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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
名門大学の占領作戦は『兵器』がキーワード
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一勢力が吠えるには、詰めが甘い。

地の文多いです。

 さて、ドミニオンのいきなりの大失敗から数分後、もう残されている兵器は少なく、一時的に終了するかのように思われた。


 だが、ドミニオンの頭脳。なぜ天恵大学に来たのかさっぱりわからない兵器好き女性プレイヤー『ウェポンナ』は、既に戦争系ゲームを経験している。要するに、こういった戦いで何が必要なのかはあらかじめ知っていた。


 補足するが(必要はないが)ウェポンナというキャラネーム。『ウェポン』と『(オンナ)』を掛け合わせただけの安直全開の名前である。というか、ウェポンナ。響き的に名乗るのは少々きついものがあるように思うが、まあそれは価値観の問題である。


 話を戻すが、戦争において必要なものは『物量』と『補給力』である。


 これは考えればある意味当然のことだ。

 アニメでは一日もあればどんな大規模な戦闘も終了しているが、本気でやろうと思ったらもっと必要なのは一目瞭然である。

 一日以上続かない理由は、まあ確かにそんなに長いこと戦争シーンを出していても視聴者が飽きてくることもあるが、先程いった『物量』か『補給力』。どちらかが圧倒的に足りないのだ。どんな強力な兵器を投入しようとも、ほとんどの場合、『無限エネルギー』的なものは実現されていないので限界が発生し、補給する能力がいくらあっても、そもそももとがないのでは意味がない。


 このふたつがないのでは、ひとつの強力な何かを産み出し、それを継続的に運営する必要がある。そんな都合のいい物があるとすれば、絶対的な実力を持つプレイヤーを雇うしかない。だが、そんなプレイヤーが仲間になったとしても、一人である以上、必ず限界は、まあ、存在しないわけではないかもしれないが、一般的にはいないだろう。


 ドミニオン。圧倒的なリアルマネーによる課金アイテムの数は驚異的であり、物量は問題ない。


 圧倒的な物量がてに入ると言うことは、圧倒的な資金に繋がる。これにより、プレイヤーなら誰もが普通にてに入れることができる運搬手段を大量にてに入れることができる。

 無論。運搬手段をてに入れすぎると、物量が不安になり、逆に物量を多くしすぎると補給力が減少する。


 だが、ウェポンナはその辺りの需要と供給をほぼ完璧に理解している。


 細かい計算が必要になってきたり、急遽方針変更が行われる場合も確かに存在するが、難関大学に在籍しているものが60人以上もいるのだ。バカではあるかもしれないが、賢くないわけではない。


 そういう意味では、確かにドミニオンは強力だ。


 だが、それらは揃えることがそもそも楽ではない。

 戦闘機や戦車の設計図は、無論だが現実世界にはない。だからこそ、自分で考えて産み出すしかない。


 更に、圧倒的な作戦には、必ず『必要最低限の状況』が必要になってくる。

 それでは、足りない。


 どんなものであるかは関係なく『特定状況下における最強』では『純粋な理不尽』には勝てない。


 努力を認めることが無いわけではない。ファンタジーの世界観を出し続けた舞台で兵器を考え、現実に実行する発案力や行動力は、さすがと言うべきだろう。


 戦闘機の墜落の原因に気がつくものはいないわけではない。というか、ほぼ全員が瞬間的に理解した。

 即改善し、実行する。その手順は早かった。


 実際に、多くの戦闘機が飛んできた。


 それらは爆弾を何個も積んでおり、被害を大きくするには十分だったと誰もが思っただろう。


 しかし、兵器には、すべて弱点がある。

 簡単な話だ。


 前にしか攻撃できないのなら、後ろから攻撃すればいい。回り込むために一時的にスキルで姿を消せば、なんの苦労もない。


 上にしか攻撃できないのなら、その下から攻撃すればいい。手段は、既にある。


 下にしか攻撃できないのなら、その上から攻撃すればいい。相手の射程範囲外でまず上にいって、あとは上から奇襲すれば問題ない。


 全方位に攻撃できるというのなら、好きにさせておいて、供給をなくせばいい。NWOに『無限』も『永続』も存在しないのだから。


 範囲攻撃で攻めてくるのなら、範囲外に即撤退できる人材を当てればいい。15年間続いた世界に、そんな人材がいないはずがない。


 毒で攻めてくるというのなら、耐性を持っていれば問題ない。


 すべてに対処法はある。

 彼らが産み出した兵器は、一個体において、そのどれもが『ひとつのことしかできない特化型』だ。質においては、ステータスを極振りしたプレイヤーよりも、汎用性は圧倒的に下だ。


