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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
名門大学の占領作戦は『兵器』がキーワード
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宣戦布告といきなりの大失敗

「ついにって感じだな」


 竜一は沖野宮高校の教室で呟いた。

 なお、いまこの教室にいるのは竜一とデュリオだけである。


「『9月15日午後5時。合併ギルド『ドミニオン』による進行を始める』か。大きく出たものだね」


 デュリオが苦笑しているが、それが普通である。少なくとも、今までにはなかった。


「そう言えば、竜一は今はNPCをどれくらい動かせるんだい?」

「ん?ああ、それか。創造神になってから、半分以上の期間が過ぎているデメリットを消去できる消費アイテムが生産可能になったからな。すでに全員を動かすことができるよ」

「それはよかったね」

「ああ、本当にな」


 ランクが最上級のNPCは知能が高く、さらに感情もある。マスターである竜一が行った結果であるデメリットとは言え、半年も待つと言うのはとてつもなく忍耐力が必要だ。


 ソウヤは話し相手が多くてよかったらしいがな。


 まあそれはいいとして、この進行。どれ程の規模なのか全く想像がつかない。なにせ、もとはブリュゲールがいるため、基本的な物資はかなり揃っているはずなのだ。


 ゼツヤがトップ四人に解説した兵器は三種類。


 スクロールやグリモアの大量起動装置。

 バリスタ。

 戦車。


 この三種類だ。


 しかも、すでに戦艦を所有しているのだ。戦車なんていくらでも作れるだろう。


 素材が足りるのかどうか疑問に思ったが、一瞬で取り消した。NWOでは、『鍛冶スキルが高ければ、追加効果を持たない武器や防具を素材に還元できる』からだ。

 課金アイテムでは直接素材の購入は不可能。まあそもそも、マテリアル・オリジンを大量購入なんぞされたらたまったものではないが、それはいいとして、直接は無理だが、人数さえあれば間接的に入手可能である。


「どれ程の数で攻めてくると思う?」

「それがわからないと言うことを考えていたところだ」

「……」

「いや、そんな目をされてもな。まあ占拠が目的なんだから、少なくはないと思うぞ。ブリュゲールだけで今じゃ8000人いるし」


 デュリオは『そんなにいたっけ?』という顔をした。


「多分、予測はしない方がいいと思う。『これくらいだ』という数の限度は、ブリュゲールやスカイグローリー、今は合併してドミニオンだが、そのトップ2が考えないだろう」

「それは言えるね。竜一の予想としては、どんな始まりになると思う?」


 竜一は創造神になる過程で産み出した数々のアイテム。さらに、ジョブシステムができたことによって大量に追加された課金アイテムの種類。今までに出てきたドミニオンの兵器。

 前提として、行われるのはNWO内部だということ。

 それらを総合し、発言したのは、こんな一言だった。


「多分、大失敗から始まると思う」


 当然だが、デュリオに理解できるはずがなかった。

 まあ無論。竜一も確信しているわけではないのだが。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 午後5時。


 始まりの町周辺に、大量の戦車が並んでいる。

 さらにその後ろには、巨大な板に並べられた大量のマジカルスクロールとグリモアがある。

 流石に戦艦はなかった。

 だが、ゼツヤは説明しなかった(予測していなかったわけではない)物がある。


 戦闘機だ。空を突っ切り、大量の弾丸を撒き散らし、爆弾を降り注ぐ兵器。それがあった。


 補足すると、爆弾は生産可能だ。調合スキル使いの最強武器だからである。


「まさか、戦闘機なんてものを用意してきたなんてな」


 ゼノンが始まりの町の出入口で呟いた。


「というか、進行とは言うけど、いったい何をするつもりなんだろうな」


 レイフォスが呟くが、疑問に思ったものは多いはずだ。


 NWOは広い。始まりの町が重要なのかどうかと聞かれれば、初心者でなければ利用者は少ないはずだ。今回は外から来ているので、戦艦を使って運搬してきたのだろう。ここではないどこかにいればいいだけの話なのだ。


「多分。そのままの意味で始まりの町を占拠するつもりなんだろうな。新しく始めるプレイヤーを、ブリュゲール以外の戦力に加えないことが一番の目的だろう。実質、ああいった兵器というのは、ステータスに関係なく操作できる。あと、NWOプレイヤーはほとんどが未成年だ。要するに子供が多い。ゲームを始めたばかりにあんなものを持たされたら、色々勘違いするだろう。あとは適当に『魅了』にしておけば、簡単に戦力を増加できる」

