NWOにおける双剣とは?
片方をバスターに任せて、もう片方にゼノンは向かった。
「どうやら、本当に2人でやるみたいだな……」
片方は短剣。片方は魔法使い。前衛と後衛がしっかりと分かれている。何故2人なのかはわからない。人手不足ならありがたいのだが。
ただ、いぶかしげな雰囲気が漂う。
そこまで考えたところで、到着した。
「双剣使いと戦うのは初めてか?」
ゼノンはわざとらしく二本の剣を見せつける。
左手に握っているのは『オラシオンシリーズ』であり、右手に握っているのは、『ギルド武器』と呼ばれるものである。
規模が1000人を超え、あるクエストをクリアしたギルドは、『ギルド武器』を作成する権利を得ることが出来る。
『ギルド武器作成 施行回数一回』と言うものがギルドマスターのウィンドウに出現し、これを鍛冶スキルを持つプレイヤーに渡して、特殊でなくても構わないので、とにかく武器を作成する。
この時に出来上がる武器は圧倒的な性能だ。左手に握っているオラシオンシリーズの武器と比べてもそう変わらないほどである(要するにオラシオンシリーズも相当鬼畜なのだが)。
最高の素材と最高の鍛冶スキルと最高の道具。おそらくそれを得ることが出来るのは『オラシオン』の従業員を手に入れたところだけだろう。それも、巨大ギルドがオラシオンの従業員を得ようとする理由でもある。
……めぼしはついているが……。
まあそれはいいとしよう。
NWOにおいて双剣と言うものはどういう立ち位置なのか。
ぶっちゃけて言うなら、そう評価は高くない。
まず用意する段階として、同じくらいのポテンシャルの武器をそろえておかないと、十分に実力が発揮できない。
そして、そもそも実力と言うものはそもそもつきにくい。
NWOの片手剣を扱うアタッカーと言うのは、基本的に、右手が利き腕なら、左半身が後ろに下がっている。
基本的に原因と言うものはこれぐらいしかないのだが、それが圧倒的な理由でもある。
それに素人が行えば、右手で攻撃。左手で防御。それだけになってしまう。
それを想定した武器選びをしている場合を除き、双剣と言うのは、盾持ちの片手剣よりも立ち回りが遅いのだ。
しかも、盾であるなら、防具のそもそものボーナスとして、耐久値がやや減りにくい。武器はそう言ったボーナスがないため、修理代にコストがかかる。
ちなみに双剣と言うと、ユフィやミラルドのダガー二本はどうなのかと言う疑問はあるが、これに関しては、防御は基本的に行わず、回避が中心となり、小回りが利く短剣なので、こちらは行っているものはそう多くはないが、見かけないわけではない。
といったように、多くの無茶があるのだ。
だが、ゼノンのように、両方の剣を、攻撃と防御、どちらも行えるというのならば話は変わって来るし、ゼノン自身、年末のデュエルカップでは4位である。
「さて、始めるか」
そう剣を構える。
ダガー使いが距離を詰めてきた。
ゼノンは次々と迫りくるダガーを双剣で次々とはじく。
「ふむ、なかなか速いな……」
ゼノンはすべてのステータスに均等に振り分けた万能型である。長所は多く、短所はそう多いわけでもない。と言ったものだが、ゼノンのようなプレイヤーはかなりいるのだ。
「ん?」
バスターの方を見ると、10メートル級の石の巨人が召喚されていた。
「愚かなものだな……」
フード連中は首をかしげたが、バスターの攻撃で顔面蒼白になった。
「どうやら、あの巨人はお前たちの中でもかなりの戦力に設定されているみたいだな。で、あんたは何か出すのか?」
軽く挑発すると乗ってきた。杖を構えて魔法を発動し、全く同じ巨人が出現する。
「同じか……」
もっと別のものが出てくると思っていた。
「まあ、別にいいけど……」
しかし、アルベシオン・ジャイアントや、この召喚による巨人を見る限り、どうもこういった巨人の採用率が高い。そう言う集団なのだろうか。
「さて、始めようか」