 そしてその対策は、全てが、創造の神を名乗る『伝説作り《レジェンドメイカー》』によって達成された。


 今回、その本人は、基本色を変えて参戦しているため、多くの人間には誰なのかはわからないだろう。

 だが、『オラシオン』なのだと理解するまでに、時間はかからなかった。


 すべてのトップギルドが、たった一人の蹂躙を見た。


 写る目にあるのは、驚愕か、恐怖か、いずれにせよ、本気で敵に回すと言うことがどういうことになるのか。それをはっきりとさせられた。


 トップギルドを名乗る彼らがなぜ止まっていたのか、マスター命令なのだが、その命令がなぜ下されたのかは、一般プレイヤーは知るよしもない。


 だが、誰もが、ひとつのメッセージに気づいた。


 それは、『そんな兵器(おもちゃ)で、語る資格などない』ということだろう。


 戦闘センス。スキルの汎用性。各ジョブの固有アビリティなど、NWOの強さの要素は様々だ。

 だが、『アイテム』のみで語るというのなら、目の前の、明らかにスキルやジョブによるものではない、アイテムの極地が、全力で相手になるのだと言うこと。


 誰もが、それを理解した。


 もっとも愚かな、虚名のエリートを除いて。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 富里博也は天恵大学『NWO完全統括企画会』の部屋で唸っていた。


 彼はとても面白くなかった。本当に面白くなかった。

 今回のこの企画は、達成すれば実は理事長の評価に繋がる可能性があったからだ。


 この学園の理事長は『NWOプレイヤー』なのだ。

 かなり高いの学校運営能力を持ちながらも、NWO歴は長い。そして、その厳しさ。更に現実を知っている。更に言うなら、NWOの世界を愛しているといっても過言ではない。

 NWOの完全統括が実現し、全権利をこの理事長に譲渡すれば、すくなくとも、就職に関係はないにしても、個人的によい関係に繋がると確信していたからだ。(博也自身の持つVR技術を買いたいという機関は事実として、二回生であるにも関わらず多いため、そもそも就職には現時点で困っていない)


 正直なところ、NWOを、評価のための道具に過ぎないと思っていたのである。


 だが、完全に失敗したといっていいだろう。兵器関係のVRゲームに熱中していた生徒すら半ば強引に呼び込んで戦力を産み出したが、たった一人に負けたのだ。

 あの理事長だ。今回の企画、その大きな始まりであった今回の大失態はすでに知っているだろう。


 だが、自らが企画したものが大失態をおかしたと言うのは博也は納得しない。だが、現実として起こっている。まだ学校側には、実は発案者は掲示していない。今のうちに誰か別の人間に設定しておくとしよう。


 そう思ってウィンドウを開こうとしたとき、メッセージが来た。


 誰かと思って開いてみる。

 アイコンを見る限り、学校の誰かからのメールだ。


 そして、メールを開く。


『富里博也君。理事長室で待っているよ』


 メールの差出人は『伊藤哲也(いとうてつや)』だった。紛れもなく理事長である。


 何を言われるのかを予測できないほど愚かではない。だが、いかなければそれはそれで不味い。


 行ってみた。


「失礼します」


 ドアを開ける必要はない。自動ドアだ。

 開いた先、豪華な机に座っている男性は、まだ若い方だろう。顔は普通だが。


「もう少し色々と考えてから来ると思っていたよ」


 理事長が口を開く。


「それは必要ないと感じましたので」

「理由はあえて聞かないでおこう。しかし、ずいぶんと失態をおかしたものだね。たった一人に負けるとは」

「あんなものはれっきとしたチートですよ」

「NWOにおいてチートなどという言葉を使っている時点で、君は三流以下だ」


 この理事長の評価は容赦がない。


「理事長は、あの戦力が正常なものだと認めるのですか?」

「愚問だ。私はあの世界で起こったことは、すべて可能なことなのだと言うことを知っている」


 知らなさすぎるのだよ。と、哲也は続けた。


「まあ君はもう私の眼中にはない。今こうして呼び出した理由は、敗北から何を学んだのかを聞くためだったが、その様子では、打開策を見つけ出そうとすらしていなさそうだ」


 ある意味最大の失態は、あの戦力をどうにかするかを考えようとしなかったことなのだと、遅くも気づいた。だが、すでにもう、終わってしまっている。


「ところで君は、私が向こうでは、どんな存在なのかを知っていたかな?いや、知らないはずだな。思考検索をしようとしても無駄だ。君はこの部屋では行えない設定になっているからね」


 哲也は一呼吸おいて、続けた。


「私は向こうでは、『セルファ』を名乗っている。この部屋を出たあと、調べてみるといい。まあそれはいいか。退室しても構わない」

「……失礼しました」


 博也は背を向けた。


「これは本人から了承をとっているので話させてもらうが、私の向こうでの名前を調べたとき、『シャリオ』と言う名を見つけるはずだ。小野寺雄牙君のことだ。よく覚えておくといい」


 博也はなにも言わずに退室した。


 そして、思考検索。


 その顔が悔しさに満ちたのは、言うまでもない。

理事長と教師にはかなり差がありますが、この人は普通に教壇に立つような人なので、教師としてのことを全くしないわけではありません。まあ、シャリオの方が賢いんですけどね。現実として。

因みに、エクストリームメンバー+ゼツヤはちゃんと知っています。

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