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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
実力主義の意味
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リアルマネーってめんどいね

まずい。最近ペースが落ちてきた。

 超難関ダンジョン。『ルナードザーグ』

 主に騎士系のモンスターが出現するこのダンジョンでは、モンスターが『運営が設定したアクションスキル』を使用することで有名だ。


 そんなダンジョンの奥深く、クリムゾンのロングコートを身にまとい、大太刀を握る青年が進んでいた。


 レイフォスである。


「そこに誰かいるんだろ?来たらどうだ?」


 レイフォスは後ろを向いて、声をかける。

 そこにいたのはゼノンだった。いつも通り、ギルドの制服を着て、双剣を構えている。


「珍しいな。お前がこんなところに来るなんて。ギルドの運営はいいのか?」

「問題ない。と言うか、大きな指示に関しては俺が出すことになって入るが、細かいことまでいちいち指示している訳じゃないからな」


 まあ確かに、本当にすべてをやっていたらきりがないのも事実である。


「と言うか、レイフォス。お前もここに来るのは久しぶりだろう」

「まあな。というか、俺は実質、すでにあるダンジョンはすべてクリアしているからな。はっきりいって、ドロップアイテムにしか用はねえよ」


 レイフォスはウィンドウを開く。そして、あるアイテム名を見た。

 そこには、『マジカルストーン』とかかれている。


 このダンジョンは、ブリュゲールが占拠していない『マジカルストーン産出ダンジョン』だった。


「このダンジョンはあまり人が来ないからどうかなと思ったが、ビンゴだったな」

「ああ」


 因みに、あるいは当然だが、マジカルストーンの産出ポイントそのものはたくさんあるのだ。ブリュゲールはそれを考えるまでもなくすべて占領できるほどの人材を持っているが、本当にすべてを理解しているわけではない。


 だが、今現在発覚しているもののなかで、残っているのが今いるダンジョンだけなのだと言うことも確かである。


「まぁ、そもそもここは前提としてめんどくさいけどな」

「ああ、運営が設定したアクションスキルのなかには、本来、間接の問題で実現不可能な部分が多いからな」


 簡単に言うなら、ハイレベルな所見殺しなのである。


「だからこういうダンジョンではストレスがたまる、ってなんだそのクッキー」


 レイフォスはクッキーを食べていた。まだ袋には何枚も残っている。


 補足するなら、このゲームではNPCが経営する飲食店で食事は可能だが、持ち帰りはシステム的に不可能なのだ。


「いや、単にゼツヤがくれただけさ。本人いわく、こういったお菓子の材料は在庫がやばすぎて処分に困るんだそうだ」

「だからってもらうか?」

「いや、そもそもだが、こういったダンジョンでは甘いもんは必須だろうに、リラックスにいいぞ。一枚いるか?」


 ゼノンは受け取った。

 うまいお買いをてに入れた子供みたいな雰囲気で、ゼノンが租借する。

 レイフォスは、『まだまだガキだな』と思った。


「これは病み付きになりそうだな。店に出せるんじゃないか?」

「需要は気にしないんだそうだ」

「それは残念」


 まあ、結局のところ、どうするのかを決めるのはゼツヤなのだが。


「さて、集めるか」

「そっちでも必要なのか?」

「傘下のギルドのうち四つのギルドが必要だからな。数がないと困る。逆にそちらはいらないんじゃないか?」

「ゼツヤに土産」

「何か嘘っぽいな」


 ひどい前提である。



 その日は荒稼ぎしてダンジョンを引き返していた。

 ぶっちゃけた話、HPを0にして町に戻る方が手っ取り早いのだが、それが広まって普及してしまうと、アップデートでひどい目に遭うのでみんなしない。


「ん?誰かいるのか?」


 プレイヤー関知能力はレイフォスの方が上である。


 完璧にブリュゲールのメンバーだった。


「なんだ貴様たちは!」


 それはお互いの台詞だろう。


「俺はただの『エクストリーム』のギルドマスターだが」

「俺は『アンフィニッシュドレギオン』のギルドマスターだ」


 目の前にいるメンバーは、完璧にわからないようだ。


「どこの馬の骨か知らないが、ここから早く立ち去れ!」


 まあ確かに、今日はここにいる理由はない。


「だがまぁ、実力の差を教えておくか」

「同意」


 で、こてんぱんのぼっこぼこにした。


「やり過ぎたかな?」

「このゲームの理念上問題ない」


 ゼノンもゼノンである。


 で、今度こそ本当に帰った。

『このダンジョンにはまた明日来るよ』という置き手紙を残して。



 さて、その頃、沖野宮高校では、


「ふう、今日も激務終了」


 最近これを言うことが日課になってしまっている苦労人。デュリオが立ち上がった。


 『NWO同好会』はすでに部活であることの最低人数を軽くぶっちぎっているが、いかんせん目的がゲームなので、あくまで同好会である。


 レポートの必要枚数がかなり多いのだ。デュリオの前任(冬香)はかなりの枚数を溜め込んでいたので、そのぶんのつけは全てデュリオの手腕にかかっているという理不尽な状態である。