いっきに距離を詰める。
両方の剣が輝き、ゼノン自身も加速する。
「『ウィーナス・ゼロ』」
次の瞬間、ゼノンは2本の閃光と化した。
光が収まると、すでに、巨人は倒れている。
「驚いているようだな。だが、これぐらいできないと、多くの人間を率いることなんて無理なんでな。反則だなんて思うなよ。単にこれは、理不尽なだけだ」
ゼノンは2人に向かって剣を向けた。
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「予想以上、確かにそれだけなら聞こえはいいが、想定外となると少々困る」
ダマスカスは頭を抱えた。
「どうしますかな?」
「キリュウはどうなっている」
「すでに準備は整っているようですな」
「では、ラシェスタが帰還し次第、この大剣使いと双剣使いがいるところに向かわせろ。正確な実力を把握しておく必要がある」
どれくらい強いか。を測るのではない。どこまで強いのか。を測るためである。
「今現時点では出さないので?」
「あいつの戦法は……周りに誰もいない方がいいからな」
「それもそうですな」
「さて、こちらのもの達は、強いものは本当に強いな」
「ですが、あの高性能な武器。あれを所持しているかどうか。それが一番の原因になっている可能性も否定できませぬ」
「やはりあれほどの武器は……生産されているということなのか?だとするなら、この世界の難易度自体。かなりのものになる。次回に備えて、戦力の強化が必要だな」
どうやら彼らに、NWOとは別の世界に行くという選択肢はそもそもないらしい。
「ダマスカス様は今回は参加しませんので?」
「私が出たとして、侵略成功確率が50%を超えるのなら、出ることに意味はあるが、それ以外ではできるはないな。私とて、万能ではないのだからな」
実際に戦っていないのにこういった判断ができるのは……まあいろいろ考えていることにはなる。
「キリュウでどれほどやれますかな?」
「それなりにやるだろうさ。だが少なくとも、この青い銀色の集団くらいはキリュウと、他にアルベシオンを数十体投入すれば殲滅できるだろう」
本人たちは知らないが、規模的には、ゼツヤの最高戦力と比べると、やや多い編成になる。
「話題に尽きませぬな」
「だが、今この町を守っている戦力が、この世界における中で最高の状態と考えてもいいと私は思う」
「それはなぜでしょう?」
「明らかに万全の準備を整えて対抗しているとしか思えぬのだ。だが、私たちの計画が漏れるはずがない。第一、我々は、この世界から見れば別の次元にいるのだ。予測も何もあったものではない。だが、それでも向こうが万全であったことは事実。そうであるなら、万全がこの戦力と考えて言いだろう。少々規格外だが」
厳密に言えば、ロスト・エンドにとって脅威ではないもの達が何憶と居るのだが、それは考えても仕方のないことなのである。そもそも、彼らが来たのは、今回が最初なのだから。
「さて、どれほどの武器を持って帰って来るか……そこが問題だな……」
万全と言う状況に対して、こちらの戦力が圧倒的に足りていないのも事実。そうであるなら、これからの侵略の際、わざわざ分散して送り出さなければならない。しかも、その場合であっても得るものが大きいのかどうかが不明である。
「異世界への侵攻。行くこと自体はそう難しくはないのだが、こうも対応が分厚いとはな……。まあ、その方がいい。少なくとも、退屈はしないのだからな」
ダマスカスは笑う。冷静を装っているが、グレイアからすれば、ダマスカスはキリュウよりも好戦的なのだ。
「さあ、限界を見せてみろ。ロスト・エンドのこれからのためにもな」
ロスト・エンドが絡むと会話文が少々大きくなりますね。
あと、今更ですが、戦闘絵写が少なすぎですかね……。いや、苦手であるのは分かっていてVRMMOを内容としたものを書いているのは分かっているのですが……。頑張ります。




