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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
実力主義の意味
32/218

ゼツヤも知らぬ生産方法

 パソコンが使用不可能になったので、Vitaでやっているんですけど、マジで打ち込みにくい。

 ゼツヤは多くのプレイヤーで賑わうフリーマーケットにいた。


「バスターのやつ。どこいったんだ?」


 バスタードマーケットといわれるこの場所は、ロードキャッスル城下町の一角に存在している。


 その広場の広さは圧倒的で、更に、店舗に使用できそうな物件があまりにも破格であり、数々の店が並んでいる。それによって、レイクさえあればすべて揃えることができる場所。とも言われているほどだ。


 ちなみにもっとも向いていないのは、人探しである。


 何でも大概自分で揃えることができるゼツヤなので、使用頻度は皆無だった。

 しかし、案外簡単な理由で来ることになるのも事実である。


 マジカルストーンの産出地帯を、ブリュゲールに占拠されてしまったのだ。


 強行突破するにはあとに待っている戦力を突破することができないので、ここに来ることになったのである。


 ついでにというか、バスターもこの場所に用があったようなので、一緒に来たのだ。


 とちゅうまではな。


「いったいどこにいきやがったんだ?」


 何度も言うが、人探しには向かない場所である。


 ちなみに、目的のマジカルストーンはまだ見つかっていない。

 いったいどこにあるのやら。何でも揃ってはいるが、すぐに見つかるわけではないのである。


「ん?」


 ポスターを発見した。


【スミスギルド『レジェンドボックス』入団希望者は、今すぐ『ココ』に!鍛冶スキルをマスターしている人大歓迎!】


「聞いたことのある名前だな」


 バスターにフレンドメッセージを送った。


『バスター。『レジェンドボックス』って言うスミスギルドって知ってるか?』

『知っているよ。ポスターでもみたのかい?』


 恐ろしい速度で返信が来た。


『ああ、その通りだ。で、なんか知っているか?』

『ああ、知っているよ。ブリュゲールが契約した『元』中級ギルドだね』

『今度は鍛冶屋を押さえるって訳か。ずいぶんと活発だな。で、元って言うことは、強化されたようだな』

『強化と呼べるのかどうかちょっと微妙だけどね。いい噂がたたないね。おおくの鍛冶ギルドが人材を引き抜かれている。ほとんどは、ギルドごと吸収されたみたいだ。なぜそこまでうまく行くのかは、君の方が知っていると思うけど』

『まあ確かに、引き抜きといったことが今までなかったわけではないし、生産職って言うのは成果主義だからな』


 どれ程強力なものを作ったか。ということよりも、どれ程それが役に立ったか。ということが重要だとされている。分かりやすく言うと、『宝の持ち腐れ』という状況に意味はないと言いたいのだ。とうぜんである。


 さらに、本人に実力があるにせよ無いにせよ、いい条件で雇ってくれて、尚且つ良い道具を使用できるのなら、工房を変えても文句は言えないのだ。そのプレイヤーをとどめておける『何か』がなかったということなのだから、反論に決め手がないのである。


『まあ、なかには、自分の店を持っているプレイヤーは、引き続き残っているらしいけど、なかなか売れないだろうね。君の場合は別だと思うけど、レアは素材や道具が使えるってことは、その分、いいものが作れるからね』

