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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
実力主義の意味
37/218

ゼツヤの対処講座。

 占拠が始まって一ヶ月。もうそろそろ7月に入ろうと言う状況だが、まだ続いていた。


 と言うか、たまに安く売られるのだ。そのタイミングのみを考えるなら、装備を整えて狩にいくより買った上が安いし、プレイヤーを雇っていたものたちからすれば、その文金額が安くすむのだ。


 確かに普段は高いが、払えないほど高いわけでもなく、懐が軽くなってしまった生産プレイヤーにとっては、逆にありがたい話なのである。


 だがしかし、不満が完全になくなるわけではなく、反乱が発生。

 トップクラスではないにしても、それなりに古参のギルドが集まった。


 誰もが成功すると思っていたその反乱は、瞬く間に鎮圧された。

 まったくはがたたなかったのである。



 極秘でかなり大きなギルドのマスターたちが終結し、会議が開かれた。


 その部屋にいるのは、レイフォス。ゼノン。バスター。そして、大量生産を目的としたギルド『セイリオス重工業』の工場長。セイリオスだった。


「今回集合相手もらった理由は、ブリュゲールの戦力についてだ」


 今回もゼノンが議長である。


 レイフォス、いや、ここにいる全員が思っていることがあるのだが、それは『ゼツヤが来ていない理由』である。


 今回のブリュゲールの戦力の根本にあったのは『マジカルスクロール』で、簡単に言うならアイテムだ。セイリオスのみ、ゼツヤがオラシオンの従業員だと言うことを知らないのだが、セイリオス自信、ゼツヤが作るものが高い性能を持つ、要は、アイテム作成の知識はかなりあることは知っている。


 だが、今回やゼツヤはいない。

 理由を聞いたところ『一度結論が出てから判断する』と言うので、今はこうして四人で集まっている。


「まず、そもそもだが、あれほどのマジカルスクロールは用意できるものなのか?セイリオス」

「製作手順はあらかじめメールを送信しているからわかっているかもしれないが、絶対に不可能と言うわけではない。だが、あまりにも数が多すぎる」


 マジカルスクロールを販売することを生業とするものがいる以上、作ることそのものは不可能なまでにハードではない。それはレイフォスにもわかっている。


「数が多いことの疑問を抱く理由は?」

「マジカルメリーに関してだな。あれの管理は、慣れが必要なのは当然だが、それ以前にステータスが必要だ。勿論。そんな馬鹿みたいに高いレベルが必要と言うわけではないが、装備を揃えるだけでは不可能に近い。しかも、ランク10のマジカルスクロールを製作するには、ランク10の魔法を使用できるものが必要だし、支援魔法の熟練度をかなりあげて『スクロールエンチャント』を取得する必要がある。この二つを同時に実現しているプレイヤーでなければ、いくら材料があっても製作できない。ブリュゲールに多いのは近接型だからな。鍛えればマジカルメリーの管理はできないことはないだろうが、逆にそれでは、魔法使いがいない」


 製作手順は色々あるが、『マジカルメリーを管理できる高い近接的な戦力』『高ランクの魔法を使用し、支援魔法の熟練度がそれなりに高いもの』が必要である。


 数人いるだけでも確かに製作は可能だが、それでは数が揃わない。


 マジカルスクロールの別の製作方法は、ゼツヤですら発見できていないだろう。抜け道があるとは考えにくいのだ。


「こんな短い期間で、そこまで強くなれることができるのか?」


 それは全員ができないことがわかっている。


「協力者がいるとしか考えられないな」


 それも大体予測済みであり、さらに、情報ギルドに大金を払って、マジカルメリーの管理場所を探させている。どれだけ戦力があろうと、材料が揃わなければ意味がない。いや、すでに戦力はあるのでその対処は必要だが、数が少なくなるに越したことはない。


 だが、どんな情報でも最速で今まで発見して(最大3日)いたギルドでも、一週間たっている今、見つけることができていない。

 モンスターは召喚したモンスター以外は町には入れないので、フィールドにあるはずなのだが、今現在発見できていないのである。


「仮にこの状況が続いたとしたら、トップギルドの連合で当たるしかない。だが……」


 そう、ブリュゲール相手では意味がない。しかも、NWOは広いので、潜伏先などいくらでもある。


 理由は不明で一般メンバーによる横暴な部分はストップしているが、いつまで止まるのかはわからない。


 最悪の状況は、ゼツヤに匹敵する生産者がいると言うことだが、可能性はゼロではなくとも、限りなくゼロに近いだろう。

 幸いなのは、『モンスターの出現をストップさせる女神像』が、ゼツヤにもひとつしか作れないものであると言う事実だけだ。素材が、もうシステム的に入手不可能なのである。


「話が脱線しそうだから戻すことにしよう。現状をどうするかだ」


 ブリュゲールは、圧倒的なリアルマネーを前提として強さを得ている。今回も、それが前提に含まれているはずだ。

 さらに、いまはレジェンドボックスの存在もあるため、徹底的にMP増加を狙ってくるだろう。

 NWOにおいて、万能型は存在するが、完全無欠がいるわけではない。

 現状として、今のNWOプレイヤーはすべてレイフォスに勝つことができていない状況だが、そこレイフォスでも、対応できない状況は存在しないわけではないのだ。知られていないだけで。


 今現在最もいい状況があるとしたら、この状況をどうにかできる手段、またはアイデアを持っているものが、こちらの味方となってくれる状況だろう。そしてその可能性があるのは、本来呼ぶはずだった五人目だ。


