ゼツヤ流武器作成方法
ゼツヤ達12人はロミュナスに戻ってきていた。
「驚きました。ゼツヤさんがあんなにレイクを持っていたなんて……」
リキュアが唖然としている。いや、唖然としているのは全員か。
ちなみにだが、1億レイクと言うのは、ゲーム内のゼツヤの全財産のほんの数%であり、久しぶりの出費でしかない。大概何でもできるので、金を使うことが無かったのだ。増える一方で。
ちなみに、NWOは課金アリのゲームだが、リアルの『円』を直接『レイク』に変えるのではなく、例外なくアイテムを購入することになる。アイテムを売れば確かにレイクに変換できるが、効率はやや悪い。因みに、ガチャは一回500円のシステムが存在する。
「ま、稼ぐ方法なんていろいろあるのさ。なにせ俺は、『ソロ』で『レベルカンストプレイヤー』だからな」
また全員がぽかんとしている。
「あの、ギルドに入ろうとは思わなかったんですか?」
「即席パーティーには入ったことがあるけれど、ギルドに入ったことは一度もないんだよ。というか、NPCソルジャーもちゃんといるしな。まあ、友好関係のあるギルドが無いわけじゃないけど」
と言うか、自分で言うのもなんだが、ゼツヤがギルドに入っても、バランスが崩壊するだけでなんに得にもならないし、ゼツヤ自身が高校生のため、時間もそう多いわけではない。さらに言うなら、もともとゼツヤは自由に作りたいのだ。制限を設けられるのはまっぴらごめんである。しかも、総合戦闘力は、ゼツヤと1つのトップギルドのメンバーが総員でやってきても、普通に返り討ちにできる。
本当にそんなことが可能なのか?と思う人もいるだろう。そう言う人は、ゼツヤが巻き起こした伝説をもう一度見てみるといい。あと、その時よりも更に高性能のアイテムを生み出せるのだ。一個で伝説級になるアイテムが、全身に装備されるのである。悪夢だ。逆の立場だったら絶対に戦いたくない。
「ま、俺みたいなプレイスタイルの人だって珍しくはないだろう」
無論。その能力にはジャンルにせよ、キャリアにせよ、いろいろ差はあるだろうが。
「で、今日はもう遅いけど、どうするんだ?きみたち、多分セリュオスの情報をほとんど持っていないだろう。このままいくのか?」
「あ、いえ、明日まで待ってもらえますか?明日は金曜日なので、多種無茶しても問題ないですから……」
「まあ、納得しておくよ」
各自ログアウトしていった。
さて、ホームに戻ったゼツヤである。
「そろそろなんか作るか……」
ゼツヤの本業は生産である。
クリエイトルームに入る。『鍛冶』を行うための台ですら、『レンガ状』と『鉄状』と言ったように分けられており、『錬金』のための大釜も、様々な素材で作られたものが並べられている。『裁縫』のための器具も完全にそろっており、針一つとっても、オークションに出せば憶と言う単位のレイクが飛び交うだろう。さらに『木工』のための道具もすべて最高峰のものであり、輝いている。『エンチャント』のための魔法陣が描かれた台の周りにいくつもの本棚が並べられ、本が1ミリたりとも隙間を作ることなく敷き詰められている。
ゼツヤはまず、最強の武器や防具、道具やほかにもたくさんあるアイテムを作る前に、『今できる最高級の道具』を作り上げたのだ。いくら本人に能力があっても、素材が最高峰でも、道具がそろっていなければ何にもならないのだ。ゼツヤ本人の言い分だが、『生産において、今手元にあるすべてが最高だと思ってはいけない』と言うものがあるが、要するにそう言うことなのである。
ゼツヤにとって最も神聖な場所である。
だが、この部屋には、全ての『器具』や『道具』がそろっているが、『材料』は一つたりともなかった。
ゼツヤはそれらの道具を通り抜け、奥のドアを開く。
そこに広がっていたのは、大量のホームボックスだった。全てのボックスに看板があり、中に収納されているアイテムが示されている。
そして、1人のNPCが立っていた。
ゼツヤのホームにいる『NPCソルジャー』の中で、最高である95レベル(NPCはマスターであるプレイヤーの5つ下までしかレベルを上げることはできない)であり、装備しているすべての装備が、このNPC専用に作り上げた至高の一品である。背は高く、薄く青く輝く銀色であり、顔はヘルムで見えないが、神々しいと言う言葉が似合う雰囲気を醸し出している。門番として立たせておくだけで、道行く人は『中ボス』だと思うだろう。
これが、『オラシオン最重要保管庫』のすべての守護を任されているNPC、『ゴディアス』である。
「ゴディアス。ご苦労」
「ゼツヤ様の命とあれば、私はそれに従うまで、それが私の存在意義なのですから」
NPCの性格と言うのは、最高ランクであるという前提があれば確かに人間に近い。まあ、ここまで厳格なものがそうそういないであろうが、このゴディアスは異常である。
仮に、この場所が知れ渡っており、日々狙うものが現れるというのであれば、確かに部下として主人に尽くすために戦い続けることもできるだろう。
だが、ここには、ゼツヤとほんの数名のNPC以外、誰も来ないのだ。しかも、その剣の腕は確かにとてつもないもので、信頼はしているのだが、何と言うか多少扱いが悪い気もするので、たまに連れ出して素材集めにつき合わせている。その時の剣は何と言うか……異常だ。
「最近何かあったか?」
「『ソウヤ』が綿花を集めたものを納めに来たくらいかと」
