取り敢えず、本線出場者決定!
「ふう、この剣じゃなかったらアウトだったな」
ゼツヤは中心エリアに向かいながら呟いた。
クリティカルヒットする寸前。ゼツヤはモンスターをクリエイトしたのだ。しかも、防御力重視で。
まあそのモンスターはお亡くなりになられたので、もう素材に還元できないのだが、まあ優先順位的に良いとしよう。
「さて、どうするかな」
エリア制限があのあと発生し、結果的に間違いではなかったのだが、これからどうするかは考えていない。考える時間がなかったというほうが正しいのだが。
「何かを忘れている気がするが、何だったかな……あ、『キラーモンスター』だ」
町の中に配置されるはずのモンスターだ。なぜかいない。というか、一回も見かけていない。
別に会いたかったわけでもないし、実際にあっても実力的に問題ないのだが、それでもなぜか一匹もいない。
キラーモンスターはほぼ等間隔に配置される。その配置場所は、外側であればあるほど多くなる。要するに、マップ中央辺りにプレイヤーを集中させ、激しいサバイバルを展開させたいという運営の意見があったというだけの話だが、一匹もいないというのははじめてだ。
「まあ、倒せない難易度ではないからな」
某スーツ姿の男性から逃げるテレビ番組のように、捕まったら終わりと言うことはない。当然だ。まあ、自分の実力によってはそうなってしまうのだが。
川エリアは確かにプレイヤーからは発見されにくい(ミズハの直感の前では無意味だろうが)便利スポットではあるものの、川の中にもそういったキラーモンスターが潜んでいる場合もある。
そんなところが、『バトルロワイヤル』ではなく『サバイバル』と思われる理由だったりする。
「あいつの遭遇もそれなりに醍醐味なんだけどなぁ」
いない原因はいくつかある。
そもそもまだ出てきていない。
すでに倒されている。
配置されてはいたが、すでに別のエリアにいる。
といった感じになるのだが、どれというより、全部のような気がしないわけでもない。というか全部のような気がする。
「シャリオの魔法に巻き込まれていなくなったと言うこともあるか」
あの範囲火力はすごいからな。しかも、ジョブシステムも追加されているし、何ができるのか想像もつかない。賢いからな。
因みに、ゼツヤは創造神だが、このジョブに至るまでに恐ろしいほどジョブをマスターしている。
武器や防具のための『鍛冶師』。服のための『裁縫師』。木材関係で『木工師』。鉄関係で『鉄工師』。他にも『料理人』『技術者』等々、生産に関係する職業をすべてクリアしている。しかも、今でのアップデートで追加されているものもすべて取得している。
まあ、生産の補助システムが働くだけで、戦闘力には影響はない。
「シャリオのか力がいったいどれ程のものかはよく分からないが、あの火柱を見たあとではなぁ」
普通に怖いな。少なくとも今は会いたくはない。
「お、プレイヤーだ。二人組。ってブリュゲールだな。ん?あれってあの二人組だな」
9話と56話に登場したあの二人組だ。何かと縁があるな。
まあ、今回は倒す相手だがな。
ゼツヤは剣を構えた。
次の瞬間。キラーモンスターが二人のそばに出現。
……何なんだろう。機械的な蜘蛛かな。だが、なんというか、長い直方体に長い棒が八本取り付けられているようなデザインである。
バトルロワイヤルでは様々なプレイヤーが参加するため、キラーモンスターであっても極端にキモかったり嫌悪感が発生するモンスターは発生しないようになっているらしい。まあ、行きなりそんなモンスターが出てくるのは心臓に悪いし、ただでさえ緊張感マックスの状態なので、それは避けられたと運営が発表していたが……確かに、本来の蜘蛛のような足の間接をしていないし(むしろ、ただの棒)、顔があるわけではないので(その代わりグリモアが埋め込まれているので魔法は発動可能のようだ)嫌悪感はゼロなのだが、逆にこれでは明らかに手抜きである。
まあ、たぶん強いんだろうけど。
あ、二人がレーザーで焼かれた。そのまま消滅。
今度は俺を狙うかな。キラーモンスターはプレイヤーサーチ能力が高いし。
と思って武器を構えた、その次の瞬間。
【決勝トーナメントに参加する16名が決定しました。これより、通常サーバーに帰還します。そのままお待ちください】
ラスト二人がレーザーで焼かれて終了するバトルロワイヤルはたぶん今回がはじめてだろうな。
そんなことも考えながら、戻るのを待ったゼツヤだった。
あと、あのなも知らぬ二人組に一言。
「御愁傷様」
無論。返事はなかった。




