三年の冬というのは実際問題あまりすることはない→ゲーム三昧だ!
「さて、時間はあるが……ミズハはこの時期忙しいからなぁ」
高校と言うのは勉強する場所だが、この時期は受験がかなりぎっしりしている。
そのため、受験が終わっている生徒と終わっていない生徒を一緒に教室に入れて勉強してもたいした意味はない。
まあ、年度末テストのようなものはあるかもしれないが……というより、竜一が通っている沖野宮高校ではあったのだが、それはそれとして、一月は午前中授業が多くなり、二月は本格的に休みになり、三月の頭に卒業。と言うのが三年生だ。
つまり時間はあるのだ。
さらに言えば、竜一はやろうと思えば推薦で技術系に行ける。
VR技術を利用したものでさらなる文明的発展を目指す学校は多いし、第一、多くの大学の理事長を務めるリオが知り合いなのだ。能力はあるのでぶちこんでもらえる。
持つべきものは人脈である。いや、ちょっとインフレしすぎてやばいけど。
ていうか、ちょっと前にセリュアル王国と言うヨーロッパの国からセトナが留学してきたが、今にして思えば、何が目的であんな時期に来たのやら。まあ、いいけど。
さて、竜一が時間があると言われて何をするのか。
NWO一択である。
だがしかし。
まだ一月であることも確かである。
「ゼツヤ」
「どうした?」
ダムアがオラシオンの工房に入ってきた。
あれからこっちの転移アイテムを渡しておいた。いろいろと面倒なので。
「思うんだが……お前、市場にはそこまで作ったものを流してないんだな」
「まあな。とはいっても、この世界のトッププレイヤーの多くは所持してるから、それはそれなりにあるんだが……」
「それを入れても、と言う話だ。絶対数が少ないぞ」
「たくさんあってもありがたみがないだろ」
「まあ……そうだが」
強すぎる力があるだけならいいのだ。
ただし、ありすぎると妙なことになる。
「それに、オークションでも出しているアイテムのほとんどは消費系アイテムだ。変に高いんだがな……」
「それ以上のメリットを出せるかどうかは本人が考えることだ。オラシオンと言うブランドだけで泊がついてるからな」
「ふーむ……」
「お前とビジネス的な契約をするつもりはないぞ」
ダムアは一瞬だけ目を逸らした。
「稼げるネタがあると思えば寄ってきやがって……あの時とは違って、俺達はチームじゃないんだぞ」
「それはそうだが……」
「それに……俺とお前が水面下でも組んだら、嗅ぎつけてくる奴が絶対にいるだろ。三人くらい」
「……だな」
三人ほど思い浮かべたが、まあ、その思考は置いておくことにした。
「で、それは置いておくとして、ダムアは進学先決まったのか?」
「いや、俺は卒業したら父さんが入っている会社に入ることになってるからな」
「暴れる気かお前」
「だって……NWOの連中って、経営的に見て楽しい相手なんていないんだもん」
「そりゃ……剣と魔法のファンタジーの世界だぞ。そんな連中に時間があるわけないだろうが……」
「でもなぁ……お前が敵に回ってくれたらそこそこ面白いんだが……」
「誰がするか」
敵が面白ければ面白いほど、強ければ強いほど楽しいと思う人間はどこにでもいる。
とはいっても、自分の得意分野に関しては恐ろしく負けず嫌いなのはゼツヤも同じだが。
「で、本題は?」
「やっぱりわかるか」
「お前が時間を使うときは有意義なものかどうかを無意識に考えるからな」
「そうだな……じゃあ、本題を言おうか。作ってほしいものがある」
「ほう」
「それはな――」
ダムアが言った『それ』に、ゼツヤは驚く。
「――会いたい奴がいる。そいつに会うための、剣だ」




