃないか」
別にいいが、色々と醍醐味が消えていく気がする。とルナードは思う。
一番後ろだと声が聞こえづらい。と言うことはない。聞こえないにしても、ウィンドウ操作一つで補正できるのだ。問題はない。
「まあ、リオの価値観だからいいけどさ。あと」
先程からルナードは、あるものがちらほら見えていた。
「スナイパーが20人くらいお前を狙っているぞ。今俺たち運転中なのに」
「いつもの話だ」
そうだったな。三日前は15人だった。
「まあ、車を見た時点で無理だと思っていてもおかしくはないがな」
「防弾ガラスに、超合成チタンだからな。3000度の火炎放射機も怖くないし」
「いったいどこの企業が考えたのだろうな。融点を越えている」
リオの言う通りである。この車はそれらの素材でできているため、大概問題はない。
「出てきたところで狙うのが普通か」
「それはそうだろう」
「だから毎度毎度忙しいんだよな。防弾チョッキ着てないと俺が怖いし」
「怖いのは嘘だろう」
「プロだからな」
まあ、そんな仲である。
「なんで仕事で来るときいつも死の危険が待っているんだか……」
「家族が聞いたら何て言うかな」
冬香 『お父さんなら問題ないでしょ』
秋保(妻)『そうよね』
全く心配されていなかった。
「運転に影響はないようだが遠い目になっているぞ」
「ん、ああ。家族の反応を思い出してな」
「触れない方がいいか?」
「是非」
さて、目的地についた。
「降りるか」
「ああ」
まあ、銃弾の雨はなかった。
それも当然のことで、ある場所の地下だからだ。
さて、目の前で並びまくった机に行って、ひとつにつき一分のみ滞在する間隔で、次々とリオがそれぞれの会社と契約している。
この時代でも、契約は書類で行われる。電子データだと改竄しまくりなので、こうなったらしい。
ちなみに、一応映像データにも、紙で契約したことが残されるし、バックアップが恐ろしいほど行われるため、大概問題はないのだ。
だが、ひとつにつき一分。中には契約内容を変更して双方合意(表面上そう見える)で行っている。
無論だが、ルナードには外国語にしか聞こえない。ルナードは一応英語はできるのだが(そもそも自動翻訳が存在するのだが)、何をいっているのかさっぱりわからない。まあ、そう言うものなのだが。
要するに専門用語が多すぎると言うことである。
さて、契約は終了。次の契約場所に向かう。
「また俺の後ろに座るんだな」
「ああ」
また移動している。
「そう言えばさ。リオってなんか武器とかあるのか?」
「強化スタンガンなら携帯している」
「怖いな。まあそれぐらいが普通か」
「さすがの僕も銃の携帯は許されていないからね」
「いざとなったら俺のを借りる気じゃねえだろうな」
「必要ない。僕は自分の評価を落とすようなことはしない」
「そうだったな」
「そうでないと、僕の彼女たちがうるさいからね」
「ふーん。たち?」
「そうだ」
こいつ。彼女複数いるのかよ。
「いいのか?それ」
「選ぶのではなく全てを選択するのが僕のやり方だ」
「超強き発言だな。彼女たちは知っているのか?」
「そうでなければ僕は今ごろミンチだろう」
「……」
それもそうだな。とも思う。
「納得いかないか?」
「いや、お前の超理論に納得しようとすると頭がいたくなるからな。なにも考えていない」
「そうか」
リオはあまり基準をもって話さない方がいい。
「ん。ついたぞ」
「ああ」
これでもそれなりに緊張するルナードである。
いつも通り。それはそうだが、パターンは変わるのだ。
だが、せめて、家族くらいは心配してほしいというのがルナードの心の叫びである。
ちなみに、この日も、防弾チョッキは役に立った。
ルナードの苦労は、リオのSPをしたことがあるものにしか、理解することはできない。
というか、リオが化け物過ぎるのである。
短編集に出すようなネタがなくなったので(自分でも早いと思いますが)、次回から新章開幕です。はい。




