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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
強者たちの交響曲
30/218

NWO最強

さて、一方をゼツヤに任せたレイフォスである。


「やあ、初めまして、異世界人さん。ちょっとどういうことなのか教えてほしいんだけど……」


 かなり友好的に話しかける。レイフォスはいつもこんな感じだ。初対面でも。


「まあ、それに答えてくれそうな連中じゃないか。なんか、情報収集を優先しているように見えるけど」


 NPC2人(理由は不明だが両方魔法使い)がピクッと反応した。


「あたりみたいだな。それと、たぶんさっきからあんたらの連れが負けていると思うけど、俺はそいつら全員より強いからな?最初から本気になった方がいいぜ」


 大太刀を構える。


 いきなり石の巨人を出してきた。2体。


「それが今のところの、『あんたたちに使用できる』最高戦力って訳か。まあいいさ。来ないんならこっちから行くぞ」


 レイフォスは突撃する。


 石の巨人も拳を振りかぶるが、いかんせん遅い。

 レイフォスには、そんな拳は届かない。


 いや、言いなおそう。そんな拳は切り落とされる。


 レイフォスの大太刀は、巨人の右腕を斬り落とした。


「こんなもんか。ずいぶんともろいんだな」


 そもそも、この大太刀で切れなかったら逆にすごいのだがな。なにせ、設定上のATK値は歴代最高の数値である。


 巨人が今度は左腕を振りかぶった。


「学習能力がないのかね?」


 来るかと思った拳は途中で止まる。フェイントだ。もう一体が仕掛けてくる。


 だが、レイフォス相手ではそれは悪手だ。


 途中で止まった拳を斬り落とし、その勢いのまま、もう一体の両方の拳を斬り落とす。


「今度は腕ごといくか?」


 魔法使い2人に向かって大太刀を向ける。

 2人は火属性魔法。それも連射型を使用した。


 だが……レイフォスは振り切ることはしない。常人なら、一発迎撃してから次に入るまでタイムラグがあるのだが、そんなものはレイフォスにはない。


 文字通り、全て切り落とした。


「さて、もういいか」


 太刀を下段に構える。太刀がエフェクトで包まれた。


「『新月』」


 次の瞬間。2体の巨人は、両断されていた。

 それも、常人なら反応不可能な速度で。


「お、驚愕しているみたいだな。勉強が足りないぞ。まあ、あんたたちが俺達の世界に来たのは初めてなんだろうがな」


 アクションスキルはすべてプレイヤーが作成するものであり、作成せずに得ようとすれば、誰かからコピーデータをもらうしかない。それが、NWOにおける『技』と言うものだ。


 だが、いろいろ利用法はあるのだ。


 仮に、AGI優先で育てていたプレイヤーが、『A』と言うアクションスキルを作成したとしよう。無論。この『A』は、速度優先のアクションスキルだ。

 そしてそのデータを、STR優先で育てていたプレイヤーに譲渡したとする。

 そうした場合、速度はそのままで、筋力パラメータのみ変更されたアクションスキルが使用できるのだ。


 だが、そもそも受け取るためにはその武器カテゴリである必要があり、受け取るアクションスキル。レイフォスの場合大太刀なので、最低でも『太刀』のアクションスキルを誰かが生み出さなければならない。


 圧倒的な速度がほしいのであれば、確かにユフィに作成してもらうのが一番いい。だが、ユフィは短剣だ。武器の熟練度が100になれば技は作成可能だが、慣れない武器でやろうとすると、かなりの時間が必要になる。それはある意味当然のことだ。


 散々頼んでユフィに刀スキルの上位スキル『太刀』を取得してもらい、さらに刀スキルを消去して、再度速度系のスキルを取得してもらってマスターして、この技『新月』を作成。すぐにレイフォスに譲渡して、ユフィは太刀スキルを消去したのだ。


 普通ならこんなことはしない。なぜなら、万全のユフィにやってもらうとすると、その時のユフィのレベルは100だ。もちろん。スキルスロットはすべて埋まっている訳で、刀スキルを得るためにまず一つスキルを消去し、その後、太刀スキルを得るためにもう一つ消去。刀スキルを消去したが、再度速度上昇系スキルをとってもらってマスターしてもらう。そこまでできる仲間なんてそうそういない。スキルと言うのは、プレイヤーとしての自分の形であり、重要な要素だ。よほどのことが無ければ、普通なら消すこと自体あり得ないのである。


 ちなみに、こんな過去があるので、レイフォスはユフィに言い負かされるときが多い。ただし、ユフィが『新月』を渡してしまったので、レイフォスの化け物度が増したのも事実なのだが。


