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ネイバーワールド・オンライン  作者: レルクス
強者たちの交響曲
24/218

ロスト・エンド

 第一陣が終了して数分後、ギルドマスターのみが街の会議所に集まっていた。


 いるのは、レイフォス。ゼノン。ヘリオス。テラリア。アーネスト。バスター。あと他数名である。


「まず、分かっていることからまとめようか」


 ゼノンが言った。


 ウィンドウにそれぞれ書いていく。


①出現方法はこれまでとは異なり、裂け目から出現する。


②モンスターは今までNWOで出現していないモンスターである巨人型モンスター『アルベシオン・ジャイアント』である。なお、襲撃イベントの際に発生する最大HP減少の措置はなし。


③第一陣ではアルベシオン・ジャイアント以外のモンスターは来なかった。


④モンスターたちの目的は、『ロードキャッスル』ではなく、『プレイヤーの持つ武器』である確率が高い。


⑤巨人を倒した際、ドロップアイテムは出現しなかったが、その分多くの経験値が手に入った。


まあ、今分かったことはこのくらいである。


「今までの襲撃イベントではなかったことだ」

「GMコールは?」

「こういったイベント進行時はGMコールは使用不可能だ」


 ゼノンが言って、テラリアが質問をして、アーネストが答える。


「おかしいというより、不自然だな」


 そうだ。バスターが呟いたが、結局はそれだけなのである


 レイフォスもいろいろ考えているが、何が起こっているのかはよくわかっていない。


 通常なら、モンスターの大きさはプレイヤーと同じか少々大きいくらいで、HPは低い。様々なジャンルのモンスターが出現し、ドロップアイテムのちゃんとあるので、素材目当てで参加するプレイヤーも多くいる。

 さらに、襲撃イベントである以上、あくまで町に侵攻するのが普通である。


 分からない。


 どんな可能性があるのだろうか。


「ゼノン。どんな可能性があると考えているんだ?」

「『運営からは何も報告はなかったが、今回から、もしくは今回のみ違う設定になっている』と言うことが今のところ一番有力だが、プレイヤーに何も報告がなかったというケースはない。今のところは、それを中心に考えざるを得ないな」


 たしかに、運営の報告ミス。いや、そもそも報告しなかったこと自体がシナリオなのであれば、考える必要はない。『そう言うこともある』として続けるだけだ。

 だが、何かあるように思うのだ。


 圧倒的なまでの不自然な感覚。ただそれだけが、ここにいる全員をうならせている。

 ……『最大』のギルドのマスター以外は。


 その時、全マスターにメッセージメールが送信された。

 第二陣か?と言うことが全員の頭によぎる。


 確かに、その予想は当たっていた。

 だが、それ以外の報告に、全マスターが驚愕した。


『モンスターを、NPCと思われる存在が操っている。なお、アルベシオン・ジャイアントであることは間違いないだろうが、鎧を付けていたりと、明らかに戦力が増加している。ただし、数そのものに変化はない』


 ゼノンが口を開いた。


「たしかに、納得は行く。だが、今現在存在するすべてのフィールド、街、ダンジョンに、これだけのモンスターたちを保管できるような場所は存在しないはずだ。NWOに存在しない空間から来たということか?」


 納得がいく。と言う言葉には、いろいろ意味がある。


 先ほどの今までになかった5つの項目。それらの理由がすべて解消されるのだ。


①裂け目から出現するという演出。これは、NWOではない場所から来たのだとすると、直でこの『ロードキャッスル城下町』のポイントに来たということだ。いつものような演出をすることに意味が無い。


②モンスターのジャンルが1種類のみ、これに関していうならば、そもそもNWOではない世界ならば、『アルベシオン・ジャイアント』を大量生産できる世界であっても不思議はない。HPの減少措置がないのも、そもそも進撃……いや、侵略するというのに重要な体力の最大値を落とすというのは、愚の骨頂である。


③これに関しては②と同じである。アルベシオン・ジャイアントが作りやすいのだから、大量に生産して送って来るのは何の問題もない。


④そもそもモンスターを操って……いや、使っているのがNPC。もっというなら、人の形をしているのであれば、武器を集め、こちらの装備の情報を集めるためだろう。武装が強くなっているのは……予測だが、『オラシオンシリーズ』を警戒したためだと思われる。要は、向こうにとっても『オラシオンシリーズ』は脅威なのだ。


⑤ドロップアイテムがないのは、向こうにとってそれが普通だから。それだけである。


全員の頭が完全に納得した。


「あ、PSって言うのがある」


 それはほぼ全員だったようだ。改めて見る。


『今現在の時点で、『オラシオンシリーズ』を装備している者はいない』


 ちなみに、他にもNPC発見報告はあったが、いろいろ合計すると、NPCの数は現在5人である。北に3人、他に1人ずつだ。何で?


 あと、オラシオンシリーズはやはり警戒されているな。もとよりモンスターは装備できないという前提だが、NWOの存在でないのなら装備出来てもおかしくないが、今現在装備されていないというのはある意味ありがたい。

