2 山登りは計画的に。
「リオ。俺は泣きたい」
「シュライン。いきなりどうした」
リオのNWOのホームにて、リオとシュラインが話し合っていた。
「いや、ゼツヤたちと一緒に色々やりたいって思ってたのは確かだよ」
「現にこれから一緒にいくからな」
「でもな。時系列が一年前なんだぜ?ちょっと悲しくないか」
「すまないな。俺はメタ補正が高くないからお前の言いたいことがわからん」
文字通り、ゼノンとシュラインは少々裏設定を喋りまくる。
「まあ僕にとっては関係ない。行くぞ」
「ほーい」
リオとシュラインは歩き出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「山登り。NWOで何回かやっているけど。飽きないよな。何でか知らないけど」
「NWOのプレイ人数が多い理由に、『圧倒的なまでのマップの広さ』があるからな。ぶっちゃけた話、いけない場所なんて存在しないし」
ゼツヤが沖野宮高校に入学する数ヵ月前、NWOで最も標高の高い山の一番近くに存在する町『ベルジェ』に、ゼツヤとエクストリームメンバーがいた。
「お、来たぞ」
リオとシュラインが来た。
「久しぶりだな」
「あまり会わないからな」
リオは一年に数回、年始に会うかどうかという人間だ。シュラインもそうだが、この二人もハイエスト・エリアに到達しており、そもそもリオは俺たち全員の師匠である。
「まあ、どれくらい強くなったのかよく見てやる。全員まとめてかかってこい」
リオが剣を抜いて、ゼツヤとエクストリームメンバー全員に『集団戦闘』を叩きつける。
俺たちは受諾し、全員が武器を抜いた。
数分後、コテンパンにされた。
「つ、強すぎだろ。なんか去年よりやばくなってないか?」
「そんなことはない。僕は弱くはなってはいないが、強さの調節くらいはできる」
やや腹が立つが、リオが相手では勝ち目がない。
何故なら、レイフォス以上に応用性のある脳を持ち、シャリオ以上の頭脳を持ち、ユフィ以上の動体視力を持ち、セルファ以上の逆算能力を持ち、サーガやクラリス以上の分割思考を普通にやってみせる。
唯一、先天性であるゼツヤの集中力は達成されていないが、いつかそれさえも抜かれそうだ。まあ、抜かれていないのに全く歯が立たないのも事実なのだが。
「まあいい、今日は『グレイテストマウンテン』の登山だろう。早速いくとしよう。どうせ準備は全員万端だろうからな」
リオの言葉に反対はなかった。
グレイテストマウンテン。NWO最高の山である。
標高は、エベレストを遥かに越え、『12000メートル』である。
さらに、いつでも確定で『速度減少』が発生するため、ユフィですらとトップスピードは出せない。それでも速いものは速い。
出てくるモンスターはかなりレベルが高く、上級プレイヤーすら逃げ出す領域だ。
ちなみに、この時点で全員のレベルは100になっている。
「全然頂点が見えないな」
「俺にも見えん」
シャリオに見えないのなら仕方がない。
「ここではマップが使えないんですね。ちょっと辺りを探索してきます」
ユフィが言うが速いか。全速力で走り出す。
……10分待っても帰ってこなかった。
「完全に迷っているな……」
ゼツヤの言う通りである。
「シャリオ。火柱よろしく」
「やっぱりこうなったか。『ボルケーノ・ラプソディ』!」
火柱が上がる。
そしてその数秒後。
「みなさーん!」
ユフィが号泣しながら帰ってきた。
そのままクラリスに抱きついた。
「うう、怖かったですよぉ」
「よしよし。もう大丈夫だからね」
「火柱あげたのおr痛い!サーガなにしやがる」
「デリカシーのないやつは黙っていろ」
早々に大丈夫なのかこれ。
通常。登山ではかなりの日数が必要な場合もあるが、今回だって当然である。
「ちょっと近くでログハウスないか探してくる。行くぞ。ゼツヤ」
「俺?まあいいけど」
シュラインに言われて一緒に行くことになった。
ちなみにゼツヤを含めた全員が『これ完璧に、探しに行くんじゃなくて作りに行くメンバーじゃね?』と思った。
まあ、案の定と言うかその通りであった。
「と言うわけで、ログハウス作るぞ!ゼツヤ」
「やっぱりこうなったか。まあ、歩いていても見つからなかったし、必要なのはわかるがな」
それぞれの得意分野があるとすれば、ゼツヤは小物系、シュラインは逆に大きなものを作るのが得意だ。
電ノコのエンジンが唸りをあげ(何であんの?)、木を伐採し、加工して積み上げていく。その後、釘を打てばもう完成。
シュラインの実力があれば、森のなかで家を作ることなど造作もないのだ。ゲーム内ではな。
その頃にはゼツヤも作業が終了していた。
「じゃあ俺は伝えてくるから」
そういってシュラインは走っていった。
ゼツヤはストレージから『ボイスイーティング』というアイテムを出した。
簡単に言えば、『遠聴スキル』の熟練度の高い数字を再現させたものである。
『おーいみんなー。ログハウスあったぞー』
『電ノコのエンジンのような音が聞こえていたぞ』
リオに一瞬で撃墜されていたようだ。
まあそれはいいとして、必要なものはすべてある。問題ない。
ちなみに、風呂があるテントもちゃんとある。シュラインの設計図通りに作ったので鍵はない。
男湯と女湯があり、その間は『ちょっと頑張ったら上れそうな壁』で出来ている。
「いやー、山登りっつったらやっぱりカレーだよなー」
「それは海とかそれに近い別荘だと思うぞ」
シュラインがサーガに一刀両断された。
「でもよ。リオもゼツヤも料理うまいよな」
「作っているのが男性陣と言うのがな。まあ、女性陣にやらせるとなると結果的に一人になるわけだが」
クラリスは料理させません。絶対に。だってこの前食べたとき、15年間がフラッシュバックしたからな。
要するに精神的にも肉体的にもやばかったのだ。
「ふう、ごちそうさん。そんじゃ。俺はそこら辺をぶらぶらしてるから」
シュラインがどこかにいった。まあ、迷うことはないと思う。多分。
さて、この世界はあくまでゲームなので、一旦中断してリアルでも食事をするのだが、食事は精神的にはお腹一杯である。
そして、女性陣が風呂のテントに入った。
「どうする?」
「なにがだ?シュライン」
「いや、このシチュエーションですることといったらあれしかないだろう」
「姉さんのアバターの裸でも見たいのか?」
「止めねえの?弟として」
「見慣れているから今さらだ」
「回答になってない気がするぜ?それ」
「しらないな」
なにこの会話。
「まあいいじゃないか。今は精神的に休もう。折角シュラインとゼツヤが見つけた明らかにプレイヤーが作ったログハウスと風呂があるんだからな」
リオ、その言い方やめろ。
まあ、シュラインが覗いてHPが消し飛ぶ寸前になるまで蹴られて男湯に放り込まれたことはあったが、なんとかその日は終わりである。
まだまだ続く。