 昨日。リレイズの穴蔵にいって色々契約した。


 彼の製作する武器はゼツヤからもらった資料が中心だが、自分でも見つけようと頑張っているらしい。良いことだ。


 最近考えることは多いが、まあそれは許容範囲である。


 隣では夏希がデュリオが書いたレポートを読んでいる。初心者の夏希は、こういった情報は大切なのだ。


 バスターとしては、たったの一年でレベル50に到達した冬香の方が十分疑問なのだが、まあそこは今は触れるべきではないだろう。


 その時、通信が来た。


 竜一からだった。


『どうかしたのか?』

『いや、単にブリュゲールのことについてどう思うかって話』

『目的はあるんだろうね』

『ああ、オラシオンシリーズだな』


 竜一も気づいていたか。


『それにしても。ずいぶんと大胆なことになったね』

『これはもうそんなレベルじゃないぞ。近いうちに、ブリュゲールを完全に叩きのめすための軍が作られるんじゃないか』

『否定できないね』


 あまりにもやりすぎである。確かに法がある訳でもなければ、取り締まるものがいるわけでもないのだが、やっていいことと悪いことがあるというのは誰もが知っていることだ。


『呼ばれるだろうなぁ。俺たち』

『そうだろうね。だってこのゲームは、死亡した際の実質的なデメリットが小さすぎるのだから。結果的に言うなら徹底的にやるしかない』


 死亡した際のデメリットは、一時間のステータスダウンだけなのだ。


 実力主義。という言葉がデュリオの思考に入ってくる。


 そもそも、この言葉はゲームだけの話ではない。どの状況でも同じだ。


 だが、少なくともNWOにおいて、この言葉は残念ながら、状況そのものを表している。


 戦闘も生産も関係ない。強いものは前に進むことができ、弱いものは立ち止まるしかない。


 理不尽だが、それが現実である。


『デュリオなら参加するか?』

『状況にもよるだろう。だが、意味はないと推測されるけどね』


 そもそもだが、今現在において、ブリュゲールを許さないプレイヤーは数多くいるし、ちょっと声をかければすぐに集まるだろう。


 だが、トッププレイヤーたちは、意味がないことを知っている。


 前例があるからだ。もう八年も前のことだが。


 実は、NWOがいまのきぼまでおおきくなったのは、四年前に大規模なアップデートが行われてからのことで、それ以前は、他のゲームよりも広いといった程度であった。


 その時に、今回のような占領があったのだ。そのギルド名は覚えていないが、大人数だったのは覚えている。


 その時に、多くのプレイヤーが団結して、そこギルドに全面戦争を持ちかけたが、確かに勝利はした。


 だが、状況は変わらなかったのだ。

 死亡する際のデメリットがあまりにも小さく、すぐに復帰することができるからである。


 最終的には、後にこれは『完全粛清』と言われているが、奪うことが絶対にできない『ステータス』以外の全てを奪い尽くすといった方法を行い、戦力をほぼ完璧に削ぐことで、占領は終了した。


 だが、今夏はその手段は使えない。

 そのギルドとブリュゲールの違いは、一目瞭然で、『資金源がどこにあるか』と言うことである。


 そのギルドの資金源は、その占領から得ていた資金だったが、ブリュゲールの場合、そもそも資金源がNWOに存在しないのだ。リアルマネーが多いと言うことは、ギルドの戦力の継続を行いやすいのだ。


 仮に『完全粛清』を行ったとしよう。


 武器や防具、消費アイテムは、少なくとも無視できない程度の性能で補充される。


 スミスの道具も、課金すれば補充可能だ。


 ホームの装飾品も、全部リアルマネーで買える。


 打つ手なしだ。はっきりいって。


『今さらだけどさ。ブリュゲールノアのリアルマネーってどこから来ているんだろうな』

『それ、誰も言わないだけで全員が思っていると思うよ。と言うより、ギルドメンバーでも知らないことだと思う』


 本当に疑問だ。


『まあいい。別に対処法を考えないとな』

『オラシオンでも苦労するのかい?』

『俺はお前が考えているほど万能じゃないよ』

『でもさ。竜一って、俺より強いよね』

『知らんな』


 即答してきた。だが、否定もなかったか。

 まぁ、竜一がそこまで言うのなら、今回は待つとしよう。


 ゼツヤは本気になるとヤバイからな。

 だって。
















『完全粛清』を発案したのは、彼なのだから。

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