「俺のこの技は、何よりも早いぜ」


 攻撃力においては『エンプティ・ダイアログ』にはかなわないのだがな。なんでなのか本人にもいまいちわからないらしい。


 次の瞬間。2人が転移エフェクトに包まれた。


「帰還か……?」


 空間が裂けた。


「新手か……」


 こちらに来たのは一人だったが、その雰囲気は、先ほどのNPCとは全く違うものだった。


「ん?俺の相手は、双剣使いと大剣使いのはずだったが……変更されたみたいだな」


 普通の声だ。だが、やたら好戦的な雰囲気がある。

 全身にフードを羽織っているのでよくわからないが、背に背負っている長剣はかなりの業物のようだ……まあ、『オラシオンシリーズ』に劣っているように思えるが。


「で、お前が俺の相手か?」


 NPCが聞いて来る。


「ああ、そうだと思うぞ?」

「そうか、最近強いやつとバトっていなくてな。楽しませてくれよ?」


 さて、今の言葉からどれほどのことが推測できるのか。


 まず、このNPCの当初の相手は、ゼノンとバスターだったと思われる。急遽こちらに変更されたようだが、まあその理由は今は置いておこう。


 次に、『最近強いやつらとバトっていなかった』と言う言葉。文字通りなら、『今までどこかで戦っていた』と言うことになる。


 やはり、別の世界のNPCか。だが、においとでもいうのか。その部分はNWOに似ている。おそらく。戦闘におけるパラメータに関しては、NWOと全く同じものが使われているのだろう。


「んじゃ、いくぜ!」


 NPCが長剣を構えて突っ込んでくる。


「NPCの動きじゃないな。まあ、いいんだがな」


 はじいたついでに一発入れる。


「うおっ!な……何だ今の動きは……」

「ちょっとそれは言えないな」

「まあそうだろうな。しかし妙なもんだな。斬撃の軌道が途中でまがったようにしか見えん。それがお前の技術って訳か」

「ま、それに関しては反論できないな」

「おもしれえな」


 再度突っ込んでくる。


 ただ、やや振りが遅い。ひょっとして……。


 振り下ろされた長剣は、途中でわずかに角度を変えた。ただ……ものすごく人工的な雰囲気があった(レイフォスのパターンチェンジだって人工的だが)。


 当然。見よう見まねでできるわけがない。はじいて、斬る。


「げっ……こりゃ思った以上に難しいな」

「簡単にできると思っていたのか?」


 そうだったらそれはそれで心外である。


「それは思っていなかったがな。しかし、お前強いな」

「この世界では一番強いからな」

「そりゃ光栄だな。しかし、いいのか?そんなに情報を言いまくってよ」

「お前もそうだが、お互いに名乗っていないだろう。お相子だ」

「はっ!まあいいぜ。たのしもうじゃねえか!」


 NPCが最後向かって来た。


 そもそもだが、何故レイフォスのパターンチェンジに勝つことができないのか。


 理由はいろいろあるが、例えばじゃんけんで例えるとしよう。


 お互いに出す際、まずどんな手にも変更しやすい形にして(なれていない内はグーでいい)、出す時に、相手が出す手を一瞬で判断して、その形を変更する。そして、勝つ。


 もっと簡単に言うなら、『大胆に後出ししている』と言うことなのである。


 相手が手を出してからこちらが出したのではなく、見た感じは一緒に出しているため、反則とは思われない。だが、スロービデオで見られたら少々遅いことに気付かれるが、そんなものを持ちだすやつはいない。


 戦闘では、相手が何かをして、それに対して万全の手を一瞬で判断して実行する必要がある。

 これは反射神経ではどうにもならない部分がある。


 まず、相手を『見て』、その次に自分がどんなことをすればいいのかを『理解』し、『実行』すると言うことが必要であり、双方が少しでも外れていたらこれは成功しない。


 なお、ゼツヤにはできないのかどうか。これができないのだ。

 ゼツヤの『先天性集中力過剰症』は圧倒的なまでの演算速度を実現するが、これは高速戦闘においてはあくまで正面の一点だけだ。目の前のそれに対応することは可能だが、その先に踏み込むためには別の思考が必要になる。

 遅い戦闘であっても、圧倒的な演算速度から来る『周りが遅く見える』と言う状況と、自らの速度が違いすぎるため、体が追い付かないのだ。


 要するに、『見て』『理解』することは可能だが、『実行』ができないのである。


 そして、これらのすべてを、レイフォスはすべてクリアしている。


『状況判断能力』が高いとはそう言うレベルではない。何かが起こった時、もうすでに理解しているのである。


 これが、『最強』のギルドマスターであり、さらに、全プレイヤーの中でも『最強』の理由である。


 その実力の前には、異世界からの侵略だろうと、乱されることはない。


 いつしか、レイフォスの目の前には、NPCが転がっていた。

 HPはまだ残っている。


「つ……強ェ」

「そりゃそうさ」


レイフォスは満面の笑みを浮かべた。


「腹立つ野郎だ……ん?へ、どうやら、今回はここで終わりのようだ。この侵攻で、多くの情報が手に入ったわけだ。もう今回は満足なんだろうよ」

「今回はこれで終了か。すまないが、名前を聞いてもいいか?」

「……俺はキリュウだ。お前は?」

「レイフォスだ。また会おう」

「ああ、そうしたいぜ。俺は本来、侵攻とかそんなの興味なかったからな。ただ強いやつを戦いたかっただけだ」

「気持ちが分からないわけじゃない。今度は上司連れて来いよ。まとめて相手してやるから」

「最後まで腹立つやつだ。本来の俺は、仲間要らずで、無差別攻撃みたいなことばかりするような奴だから、覚悟しておくんだな」


 キリュウは転移エフェクトともに消えていった。


「向こうにも向こうの事情があるってことか」


 見渡してみると、アルベシオン・ジャイアントが転移エフェクトで回収されていくところだった。


「お疲れさん」


 レイフォスは戻って行った。



 まだまだ続きます。この章。

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