ただでさえ基本的なパラメータが強いのに、オラシオンシリーズ有りとかマジで勘弁してほしい。本当に。


「とにかく、一刻も早く戻るぞ。すでに戦闘は始まっている」


 首を横に振るものはいなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ほぼ同時刻。ある会議室にて。


 正方形のテーブルのそれぞれの辺に、1人ずつ座っている。


 形状は人間だろう。


 北に座っているのは、青年だった。彼らの一団の制服のようで、茶色が基本色で、黒いローブを羽織っている。黒い髪と、青と緑のオッドアイだった。


 西に座っているのは妙齢の女性。同じくローブを羽織っている。だが、その肌は白く、目は赤い。アルビノのようだ。


 東に座っているのは青年だが、北に座っている青年と比べるとやや好戦的な印象がある。4人の中では一番筋力がありそうで、身長も一番高い。


 南に座っているのは老人だ。だが、その目に老いは感じられない。歴戦の猛者。と言ったものだろう。


 雰囲気的な話だが、北に座っている者がリーダーのようだ。


「レイシャ。戦況はどうなっている」

「第一陣は武器の数本を入手、退避させたもの以外はすべて殲滅されたとのことです。ダマスカス様」


 女性に対しての質問の回答を受け取ったリーダー。ダマスカスは頭を抱えた。


「武器の数本を入手したのみ、か」


 ダマスカスとしては予想外だったようである。


「へぇ、こっちの奴らは結構やるみたいじゃねえか。グレイアはどう思うんだ?」

「私もそう思いますが、敵戦力が予想以上の強さを持っていたことに対して喜ぶべきではありませんな。キリュウ」


 好戦的な青年・キリュウに対して一応の注意をする老人・グレイアだったが、キリュウはあまり聞いていないようである。


「ところで、入手に成功した武器はどれほどの性能でしたので?」

「入手本数は40本です。そのうちのほとんどは、青い銀色の鎧を身にまとった集団から手に入れたとの報告ですが、そのうちの8本が、他と比べて、かなり高い性能を持っていたようです。他の武器に関していえば、我々の技術では脅威になりえませんが、その8本は、現状ではかなりの脅威となります。今回入手できたのは、武器の性能に反して、装備者の実力が少なかったからだと推測できます」


 無論この4人は知らないが、ブリュゲールの扱いがかなりひどい。


「ふむ、個人の戦力としてはどのようなものだった?先ほどの武器の性能をまだ持っている者がいると仮定してだ」

「その場合ですが、先ほどの高性能の武器を入手可能だった集団は、今回の侵攻においては、『弱いが最低限の力を大量に用意している』ととらえてよい強さでしたが、個人の戦闘力はそう高くないかと、無論。他にもおそらく戦闘が本職でないものもいるようですが、その場合、集団戦闘における指揮をとっている者がかなりの能力です」


 ブリュゲールや旋律騎士団のことを言っているのだろう。


「今一番脅威となるのは?」

「一部のものですが……」


 テーブルに次々と写真が表示される。


「こちらのもの達かと」

「かなり多いな」

「その中でも、この大太刀使いが率いている7人。双剣を扱うものと、その側近たち。黒曜石を使用しているこの女性。大剣使いの者。先ほどの集団を操作している者。今のところ、このようなもの達が脅威になるかと。なお、武器のメンテナンスや、様々なアイテムの補給速度も、かなりのものです。専門のもの達がいるのでしょう」

「戦闘における脅威は誰だ?上位4人に絞れ」

「大太刀の青年。大剣使いの者。青と白……いえ、アイボリーの少年。あと、双剣使いの少年かと」


 レイフォス・バスター・ゼツヤ・ゼノンだろう。というか、年末に行われる決闘祭の上位4人である。なかなか観察力が高い。


「なかなかのものじゃねえか。ダマスカス様。俺は行っちゃいけねえのか?」

「……一応用意はしておけ、ただし、まだ出ることは許さん」

「はいはい」


 キリュウが部屋から出ていった。


「良かったので?」

「別に問題はない。強制退避手段があるのだから。それに、それはキリュウも理解している」


 一応、独断専行があっても問題はないようだ。用意周到である。


「第二陣はどうなっている」

「ペースはやや落ちていますが、優勢ではないと判断してよいでしょう」

「アルベシオン中心ではあまり期待はできないな。改良が必要になるか。『ラシェスタ』はどうなっている」

「現在5人を選出し、送りこんでいます」

「その5人に、アルベシオンの基本的な命令を任せる。さらに1人追加し、先ほどの高性能の武器を入手することが可能だった集団から武器を奪い取れ。だが、別にこれ以上高性能の武器が手に入らなくても問題はない」

「畏まりました」


 ラシェスタと言う存在は、おそらくかなりの戦闘能力を保有しているのだろう。それに加えて、集団における指揮も可能なのだ。優秀である。


 ダマスカスは少々考えた後、口を開いた。


「これ以上劣勢が続くのであれば。先ほど報告にあった上位4人に、ラシェスタのさらに合計8人送りこみ、2人ずつで相手をさせろ。予定変更だ。もともとは侵略し、この世界での拠点を作る予定だったが、それは廃案とする。だが、可能と判断でき次第、改めて予定を戻すが、今回の侵攻は、情報入手を最優先する。とくに、上位4人の戦闘能力を正確に理解することを優先する」

「はっ!」


 レイシャは部屋を出ていった。


「さて、ダマスカス様。私は……」

「待機だ。ところで、グレイアはどう思う?」

「私としては、このクリムゾンのローブの魔法使い。この者が少々気になりますな。範囲的な火力で言えば、この者が一番でしょう」

「なるほど。殲滅することに特化した鍛え方か……頭に入れておこう」


 ダマスカスはテーブルに表示された写真データを見る。


「頭をずいぶんと悩ませてくれるな。だが、これはほんのお遊びにすぎん。我々『ロスト・エンド』の脅威になるとは、確かに予想以上だが、許容範囲外ではない。うぬぼれるなよ」


 ダマスカスは、その目に鋭い光を宿した。



 NPCで構成された戦力。と言う設定です。こういった存在がほしかったのですよ。

 というか、いきなりの新戦力が来ましたが、そんな存在にすら、ゼツヤが作った武器は脅威となる。設定したのは僕ですが……チートですね。やはり。

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