二つ名取得=強者の証
ゼツヤは始まりの町で待っていた。
まあそもそも、ミズハは始まりの町以外の町に行くことが出来ないのだが、それはいいとして。
「あ、ゼツヤさん。待ちましたか?」
「いや、俺も数秒前に来たからな」
「はじめて聞きました。その台詞」
「俺も言ったのははじめてだ」
まあ雑談もしながら、フィールドに行く。
準備?ゼツヤなんて、存在そのものが準備完了である。
簡単なフィールドから、ちょっと離れた森にもいった。
今日はミズハは時間があるらしいので、午後には次に町に行く予定である。
「そういえば、ゼツヤさんって二つ名って有るんですか?」
「ん?二つ名か。前提の話だが、NWOでは、二つ名。それも厨二的な感じが強いものを持っているやつは強者だって言う認識があるぞ」
「そうなんですか」
どんなオンラインゲームでもそうだが、二つ名やニックネームと言うのはシステム的に存在するものではなく、プレイヤーが決めている。
また、一人で複数の二つ名を所持しているものもいる。
システム的には存在しないが、少なくとも、NWOではそういったものは『ネームホルダー』と呼ばれている。
知った話では、こんな感じだ。
ゼツヤ 『超越創造者』
レイフォス 『異常存在』
ユフィ 『瞬速幻影』
セルファ 『全所守護者』
サーガ 『虹色流星』
シャリオ 『天災魔導師』
クラリス 『ユグドラシルティアー』
バスター 『カタストロフセイバー』
ゼノン 『エンドレスレイン』
テラリア 『キャプテン』
アーネスト 『旋律の先導者』
ルナード 『災禍の元凶』
くらいだな。あとはしらん。
「色々あるんですね」
「まあな」
「ところでゼツヤさんは、『オラシオン』の従業員ってどんな人だと思いますか?」
何て言えばいいんだろう。
「ミズハはどう思うんだ?」
「NWO中毒者だと思います。会ってみたいですけどね」
そっちか。あと、目の前にいるぞ。
どうでもいいけど、今でもオークションにだしているよ。創造神になって性能が上がったから客数がヤバイことになっているよ。
因みに、オラシオンとしてのニックネームだが。
『オールクリエイター』『アイテムライブラリ』『伝説作り』
等がある。
「でも、スゴいですよね。アイテムをオークションに出すだけで伝説を産み出せるんですから」
そう言うもんかね?
まあ、自分の評価と言うのは案外わからないものだがな。
「私もいつかもらえますかね?」
「レベルが高くても、プレイヤースキルを持っていても、なにもしなければ二つ名は手に入らないよ。なにか行動を起こすことだね。イベントの時が一番いいんだが」
「まあ、まずは地道に頑張ります」
「そうした方がいいよ」
それをせずに挫折するやつも少なくないからな。
ちなみにだが、二つ名は戦闘職だけに送られるものではない。生産職だって、しっかりと持つものはいる。聞いたことはないが。
「ゼツヤさんは誰かにつけたことってないんですか?」
「そもそも二つ名って世論だろ」
会話が一瞬止まった。
「まあそれもそうですけどね。私だったら何になるかなぁ」
「俺の知っている範囲で二つ名持ちって全員レベル90以上なんなんだけどな」
「まあ、そうですよね」
ミズハは現在6である。先は遠い。
「手っ取り早く強くなる方法って有るんですか?」
「パワーレベリングでするのが一番早いとは思うが、実質のところはわからないな」
NWOはレベルアップが遅いゲームとして有名だ。
まず、基本的に必要な経験値の量が多い。これが普通の意見。
あと、HPがゼロになると経験値をそれなりに持っていかれる。『レベルが上がって狩り場のランクをあげたら対応できなくて乙。おまけにレベル減った』というコメントが多々あるが、これはそういう理由だ。上がったばかりでは、そのレベルを維持するためのギリギリの経験値しか持っていないため、HPがなくなるとレベルが減少するのである。
「オンラインゲームで二つ名って重要なんですね」
「まあ、価値観の差だな。俺は気にしないタイプだし」
「そういう人もいますよね」
ちなみにだが、今現在のトッププレイヤーはほとんどが黎明期からの顔見知りのため、二つ名で呼び会うことは少ない。普通に呼べばいいからだ。
まあそういいながらも森を歩いている。
……なんかプレイヤーがいた。しかも二人、ブリュゲールのメンバーである。
「なにやってんだ?あいつら」
「あの装備って確か『ブリュゲール』のメンバーですよね。NWO最大って言われてるギルドだったと思いますけど」
「まあ確かにそうだな」
今年に入ってからずいぶんと振り回されたものだ。いや本当に。
「なんだ貴様たちは!あ、お前は……」
二人組は俺を知っているようである。
待てよ。こいつらどこかで見たようなことがあるような……。
「今年の四月にブリュゲールに攻めたときにホームの門番やってた二人組だな」
「よく覚えていたな」
「記憶力はいいのでな」
「ところで、いったいこんなところに何をしにきたんだ?」
話を切り替えるのが早いな。
「いや、新人プレイヤーのレクチャーだが」
まあ別にソロが一人、誰かを教えていたとしても不思議ではないので、すぐに納得したようだ。
「で、そっちは?」
「……雑用だ」
何となくわかった気がした。
「ああ、成る程な」
「分かるのか?」
「まあな。ヘリオスだもんな」
たまに見かけないわけではないのだ。単にブリュゲールなので何をしに来ているのか気になるだけである。
「まあ頑張りな。俺たちはこの辺りではなにかを採取する気はないからな」
「助かる」
まあ色々思うことはあったが、
この二人、採取スキルあったんだな。であった。
また進んでいく。
「お、あれは祭壇でしょうか」
石で組まれた祭壇があった。
「ボスポイントだから気を付けろよ」
「そうなんですか?」
「自然フィールドで人工物があったら大体そんな感じだ」
ちなみにだが、先程の二人がすでに倒していたようだ。警戒する必要はなかった。
午前中は面白いものはなかった。
次は午後である。