「そこまで考えられているのかどうかは不明だが、成功すれば厄介なのは間違いないな」


 レイフォスが呟いた。


「ところでゼツヤ。大失敗から始まるだろうといっていたが、あれはいったいどういうことだ?」

「多分みていればわかるよ。ただちょっと確認が必要か」


 ゼツヤはすぐそばにいたシャリオにきいた。


「シャリオ。向こうのリーダーの兄の方はいったいどういう人間なんだ?」

「アバウトは質問だな。そうだな。ドジはちょっと多い方だ。バカではないが、必要最低限以外をほとんどショートカットする思考がある。効率重視といった方がいい。だが、ゲーム歴はそう多くはないだろうな。だから、『ゲームだからこんなこともできる』と考えたことを、実験もせずにすぐに行おうとする可能性もある。あいつはプライドが高いから、回りの意見をあまり聞く方ではない」

「十分だ。確実に大失敗から始まる」

「どういうことだ?」

「みていればわかるよ」


 そして、午後5時ジャスト。


 こちらは全員が構えた。


 向こうもそれぞれ起動しようとした。


 だが、ゼツヤが予想していた大失敗が発生した。


 戦闘機が、ちょっととんだと思ったら、すぐに墜落したのだ。

 しかもその墜落は、回りの兵器に被害を及ぼした。


 なんかかなり戦力が減った。まだ戦闘能力はわからないが、戦闘機はもう使えないだろう。


「な……何が起こったんだ?」

「詳しく説明するよ。ちょっとこっち来て、バスターたちにも話すから。あと君の頭脳もちょっと借りるから」

「あ、ああ」


 で、戻ってきた。


「で、何が起こったんだ?」

「原因を言うと『戦闘機をいきなり全速力で飛ばそうとした』って感じだな」


 まだ全員がわからなかった。


「まず、この世界にも、擬似的なものではあるが『エンジン』は作れるんだよ」


 調合スキルでエンジンの燃料は生産可能だ。


「エンジントラブルで墜落したのか?」

「いや、それではないと思うぞ。それは言われなくても誰にでもわかる。ガソリンスタンドを頑丈に作らないのと一緒だからな。今はないけど」


 ガソリンスタンドは、何だったか。確か『阪神淡路大震災』だったと思うが、それが発生したさいにもちゃんとたっていたという記録がある。


「エンジンってどんなものなんだ?」

「はっきり言うと、ジェットエンジンだな。ブースターといった方がイメージしやすいかな。強引にできないわけではないよ。燃料はあるからね」

「じゃあなんだ?」

「いきなり答えがほしいか?」

「というか、エンジントラブルで正解だと思っていたからな」

「じゃあ解説しよう。シャリオ。目算だが、あの戦闘機の重さは約20トンだ。これの離陸にはどれくらいの速度が必要なんだ?」


 シャリオがちょっと考えた。


「最低でも時速300キロってところだな」

「ふむ、まあこの世界でなら大丈夫だな。それくらいなら、実はこの世界では『いきなりトップスピードで』することができる」


 全員が『?』となった。


「簡単に言うなら、重量20トンを時速300キロで、最初からトップスピードで動かすことができるってことだよ。リアルなら、時間をかければ普通に音速は行けるけど、まあゲームで強引にしているんだからそんなものだ」

「まだわからん」

「シャリオは?」

「いや、俺にもわからんな。物理的なことが関係しているということはわかるが」

「じゃあ、これを聞けば分かるぞ。あんないきなり時速300キロを出そうとすると、リアルでは『自重の18倍の力がかかる』んだ」


 全員がげんなりした。


「この世界ではそのほとんどが実現しているといっていい、空気抵抗すら、AGIが高くないと、高速移動は無視させてくれないほどだからね」


 要するにリアリティーが凄まじいのである。


「何となくわかってきた」

「答えを言うよ。この世界の男性のアバターの平均体重は60キロ前後。彼らがいきなりトップスピードを出そうとした瞬間、自重の18倍。1トン前後の力によってアバターにダメージが発生。レベルが高くても、防具がない状態ではそんな力には耐えられない」


 一呼吸おいて続けた。


「必要最低限に言葉でまとめると、墜落した理由は、『操縦席から、操縦者がHPを散らして退場したから』だよ。多分今ごろ、始まりの町の復活エリアで、プレイヤーの尋問でも始まっているんじゃないかな」


 もっとも間抜けなスタートによって、進行は開始した。

 ちょっと考えれば、抵抗があることくらいはすぐに分かります。ゲームだから?NWOがあるのは26世紀ですよ?

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