「最終的には、やはりあいつに頼むことになるんだな」


 ゼノンが呟いた。


 他力本願?大いに結構。ネットゲームなのだから。


「ちょっとメールしてみるか」

「こちらが出した結論をどうするきなんだ?」

「……お手上げ。しかないだろう」

「残念な話だな」


 レイフォス、バスター、セイリオス、ゼノンの順に呟いた。


 返信は五分後だった。


 全員が『早いな』と思った。


「メールを開く前に、一度現状を確認するか……」


 ゼノンの言葉に反論するものはいなかった。


 まず、高ランクの魔法使い(属性、及び支援魔法)が、近接一貫だったブリュゲールに数多くいること。


 次、大量のマジカルメリーを管理できる状況に出来るほどの近接戦闘能力が高いものが多数いること。あと、そもそも慣れが必要である。


 次、大量のマジカルストーンを所持していること(これは理由はわかっている)。


 次、今回の揃いのよさも、リアルマネーによる課金アイテムの延長線上であることが予測されるため、完全粛清を行っても意味はない。


 次、マジカルメリーの飼育場所が発見できていない。


 次、結果的に、対処法法不明。


「といった感じか?」

「必要な部分だけを挙げるならこれで十分だろう。レイフォス。メールを開いてくれ」

「分かった」


 レイフォスはメールを開いて、読む前に全員にコピーして送信した。


『優秀な魔法使いの収集は、ブリュゲールにも、レジェンドボックスにも不可能。俺たちでは確認できていないが、優秀な魔法使いを多数保持することに成功したギルドがあって、何らかの理由でブリュゲールに協力する形になったと思われる。なお、反乱に向かった連合ギルドに聞いたところ、使用されたスクロールは、全てランク10ではあったものの、熟練度をあげれば取得可能であったことから、かなりきついが無理をすれば強引に産み出すことも不可能ではない。

 補足すると、そのギルドは『魅了(隠し状態異常)』にかかっており、擬似的な洗脳状態になっている可能性がある。NWOでは三種類しか方法はないが。


 マジカルメリーの収集は、AGIが高いプレイヤーであるなら難しくはない。管理の際の柵は、レジェンドボックスに頼めばいい。『鉄工スキル』を持つものが全くいないとは考えられないからだ。刈り取りは、実は超高額の課金アイテムを購入すれば、ステータスさえあれば作業可能である。


 飼育場所が発見できない理由。

 そもそもマジカルメリーを飼育するためには、『地面(水があるにしても深さ10センチ以下)』があればどこでも構わない。あくまでもフィールドのモンスターなので、餌は不要だ。町に入れることはできないが、弱いモンスターしか出てこない場所、例えば初期に近いフィールドであれば、マジカルメリー程のステータスを持つモンスターなら自然に倒されることはない。

 さらに、モンスターの消滅条件は『HPが0になる』と言うことだけなので、柵さえ頑丈にしておけば放っておいても消えることはない。


 これを前提として、すでに情報ギルドが動いているなか発見できない理由は、ある種の固定観念を引きずっている可能性が高い。NWOは、前後左右に広いだけではなく、上下も圧倒的に広い。専用の道具(課金アイテムにも含まれている。ものすごく発見しにくい場所にあったが)と複合スキルを揃えれば、地面を掘ることだってできる。

 要は、地下空間で飼育していると言うことだ。NWOのマップは、一般的なフィールドであれば地形しか『絶対』に表示しないので、気づかない可能性は十分に高い。


 マジカルストーンの所有量が多い理由は書くのもバカらしいので記述しない。


 以上が、高ランクのマジカルスクロールを大量入手する方法である。マジカルスクロールの大量入手方法は俺も知らないだけで他にもたくさんあるだろうが、リアルマネーの多さ(これがある意味最大の疑問でもあるのだが)から来る課金アイテムであることを前提にすればこれが有力である。


 対処方法は、新しく味方となったギルドは根本的に弱くすることができないので、そのギルドの対応はそちらに任せる。少なくとも俺が考えることではない。


 マジカルメリーの毛の生産速度は、薬品アイテムをしようしない限り、その生えてくる速度はかなり遅いと言える。なお、この薬品は課金では入手できず、達成困難なクエストをクリアしなければ種が手に入らず、恐ろしく細かい調節が必要なので、とにかく使わせておけば、後半になればなるほど在庫は不十分になる。しつこくやっていればいつかは報われるだろう。


 他人のリアルマネーをどうにかできるはずがないし、無視できない程度の戦力が常にあるのは今まで通りである。


 現在あるマジカルストーンの産出地帯を占拠していることによる不満のために今回の反乱があったわけだから、これはやめさせるべきだ。

 方法があるとするなら、占拠の上書きを行えばいい。簡単に言うなら、別のギルドが管理をすればいいのだ。そもそも、ネットゲームで占拠を行えば不満が高まるのは当然だし、通ることそのものは自由でも、誰がいつ入ったのかという部分が丸裸になるがゆえに嫌いなわけだから、あくまでいるだけにすればいい。ブリュゲールを見つける度につじぎりにしてもいいかもしれないが、それはたぶんPKギルドに任せておけば喜んでやってくれる。『スペルバーストフィールド』が使用可能であればかなり削減されるだろうし、彼らは俺たちよりも、対人戦のキャリアが大きい。

 まあ、その辺りの選択は任せる。


 まあ、これをもとにどうするか決めてくれ。『お手上げ』の四文字にたいしての返答には十分だろう。あと、検証でかなり疲れて寝るので、メールが来ても返信不可能なので宜しく。


 ただひとつだけいうが、現実として、NWOは実力主義だ。知識も、アイデアも、実力に勝てるほど絶対ではない。


 PS 完全粛清はやるんならそれはそれでいいが、俺は参加しない。疲れた。


 以上』


 全員が苦笑いしたのはいうまでもない。


 あと思ったのは、ある意味、一番的に回してはいけないのはこいつかもしれない。と言うことだった。

ふう……。

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