『さらっと俺を例外扱いしたな』

『あれ?気に食わなかった?』

『まあ、そうとも言うな。わかっていると思うが、俺にできることは、誰かにできるんだよ』

『それもそうか。しかし、話を戻すけど、そういった残ったギルド、どうなると思う?』


 そんなものは決まっている。


『そういった勧誘って言うのは、リーダーを狙うに決まっている。一番多くの技術を持っているのは、普通ならリーダーだからな』

『それもそうだね』

『まあ、レジェンドボックスがどんなものなのかはわかった。で、お前は今どこにいる?』

『喫茶店でティータイムだよ』


 通信終了。他に言うことはない。


 そろそろ戻ろうかな。買う気失せた。それに、マジカルストーンがなければどうにもならないわけではない。


 が、せっかくなので歩くことにしよう。


 広場のそとにいくと、リズミカルな鍛冶の音が聞こえる。ココはそういうエリアなのだろう。


『リレイズの穴蔵』という看板を発見した。まあ、行き先など決めていなかったので、入ることにする。


「いらっしゃいませ!」


 カウンターにいる少女が元気な声を出してこちらを見た。

 この子。プレイヤーだな。主人ではないだろう。


「えーと、どのようなものをお求めでしょうか?」


 ものすごく疑問形なのも当然である。今のゼツヤは、裁縫スキルで作った普段着だからだ。無論自作である。更に、武器を装備していないので、わかった方がすごいのだ。


「予算は気にしなくていいから、片手剣を見繕ってもらえるかな」

「あ、はい!」


 奥に入っていった。陳列だなのなかに入っているものは最高のものでは無かったようだ。まあ、見た瞬間にわかったけど。


 少女が戻ってきた。


「これはどうでしょうか」


 クリムゾンかよ


 鑑定。


【クリムゾン・ラインハルト

 製作工房 リレイズの穴蔵

 耐久地 100% 必要素材 閃光石

 ATK750

 常時発動効果

 STR増加(高)】


 ふむ、まあいいものであろう。攻撃力だけで言うなら【神託の双翼剣 フェニクス・コーラス】と同等だ。


「どうでしょうか?」

「悪くはないな。これ以上のものはないのか?」


 予算は気にしなくていいといっても、普通なら向こうが気にするし、そもそも、いきなり店最高のものを出すところは早々いないのだ。


 聞いてきてもらったところ、最高のもののようだ。あと、この剣なら在庫はたくさんあるらしい。


 疑問に思った。


 そもそもだが、鍛冶における作成というのは、産み出すよりも、同じものを作る方が難しいのだ。


 理由は複雑なものではない。単に、同じ質量。同じ叩き方といった作業を行うのには限界がある。集中力だけの話ではない。そもそも難しいのだ。そして、それはレアであればあるほど難易度は高い。


 閃光石は、はっきりいって過剰供給ぎみである。15年もたっているので、多少レアなものなら普通に手にはいるが、閃光石はそういった素材に分類される。


 悪い素材ではないのだが、飛び抜けていいものではない。


 そんな素材からこの剣を作ろうと思えば、ひとつを作ろうとすればかなりの精密さが必要である。在庫がたくさんあるといっていたが、どれくらいあるのかは別として、数を揃えようと思えば、それなりの技術が必要である。


 純粋に攻撃力をあげるシンプルなものだが、シンプルであるがゆえに扱いやすい。攻撃力だけ見れば【神託の双翼剣フェニクス・コーラス】を越えている。需要はかなりのものだろう。


「あの、どうかしましたか?」


 少女が聞いてくる。長いこと考えすぎたか。


「いや、そうだな。ここのマスターに会いたい」

「聞いてきます」


 戻ってきた。愛嬌のある笑顔を見せるおじさんと一緒だった。この人がマスターか。


「なにかようか?」

「ああ、この剣が在庫がたくさんあると聞いてね。このクラスの剣がたくさんあるというものだから、同業者として気になっただけだ」

「お前さんもスミスなのかい」

「たまたまこの店に立ち寄っただけのな。今はかなり興味があるが」

「そうかい。で、お前さんはなぜだと思う?」


 可能性はそうおおくはない。だが、これは可能なのか?


「推測だが、ひょっとして、『アクションスキル』で叩く場所や回数を全く同じにしたのか?」

「おお、こいつは驚いた。お前さんも結構やっているんだな。気づくやつははじめてだぜ」


 当たりか。


 しかし、よく考えたものだ。


 そもそもモンスターを攻撃する手段で素材を叩く。斬新な発想だが、質のいい武器の量産に、これ以上に適しているものはないだろう。記録すれば、全く同じ叩き方ができるのだから。


 しかし、


「その様子だと、なだ疑問があるようだな」

「ああ、どうやってアクションスキルとして記録したのか。と言うことだ」


 スミスハンマーと武器のハンマーは完全に分けられているので、ハンマーの熟練度をあげてもアクションスキルは作れないのだ。


「まあ、そこは企業秘密だな」


 俺でもそうする。


「まあそれくらいは普通だろうな。この方法を知っているものはいるのか?」

「いや、いねえはずだ。ちょっとまではこの工房にも大勢いたんだが、教える前に引き抜かれちまってよ」


 なるほど。


「苦労しているんですね」

「まあな。お前さんのところは?」

「被害はないですね」


 元々一人だからね。


「そいつはいいもんだな」

「まあ、そうですね。あ、この剣は購入しますよ」

「毎度あり」


 言われた金額を払った。


「しかし、俺にもできない方法があったんですね」

「そう言うもんさ」

「そうですね。ああ、これ。いいことを聞かせてくれたお礼です」


 紙の束を渡す。文字がそれなりにびっしりと書いてあった。


「いいのかい?俺たちみたいな連中は、こういった情報はむやみに渡さないもんだぜ?」

「いいんですよ。情報の10や20。盗まれたところで問題ありませんから」

「最近の若いやつは言うことが違うねぇ」

「買いかぶりです。ああ、それと、そちらの少女は、あなたの娘さんですか?」

「よくわかったな。ついでに、今高校一年生だからな」


 年一緒かよ!


 なんかよくわからないことを色々と知った一日であった。


 ちなみに、バスターはとっくの昔に帰っていたとのこと。

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