ソウヤと言うのは、NPCでは珍しい、『子供』の姿をしているものだ。補足すると、NPCを購入する際、ランクと名前は決定できるが、容姿は決定できないのである。
見た目通りあまりステータスは高くないが(それ相応の装備を持たせておけば初見殺しのトップに君臨するだろう)、その分活発であり、さらにいろいろとやることがすばやいので、地下でいろいろと栽培しているものを集める係りにしている。これ結構重要なのだ。一回やったけど、もう本当にしんどい。増やした自分が悪いのだが、そんなことは言っていられないくらいに多かったのだ。
まあ、本人がお遊び感覚でやっているので飽きることはないだろうが……たぶん。
「そうか、量はいつも通りか?」
「はい」
「ならいい。今回取りに来たのは『インゴット』だ」
「はっ!」
ゴディアスが音もなく道を開ける。
進んで行って、あるボックスの前に立つ。
看板には、薄い赤色に輝くインゴットがあった。
それを取り出し、クリエイトルームにもどる。
まずは鑑定スキルで、インゴットをタップする。
『フェニキオス・インゴット 重さ 5.935キロ』
と表示された。ほぼ6キロである。
「ふむ」
ゼツヤは細工道具のそばに行って、キットを持つと、ちょっと削る。削る量はちゃんとペンで印をつける。
作業が終わると、もう一度鑑定する。
『フェニキオス・インゴット 重さ 5.875キロ』
「うん。完璧」
今度は錬金釜のところに行く。
フェニキオス・インゴットを窯の中に入れる。
ちょっと離れた場所で、ゼツヤはストレージから鉱石を取り出す。ただし、あまり大きくはない。
さらに粉を取り出し、それを水で溶いて、その液体を鉱石に振りかける。
鉱石は白く光りだした。ただし、光り方にむらがあるというか、一定ではなかった。
ゼツヤは手をすっぽりと覆うグローブを出して右手に付けた。
「なるほどな。『エンチャント レギュレート』」
グローブが白く光りだした。
ゼツヤは指を鉱石に当てて、鉱石『マジカルストーン』の魔力の通路を調整していく。
それも、恐ろしく慎重に。
数分後、そのむらは完璧になくなった。
その鉱石を窯に入れ。窯の温度を設定した後、長い棒で窯に満たされている液体を混ぜていく。無論。この作業にも規則……というか、予定通りに動かしていく。
20秒くらい回すと、混ぜるのをやめて、棒を出した。その次の瞬間。中の鉱石が光りだして、その後、一つになった。いや、マジカルストーンが、フェニキオス・インゴットの中に入ったといってもいい。
そのインゴットを取り出す。鑑定。
『フェニキオス・インゴット・マジカル 重さ 5.899』
ゼツヤは満足そうにうなずくと、今度はレンガ状の鍛冶の台に行く。
炉を熱してレバーで温度を調節する。インゴットを置くと、すぐに赤くなり始めた。
「さて、始めるか。『エンチャント マジカルコード457289 フォームコード739278』」
スミスハンマーが光りだした。赤と緑で。
そして、そのハンマーで慎重に、ただし力強く叩いていく。
だんだん形状が変わっていき、ひらぺったくなっていく。
まんべんなく、ただし、規則に沿うようにいろんな個所を叩いていく。
おそらく、いや、ゼツヤはしっかり数えた。53回。
まだインゴットは形状を変化させようとはしない。一般的な鍛冶プレイヤーであれば、まだ叩き続けているだろう。
そして、インゴットは光りだした。
その形は、『片手剣』であった。
刀身は赤く、赤い紋章が刻まれている。さらに、鍔には不死鳥の羽のような装飾が施されていた。
鑑定する。
【神託の双翼剣フェニクス・コーラス
ATK730
耐久値無限
起動効果
『MP250使用して、プレイヤーを蘇生させる』
『経験値を10000ポイント使用することで、10分間の間、自動蘇生のスキルを発動可能』】
「次回のオークションの品が出来たな」
これがもし、友好的な関係を築いているギルドだったら、ここからまたエンチャントテーブルでさらに強化するのだが、オークションの品なのでここまでである。
ちなみにだが、この剣の性能はどれほどのものなのか。
まず、ATK730と言う数字は、これは高いといえる。オラシオンシリーズの中で考えると、中の上と言った感じだが、まあいい方だろう。
まあ、耐久値無限なんて武器、普通に考えて作ることはできない。何個かあまっていた『フェニキオス・インゴット』を細かな作業の後に生み出すことで出現するものだ。
MPを250消費してプレイヤーを蘇生する能力は、これは大きい。このゲームのMP回復ポーションと言うのは、一回飲んだ後クーリングタイムが発生するため連続使用はできないが、MP自体は即時回復するからだ。
……補足すると、ゼツヤの友好的な関係を築いているギルドの団員には、『最大MP14000』と言う、『ふざけんなゴルァ!』と言いたいプレイヤーもいるのだ。まあ、当然魔法使いだけど。ていうか、ゼツヤの作ったアクセサリー込みでこうなったんだけど。
話を戻すと、ピュアファイターなら使いずらいが、魔法剣士ならそれなりにMPはあるので、そういったプレイヤーに需要があるだろう。まあいいのだが。
経験値を消費してでの蘇生付加は……価値観の差があるな。少なくとも、ゼツヤが考えることではない。
ちなみに重要なことだが、これの完全強化版が、すでに完成しているのだ、これはゼツヤからすると、まあいい方。くらいのものなのである。
「さて、次に関する仕込みは終わったし、俺ももう寝るか」
多少多くなった。生産があったからですかね。