山登りのエピローグ
短いです。本当に
「なあ、天辺に来たのはいいけどさ」
シュラインが呟いている。
「何であんな陸の孤島みたいなことになってんだ?」
そう、シュラインの言う通りだった。
グレイテストマウンテン頂上。そこにはコロシアムが存在した。
だが、そのコロシアムを中心にして半径100メートルのすべてに陸がなかった。
「しかも、コロシアムの下、何もないし、ほんとに何もないぞ」
要するにいけないのである。
「風属性魔法で向こうまで行けねえかな?」
「たどり着く前にHPが吹き飛ぶと思うぞ」
シュラインの案はシャリオが瞬殺した。
「ならしかたがない。ゼツヤ!」
「一人でやれ」
「何でわかった!?」
「どうせ橋でも作ろうとしたんだろう。それくらい一人でやれ」
今日は疲れたのだ。本当に。
で、結局シュラインが一人で作った。
「結局一人でやるんだな」
「出来るからな。ディティールがちょっと気になるが」
「そんなことを気にするのはお前だけだ」
「……」
まあ、機能的には何も問題はない。NWOの橋は木で作るとギシギシ音をたてるし、ちょっと揺れることもあるが、シュラインが作る場合はそんなことは一切無いのだ。
悲しい話だが、リオの方がもっと早く、さらにいいものを作れるのは、シュライン自身も理解している。
「内部は……はっ?」
すぐにもう戦闘場所だったのだ。
中心にはドラゴンがいる。真っ黒で、そこまで大きな属性指定はなさそうだった。
「まあいい、とにかくやるぞ」
「ここまでモンスターを一体も倒してないからな。全力で行くぜ」
全員が武器を構え、セルファが前に出て、レムが普通についていった。
「「「「「えっ?」」」」」
全員がすっとんきょうな声をあげた。
なぜ君が?
「どらごんどらごん~」
いや、友達に話しかけるような感じでいっているけど、ぶっちゃけ向こうは俺らのことをただの駆除目標に過ぎないと思うぞ。
あと、君の戦闘手段はたしか『ハンマー』だったはずだろう。どうするつもりだ?
だが、次の瞬間。レムに姿が消えた。
「何!?」
ドラゴンを見ると、かなりの勢いでタコ殴りにされている。
「セルファ。何となく、将来が不安になってきているんだが」
「私がどうにかする」
「頑張れ」
「ああ」
「まあ、なんというか、確かに、あまりに環境がすさまじいからドラゴンのステータスはそう高くはないはずだが、ここまで一方的だとはな……」
リオがげんなりしている。なんというか、いろんな意味で超人であるはずのリオですらも予測出来ない現象を次々と引き起こす。
「なあリオ。普通ってなんなんだろうな」
「僕にもわからない。ふむ、パワフルなものだな」
「珍しい分類だからあまり気にしない方がいいのも事実だけどな」
「ぶっちゃけたはなし、レムはギャグ補正がすごいんだろ」
メタなのかどうかちょっと微妙な発言である。
「ミナトは?」
「あれはちょっと頭がおかしい程度だ」
「基準が不明だ」
そういうものだ。逆補正がどうとかなんて本来人それぞれである。
「レムの日常ってどんな感じだ」
「つみきログハウス作りに自動変換される」
「そうか」
その日はもう終わった。
急遽加わった幼女によって、天才たちの基準は壊れていく。
いつものことだった。




