ゼツヤからのバースデープレゼント
さて、ゼツヤはミズハに教え続けていたわけだが、それももう必要ではなくなった。
数日前から、ゼツヤのもとを去って、今やソロで鍛えているらしい。
「ゼツヤ、知っているか?明日、11月25日は、ミズハの誕生日なんだぞ」
「バスター。それって本当か?」
「本人のプロフィールにかかれていた。アイドルだからな。調べるのは簡単だった」
ふむ、そうか。
「なんか用意するのか?」
「まあそうだな」
まだレベルが100になっているわけではないが、まあいいとしよう。
「今できる最高の弓を作るか。サーガ怒らないかな」
「たぶん問題ないと思うぞ」
「何でわかるんだ?」
「サーガはもう軽く四年はあの弓を使っているし、今さらだと思うぞ」
「それもそうだな」
さて、そうと決まれば、早速いくとしよう。工房に。
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ゼツヤがワープしていった。
「ふむ、あとはどうしようか。ゼツヤのやつ。まだ気づいていないからな」
鈍いことは本人もいっていたが、これはどうなのかと思う。
「とにかく誕生日プレゼントは用意させた。今はこれくらいで十分だろうな。明日は日曜日か」
そう言えば、ミズハは最近はホームを購入している。それはゼツヤも知っているし、いったこともあるはずだ。しかも、ミズハは日曜日の朝はNWOないにいるため、目覚めるのはホームの自室だろう。NWOでも寝れないわけではないからな。
そして、ゼツヤはそれを知っている。アイツのことだ。変なことをするに違いない。しかもあいつ。ミズハのホームの鍵を持っているからな。
「はぁ、どう考えても罪深いな。本当に」
ユフィは三年前はメンタルが強くなかったからな。ある意味で玉砕しても仕方がないのかもしれないな。
バスターは爺臭い思考の末、ため息を漏らした。
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「う、う~ん」
ミズハは『ロミュナス』にあるホームで目覚めた。
「ん?なんだろう。あの箱」
テーブルの上になにか箱があった。
寝ぼけた顔でふらふらと近づいた。
【Happy Birthday! by Zetsuya】
一気に眠気がとんだ。
箱の上にあるアイコンをタッチする。
【『スターゲイザー』を入手しました】
装備欄を開いて、弓を装備している所をタップする。そして、『スターゲイザー』の名前を見つけて、鑑定した。
【スターゲイザー
製作工房『オラシオン』
ATK800
・常時発動効果
『DEX超絶強化(極高)』
『弓矢作成(MP不要)』
『リアルアロー飛翔速度強化(極高)』
『インパクトエンチャント自動付加』
『リアルアロー作成時、攻撃力増加補正(極高)』
『強奪不可』
・起動効果
『『ミリオンレイン』と発音しエネルギータイプで発射すると、大量の矢が自動生成され、発射される。クーリングタイム一分』
『『スーパーノヴァ』と発音しリアルアローで発射すると、威力超絶強化。クーリングタイム五分』】
色々ぶっとんだ性能である。
「な、なにこれ」
ミズハが驚いているのは、弓の性能ではない。確かに、今使っている弓もゼツヤから貰ったものだが、比べ物にならないほどの性能がある。
だが、違った。
『製作工房 オラシオン』
この一文に驚愕していたのである。
ゼツヤは、オラシオンの従業員なのだ。
「ゼツヤ君。何で黙っていたんだろ」
箱のアイコンを見ると。手紙が表示されていた。
ためらいなくクリックする。
『誕生日おめでとう。まだレベル100にはなっていないと思うが、記念だから送るよ。それと、『オラシオン』に関しては黙っていてすまなかったな。実のところ、俺の生産能力は、まだプレイヤー本人の実力が低いうちは頼りにしてしまうんだ。これは経験則だからな。まあ弟子三人がそうだったんだけど。それは今はいいか。
ミズハは最初から弱くはなかった。むしろ、ただレベルをあげているプレイヤーよりも断然強い。今ではもうベテランとほぼ同じレベルに達していると思う。でも、あえて言わなかった。オラシオンは、個人にたいしての助け船のためにある訳じゃないからな。それに、ミズハは自分の力でどんどんこの世界のことを知っていった。そして強くなった。俺がオラシオンだと言うことを知って、どうなってしまうのかが全然予想できなくてね。まあ、先送りにし続けていたと言うこともある。後悔はしていないよ。
まあそんなことはもういい。ミズハの知らないことは、この世界にはたくさんあるよ。
今よりも強くなって、トッププレイヤーなら誰もが持っている『自分にしかできない何か』を見つけて、それを磨いて、この弓を完全に使いこなしたら、俺からのレクチャーは完全終了だ。直接教えていないからってレクチャーが終わっているわけではないよ。
その時は、おもいっきりデュエルをしよう。
その時は、俺の誰にも見せていない本気を全部見せるよ。
さて、文頭にも書いたが、誕生日おめでとう。
この手紙を、挑戦状ととるか、祝いの手紙ととるか。あるいは両方か。それを決めるのは君自信だ』
「ゼツヤ君。私は、両方だよ」
ミズハの瞳は闘志で満ちていた。
誕生日という、ある意味一番の記念日。そんな日に挑戦状を送ってくる者など、古今東西どこにもいないだろう。ゼツヤを除いて。
「絶対負けない」
ミズハは、夜空にように輝く弓を携えて、町を出ていった。
PSを見落としていたことなど、本人がわかるはずもなかった。
『PS たぶん読んでいないと思うけど。一応書くぞ。寝顔。可愛かったよ。あと、ミズハのホームの冷蔵庫に、特製ケーキを入れているから、あとで食べてね。このPSを読むことで冷蔵庫に出現するようになっているからさ』
ロミュナスのある一軒家での夜。少女が赤面し、形容しきれない表情のまま、『おいしい』と呟いた。
ゼツヤは手紙を書くタイプでは本来ありません。文章構成とかは考えずに、書きたいことだけ書きます。




